その208 静けさの音を聴いています



 それは、秋の真ん中の頃、月の美しい晩のこと。青い光りと水の音、竹のざわめきと虫の声が辺りに漂っていた。縁側に座し、届いてくる女どもの話し声の向こう側にあるのは、雑踏と夜の闇。涼しい風が冷たい風となり、どこかへ吹き抜けていった。
 「静けさ」という音があると知ったのは、その時だった。静けさを聴くために、耳を澄ました。スーッととんがった静けさが、確かにそこにあった。人がいるのに私一人。誰かといても、自分一人。不思議な感覚に包まれた。青蓮院での出来事である。

 人はどうして闇に向かうのか? 人はどうして光りを求めるのか? 男はどこまでも女女しくて、女はとことん未練がましい。手にしたものの重さを知るのは、手放したあとでしかない。どこまでも続く深い深い静けさは、そのことを物語っているようだった。耳を澄まして、静けさの音を聴いた。

 この2本の手でつかめるものは、そう多くはない。だからこそ、つかんだ手を放してはいけない。静けさの中で、自分の奥にある真の声を聴いた気がした。

 

 

 


のどか/Nodoka(ペンネーム)

福岡県八女市生まれ、福岡市在住。

小学生の頃より作文を得意とし、中学〜高校ではラブレターの代筆を頼まれることが多かった。好きが高じて「もの書き」となる。「人生は宝さがしだ」をテーマに、enjoyしている。豆・豆料理研究家1年生。

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