始めに…地震防災についての考え方
・ 大地震が発生するといろいろなものが壊れ、失われます。家も物も命も…損なわれます。
・ 地震の発生とその防災対策についての『絶対』の保証付きの理論や技術は存在しません。
・ ただ、相対的・確率論的な見方・考え方があるだけです。それらはあくまでも参考です。
・ 自分で考える上での参考情報ならありますが、そのまま使えるマニュアルはありません。
・ 時間とお金とエネルギーを使って何処まで防衛するかは、失う価値と確率で決まります。
・ 失っても惜しくないものに防災対策をするのは無駄ですが、命は掛け替えがありません。
・ 失いたくないもの、何物にも代え難いもののためには、防災対策はそれなりに有効です。
・ これは読者が大地震で「失う可能性のある命の値段」の大雑把なシミュレーションです。
・ その予想損失額と防災対策必要額とを比べてみれば、対策するかしないかが決まります。
T あなたの命の値段は?
・ 今後「30年間の命の値段」を決めてください。このシミュレーションの「元金」です。
・ 例えば10億円以上、約1億円ぐらい、約1千万円ぐらい…と大雑把な金額で結構です。
(自分は30年は生きないと思う人は、その分の金額を割り引いておいてください)
・「値段は付けられない」「値段は無限大」という人も保険金の感じで値決めしてください。
・ 企業で試算する場合は、社員一律に一人当たりいくらと事務的に決めることになります。
U あなたの生命負傷率は?
・ 損失率を次のように決めておきます。(%は各ステップの設問により決めてください)
[ 生命負傷率 ]
・死亡…… 100%/回 (地震という異常事態下での蘇生期待率はゼロ)
・重傷…… 20〜40%/回 (救急車・病院が期待できない状態での致死率)
・中傷…… 5〜15%/回 (出血止まらず、化膿悪化の可能性、避難困難)
・軽傷…… 1〜 5%/回 (余震等で必要な機敏行動が出来なくなる不利)
・ 各シミュレーション・ステップでの負傷率を順次累計して、最終の損失額を計算します。
・ 軽傷×3回=中傷、中傷×3回=重傷、重傷×3回=死亡 ……とみなすことにします。
(例) 大地震に逢う確率が10%で、死亡危険1回、重傷危険1回は…10%×(100%+30%)=13%
(例) 大地震に逢う確率が20%で、重傷危険2回、中傷危険1回は…20%×(30%×2+10%)=14%
(例) 大地震に逢う確率が90%で、中傷危険1回、軽傷危険2回は…90%×(10%+5%×2)=18%
(例) 命の値段が100,000,000円で、累積負傷確率が13%ならば、30年間での損失額は13,000,000円
(例) 命の値段が 10,000,000円で、累積負傷確率が13%ならば、 30年間での損失額は 1,300,000円
・ 自分と家族の合計損失額とそれを防止する対策費用総額が見合うかどうかで判断します。
V あなたの震災致死率の考え方
・ 地震での危険を一次と二次における「襲来する危険」と「対応による危険」と考えます。
・震災危険=本震中の約1分間の危険+本震後の数時間中の危険
(一次襲来危険+一次対応危険) (二次襲来危険+二次対応危険)
・一次・二次の襲来危険には「圧壊型」「転倒型」「その他」があります。
・「圧壊型」建物の全部または一部が圧壊して押しつぶされます。
・「転倒型」は器物が落下・転倒・移動したり、人が転倒をします。
・「その他」は火災・ガス中毒・暴走車・津波等による被害です。
・一次・二次の対応危険には「プラス型」と「マイナス型」があります。
・「プラス型」は危険行動で、そうすることで危険率が増えます。
・「マイナス型」は安全行動、そうすることで危険率が減ります。
・ 地震で失う命の額を「どんな危険で、どれくらい脅かされるか…の総合計」と考えます。
・合計生命損失額は各生活状況(何処で、何をしている時)別の合計と考えます。
・同じ地震でも生活状況によって被害は違います。
・何時、何処で地震に遭遇するか予知できません。
・生活状況は毎日異なるものの大きく違いません。
・就寝・団欒・執務・遊興・買物・歩行・運転…等です。
・生活状況をパターン化して、確率的に考えます。
・状況別損失額=生命価格×地震発生率×危険発生率×生命負傷率×震災割増率
・生命価格…………個人ごとに違います。(前述)
・地震発生率………地方ごとに違います。(後述)
・危険発生率………状況ごとに違います。(後述)
・生命負傷率………襲来と対応の和です。(後述)
・震災割増率………状況ごとに違います。(後述)
・ある状況の下では「誰が、どうしても避けられない死亡災害」が起こり得ます。
・ある状況の下では「誰が、どうしても避けられるような災害」も起こり得ます。
・「時間比率の大きい生活状況」で「高い生命損失率」 があっては救われません。
・「大地震で絶対に死なない方法」 は巨万の富を持つ富豪家にも叶わない夢です。
・しかし、「大地震で死ぬ確率を合理的に減らす方法」 は普通の人にもできます。
・全部の状況で安全化を図ることはできませんが、主なものにはできるでしょう。
・「100%確率」は得られないものの「やればやっただけの期待確率」はあります。
・就寝・団欒・執務時間中の「1次襲来危険と1次対応危険」を減らすのが有効です。
・同じ安全策でも業者に頼んで見栄え良くしてもらうより、自分ですることです。
・「逃げても逃げ切れない敵」には「自分から向かって行く」 方が上策でしょう。
W あなたの大地震遭遇確率は?
・ 地震にはトラフ接合部での「海溝型」と陸地活断層による「直下型」と「火山型」があります。
・ 4枚のトラフがひしめき合い、約2千の活断層が走る日本に地震安全地帯はありません。
・ 日本に住む以上、一生のうちに一度以上は震度5以上の地震に出会うと覚悟しましょう。
・ 「震度5弱」以下では殆ど被害は出ませんが「震度5強以上」ではかなり被害が出ます。
・ 政府の地震調査委員会や保険会社等が示す「30年間の地震発生確率」で調べてください。
・ 生命に大きな打撃・被害を与える可能性の大きい地震となると「震度6以上」でしょう。
[ 日本列島 プレート図 ]
(1年に1回、100Km以内にM5以上の地震の確率は30%、M6は6%)
(日本の何処かでM7以上の直下型地震10年に1回の確率。海溝型地震は別)
(日本国土は地球表面積の1%未満、人口は人類の1%余り、地震は世界の約10%)

・ 対象大地震を「震度6以上」とします。(阪神大地震・鳥取地震・芸予地震…)
・「震度6のイメージ」は次の通りです。自宅や職場について想像してください。
・大揺れ・大音響・物が壊れる・器物が飛ぶ・停電・阿鼻叫喚・狼狽…
・歩けない・立っているには物に掴まる必要がある・階段は波を打つ…
・家具・什器は落下・転倒・逸走。窓硝子は破損飛散。ドア開閉不能…
・天井材・壁材の崩落・吊り照明具の落下・柱や内外壁に亀裂・傾斜…
・条件の悪いものを中心にして建物の3割ぐらいが座屈・崩壊・転倒…
・看板・瓦・外壁材・窓硝子等が落下・飛散・電柱転倒・電線縄跳び…
・各地で山崩れ・崖崩れや地割れ・陥没が起きる・高架橋波打ち落下…
・低湿地や海岸付近では液状化現象で水を吹いたり、お汁粉状になる…
・インターネットで調べれば、各地域の地震発生確率がかなり詳細にに分ります。
(県庁や市役所に行って調べても良いでしょう。より詳しい情報が得られます)
(例えば宮城県沖地震の発生確率は98%です。仙台では100%と考えましょう)
(東海地震にはリーチが掛かっている、それに南海地震が連動する…との説も)
・「命の値段」に「遭遇率」を掛けてください。「第1次の覚悟金額」の算定です。
(例えば「1億円」×「30%」=「3千万円」。これに次々%を掛けていきます)
X いつ、何処で、何をしている時に遭遇? ……状況の標準化……
・あなたの日ごろ24時間の行動構成から、地震に遭遇する状況を決めてください。
a 自宅で就寝中 (1日の約 %)
b 会社で仕事中 (1日の約 %)
c 自動車運転中 (1日の約 %)
d 通勤電車の中 (1日の約 %)
e 路上を歩行中 (1日の約 %)
f 店舗で買い物 (1日の約 %)
g 自宅の居間等 (1日の約 %)
h その他の場所 (1日の約 %)
上位3項目に記入してください。(少なくとも合計で50%以上)
ウイーク・デー の24時間と 土曜・日曜・休日 の24時間 の平均で何%づつ?
・ 上位3項目について、以下各ステップの危険率算定をし、『加重平均』をしてください。
・ それ以外にも大地震であなたの命を失う可能性はありますが、ここでは計算外とします。
・ 家族や職場の仲間について算定する場合は、それぞれの人毎にシミュレーションします。

Y 危険率の算定法
・ 生命負傷率の計算は次の一次襲来危険と一次対応危険の合計とします。 (二次は省略)
[ 対象 ]
一次襲来危険…数十秒の本震の間に周辺の器物等から受ける不可避の打撃・被害
一次対応危険…数十秒の本震の間に本人が選択する行動に大きく相関する危険性
[ 除外 ]
二次襲来危険…余震・津波・火災・ガス中毒などによる半不可避的な打撃・被害
二次対応危険…本震後の避難・救護・防火等の本人行動に大きく相関する危険性
(1)一次襲来危険…大地震被害の典型である「破壊と圧死」が中心となる恐ろしいものです。
・その他、重量物の落下・転倒などによる「重傷」「中傷」 件数も多くなります。
・文明の発達に伴って多様化・重篤化する被害で、地域特性が色濃く出てきます。
・原子力発電所・化学コンビナート・薬品工場と田園・山間部とでは大違いです。
・「地盤状況」「建物状況」「危険物質」 の組み合わせで、その危険性は変ります。
・その殆どは事前の「ハード対策」でかなり軽減できますが、費用が掛かります。
(2)一次対応危険…幾ら大きな地震でも本震の揺れは長くても数十秒以内といわれています。
・この間に「なすべきこと」を行ない、 「なさざるべきこと」をしないことです。
・過去の負傷災害の多くが、この「第一次対応」の仕方のまずさで決っています。
・大揺れ・大音響・器物の転倒飛来・阿鼻叫喚・右往左往…の中でどうしますか。
・「これは絶対安全」「それは絶対危険」と決め付けられませんが確率はあります。
・「何をどうするか」の「ソフト対策」には、反復訓練と自己暗示が大変有功です。
(3)二次襲来危険…余震は大きくても本震の1割以下ですが、痛んでいる建物には利きます。
・震源地が海底にある場合は、津波を起こす恐れがあり、殆どが押し流されます。
・火災は地震被害の増幅材で火元・発火・可燃物・初期消火で大きさが決ります。
・ガスは末端器具・配管・貯蔵タンク・車両から漏れ、中毒や爆発を起こします。
・事前の「ハード対策」とその時の「ソフト対策」が有効ですが問題もあります。
・前者には費用が掛かり、後者には異常な心理状態下というハンディがあります。
(4)二次対応危険…本震で助かってもまだその後に続く数時間の試練を受けねばなりません。
・平時は大怪我〜救急車〜病院〜回復…ですが、救急車も病院も期待できません。
・自分や家族について、有り合わせの物を使っての当座の救急がものをいいます。
・余震倒壊の恐れがあり出口が開閉不能の場合の脱出方法も重要な鍵となります。
・自宅や近所からの出火に即座に有効な対応が出来るかどうかは重要な問題です。
・戸外に逃げて、陥没地で転倒したり、暴走車や雑踏に襲われるかもしれません。
* 二次襲来危険・二次対応危険を生命負傷率計算から除外したのは複雑すぎるからです。