医療過誤の法律相談
こういう心配のある方は、法律相談を申し込んでください
- 医療過誤にあったのではないか不安だ
- 医療過誤を医者が認めているが、どうしたらいいか分からない
- 出産事故ではないか。子供のために何かしてやれないか
通常の法律相談料は、30分当たり5,000円(+消費税)です。しかし、初回の法律相談に限り、相談料を、5,000円(時間制限はありませんが、普通は1時間位で終わります。消費税含む)としています。医療過誤に関する相談でも同じです。なお、相談のときは、お手元の資料をお持ちください。なお、もちろん、これ以外の場合も相談を受け付けています。
目 次
医療過誤にあったときに注意すること
医療事故の記録を残す
医療過誤があったのではないかと思うときは記録を残すことが重要です。治療の経過や関係者の言葉などを記憶が鮮明なうちに、手書きのメモでいいから記録しておきます。日にち、時刻、治療行為、薬剤(注射・点滴)、医師・看護師の言葉など、分かる範囲内で記録しておきます。写真やビデオ撮影もいいのですが、見るからに怪しいので警戒される危険もあります。
ただし、こういう措置はあくまでも医療過誤が発生してしまった後の事後的なものです。今も治療中である場合には、できるだけ病院側と緊張関係になることは避けましょう。信頼関係がなければ適切な治療を受けにくくなります。それが困難であれば転院も考えましょう。最も大切な事は病気や怪我が良くなることであって、後で病院や医師を訴えることではありません。簡単に患者の側から患者と医師(病院)との信頼関係を破壊してしまうのはいい方法とはいえないでしょう。 しかし、どうしても信頼できないなら、転院を考えましょう。
弁護士に相談する
医療過誤を疑った場合は、早期に医療過誤を扱う弁護士に相談すべきです。信頼できる医師に相談できるならそれもいい方法です。
医療過誤で注意が必要な点
医療過誤が難しい点の一つは、ほとんど全ての資料(証拠)が相手方(医師・病院)の手中にあることです。そのため、医療機関が医療事故を隠すために診療録等の記録に意図的に手を加えた例が過去に複数存在します。また、医療機関側にも、問題がある事例の場合は、「記録の整理」(?)というものをするように指導しているところがあるようです。
もし医療記録が改ざんれてしまうと、患者にとっては医療過誤の立証が不可能となることが考えられます。そのために「証拠保全」という制度があるのですが、「証拠保全」より前に記録が改竄されてしまうと意味がなくなります。そこで、医療機関に対し「医療過誤ではないか?」という問いかけをすることには慎重である必要があります。
資料の中で、カルテ(診療録)、看護記録などは改ざんが容易ですが、X線写真などの写真類や検査記録などは改ざんが難しくなります。そういう資料の質も問題です。
最近は電子カルテが増えてきました。面倒なので医師には不人気の様です。
医療過誤の事件はどう進むのですか
医療過誤の法律相談
当事者から事実経過を詳しく聞き、お手持ちの資料を検討します。相談だけで医療過誤の可能性の有無が判断できる場合もありますし、少なくとも、次にどうすべきかをアドバイスします。
医療記録の証拠保全
証拠隠滅の危険性が高い場合には、裁判所に対し、「証拠保全」を申し立てます。証拠保全とは、医療記録の改竄を防ぐために、裁判所の手続きで、予告無しに医療機関に出向き(厳密には2~3時間前に通知するので、絶対に改竄不可能というわけでもありません)、診療録、看護記録、検査結果、写真等あらゆる医療記録を保全し記録することができる制度です。これは費用がかかります。現在は、大きな病院では医療記録の開示制度が相当整備されてきていますので、証拠隠滅の危険が少ないときはそれを利用することもあります。 電子カルテは、改訂記録が残るようにされています。
医療記録について医師の意見を聞く
証拠保全などで集めた医療記録を、中立的な立場にあり、かつ、専門家である医師に見てもらい意見を聞きます。過失の有無、証拠の存在、因果関係、立証可能性、提訴の可能性などを慎重に検討する重要な場面です。
私は、この段階を慎重に行うことが医療過誤の流れの中では一番重要だと考えています。医師の話を全く聞くこと無しにこの先に進むことはしていません。もし、過失や因果関係の立証が困難な事件を提訴してしまうと、依頼者にも相手方病院や医師にも迷惑をかけてしまいます。この点は相当慎重に検討しています。ここと次の部分を特に重視しているのが、私の進め方の特徴です。この段階で十分な検討をしておくと、裁判を避けられることもあります。
医療機関と交渉
医療機関に過失ありと判断される場合は、まず、医療機関側と話し合いを行います。この手紙の書き方も重要です。この段階ではあまり過失を決めつけず慎重に進めます。こういうところを雑にやると、事件がこじれる元になります。
ただ、最近は、証拠上、過失が明白なのに、何がなんでも争う医療機関と、そうでない良心的な医療機関と二分されてきた気がします。何でも争う医療機関は、その医療機関の名前を出して、証拠写真も公開して、経過をインターネットで報告した方がいいかもしれません。今扱っているケースも、あまりにも悪質なので名前を出したいところです。二つありますが、どちらも、明白な写真を読み落とししています。そういうところで、争うから悪質です。見落としが明らかなのだから、パッと認めて、謝っていたら、こんな問題にはならないのに、悪質な医者はいるのです。
私は、医療過誤でも、基本的に話し合いによる解決を目指しています。裁判はできるだけしないで済むように、早い段階でできる限りの準備をします。裁判は民事紛争解決の最後の手段です。
裁判所に訴訟提起
医療機関に過失があり、立証可能で、さらに勝訴の可能性が十分見込めると判断された場合は、訴訟提起を検討します。
医療療過誤の難しい点
医学的知識の必要性
医療過誤を理解するには、医学という極めて専門的な分野における知識が必要です。それも医学の一般的な知識で対応できるものから、薬学の知識が必要なもの、場合によっては医学の特定の分野における専門的知識が必要な場合もあります。
弁護士は医師のような医学的専門知識はありませんから、事件ごとに医学書を買い、論文を検索し、医師の助言を得て事件を処理します。医学は幅広い知識を要するので、医学の素人がどんなに勉強しても限界があり医師の助言が不可欠です。
患者側の弁護士がこの点で苦労するのと比較して、医療機関側の弁護士は常に医療機関の医師から医学的知識に関する援助を得られるので非常に楽です。医療機関は当事者ですから、必ず医療機関に有利になる論文を探してきます。この力の差を跳ね返すのは、協力医の存在と弁護士の熱意、そして証拠に裏打ちされた「事実」です。
医療過誤は訴訟になると、医療機関側が専門的知識をフルに活用して特殊な医学的議論に持ち込もうとすることもよくあります。「医師の裁量」「仕方なかった」と主張することも多いです。
患者側協力医の確保が難しい
医療記録を見て公平な医学的意見を教えてくれる医師を見つけることが難しく、さらに訴訟において意見書等を発表してくれる医師はなお探すのが困難です。
その理由は、医学界の閉鎖的体質、医師仲間をかばう傾向、公平とか正義という観念に対する意識の低さなどが影響していると思います。医師は同じ出身大学の先輩・後輩を批判することはあまりしません。また、たとえ大学は違っていても同じ学会に所属していると、交流がある場合もあります。さらに、それまでに勤務してきた病院で同僚だったとか、上司が共通だとか、色々な接点がありうるので、公平な立場にある医師を探すのは率直に言って難しいことです。
医療過誤と立証責任
民事訴訟では、原告が請求の元となる事実について立証責任を負います。たとえば、医師の過失、被害者の損害、過失から損害が生じたという因果関係、その全てについて立証責任を負います。そこで、医師の診療行為には適切と言い難い面があるけれども、それによって損害が生じたと言いにくい場合も発生します。たとえば、検査で進行癌を見逃し治療機会を失したけれども、たとえ適切な治療を受けていたとしても延命可能性が乏しいという場合です。癌を見逃されたことに対する患者本人あるいは家族の方々の怒りは大きいのですが、訴訟的に考えると立証が難しく、結局、比較的低額の解決金で終わることが多いようです。
医療過誤の裁判手続きはどうなりますか
手続き
医療過誤訴訟といっても民事訴訟の一つですから、原則としては通常の民事訴訟と同じです。したがって、まず、① 訴状提出 ② 争点整理手続き ③ 立証(書証提出、証人尋問等) ④ 和解手続き ⑤ 結審 ⑥ 判決 という経過が一般的です。
ただ、いくつかの特殊性があります。
1 弁論準備手続きで主張の整理、立証計画等について入念な準備を行う場合が増えている。
2 立証の中で、鑑定を実施する場合が比較的多い。その他の事件と比べてという意味ですが。
3 当の医師が証人となり証言する。病院を訴えても医師を訴えない場合も多く、その場合は、医師は当事者的立場にありながら本来は客観的な立場にあるはずの「証人」となります。
4 保険会社・医師会の意向が裁判、和解に大きく反映される。
医師、病院の多くは医師会に所属し、医師賠償責任保険に加入していますので、その保険会社そして医師会の意見が大きく影響してきます。
医療過誤裁判にかかる時間
東京地裁での医療集中部では、一年強で解決することを目標にし、実際1年から1年半程度で解決していることが多いようです。これは相当のスピードです。ただし、鑑定を実施すると、まず、鑑定人探しに時間がかかり、鑑定自体にも時間がかかるのでもっと遅くなります。和解手続の進行によってはさらに時間がかかるし、また、争点の見えにくい事件もあるので、事件によっては3~4年かかるかもしれません。被害者多数の薬害事件とか、大きな事件になれば5年、10年かかることもあるでしょうが稀なケースです。
ただし、皆さんが期待するほど早くはできないかもしれません。
医療事件集中部
東京、大阪、千葉、名古屋、福岡の地方裁判所には、医療過誤事件を集中して審理する「医療集中部」があるため、そこで審理されます。「医療集中部」とは、医療過誤裁判だけを専門に扱うのではなく他の裁判も扱うけれども、この裁判所に提訴された医療過誤の裁判は全てこの部で審理されるというものです。横浜地方裁判所には特に医療専門部はありませんが、集中されるようになりました。
※ 「部」
たとえば、横浜地方裁判所と一言で言っても、横浜市にある本庁の他、川崎支部、横須賀支部、小田原支部、相模原支部と4つの支部があります。また、裁判は、一人の裁判官で審理されることもあれば(単独事件)、3人の裁判官で審理されることもあります(合議事件)。横浜地方裁判所は一つの裁判所ですが、そこには単独、合議を含めると10以上の「民事部」があり、提訴された事件は順番にどこかの部に配点されて審理されます。
医療過誤と刑事事件
福島県県立大野病院の産婦人科の医師が、2004年12月に発生した医療過誤について、2006年2月に逮捕されました。
この医療過誤事件は、2005年3月に公表され、病院を経営する福島県は医療過誤を認めました。つまり、民事責任の追求については県が過失を認めたことで大きな障害は無くなっていました。それにもかかわらず、この時点で当の医師を逮捕するのは不当逮捕の可能性があります。
逮捕とは刑事手続ですが、逮捕するには、二つの要件が必要です。一つは、① 逮捕の理由=「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由」です。本件でも、これは認めることができます。しかし、逮捕の二番目の要件があったかどうかは疑問です。 ② 逮捕の必要性とは、「逮捕の理由がある場合であっても、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重及び態様などの諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する恐れがなく、かつ、罪証を隠滅するおそれがないなど明らかに逮捕の必要がないと認められるときには、逮捕状の請求は却下されなくてはならない(刑事訴訟規則第143条の3)。」ということです。
被疑者は、医師という職業にあるうえ、事件から一年以上も逃亡していないのだから、いまさら逃亡するとは考えられません。罪証隠滅の恐れについても、事件から一年以上も経過しているのだから口裏合わせならとっくにしているはずだし、県が医療過誤を認めているのに、いまさら罪証隠滅する危険性は非常に低いと思われますこれが常識的な判断です。
「悪い奴だから逮捕する。懲らしめてやれ。」よく新聞には、こんな論調の記事も見られますが、こういこうとは認められていません。逮捕は人身の自由を奪う重大な人権侵害ですので、できるだけ逮捕しないで手続を進めるというのが法律上の原則です。刑事訴訟法も刑事訴訟規則も逮捕には厳格な要件を定めています。逮捕は慎重に行われなければいけません。
私は、医療過誤や航空機事故については、一般的には、関係者に対し刑事処分を課すべきではないと考えています。
なぜなら、刑事処分が科されるかもしれないと思えば、関係者から真実の声を聞くことが困難になり、ひいては真実の究明が困難となり、それは結局同種の医療過誤事件や航空機事故の再発を招く結果になるからです。医療過誤事件や航空機事故は、再発を防ぐことが最も重要なのであって、被害者保護は民事責任の追求によって図られるべきと考えています。
被害者(遺族)の怒りの感情を満足させるためには、刑事処分も役立つ面があるかもしれません。しかし、被害者の方の気持ちは、「何が起きたのだろう?」という疑問、「他の病院に行かせてたら防げたのだろうか?」という後悔、「もう二度と繰り返してほしくない」という希望、これらが中心です。「怒り」もありますが、それが一番強いわけではありません。
刑事処分は再発防止には役立たず、被害者保護にもまったく役に立ちません。将来の事故防止というより大きな利益のために、刑事処分は一歩を引くべきと考えています。
ただし、あまりにも基本的な注意を怠り、故意や重過失に等しいような医療過誤事件では刑事処分を科されても仕方ない場合もあると思います。