その200 となりの子、育て



 マンションの隣に翻訳家のご家族が住んでおられ、そこの奥さんは私よりおそらく若い。その家には男の子が2人。上のお兄ちゃんは幼稚園児で、まだう〜んと小さい泣き虫小僧の頃から知っている。下の男の子がいま、おそらく1歳半くらい。下の子は、お母さんのおなかにいるときから知っている。

 男の子の名前はKくん。Kくんの幼稚園カバンには「ドコモダケ」が4つか5つぶら下がっている。そのうちの2つは、私があげたドコモダケ。2つ目のドコモダケは、ケータイではなくインゲン豆か空豆を手にしていた。Kくんは最近なんとなく、お兄ちゃんぶりを発揮しているような気がする。

 毎年、ハイビスカスが咲いた日は、マンションの共用部分にハイビスカスの鉢植えを置いた。Kくんが「あ、おはな、さいてる!」と見てくれたら、少しだけ情操教育につながるかもしれないと思っての行為だった。カサブランカが咲いた日も、コスモスを買ってきた日も、イチヂクが実をつけた日も、共用部分に出しておいた。そうそう、干し柿をつり下げたことだってある。
「Kくんへ  ほしがき ちぎっていいよ。 となりのおねえちゃんより」

「Kくんへ  いちぢく ちぎっていいよ。 となりのおねえさんより」
 そう書いておくと、だいたい2日後くらいに、実がなくなっている。 そして「2ついただきました。 Kのパパより」とメッセージが残っていたり、「ありがとうございますぅ〜」と葡萄がやって来たり‥‥

 となりの子が育っていくのが、うれしい。あさ「おはよう」と言って、マンションのエレベータまで一緒に行ったり、「Kくん、エレベータのボタンをおしてください」とお願いしたり‥‥。お母さんにおこられて泣いていると気になるし、幼稚園に出かける気配がすると、私も急いで靴を履く。
 私の子じゃないから、あんまりかまい過ぎてはいけないと思いつつ、ケーキ教室でつくった焼き菓子を届けたこともあったっけ‥‥

 Kくんが小学生になって、中学生になって、高校生になって‥‥ いったい幾つになるまで、私を「お姉さん」と呼んでくれるだろう? いったい幾つになるまで成長ぶりを見届けることができるだろう?
 となりの子、Kくんと弟くんが、健やかに朗らかに育ちますようにと祈りつつ、願わくば一度でいいから自分の子を育ててみたいと考える私 は、おかしい?

 

 


のどか/Nodoka(ペンネーム)

福岡県八女市生まれ、福岡市在住。

小学生の頃より作文を得意とし、中学〜高校ではラブレターの代筆を頼まれることが多かった。好きが高じて「もの書き」となる。「人生は宝さがしだ」をテーマに、enjoyしている。豆・豆料理研究家1年生。

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