No.26.Title : 母さんの元カレは味噌屋勤め


  雑誌『シティ情報 ふくおか CLASS/6月号』の取材で、福岡市東区の『田島屋味噌醸造所』を訪ねた。製造直売の店に併設された工場も見学し、味噌ができる過程を大まかに習う。
 米こうじと塩と大豆を混ぜると「米味噌」になり、こうじが麦なら「麦味噌」、米と麦のこうじミックスで「合わせ味噌」ができるという。「こうじ」は人間に有効なカビのことで、工場では40℃で40時間かけて米や麦に「こうじ」を生やすらしい。昔の家庭用味噌は、コタツに入れてこうじを生やしていたと聞く。
 塩や砕いた大豆を混ぜて2ヶ月ほど熟成させると味噌の出来上がり。貯蔵庫に1,000kg入り味噌タンクが100本以上並んでいた。1,000kgの味噌に200kgの重しが乗り、出てきた汁を「たまり」と呼ぶ。これが醤油の起源だとか。「味噌の歴史は古くてね、1300年にもなるんです。平安時代から造られていたんですよ。醤油のほうが若くてね、たまりが醤油として使われるようになって、まだ1000年もたちません」と社長の柴田守一さんが自慢気に話してくださった。
 その「若い醤油は1000歳未満」という表現が面白くて、また店で月に3日(計6回)開催される「手作り味噌教室」に誘いたくて、取材から戻るや否や母に電話した。すると母は開口一番「私もつい昨日、田島さんのことを思い出していた。お父さんが浅蜊の味噌汁を食べたがり、そろそろ味噌もなくなりかけだなと思ったら、昔のことが思い出されてね‥‥」と、いつもの昔話が始まった。
 しかし、今回の内容は初耳だった。昔、母が東区の醤油屋さんに女中奉公していた頃におつき合いしていた男性が、この田島味噌さんに転職したのだとか。その後、二人の仲がどうなったのかは今さら聞きもしなかったが、母はやたらと「たしま屋」さんに行きたがる。「自分だってそろそろ69歳になろうとしてるのに、その人がいるわけないじゃない」と思ったが「連れて行こうか?」と言った途端に「いつなら行かれるね?」 ‥‥純愛だったのかも? 熱愛だったのかも? 
 「味噌教室はお母さんは行かんでよかよ。人から習わんでも作りきるけん」。「そうね。そんなら誰か、ほかの人を誘うね」。しかし、父には内緒で近々母を店に案内しようと思っている。

*たしま屋 福岡市東区香住ヶ丘2-3-33 TEL 092-681-0935
*味噌教室は毎月第3木・金・土開催。13:30〜と14:30〜の2回。
 材料費は税込2,310円。米・麦・合わせ指定可。味噌5kgを作る。


のどか/Nodoka(ペンネーム)

福岡県八女市生まれ、福岡市在住。

小学生の頃より作文を得意とし、中学〜高校ではラブレターの代筆を頼まれることが多かった。好きが高じて「もの書き」となる。

「人生は宝さがしだ」がテーマ。30代独身。

*「のどかの間借りコラム」は、毎週火曜日を目標に更新中。

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