その229 


 

ケーキの形した表彰状

 

手づくりのケーキが届いた。手づくりといっても、それはプロの菓子職人がつくってくださったものだから、商品ではない特別な菓子である。

 

ベーシックなケーキの作り方で焼く「カトルカール」というケーキがある。小麦粉・卵・バター・砂糖を1:1:1:1の同割で焼くシンプルな味わいのケーキ。ある企業で発行される、そのケーキと同じ名前のコミュニケーション・フリーペーパー「カトルカール」を私は1997年9月〜2010年1月号まで担当していた。

「カトルカール」の4つを「お客さま」「お菓子やケーキ」「作り手」「販売スタッフ」になぞらえ、それぞれがバランスよく関係して、いい店づくりができますように、との願いを込めたマンスリーの情報紙。フリーランスに成り立ての頃から福岡を発つまでの13年弱、発行は毎月欠かさず続き、新年の最終担当号は149号になっていた。

 

クール便で京都に届いた「カトルカール」は、長年その会社に勤務し、間もなく独立開店すべく準備を進めておられる菓子職人がつくってくださったもの。カトルカールには、社内恋愛で結婚された奥さまからの手紙が添えられていた。

「私達夫婦は、カトルカールで初めてお互いの存在を知りました」「夫はカトルカールのコーナーで(今は亡き)会長と対談をさせてもらった事が、忘れられない思い出になったと言っています」というようなことと、お客さまから「楽しみにしていた」と言われたことなど、やさしい気遣いのこもった手紙だった。

 

福岡から京都への転居は、私が決めたこと。セラヴィと諦めざるを得ないこともたくさんあった。「カトルカール」の先には、ちゃんと読者がいたことを再認識させてくれた手紙とケーキ。じわ〜ッと、熱いものが込み上げてきた。「カトルカール」を口にしながら、「ありがとうございます」と心の中で何度も唱えた。

 

マンスリーで149号は、私の仕事の中で最長記録となった。「カトルカール」は、3月からカラフルな季刊発行になって、続いていくと知った。読者とお菓子と企業の幸循環を思いつつ、いただいた「表彰状」と、ルフランに感謝した夜。

 

 


のどか/Nodoka(ペンネーム)
福岡県八女市生まれ、京都市在住。

小学生の頃より作文を得意とし、中学〜高校ではラブレターの代筆を頼まれることが多かった。好きが高じて「もの書き」となる。「道楽は極めてこそ道楽」がテーマ。豆・豆料理探検家。

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