危機管理講座 テキスト     ヤルデア研究所 伊東義高

第1章 危機管理(リスク・マネジメント)とは [講義] 第1節 危機と難問 (個人の危機・企業の危機・国家の危機) ・ここでは財政学的なロス管理ではなく、「瀕死の異常事態対応」を取り扱う ・予期せぬ出来事で、被害の軽いのは「リスク」ではなくて「トラブル」 ・通常の管理システムで処理できれば「トラブル」で「リスク」ではない ・同じ事故・事件でも、企業の体力や企業のおかれている状況によって、 また判断する人で、「リスク」になったり「トラブル」になったりする

第2節 企業の危機 (自然要因・社会要因・経営要因) ・自然要因災害には急激変化と緩慢変化があるが、ともに必然的、不可避 ・文明の発達に比例して被害は甚大化するが、また被害軽減力も向上する ・地震・津波・噴火・土石流…… ・強風・豪雨・雪崩・土砂崩れ…… ・異常気象・異常潮流・地盤沈下…… *天災・人災論 ・人災には2通り;人が起こした災害と人が防がなかった災害 ・河川の氾濫;縄文時代は問題なく天災、現代では人災となる ・人が十分予測でき、かつ防御・軽減できるものは人災という ・分明に比例して天災比率が減少し、 人災比率が増大していく ・東海地震など予想されるものに対応しないのは社会的な罪悪 ・その被害は単なる自損に止まらず、地域社会に被害を及ぼす ・それが天災である限り、その被害について国家は補償しない ・国家補償は自助している人の税金を自助しない人に回すこと ・社会要因災害には過失による事故と故意による犯罪があるが、予測困難 ・技術の高度化、社会の複雑化とともに多様化し、対応も困難化する傾向 ・停電・火災・危険物漏れ・環境汚染…… ・大型バス事故・列車転覆・飛行機墜落…… ・重要盗難・スパイ・特許侵害・ハッカー…… ・要人誘拐・企業テロ・悪質デマ・業務妨害…… ・経営要因災害には管理レベルと経営レベルとがあり、ともにミスに起因 ・たとえトラブルが起きても、リスクに発展させないのがマネージメント ・業務上横領・不法取引・不正経理・違法業務…… ・労働災害・エネルギー事故・有害物事故・火災…… ・労働紛争・大量離職者・取り引き停止・貸し倒れ…… ・製品−市場開発ミス・投資融資ミス・景況判断ミス…… *経営責任論 ・事故・災害の種類・規模を問わず全てが経営の責任である ・予測を怠った責任、対応を誤ったという責任…不作為責任 ・過剰対応をして、財務破綻をするのも経営者の責任となる 第3節 被害の区分 (人身的被害・経済的被害・経営的被害) ・人身的被害には精神的被害と肉体的被害があり、貨幣に換算できない ・不信・不安・恐怖・動揺・狂乱 ・軽傷・中傷・重傷 × 人数 ・死亡 × 階層 × 人数 *人命の経済換算 ・生命保険額換算は一つの便法。換算不能論は一つの哲学 ・経済的被害には資産・利益の減少と出費の増大とがあり、金額が問題 ・現有財産の減少 ; 固定資産・流動資産・無形資産 ・収入金額の減少 ; 市場衰退・機会減少・単価低落 ・不時出費の増大 ; 応急費用・復旧費用・賠償費用 ・経営的被害には、 企業の体力により 浅手から瀕死までの各段階がある ・成長の持続 ; 今までの成長率を保ち続けられるか危うい ・事業の継続 ; 現在の事業規模を保っていけるかが難しい ・企業の存続 ; ことによると企業が倒産するやも知れない 第4節 危機の特性 (予測困難性・急激変化性・結果重篤性) ・予測困難性には定性的予測と定量的予測の二つの面。科学的推論が大切 ・一般的には何が、なぜ、どうなるのかの定性的推測することができる ・一般的にはいつ、どこで、どの程度なのかの定量的推測は困難である ・その中で、 最も問題になるのが「正確な日時の特定」である ・自然科学資料や社会統計等から確率論的推定なら予測できる ・「今年、 起きる確率は」で考えるのがリスク・マネジメント ・急激変化性には変化迅速性と変化多様性とがあり、時に両者が共存する ・初盤・中盤・終盤でのどれかの速度か全般的速度が異常に速い ・樹状図展開のOR分岐またはAND分岐の展開が複雑になる ・結果重篤性には個人・企業・社会の死滅に至るほどに発展する可能性 ・個人については前記の人身的被害の最悪;死亡に至る…かも ・企業については前記の経営的被害の最悪;倒産に至る…かも ・社会については近隣地域に混乱・破壊・破滅を及ぼす…かも

第5節 危機と管理 (前提異常性・法則不定性・目的方向性) ・危機と管理とは矛盾する。それを統合するのが危機管理(*) *管理できない状況を少しでも管理できるようにすること ・管理とは安定した経営資源が前提。危機とはその混乱・崩壊 ・管理とは一定の法則の範囲内。危機とは別の法則が作用する ・管理とは目的とする方向・範囲が一定。 危機では状況による ・臨機応変は失敗すれば死をもたらす。保証のない賭けである ・通常管理はベストを求め、危機管理はワーストを避けることである 第6節 危機の筋書 (最善シナリオ・最悪シナリオ・高確率シナリオ) ・危機の諸パラメーターの組み合わせで幾通りものシナリオが書ける ・最も楽観的・好都合なシナリオは危機ではなく、検討の必要がない ・最も悲観的・不都合なシナリオは対応策がなく、検討の方法がない ・最も高確率・常識的なシナリオは覚悟すべきで、検討の価値がある ・悲観的・難しすぎるシナリオは意識下に抑圧されやすい ・楽観的・易しすぎるシナリオは軽視され忘却されやすい ・中程度のシナリオは適度の緊張と自信で保持されやすい 第7節 対応の類型 (危機回避型・被害軽減型・保険救済型) ・危機回避型には危機の発生の仕組みの変更と遭遇する機会の減少とがある ・危機発生の原因を除去 ―― 経営要因災害(管理レベル) ・危機発生の確率を低減 ―― 〃 (管理・経営) ・危機遭遇の機会を減少 ―― 社会要因災害(防犯警備等) ・被害軽減型には防御能力の向上、情報収集の徹底、被害拡大の阻止…がある ・災害は避けられなくとも、被害は減らす;防火構造・耐震設計等 ・適当な対応をする為の情報収集と判断力;緊急本部・連絡体制等 ・派生的被害の拡大を阻止・軽減する体制;自衛消防・救急看護等 ・保険救済型には直接被害額を補償するもの全被害額を補償するものがある ・直接被害は設備機具・製品類の損害額及び人身の治療・保障費用 ・全被害は前号の直接被害に復旧間接費及び逸失利益を加えたもの ・保険金の受取りは保険金の支払いを前提とする。 最後にとる手段 第8節 対応の時期 (その前にする・その時にする・その後でする) ・その前にする対応次第で被害を軽減化する確率を高めることができる ・物理的対応策;耐震ビル・防弾ガラス・避難階段・二重通信網・防災袋… ・制度的対応策;危機管理組織・危機管理マニュアル・緊急時行動規準… ・人間的対応策;危機の基礎知識・危機意識の啓蒙・非常時の実技訓練… ・その時にする対応次第で、状況をそれ以上に悪化させないことができる ・全社的対応策;緊急対策本部・情報収集体制・地域対応・社外広報体制… ・職場的対応策;消火・救出・救急・点呼・通報・避難・調査・近隣職場応援… ・個人的対応策;我が身の安全確保・緊急保安処置・定点集合・状況報告… ・その後でする対応次第で、災害からの立上げを円滑化することができる ・企業内外の状況次第で対応は千変万化。予め基本方針を検討しておく ・事業的対応策 ; 生産委託、代替出荷、納期調整、資金計画… ・工事的対応策 ; 再建序列、資材調達、人員確保、輸送計画… ・人事的対応策 ; 治療支援、生計補助、欠員対策、臨時配置… *ハード対策・ソフト対策 ・その前ならH・S共に十分可能。その時はSが主に、その後はHが主

第9節 対象の区分 (設備機具等・組織規定等・意識行動等) ・設備機具等 ; 土地、建物、設備、器具、原料、製品、車両… ・組織規定等 ; RM組織、主管個所、基本規程、個別規程… ・意識行動等 ; 全社的啓蒙、 参画的活動、 実践的訓練… 第10節 実行の主体 (自助の責任・互助の効用・公助の期待 ) ・自助は原点 ; 自らを助ける努力を怠るものは生きることの放棄 ・互助は掛算 ; 相互協力は相互補強、集団安全保障、個々の利益 ・公助は最後 ; 専門的高度の対応力だが常に間に合う保証はない 第2章 自社の危機 (仮想危機シナリオ) [実習] ・危機を全部覚えようとしても無理である。多すぎて覚えきれない ・危機は考えてみるに超したことはない。それにはいろいろな理由 ・危機を多数体験したプロはいない。危機評論家とは想像で喋るアマ ・起きた危機の記録は多数あるがみな古い。起きる危機はみな新しい ・危機には多種・多数あるが、企業ごとにある程度は範囲が絞られる ・その企業の全社員がその絞られた危機の被害者になる可能性がある ・膨大な評論家的な知識より、自分や自社を守りたい意識の方が優る ・その意識が、下手ながら・不完全ながら対応策の実行に生かされる ・受講は所詮、教えてもらう受け身。実習は参画型の考えてみるの能動 ・覚えたことは忘れやすいが、考えたことは忘れ難い ・覚えた90点より、考えた60点の方が遥かに優る 第1節 危機ラベル (予想される自社の危機をラベルに記入) ・各自ここ2〜3年に起きた国内外の企業を巻込んだ大小の危機を想起 ・前述の企業の危機(自然要因・社会要因・経営要因)を参照 ・他地域・他業種での危機が自社にも起きる可能性があるかも ・対応如何では企業の浮沈に関わるような危機的ケースに限る ・各自、自社に発生するかも知れない危機の内容を研修ラベルに横書き ・どんな事故・災害が、どのように起きて、何が、どうなるか ・単に「大地震」とせず「地震で社屋が倒壊、死傷者100人」 ・なるべく違う種類の違うレベルの危機のケースを大量に生産 ・その危機が起きるための前提条件や確率等については後回し 第2節 被害の評価 (集めたラベルを5段階評価する) ・各班、記入済みの全ラベルを裏にして集め、よく混ぜる ・1枚づつ読み上げ、衆目一致法で次の5段階に仕分ける (前提は中程度規模の企業で、RM能力も中程度とする) ・d5;被害極大;多分企業倒産が予想される ・d4;被害 大 ;多分事業継続に支障が出る ・d3;被害 中 ;多分利益維持に問題が出る ・d2;被害 小 ;多分業績拡大に不安が出る ・d1;被害極小;多分日常業務に影響が出る ・内容が同じ物は一まとめにして、1枚として扱ってよい ・条件によって変わるものは2枚のラベルに分けて仕分け 第3節 確率の推定 (集めたラベルを5段階評価する) ・各班、各被害段階毎に危機の発生確率を推定して5段階に仕分ける ・f1;確率極小;戦後50年、全国約200万社で1、2件(10−8) ・f2;確率 小 ;ここ数年、 〃 〃 (10−7) ・f3;確率 中 ;毎年、 〃 〃 (10−6) ・f4;確率 大 ;毎月、 〃 〃 (10−5) ・f5;確率極大;毎日、 〃 〃 (10−4) ・推定をしたラベルを次図のようなマトリックスを作成して貼り込む ・自信のない推定には「?印」を付け、 いずれかの評価欄に仕分ける

第4節 対策有効性 (貼られたラベルを5段階評価する) ・各班、各ラベルの一般的対応策の有効性を5段階評価する ・評価記号を朱記する。 自信のない評価には「?印」を付す ・A;回避及び軽減のために十分に有効な対策が既に開発されている ・B;回避策はないが軽減策ならかなり有効なものが開発されている ・C;回避策・軽減策共にまあまあ程度のものしか開発されていない ・D;回避策・軽減策ともに不十分か専門的過ぎるか、超高価で問題 ・E;軽減策ですらほとんどが未だ開発されていなく、打つ手はない 第5節 費用対効果 (検討価値の高い3件について概略評価する) ・各班、危機マトリックスの中から検討対象候補3件を選んで赤枠 ・「被害評価×確率推定」の積(危機管理のニーズ)を基礎とする ・「対策有効性」(危機管理シーズ)を加味して総合的に判断する ・ニーズが高くても、 シーズが低ければ避けるも一つの見識である ・シーズが低くても、ニーズが高ければ選ぶのも一つの見識である ・危機対策をすることによって回避・軽減される効果(B)を推定 ・無対策の場合の被害額(A)−対策効果(B)=実被害額(C) ・本来は定量評価をするところであるが、ここでは定性評価とする ・人命被害は他と経済的な比較はできないが、最大限に評価をする ・p10; 効果極大で、極めて膨大な額の損失を防げる ・p 8 ; 効果 大 で、かなり大きな額の損害を防げる ・p 6 ; 効果 中 で、相当程度の額の損害を防げるもの ・p 4 ; 効果 小 で、ある程度の額の損害を防げるもの ・p 2 ; 効果極小で、ほんの僅かな額の損害を防げる ・前項の危機管理対策に必要な費用(C)を話合って大雑把に推定する ・直接的費用(A)+間接的費用(B)=総対策費用(C) ・本来は定量評価するところだがここでは定性評価とする ・c5; 費用極大で、負担しかねる程度の金額な費用 ・c4; 費用 大 で、大決断を必要とする金額の費用 ・c3; 費用 中 で、相当程度まとまった金額の費用 ・c2; 費用 小 で、そこそこの少な目の金額の費用 ・c1; 費用極小で、殆ど負担にならない金額の費用 ・対策効果と対策費用を下掲のマトリックスに照らして効率を調べる

第6章 発表と講評 (ケースの選定、口頭発表、講師講評) ・各班、候補3ケースの費用対効果を踏まえて「検討ケース」を選定する ・各班、その危機ケースの発生と対応のストーリーを模造紙に書き留める ・どんな危機が、どのように発生して、どんな対策で、どうなるのか ・そのストーリーの重要点は? 必要な条件は? 残る不安・課題は? ・各班、模造紙を黒板に貼り、 自分達が考えたストーリーを全体発表する ・発表者の司会のもとに、全員が自由に質問し、自由に意見を述べる ・各発表及び全体について講師が講評をする(目の付け所・別の考え方) 第3章 危機管理規程 (危機マニュアル) [講義と実習] ・危機管理規定があれば安全ではない。日頃・本番に実行されてこそ効果 ・効果は出るとは決めておいた通りになるとの保証ではない。確率である ・「危機においてベストを求むることなかれ。ただワーストを避けよ」が大原則 第1節 全般的規程 (どんな危機から、何を、どれだけ守る) ・企業には原則(社是・社訓・方針…)と細則(規程・規則・標準…)がある ・その原則・細則の大部分は平常時における方向と管理を規定するものである ・それら大部分を支えるために異状時・緊急時の対応規定が求められる ・危機対応のための全社的基本規定や命令系統・委員会・主管課の組織化 ・平常時の活動のあり方や緊急時の原則や限界を決めておくのが一般的 ・復旧は情況次第であり、致命傷は少ないことから含めない企業が多い ・どんな危機からの防衛を想定するのか、焦点を絞ったものである必要 ・どんな危機が来てもいいように備えておこうの規定は設計の仕様がない ・ある危機対策は他の危機にそのままは使えないが、無いよりはマシ ・一般には、被害度と確率から代表危機を1か2に絞って規定化を図る ・何を想定危機から守ろうとするのかが明確でないと抽象文に終わる ・経営資源(人・物・金・情報…)のどれも大事だが、自ずから軽重の差 ・ぜひ守る、できるだけ守る、できたら守る…の場判断的な規定は不適 ・人命第一にするか事業継続第一にするかはその企業の考え方である ・どれだけ守るか…も平常時に冷静に考え割切り・線引きしておく必要 ・人身被害でも怪我一つさせないと命だけは守るでは対策に雲泥の差 ・顧客被害やパソコン情報等についても予め思い切った線引きをする 第2節 マニュアル (その必要性・その有効性・その限界性) ・原則的な規定を踏まえての具体的な判断基準・行動規準がマニュアル ・「OO工場危機管理規定」「電算機保安規定」「地震防災規定」等である ・誰が、何を、どうするのかについての権限と義務を明文化したもの ・「いざというとき」「非常時には」でなく具体的な情況判断基準を明示 ・人の行動については「なすべきこととしてはならないこと」の二分規定 ・その必要性の対極は臨機応変である。両者を比較して考えてみよう ・事故・災害・異常は多数あるが、同じものは一つとしてない ・マニュアルとは「一律規定化」であり、「空文化」のおそれ ・起きた情況に最も適した方法を判断・実行せよが臨機応変論 ・異状緊急事態とは情報が異常であり、判断する脳が異常である ・常人にとって“危機において危機を判断するほどの危機はない” ・異常の場数を踏んだやくざの親分ならば信じられる臨機応変 ・まともな状態でまともなことを処理してきた企業人には困難 ・出たとこ勝負に命を懸けるのでなく、平時に考えるのが正道 ・ベストは逸してもワーストだけは避けたいなら規定化可能である ・その有効性はその内容・実行度と危機情況 等により一様ではない ・阪神大震災後、一流企業に危機管理規程の有効性を調査した ・平均値は約40点。 一流企業ですら合格点をはるかに下回る ・中堅企業では金・時間かけて規定化しても所詮役立たない? ・見方を変えれば、調査対象企業は約40点の恩恵は享受できた ・一定の判断・行動基準を周知させる手段としての効果はある ・たとえ反復訓練がなく、一度読んだだけでもそれなりの効果 ・パニック集団が一人のマニュアル実行者に救われる可能性も ・その限界性についても多面的に検討し、改善の努力が不可欠である ・「それなりに有効」の裏側として「不十分さ」は必然である ・マニュアルそのものが初めから完璧であることは決してない ・マニュアルの周知徹底、実技訓練が十分ということも少ない ・危機では全員が異常心理で、設備機具が異常に損壊している ・それらの割引き分を考慮し、余裕分・二次対策を設計しておく ・逆に、記憶・体得・実行しやすくするために条項を簡素化する 第3節 制定の手順 (事務局原案・現場手直し・最高者決裁) ・定常管理マニュアルも危機マニュアルも遵守率は制定の仕方による ・最も理想的な制定は部署部署・個人個人が自分ですることである ・そして、内外の情況の変化の都度及び定期的に見直すことである ・しかし、現実的にはそこまでは無理なので、常識的な方法を考える (ここでは中規模の一般的企業を想定。各社で読み替え・修正) ・事務局原案から出発するのが一般的でもあり、効率的方法でもある ・ここでいう事務局とはリスクの「P−D−C−A」主管個所 ・本格的に取り組む企業では「リスク・マネージャー」を任命 ・一般的企業では総務課、安全課、防災課…等が事務局となる ・事務局は少なくともその企業ではリスクの「専門家」である ・その専門家が本を読み、 講演を聞いて作る案は90点である (中には一流企業の規程に上書きしただけの偽90点もある) ・その90点の原案を素人のラインに示せば「恐れ入りました」 ・その90点の原案を会議に上程すれば お偉方も肯いてくれる ・これで「一丁上がり」なら手間は省けて事務局の株は上がる ・しかしこの立派なマニュアルはラインの本棚の上で埃まみれ ・危機に役立たない「ホコリ高きマニュアル」の作り方である ・「見た目」よりも「危機実用度」を重視するならどうするか ・90点能力をあえて押さえて 「40点の原案」を作るのである ・注書きが必要な専門用語の使用はできるだけ避ける ・長文構成よりも、一事一文の短文。箇条書きは良策 ・手順や関係の複雑なものは図示。数値群は表にする ・周知のレイアウトでも配置図・見取り図…等を添付 ・重要事項は三者択一のための三案長短比較表を付記 ・社内常識を逸した個所を承知で入れておくのも一策 ・目につきやすい誤字・脱字をわざと入れるのも作戦 ・原案だからワープロ浄書でなく、下手な字の手書き ・文章は1行開けか、横に書き込み用のスペース設定 ・素人のラインが訂正・削除・追加し易いように作る ・現場手直しは事務局案を是正・充実化するために不可欠な手続きである ・「狙いはOO、原案は不完全、現場手直し歓迎」を頭書して配布 ・検討時間には「スタッフ時計」ではなく「ライン時計」で見込む ・各ラインは更に職場単位に下ろして原案の説明と検討の場を作る ・「もしOOになったら」「△△が××したら」がチェックワード ・「自分達が困ること」「自分達が分からないこと」がキーワード ・最高者決裁はいかなる企業でも、絶対に欠かせない手続きである ・「防災会議」「危機管理委員会」等での可決を経て稟議書決済 ・原案説明〜質疑・意見なし〜全員賛成で可決は心もとない ・喧々囂々、議論百出、原案修正で可決なら本番でも心強い ・最高決裁者が人事異動の度に事務局は説明し、踏襲を確認する 第4節 規程の要領 (徹底簡素化・図示図解化・見直し規程) ・規程制定に当たっては「分かりやすい」「守りやすい」に留意 ・出来上がりは職場配布または個人配布(手帳化)して周知徹底 ・徹底簡素化 は理解・遵守のために他の規程以上に重要といえる ・古来法三章(または法三条)が法令の理想の姿といわれる ・「あれもこれも守れ」は「どれもこれも守らず」に終わる ・先ず第一に「想定リスク」を思い切り絞り込むことである ・心配症のトップ陣からあれもこれもの注文が出されたなら →1リスク1〜3年の習熟計画→卒業→次のリスクに挑戦 ・規程事項も重要度の高いものに徹底的に集約するのがよい ・「OOなら××」「△△なら※※」の様な条件文は避ける →出来れば思い切って「すべて※※」一本に絞れるとよい ・心配症のトップ陣から他社はどうしてるかと聞かれたなら →危機管理の悪さで倒産の例はあるが良さで繁栄の例なし ・図示図解化は原案作成の項で述べた通り多用することを勧める ・近郊地図・社屋の間取り・工場配置図…の略図も極力掲載 ・本部組織図・作業手順流れ図・緊急連絡網…も欠かせない ・個別マニュアルでは設備配置図・人や物の動腺図…も是非 ・必要により「概要図」「普通図」「詳細図」と段階的表示 ・複雑な関係はブロック・ダイアグラム…等で図解説明する ・主要な人名・所在地・電話番号…等は纏めて表にしておく ・重要な人数・個数・面積…等の数値も纏めて表にしておく ・本文を簡潔にするために図表類は原則として付録に収める ・見直し規程は必ず本文中に盛り込んでおくべき重要条項である ・制定時は「よい規程ができた!」と興奮気味で改定を忘れがち ・規定改定の手続きだけではなく、時期をも明記することが大切 ・危機発生に関わる情況変化の情報を入手したときには見直し ・危機回避・被害軽減に関する情報を入手したときには見直し ・前2項に係わらず、一定年数経過後に全面的見直しをする 第5節 自社の場合 (自社規程の問題点を摘出・改善案) 実習 ・各自、自社の代表的な“危機管理関係規程”を予め用意してくる (複数ある場合は、なるべく他社と共通する規程が好ましい (規程の中の公開をはばかる固有名詞等は黒塗りしておく) (該当規程のない場合は大まかな大地震マニュアルを自作) ・各自、自社規程を読み、問題だと思われる個所に色マークをする ・膨大なボリューム、 難解な記述等で周知徹底が難しい ・「何のため」なのか規定の目的がよく分からない条項 ・制定時点から社会情勢等が変化してきて見直しの必要 ・最近の危機事例で役立たなかった規程と類似している ・もう少し詳しく規定すべき条項や簡略化できる条項等 ・別の方法がより適当と思われる条項や不必要な条項等 ・図示・図解・表示が必要なものや大活字が必要なもの ・各自、 問題個所について自分なりの規程改善案を傍に注記する ・各自、 改善案のうち重要で他社に共通性のあるもの一つを選定 ・各班、 順次自分の問題指摘と改善案を分かり易く口頭披露する ・リーダーの司会の下に、 自由に質問や討論を展開する ・「それは誤り」の反論よりも「こうしたら?」の別論 ・各班、全体検討用のテーマ一つを選び、班の改善案を纏め上げる 第6節 質問と助言 (他班の質問・全員で議論・講師の助言) ・他班の質問は大いに歓迎。質問の質量は発表案に比例する ・「もしも、OOが××したら?」と別の角度から質問する ・全員で議論を自由に展開する。絶対はないから気後れ不要 ・「OOの代りに××したら?」と新しい視点から提案する ・「我が社は△△ですが、いかが?」と別方面にも展開する ・講師の助言は一つの見解・手段で、絶対的な保証ではない 第4章 危機の心理学 (異状時心理) [実習と講義] ・危機の心理はその状況と各自の性格・体験とにより千差万別である ・しかし異常な恐れに支配されていて平常でないことに共通点がある ・いろいろな話を聞き、自分なりに考えておくと本番でかなり役立つ 第1節 体験談披露 (班内で披露・全員に披露・問題点摘出) ・班内で披露;各自、自分の危機体験を一つ班内に口頭で披露する ・その時、自分の感じたこと・考えたこと・やったこと ・その時、周りの人達は何といい、何を、どうしたのか ・その時、「すべきこと」「したいこと」「やれたこと」 ・班内披露の中で印象的で他班にも参考になりそうな話を一つ選ぶ ・全員に披露;各班の参考体験談を本人が状況と感想等を発表する ・危機の内容や被害の状況より心理状態に焦点を当てる ・他班の人達は「もし、自分ならどうだろうか」と聞く ・問題点摘出;講師が司会し、全員で発表事例の心理的要点を探る ・それは特殊な問題なのか、他の危機にも共通するのか ・人はそんな時、なぜそう感じ、そう行動するのか寸評 第2節 実例に学ぶ (阪神の神話・引戸で焼死・バルブ全開) ・危機管理はむろん、定常管理といえども 実例の丸覚えは無意味 ・同じ背景・状況で自社に再現する例などはないからである ・ただ、何故そうなった、なぜそうしたのか考えれば有意義 ・もしこうしたら、何が、どうなったか考えれば教材になる ・このような場合、絶対してはならぬことを考えれば役立つ ・日ごろの備えをどうするかを 考えれば自社にも参考になる ・阪神の神話;「阪神には地震は来ない」というあの迷信である ・阪神に大地震はないといった学者もマスコミもいない (むしろ、山崎断層とか断層の巣…として有名だった) ・奥尻の津波や八戸の震度6の報道で関西人も心配した ・阪神にも可能性。だが備えはない、きたら困る…の矛盾 ・仲間同士話し合う「阪神に地震来る?」「聞いてない」 ・嫌なことは考えたくない、一層ないほうがいいと願う ・いつか自分達に好都合な話を作り上げたのではないか ・引戸で焼死;筆者が実際に見聞した某製鉄所での労働災害である ・高炉の油圧室内で整備業者社員2名が機械の修理作業 ・ガス切断機の火花が機械に付着していた油かすに引火 ・手持の消火器では消しきれず、炎・黒煙が室内に充満 ・もはやこれまでと、入ってきた扉からの脱出を試みた ・それは頑丈な鉄扉で、明かり取りの小窓が付いていた ・二人は必死の力でその鉄扉を開けようと何度も試みた ・年配者がノブを回しつつ体で押し、若者が彼を押した ・肺まで煙に焦がされた二人は折り重なって死んでいた ・現場検証をしてみたら、その扉は内側への引戸だった ・平常時なら誰でも「押し手も駄目なら、引いてみな」 ・異常緊張で動転した脳ではそこまでの機転が利かない ・監督署の立入り調査では法規違反は指摘されなかった ・この尊い犠牲から我々は多くの教訓を学ぶことが可能 ・バルブ全開;これは某石油コンビナートでの油火災の話である ・巨大な石油タンクが林立する臨海製油所内での出来事 ・屋外タンクから油送管を経てローリー車に積み込み中 ・何かの原因でローリー車が火に包まれ、油が漏れ出た ・現場に居合わせた防火管理者は作業員にテキパキ指示 ・傍らにいたベテラン班長にタンク元弁の閉止を命じた ・その班長はむろん危険物取扱い主任者の資格の所有者 ・彼は動転はしていたものの命令どおりタンクに走った ・大急ぎで区画内の全タンクの元弁を閉め終わって報告 ・やがて収まるはずの火勢はますます盛んになり大火災 ・後で調べてみたら、区画内タンクの全元弁が開だった ・彼は単純なバルブの右回しと左回しとを間違ったのだ ・元弁は指名された者しか取扱わないことになっていた ・各班、以上の実例からどんな教訓を学び取れるか自由に話し合う ・机上に模造紙を広げ、図や絵を書きながら考えるとよい ・それは平常時ではなく、異状時に役立つ対策であること ・日常作業に支障となるものや法外なコストは極力避ける ・各班の“ベスト教訓”を全体の場で発表し自由討論する ・講師は各班の発表の良い点や別視点について講評をする 第3節 抑圧と虚脱 (矛盾の清算・刺激と反射・記憶と錯誤) ・実習を通して管見した“危機の心理学”を易しく整理する ・学理的・原理的知識を体験的感覚と結び付けて整理をする ・ここでの学習は危機管理のみでなく、定常管理でも使える ・矛盾の清算;「阪神の神話」の底辺に見られる教訓である ・自分は「阪神にも大地震がありえる」とは思っている ・また、地震対策が必要性なことはある程度知っている ・ところが自分はその地震対策を今までにやっていない ・今大地震がきたら大怪我をするかも、死ぬかもと不安 ・「知ってる自分」と「やってない自分」が相矛盾する ・対策をすれば解決するが、それは面倒だし金がかかる ・この問題を一番楽に解決するには考えないことが一番 ・ところが、奥尻・八戸と思い出させられる地震が多い ・これではおちおち一杯やってもいられないとまた悩む ・この心配は本当に必要か確かめようと思い仲間に聞く 「阪神に大地震がくるかなぁ」「さぁ聞いてない」 「彼は聞いていないって…君は?」「俺も知らん」 「みんな知らんって言うけど…」「来んと違う?」 ・同じ想いの仲間内で、いつしか都合のよい結論が出る 「阪神にゃ地震は来んらしいな」「そうかそうか」 ・好ましい情報はよく伝わり、その度に確信性が強まる ・いつしか「阪神には地震は来ない」神話が出来上がる ・来ないと信じていたから、本番での被害は大きかった ・危機意識を高めようとあまり脅すと 却って抑圧される ・恐いけれど、自分でも対応できると思わせることが肝心 ・刺激と反射;人間も所詮は動物。 当然動物的な反応をよくする ・恐いもの(刺激)に出会えば反射的に逃げたくなる ・反射は頭(大脳新皮質)での判断を経由しない行動 ・目の前に広がった炎と煙に反射的に反対方向に走る ・煙の中に窓の薄明りがあり、そちらが出口と思う ・逃げる道に邪魔物があれば押しのけて進もうとする ・ノブを回して押せば戸は開くはず(玄関の扉など) ・開かないのは力が足りないと思って、体でも押す ・相棒も尻押しをして協力;扉はますます開かない

・記憶と錯誤; ベテラン班長がなぜ簡単なことを間違えたか ・記憶はバラバラに脳神経細胞に焼き付けられていない ・関連する情報とネット・ワークを作りながらメモリー ・思い出すときも前後・周囲と照合してチェックをする (慎重・緊張している時はより十分なチェックをする) ・班長は燃え上がる火の手を見て、 強烈な恐怖を感じた ・元弁を早く閉めなければ飛んでもない事態に…と焦る ・恐怖のホルモン(慎重・緊張と同種)が脳に充満した (ホルモンにより早く結論を出せと大脳がせかされる) (開と閉を間違えては大変という記憶も拍車をかける) ・結局彼は最もやってはいけないことをやってしまった ・もし各元弁に標識がついていたら、 防げた確率は高い ・「左回り矢印と大きな文字の閉」 なら新人でも分かる (この場合「右矢印と開」の標識を併設してはならない) (タンクにとっての安全サイドは閉止の状態だから) (緊急時の命令は紛らわしくないことが絶対の条件) 第4節 混乱と錯誤 (脳の3階層・恐ホルモン・逃避的行動) ・危機に関する大脳生理学の基礎的知識を整理することも大切 ・大脳生理は心理と密接な関係にあるので、 結び付て整理する ・脳の3階層;「脳幹」「大脳辺縁系」「大脳新皮質」の3層 ・脳幹は脊髄の終端に発達したもので、 トカゲにもある脳 ・生きるための反射や内臓の機能調整をしている原始的脳 ・快・怒・恐のホルモンを分泌して全心・全体を調整する

・恐ホルモン;危機を感じると「アドレナリン」が分泌される ・脳用の大量の血液・酸素を逃げるために手足の筋肉に配分 ・胃腸も血液・酸素を減らされ、運動筋肉だけが能力アップ ・脳は回避・逃走を即断即行するために脳波の周波数アップ ・異常状況下の大脳は冷静な総合的思考や判断が出来ない

・逃避的行動;強敵との遭遇を回避及び強敵から遠ざかる行動 ・逃避は安全を求めるためでありながら、危険を伴う行動 ・逃げること一心になって、注意力が狭くなるからである ・悲鳴や逃げる行動がますます自他のパニックを増進する ・アドレナリンに駆られた脳波は異常に振動数が亢進する

第5節 受動と能動 (性格的問題・習慣的問題・状況的問題) ・同じパンチを受けるにしても、 前からと後ろからでは雲泥の差 ・同じ対策でも、 やらされるのとやるのでは月とスッポンの違い ・前向き意識と後ろ向き意識とでは得るものと失うものとに大差 ・小さなものならよいが、大きなものならば生死に関わる大問題 ・性格は誕生以来の反復学習により形成され・固定化されたもの ・控え目・慎重派…等の消極派も指示待ち・受動派になりやすい ・見栄っ張り・親分肌…の積極派も指図屋・能動派になりやすい ・習慣とは性格ほどには固定化していない反復学習の成果である ・企業風土・職場体質…によって集団的な習慣が形成されやすい ・消極的・受動的な集団的行動習慣が形成されると企業は危うい ・状況がその場の人の心を受動方向や能動方向に導く場合がある ・危機・異状時ではムードが伝染し、相乗効果で極端化しやすい ・受動性が強すぎると、危機場面で依存・逸機…で命を失うかも ・能動性が強すぎると、異常場面で専横・逸脱…で身を破るかも 第5章 リーダーの言動 (特異能力) [講義と実習] ・危機に役立つリーダーを日ごろ育成しておくことは事実上不可能 ・畳の上の水練も反復すれば立派なイメージ・トレーニングとなる ・一二度話を聞くだけでは効は少ないが、知らないよりマシである 第1節 異常状況下 (情報量不足・情報信憑性・判断力低下) ・危機管理での留意点は、平時において危機を考えていることである ・急激な危機にせよ、徐々に追いつめられたき気にせよそれは異常時 (大地震、テロ、経営破局…であれ異状時は平時と大きく違うのだ) ・情報量不足は ほとんどのケースに共通した最も厄介な問題である ・何がおきているのか、何が原因か、これからどうなるのか…の情報 ・必要な情報が、必要な人に、必要な時に、必要なだけ集められるか ・情報信憑性もときとしては 命取りになり兼ねない重要問題である ・手に入った情報のどれが信じられ、どれが信じられないか…不明 ・無関係情報、曖昧情報、陳腐化情報、錯覚情報、故意誤謬情報? ・判断力低下は恐怖・不安に囚われた人には 多かれ少なかれ生じる ・アドレナリンにより認知・想起・比較… 等が正常に働かなくなる ・早く逃れたい衝動から性急な選択や独善的な判断に走り易くなる 第2節 リーダー適性 (平時の宰相・戦時の将軍・大将と参謀) ・平時と違って、代役を立てられないのが危機でのリーダーである ・平時の宰相は広く意見を求め、冷静に・合理的に判断する民主型 ・企業の役員・管理者は正常なマネージメントで能力を発揮する人 ・人・物・金・情報…が揃わない異状時では能力が発揮出来にくい ・戦時の将軍は限られた戦力で、迅速に・勇敢に取り仕切る独裁型 ・古参の軍曹や出入りの多いやくざの親分にはかなりの素質がある ・異状時では見事な指揮を見せるが経験領域内の危機に限定される ・大将と参謀は異なった役割であり、求められる能力もまた異なる ・大将にはどんな難しい判断でも遅疑逡巡しない度胸が求められる ・参謀には如何に複雑な状況でも明快に分析する頭脳が求められる 第3節 非常時本部 (設置の基準・役割と権限・協議と命令) ・設置の基準は予め規程の中で具体的に定めておくべきものである ・設置の条件は特定者の判断によるのではなく、客観的条件とする ・本部員は極力少数に絞った上で正副を職制組織に従って指定する ・本部組織図、本部員招集方法、設営場所・必要機材…を整備する ・役割と権限については平常時ルールと非常時特別ルールとがある ・本部組織の役割と平時職能と対応するものは原則として合わせる ・非常時と平時職能とが違うものは非常時の負荷量を考慮して設計 ・最も重要なのは上位者に事故ある時の権限委譲の明確規程である ・協議と命令の混同は対策本部長の陥りやすい間違いの一つである ・専門職の部下に諮問はしてもよいが、協議決定をしてはならない ・本部長は危機に不馴れであっても、迷わずに命令せねばならない 第4節 命令の要諦 (1−1原理・口調と声量・復唱の効用) ・1−1原理は命令の基本;「一人一事」「一語一義」「一切一任」 ・一人一事;能力者であっても、一人の人には一度に一事のみを命令 ・一語一義;解釈に幅がある言葉は厳禁。疑義が生じない言葉を使う ・一切一任;一旦命令したら、原則として彼の裁量に一切を任せきる ・口調と声量は訓練のときから思い切って軍隊調を参考とするとよい ・軍隊口調は無駄がなく、紛れがなく、否応がなく非常時に適している ・軍隊口調と大音声は命令者に自信を、受命者に服従心を呼び起こす ・場が緊張し、規律ある団体行動が取れることで全体の安全性が増す ・復唱の効用は平時では想像できないほどに大きく重要なものである ・異常心理下では命令者も言葉を過ち、省いてしまうことがありえる ・受命者も聞き落とし、聞き違え、自分都合の解釈…をしがちである ・危機においての命令の不徹底や誤遂行はそのまま全体の死に繋がる 第5節 報告の集約 (一点的収束、二元的経路・三言的表現) ・一点的収束;緊急時の船頭は一人。全ての報告は一人の船頭に収束 ・全職場、出先からの危機に関する情報はたとえ圧縮されてでも伝達 ・細かなことを一々トップに報告しなくても…が命取りになることも ・トップは受領した大小種々の情報の時刻・内容を側近に記録させる ・二元的経路;情報伝達路がハード的・ソフト的に故障する恐れがある ・電話・ファックス・Eメール・無線…の連絡網の網羅図面で確認する ・本支店・取引先・地域行政機関…重要個所との情報バックアップ手段 ・最終的連絡手段としての徒歩・自転車(図面・懐中電灯等)…の備え ・三言的表現;平時の報告は5W2Hであるが、非常時では拙速を貴ぶ ・「どこで、何が、どうなった」これだけは欠かせない報告の基本項目 ・状況報告の基本型は「主語・目的語・述語」。省略されたら聞き返す ・報告受領者は「見たのか、聞いたのか、思ったのか」を聞き確認する 第6節 事例ゲーム (社長の判断・記者の行動・総理の反省) [実習] ・危機管理の推進には客観的冷静な分析と主観的哲学が共に求められる ・本を読み話しを聞くだけではなく、自分ならどうするかの思考が大切 ・この事例ゲームに正解はない。どうゆう理由からどう考えるかが狙い ・説明されていない諸条件は自分でかくかく、しかじかと設定してよい ・社長の判断;自分が社長になったつもりで、どれを選ぶか考える ・東京下町にある従業員が丁度100人の機械部品製作会社である ・社長は朝の書類整理を終え、何時ものように敷地内の工場を巡視 ・まずまずの受注で工場内には活気や半製品や屑が満ち溢れていた ・建物・機械・加熱炉・配管類…はかなり古くなったがまだ使える ・従業員はほとんどが中年以上で、女子作業員もかなり働いている ・ちょうど研磨工程職場に差し掛かった時、 突然大地震が発生した ・上下左右の激しい揺れに建物は軋み、什器類は倒れ、器物は舞う ・電気は止まり、蒸気は吹き出し、土煙が上がる中、辛うじて脱出 ・隣接するグラウンドに従業員達がほうほうのていで集まってきた ・興奮納まらない従業員を呼び集め、点呼を取ったら99人だった ・今日は欠勤者も外出者もない。一人不足だ。誰かまでは判らない ・ここで社長は次のどれかを決断する。 どれを選ぶか? 理由は? @ このような場合、じたばたするのは下策。じっと待つ A 全員に訳を話して、皆で手分けをして工場内を調べる B 自分は最高責任者。部下全員を残し自分が探索に赴く C 熟練の総務部長と製造課長に探索を命じ、そこで待つ D 不明者を残し、98人を引率して広域避難所に向かう ・記者の行動;1996年末のペルー日本大使公邸人質事件での実話 ・ペルー政府はフジモリ大統領をトップとした対策本部で対応した ・テロ集団のMRTAが立ち篭りをしてから長い膠着状態が続いた ・占拠された大使公邸の周りは武装警官に厳重に取り囲まれていた ・各国のマスコミ陣もトップ・ニュースを求めて十重二十重の包囲 ・公邸の招宴客約800人の人質は少しづつ開放され、数十人が残る ・そんな緊張の中、テレビ朝日系列の若い記者が単独乗り込み取材 ・取材を終えたところで記者は警官に連行され、取り調べを受けた (彼は引き上げる際に無線機を残してきたが、この件は問わない) ・この出来事について、政府内やマスコミ界で各種の論議がおきた ・自分がテレビ記者ならどう考え、どう行動しただろうかを考える @ 裏口から侵入しようとも、特種を取れば解決に役立つ A テロ側が招じ入れたもので、自分リスクの問題である B ペルー側の許諾なく公邸の中に入る行為は許されない ・総理の判断;1997年正月、日本海でロシアの油送船が難破した ・ナホトカ号(13、157トン)積載の燃料用重油は海上に漏洩 ・海上に漏洩した重油は次第に荒れる冬の日本海に広がっていった ・やがて重油は日本海各県の海岸に漂着し、漁業・観光に一大被害 ・各自治体・自衛隊・漁協・漁民やボランティヤーは油除去に大童 ・その疲労による死者も出て、総理は危機管理の甘さを反省・陳謝 1/2 八管本部が遭難信号を受信、乗員31人を救助 1/4 船首漂流、重油拡散。八管に海難・重油対策本部 1/6 八管が海上自衛隊に災害派遣を要請 1/7 船首三国町に、重油は福井・石川県に。福井県に対策本部 1/8 海上保安庁・海上自衛隊が油処理剤散布。ボランティア到着 1/9 重油は京都・兵庫・鳥取に。大型油回収船が若狭湾に到着 1/10 政府災害対策本部が初会議。福井県の原発が厳戒態勢 @ 内閣総理大臣として最も反省しなければならない点は A もし理想的な対応だったら、被害はどうなっていたか B 類似事故の再発を防止するためにはどうすればよいか C これが重油で済んだからまだ良かったと言えるか否か D 同様な事故が沿岸部以外で起きる可能性はあるか否か 第6章 職場への徹底 (全社的展開) [講義と実習] ・危機管理の成否は規程類の良さにあるのではなく、徹底の良さにある ・本番のとき社長は不在かも、部長は重傷かも…それでも社を守りたい ・パニックに陥った烏合の衆が最も危ない。日ごろの徹底がものを言う ・地震・火災…等職場・個人が直接関係する危機については絶対に必要 第1節 知識の教育 (基礎的知識・職場の問題・各自の役割) ・基礎的知識;全従業員に想定される危機について教えておく ・危機管理の専門用語を避けて、分かりやすい言葉で説明する ・職場の問題;職場の場合に引き直して危機の問題を説明する ・具体的に何がどうなり、どう発展するか現場において教える ・各自の役割;さらに各担当者ごとの役割を具体的に説明する ・各自の役割と職場仲間、全社仲間の安全との関係を説明する 第2節 意識の研修 (自ら考える・成功の想定・自慢と自信) ・自ら考える;教えてもらうだけでなく、自分で想像し考える ・熟練者・未熟練者が入り交じって自由討論することが効果的 ・成功の想定;マイナス・イメージは本番で失敗を呼びやすい ・「××になってもOOをして乗り切れる」と成功を焼付ける ・自慢と自信;各自に類似の成功体験を公表させ、自慢させる ・各自に危機乗り切り策を考えさせ、評価して自信を持たせる 第3節 技能の訓練 (前向き訓練・実際に体験・反復繰返し) ・前向き訓練;避難訓練は逃げ意識・消極姿勢を植え付け易い ・消火・救急・通報…訓練は攻め意識・積極姿勢を植え付け易い ・実際に体験;基本は実技をとおして体に刻み込むものである ・現場・現物で出来なくても、模型・図上・想像トレーニング ・反復繰返し;同一刺激の反復で小脳・脳幹に記憶を固定する ・本番で頭が乱れても、脳の奥に染みついたものは乱れがない 第4節 巻込み政策 (改善案募集・小集団活動・顕彰と競争) ・改善案募集;自分で考え、制作することで関心を深めさせる ・標語・作文…等を内容水準によらず採用・掲示して喜ばせる ・小集団活動;安全テーマなどの一環として取り込むと面白い ・レベルはともかく、自主・自発・自律的姿勢が何よりも大切 ・顕彰と競争;職場・個人単位で考えさせ・挑戦させる仕組み ・良い点は少しでも評価〜全体紹介して、競争意識を起させる 第5節 イメージング (各自、職場における震度5の突発型地震を想定) 第6節 私がやること (各自、その日ための備える第一着手点を考える) 第7節 まとめの講義 (自分と家族の命を守れる人が企業の命を守れる) ・リスクを想定する、リスクの準備する、リスクに対処する ・リスクを回避する、ダメージを減らす、ロス分を補償する ・自分で判断し、自分で実行し、自分で責任を取るのがRM

   ・たった一つの命、たった一回の人生を運や運命に任せられるか?    ・自分なりの努力で生き残りの確率を少しでも高めようとするか?     ・危機管理は義務ではなく権利である。人生や企業の価値に比例!

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