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なんだか、秋ですね〜。昼間はまだ暑いですけど、夜になったら風も涼しいし、虫の声も聞こえてきました。秋になると、「あぁ、秋ってどうしてこんなに素敵なんだろう。と木々の葉が色づくのと同じように、女の子の口紅も色めいてくるし、何てったって夕方の空の色が1年の中で一番美しい時期。それから、なによりも大切な食べ物が美味しい季節だって言うのが素敵。魚も野菜も果物も茸も、秋が一番だよねぇ」なんて思ってしまいます。……あぁっ、そういえば、PS2の『ぼくのなつやすみ・2』をやる前に、夏が行ってしまう。仕方ない……。来年やりますよ。 確か、ちょうど今頃のことだったと思います。私の、最高のドライヴ・ランキングのトップ20に入るドライヴのことを、ふと思い出しました。 その頃の私は、私の美しい女友達Tの恋人O、その女友達のおねえ様Kと共に、湘南界隈に入り浸っていました。特に良く行ったのは、葉山マリーナ近くにある、湘南で最も夜景が美しいレストラン、ラ・マーレ・ド・チャヤ。友達に連絡が付かない場合、ラ・マーレに行き、行けば誰か居るという感じでしたね。そして、テラスに陣取っては、長い長い食事、もしくはお茶をダラダラと下らないお喋りしながら、夏の夜を(夏だけじゃなかったですけど)楽しむのが最高に楽しかったのでした。もう5年くらい行ってないけど、夏になると、ふと行きたくなる店です。料理も結構美味しいし、とにかく昼も夜も店から眺める海辺の景色が素敵。 その夜もなんて事のない夜でした。友達と集まって、ラ・マーレでダラダラとしてから、Kの家に行きました。料理の全く出来ないKに不似合いな大きなカウンターキッチンの上で、大きなガラスのティーポットの中でゆっくりと踊るアールグレイを眺めながら話していると、何故か私が気になっている男の人に、たった今電話を掛け、デートに誘うという成り行きになっていました。その時、私はとっくに成人でしたけど、男の人をデートに誘うなんて事はしたことがなかったので、もう、それはそれは、緊張して緊張して緊張して、口から心臓が出るかと思いましたけど、確かに私も会いたいなと思っていたので、電話を掛けることにしました。 何回かの呼び出し音の後に、留守番電話のメッセージが流れました。喉元まで来ていた心臓が、胸まで下りていきました。「また、電話します」と、メッセージを入れて電話を切ると、私以上にKがソワソワしているようでした。「江ノ島にさぁ、新しいゲームセンターが出来たのよ。そこに占いのゲーム機があるから、やりにいこうか」。用事のあるTとOを見送った後、Kはそう言いました。「ゲームセンターに行って、帰ってきたら、もう一回電話をかけてみなよ」そう言って、小走りに車に乗り込みました。 夏真っ盛りの、江ノ島海岸道路は、もの凄い大渋滞でした。海沿いの直線に、車の赤いテールランプが見える限りずっと遠くまで続いていました。カー・ラジオからは、お決まりのサザンが流れてきて、ふたりして「あははは。ベタだなぁ」と笑い合いながらも、全く別のことを考えていました。小柄で可愛らしい雰囲気のK越しに見る海は、夜の癖にやたらと明るくて、波打ち際が鱗のように光っていました。窓を開けると、沢山の雑音が海風と一緒に車内に入ってきて、なんだか気が紛れてゆきました。Kのぶっきらぼうな優しさは、まるで自分を見ているようでした。自分と自分と海。動かない車がずっとずっと並んでいる海岸道路。車の中の私は胎内にいるように落ち着いていましたが、この車から降りた時のことを考える時だけ、少しドキドキしていました。 1時間半しても、2〜3キロ位しか進めず、苦笑いしながら私たちはKの自宅へ引き返すことにしました。で、確かこの後、私はさっき電話した男の人に、電話をかけたんだと思いますけど……、電話が通じたのか、そうじゃなかったのか思い出せません。サザンのことは覚えていても、肝心のことは覚えてないなんて不思議ですね。ともかく、結果的に言うとデートはしました。が……(お察し下さい)。 海が見えるって事で思い出すドライヴの中に、その当時は楽しかったとは思えなかった気がしますが、今思い出すと、なかなか良いドライヴだったんじゃないかと言うものがあります。私が、Iさんの助手をしていた時、仕事で行った、伊豆七島の新島でのことです。 山の天気は変わりやすいというのは、島と言えども同じ事です。低気圧の近づいていたある夏の日、向山展望台での撮影は、困難を極めていました。海から吹き上がる熱く湿った空気が、山の上で蜷局を巻き、10分ごとに晴れたり曇ったりを繰り返していました。柴犬2匹も代わる代わるに頑張ったし、Iさんも粘って色々撮影しましたが、海に浮かぶ雲が良い形じゃないと言うことで、秋に雲だけを撮影しに二人で新島に行きました。 道があるんだか無いんだか分からない、茶色の岩のような所を、パワステもない軽自動車の暴れるハンドルを押さえ込むように走り上がると、展望台は分厚い雲の中でした。 「あちゃー。雲ですよ、Iさん」 「1カットなのになぁ。……ま、準備して待つしかねぇな」 カメラをセットして、かぶり布をかけても、状況は殆ど変わりません。時々、1m位の雲の切れ間が通り過ぎる時だけ、真っ青で眩しい海の照り返しが見えるのです。まるで、所々に穴の開いている、大きな大きなグルグル回る白い箱の中に入れられているみたいなのです。 「天気、全然、変わらないですねぇ……」 「昼寝でもして待つべ。じゃ、背中にサンオイル塗ってくれよ」 ロケの時、サンオイルを塗って仕事をする先輩や、ヘアメイクやスタイリストが、私の周りには何人か居ましたが、たぶん、一般的には皆無に近いんじゃないかな、と最近思います。どうなんでしょう。美白ブームとかありますしね。Iさんは今でも、仕事中にサンオイルを塗ってるんでしょうか? 来週末あるパーティできっと会えますから、楽しみにしたいと思います。 「しかし、お前のその暑苦しい格好どうにかならねぇのかよ」 「今日は、文句言うクライアントもいないんですから、着させておいてくださいよー。私の場合、日焼けすると後が辛いんですから。それに、ここの太陽は、直接あたるだけで痛いんです」 「夏は、日焼けが一番に決まってるのに! 嫌な皮膚だよなぁ、お前のは」 海パン1丁の真っ黒なIさんと、長袖長ズボンに深く帽子を被り、サングラスとタオルを巻いた私は、ラジオの入らない軽バンの中で、何を話すでもなく横になり、薄目で空を見ていました。風のながれる方向は一方で、向かって右から左でした。15m以上の雲の切れ間がやって来ないか、右の方をただただじーっと見ているだけでした。Iさんとドライヴに行った日は、楽に200日を越えるでしょうけど、妙によく覚えているのはこれです。全然喋らなかった上に、車にエンジンも掛かっていません。窓の外の風景は、飛ぶように変わってはいましたけど。 最近Iさんが、「あんなにずっと二人きりで居たのに、どうして俺と康乃は何もなかったのかなぁ」と、言っていましたが、それを聞いた私はすぐに、「えっ! じゃぁ、今の助手の女の子とは、何かあるんですね!」と、下世話にも思いましたが、否、言いたいことはそうじゃなかったんでしょう(そうかも知れませんけど)。自分ではよく分かりませんが、たぶん、私が高校3年生の時、予備校のT先生につけられたあだ名に関係があることだと思います。T先生が私に付けたあだ名、それは『日本一、男を萎えさせる女』です。うーん。全く持って酷いあだ名だよなぁ(苦笑)。 ちょっと思い出ししました、教室でのT先生(ちなみに既婚者)との会話。 「お前の下ネタ話の切り返し方って、看護婦みたいで盛り上がんねぇんだよ」 「盛り上がる積もりなんて、全然ありませんけど」 「なんつーか、会話を楽しむって言うかさ〜」 「だって、話がちっとも楽しくないんですもん」 「ちょっとは、俺のインポ治療に協力してくれてもさー」 「なんでですかぁー。もう。今はデッサンの時間ですよ」 「(教室から、他の人が出ていこうとする)あっ、ちょっと、俺とコイツを二人っきりにしないでくれよー。犯しちゃうよー」 「はぁ?(自分のことをインポだと言ったり、私を萎えさせる女だとか言いながら何だ?)」 あ、予備校でこんな話ばっかりしていた訳じゃないですし、T先生がいつでも下ネタを話していたわけでもありません。いやでも、けっこうしてたかなぁ。 話をドライヴに戻します。最後はタクシーの話。私の親がちょっとした近所でも自家用車で移動する人達だったと言うこともあり、タクシーには今も滅多に乗ることはありません。働くようになって、仕事で乗るタクシーは、大抵面白くないことが起きるので、今回のテーマ“最高の”の方に入っているのはありませんね。つまり、この後書くのは高校時代に乗ったタクシーの話です。 その日は、同級生のTちゃんと、祐天寺にあった従姉の家でバイトをしていたのですが、確かTVの取材が来たりしたので、バタバタして仕事が進まず、終電を逃してしまったのでした。従姉というのは、漫画家の中尊寺ゆつこのことで、バイトというのは、墨を塗ったり、スクリントーンを貼ったりする作業です。その頃、彼女は雑誌SPA!で連載をしていたので、そこには扶桑社のUさん他、数名が残っていました。 Uさんが、「今日は仕方ないよね〜。じゃ、ふたりに、タクシー券をあげよう」と言って、鞄から薄っぺらい紙を一枚くれました。中尊寺は、「ここから横浜までどのくらいかなぁ。ま、10万円はかからないよね」と、私以上の丼勘定ぶりを発揮した台詞を言い、タクシー券の使い方を教えてくれました。私は、初めて使うタクシー券(その後も使ったことがないです)に、やたらとワクワクして、口には出しませんでしたが、「そっかー。この券で、10万円分タクシーが乗りまくれるんだ! 凄い。凄いぞ、タクシー券!」と思いました。 やがてやってきたタクシーに二人で乗り込み、先ずは「桜木町まで」と言いました。何処をどうやって通ったか、全く思い出せませんが、Tちゃんと私は、夜のドライヴにすっかり酔いしれていました。「あー。もうすぐ着いてしまうー」。小さな声でTちゃんが呟きました。「ね。マリンタワーを回って貰おうよ」。Uさん、良いよねぇ。えへへへ。なんて思いながら、タクシーの運ちゃんにお願いをして、まだ殆ど空き地だったみなとみらい前を横切り、少し遠回りをして貰いました。Tちゃんの家の前に着き、「じゃ、またね」と言うと、とんでもなく眠くなってしまいました。時計を見るともう2時で、次に目を開けた時は、自分の家のすぐ近くでした。 男の子とのロマンチックなドライヴの話はないの?という感じですが、確かに……、ないですね。あっ、あれは……、そうでもないか。ま、その辺は、これからって事で。 2002年8月23日 |