不動産会社勤務。投資暦13年。通算勝率90%以上。不動産・倉庫関連銘柄
の分析を得意とする業界人の筆者が、J-REIT研究に挑戦します。
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当方は、この情報を用いて行う判断の一切について責任を負うものではありません。すべての情報は自ら確認し、裏を取ることお勧めします。
●出口戦略の名のもとに(2006.10.21)
これまでの記事で、類似銘柄との比較などを試みながら書き連ねてきたように、私募ファンド事業を主力とする、新興オリジネーター系のJ-REITが、好条件で物件を購入できない傾向が強いのはなぜでしょうか?その理由は、彼らの収益構造について考えることで、理解可能なのではないかと思います。1つ例を挙げましょう。仮にA社というその手のオリジネーターが、好条件で物件を取得できる算段が整ったとします。その場合、A社はそのまま物件をREITに買わせてくれるでしょうか?
実のところ、そのような経営判断が下される可能性は極めて低いと考えざるを得ません。なぜなら、A社が利益を追求する上で、より有利な方法が他にあるからです。私募事業を主力とする多くの企業においては、こうしたケースでは物件を自社の投資勘定か、あるいは上流の私募ファンドを経由させるなどして、利鞘を抜いたうえでREITに放り込むでしょう。その方が、会社の利益につながりますし、主要な顧客である私募ファンドを購入してくれる上得意先にも報いることが出来るからです。
転売を重ねた物件は、最後にあらゆる手を尽くして評価額を高めた上で、REITに放り込まれる結果となるでしょう。REITが物件の”最終処分場”と呼ばれるのはこのためです。外部から直接REITに組み込まれる物件とは、単に仕入価格が高く、利鞘の抜けないものであると考えるのが妥当だと思います。彼らも慈善事業をしているわけではありませんから、こういった経営判断が下されるのは、別に驚くにはあたりません。この手のREITに勝ち組が存在しないのは、無理からぬことでしょう。
強いてこのグループの勝ち組候補の名を挙げれば、ケネディクス不動産投資法人ということになりそうです。ケネディクスの物件取得傾向からは、オリジネーターが利益をむしり取るのではなく、REIT投資家にもほんの少し分け前を残すような賢明さが見受けられますので、まだ救いはあるでしょう。実績を前向きに評価すれば、次点は日本レジデンシャル投資法人だと思いますが、PMCの取組姿勢に変化の兆しがありますので、先行きについては慎重に見ていく必要があるかも知れません。
●日本コマーシャルの価格予想(2006.9.24)
日本コマーシャル投資法人については、既に「オフィス部門の取得価格」と「減価償却費」の話題を取り上げましたが、問題はこれだけにとどまりません。商業部門の主力物件である心斎橋OPAの取得価格は、費用を差し引く前の表面利回りで4.2%ですので、実際のNOI利回りは3%程度と見込まれます。3%というのは、普通は都心部でも限られた地点でしかお目にかかれない数値です。現行賃料が立地の割に安いので、収支改善の可能性は認められるものの、テナントが経営再建中のダイエーの完全子会社である十字屋の100%子会社ですから、過度の期待は出来そうにありません。
ただ、不動産ポートフォリオ全体については、トップリート投資法人やジャパンエクセレント投資法人と同等の、最近の銘柄にしては高いクオリティであると見ていいでしょう。これで物件取得条件も両銘柄のように優秀であれば、新たな勝ち組銘柄の誕生となったはずですが、収益性を測る指標で見ると、残念ながら日本コマーシャルの低さが際立つ形となります。一部物件の購入価格の適正性について、オリジネーター内部でも議論があったとする週刊文春の報道や、不動産鑑定について、信頼度の高い大手に依頼している割合が何故か低いという2点も覚えておいたほうが良いでしょう。
コストの部分では、この規模のオフィス・商業系ファンドにしては、非常に高い運用報酬・取得報酬になっているのが目に付きます。トップリートの料率を基準にすると、運用報酬は約3割増し、取得報酬は倍近くもオリジネーター側が取れるように設定されています。また、前回問題にした減価償却費については、資産規模に対する適切な計上額を、トップリートやジャパンエクセレントと同等の割合と仮定して計算したところ、第二期で468〜477百万円の費用増となりました。この前提では、日本コマーシャルの真の分配金支払能力は、実に1,900円あまりも切り下がることになってしまいます。
今回は、第2期基準利回り5.1%〜5.3%、432,000円〜448,000円を当初予想価格としますが、筆者はこれまで書いてきたようなリスク要因を重視し、適正水準はさらに下だろうと見ています。大規模上場なら評価されるというジンクスは既に破られており、公募における不人気や、週刊誌の取り上げた海外機関投資家の敬遠という話もありますので、簡単に底割れとなる可能性もあるでしょう。「IPO及び上場後の株価の行方には厳しいものがあるという認識があったはず」「もっと慎重に事を運ぶべきだった」とするREITアナリスト山崎成人氏の見解には、筆者も大いに賛同したいところです。
●日本コマーシャルの問題点(2006.9.8)
日本コマーシャル投資法人の概要については、「株式投資と茶道」の方が完璧な記事を書かれていますので、私は開示資料から浮き彫りになる問題点について掘り下げることにします。まず、根本的かつ重大な問題ですが、このファンドを資産の質が近い他の銘柄と比べると、物件取得価格が非常に高いのではないかという疑念が浮き彫りになります。以下の表は、各投資法人のオフィス部門のデータを抜き出し、坪あたりの月額賃料と、物件取得価格の坪単価を比較したものです。基準値として、ジャパンエクセレント投資法人(月坪賃料15,685円/坪単価2,407,018円)の数値を用い、これを1.000とした場合に他の銘柄がどうなるかを並べてあります。
コードa@月坪賃料. 坪単価 名称(平均築年数)
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8987 1.000 1.000 ジャパンエクセレント(14.8年)
3227 1.093 1.006 MIDリート(20.6年)
3229 0.955 1.281 日本コマーシャル(15.6年)
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※上場時開示資料を使用、平均築年数は上場日時点のオフィス部門の数値。
この表を見ると、MIDリート投資法人が優良そうに見えますが、5〜10%程度の賃料減額リスクがありますので、さほど好条件による取得という訳でもありません。それよりも、日本コマーシャルの突出ぶりが、嫌でも気に掛かります。ロケーションが良いから、坪単価が高くても仕方がないという意見もあるでしょうが、そもそも月坪賃料から明らかなように、収益性が高くはありませんので、立地の優位性に言及するのは無理があります。そして、随分と高く物件を買っているように見える割に、分配金利回りが悪くないので、何かカラクリがあると思い、減価償却費の項目をチェックしたところ、タコ足配当を連想させる非常に興味深いデータが得られました。
日本コマーシャルの減価償却費は、賃料単価が近いファンドと比較して不自然な程に低く見込まれています。試しに上場翌期のデータを使って、「減価償却費÷物件取得価格」をトップリートやジャパンエクセレントと比較すると、38%も少ないことが明らかになります。この疑問を解く論理的な解答がタコ配以外に存在するでしょうか?仮に、物件価格の土地の比率を高くしたり、償却期間を長めに見積るなどの会計操作で、無理に利益を捻出するのであれば最悪です。高い物件取得価格と過小な減価償却費がセットになると、将来の減損リスクが飛躍的に高まるからです。ある実務家の方は「減損発生でREITが破綻する」という記事を書いておられます。
以上の問題点について、REIT投資家に少しでも早く知らせる必要があると感じたので、今回は前倒しで新規上場銘柄特集を組みました。パシフィックマネジメントについては、これまで各所で「ケネディクスと双璧をなす、数少ない信頼の置ける新興不動産ファンド会社」だと発言してきましたが、日本コマーシャルを調べていて、これが単なる幻想に過ぎなかったと思うに至りました。一体全体、何がPMCを変えてしまったのでしょうか?日本レジデンシャルで積み重ねた実績を、フイにしても構わないのでしょうか?最近のJ-REITの市況は比較的好調ですが、少し長いスパンで考えれば、悪貨が良貨を駆逐してしまうような悲観シナリオも想定するべきでしょう。
●優良物件に縁が薄い理由(2006.8.30)
全く同一の設計による建物を都心と地方都市に建てた場合を比較すると、建築コストや維持管理コストは場所にそれほど左右されずに一定の範囲内に収まるため、会計上の費用はどちらもそう変わるものではありません。それに対し、収入の部分は立地次第で数倍も変わることが珍しくありませんので、同じ建物なら、家賃相場の高い地域に建てたほうが利益率は高くなります。つまり、賃貸経営において最も儲かる物件とは、賃料単価の高い好立地の物件ということになります。
しかし、残念ながらオリジネーターにとっての最優良物件がJ-REITに組み込まれるケースは殆どありません。なぜなら、親会社としては、最も利益率の高い物件は、最後まで手放したくないものだからです。これこそが、J-REITに1.5流以下の物件が溢れている最大の理由と言えるでしょう。もしも、オリジネーターが虎の子の資産を手放すとしたら、それは売却をしなければ生き残りもままならないときや、何らかの事情で将来の“バリューダウン”を察知したときなのかも知れません。
オリジネーターの最優良資産がJ-REITに組み込まれた稀有な例としては、福岡リート投資法人とMIDリート投資法人があります。福岡地所は、ファンド組成時期の決算で自己資本比率が7.2%でしかなく、利益も特損で大幅に減少するような状況でしたので、切羽詰った経営だったことが推察されます。MID都市開発についても、再建計画を策定するに当たって銀行などに債権カットを強いた手前、優良資産を切り離して生き残った本体に余裕があると考えるのは無理があります。
MIDリートの物件群については、主力テナントである松下系企業の賃料減額が、引続き松下IMPビルなどでも出てくる可能性が高いので、オリジネーターのバックにいるエートス・ジャパンが、これを早々に売り抜けたいと考えたとしても不思議ではありません。こうした背景から、世間でバリューアップだ、賃料値上げだ、と騒がれる中で、全く逆を行く物件をハメ込まれたファンドが登場したというのが実情だとしたら、市場の見方が厳しくなるのは無理からぬことなのかも知れません。
●MIDリートの価格予想(2006.8.26)
MIDリート投資法人のオリジネーターは、松下興産の流れを汲むMID都市開発です。同社は元々、松下電産の創業者一族の資産管理会社でしたが、バブル期の過剰投資の失敗で経営が立ち行かなくなり、紆余曲折の後に米系投資ファンド“エートス・ジャパン”の出資を受けるに至っています。松下家や松下グループとの資本関係は、最近解消されましたので、新生MIDと松下の関係は非常にドライなものとなっているようです。事実、それを裏付けるように、7/11付でツイン21OBPパナソニックタワーの賃料減額が取り交わされています。
ここで気がかりなのは、MID都市開発が2年半以上も先の契約更新後の値下げに同意するなどという異例の対応をしている点です。通常では考えられない、はるか先の減額をするために、この時どのような「取引」がなされたというのでしょうか?おそらく裏では、複数の投資家が指摘するように、値下げを先延ばしにする替わりに、更新後の大幅減額を飲むといったやり取りがあったのではないかと思われます。もしもこの推測が当たっていれば、MIDリートは目先の分配金の数字を良く見せるための小細工をしているということになります。
さらに、この投資法人は6月までには取得物件の不動産鑑定を済ませていると言いますので、前述の7/11付の減額が鑑定に織り込まれていないことになります。実際、森井総合鑑定による4/1付の鑑定評価書の概要を見ると、ツイン21の想定収益は過去の実績の数値を、ほぼそのままで踏襲しています。コア物件の評価額に多大な影響を与えうる契約変更がなされたにもかかわらず、再鑑定もさせずに上場を強行しようとしているのであれば、見方によってはオリジネーターに重大な手続き違反があるということにはならないでしょうか?
MIDリートの詳細については、「株式投資と茶道」の方が素晴らしい記事を書いておられますので、補足に徹し、(1)全体の平均築年数は17.2年だがオフィス部門に限ると20.6年、(2)物件取得価格が微妙に高い、(3)運用報酬は高い、(4)物件拠出後のMID都市開発に目ぼしい物件が殆ど残らない、という4点を挙げておきます。なお、今回の当初予想価格は、大型オフィスビルを中心とした、地方分散ニーズに応えるファンドであることを評価し、第二期を基準とした利回りで4.8%〜5.0%となる、512,000円〜534,000円にて提示します。
●日本アコモデーションファンドの価格予想(2006.7.30)
6/19付のコラムで、クレッシェンド投資法人の差別増資の話題を取り上げたことがありましたが、今度上場する日本アコモデーションファンド投資法人も似たようなスキームによる上場となってしまいました。約8ヶ月前に、1口50万円で大量に発行された投資口の一部が、今回の公募・売出と同時に58万円で市場に放出されるからです。この間に、レジデンス系ファンドが大幅に上昇した形跡は無く、むしろ低迷しているのが現実であるにもかかわらず、このような挙に出るということは、自社のブランド力に余程の自信があるということなのでしょう。強気な価格設定をした挙句に、58万円を割るような評価しか市場で得られないようだと、三井不動産の看板に傷が付くことになりますが、本当に大丈夫なのでしょうか?
ただ、ポートフォリオの中身については、「さすが三井だ」と唸らせるような一流物件を見事に揃えています。主力物件である大川端リバーシティ21の賃貸棟は築17.3年で、レジデンスとしては古い部類に入りますが、高級分譲物件に引けを取らない仕様と管理体制になっていますので、資産価値は高いと考えていいでしょう。その他の物件も、高品質のパークアクシスシリーズを中心に築浅・好立地のもので固めていますので、隙のないポートフォリオ構成となっています。類似銘柄との比較でも、物件取得価格に異常値は検出されません。その他の面では、借入金を長期固定金利中心で調達している保守的な財務戦略や、万が一物件に瑕疵があった場合の売主の責任負担能力に安心感があると言えるでしょう。
全体の平均築年数は、大川端賃貸棟が足を引っ張っているため5.9年になりますが、これは住居系銘柄の中では標準的な数字です。残念な部分としては、運用報酬が同じ三井不動産系列の日本ビルファンド投資法人と比較して、非常に割高となっている点が挙げられます。しかし、それを加味しても、トータルでは高い評価が出来るファンドです。それだけに、上場前の大型差別増資によるマイナスが価格推移に暗い影を落としそうで勿体無いという気がします。今の市場では、直近の上場・公募増資の価格をレジデンス銘柄9投資法人全てが割り込んでいるという厳しい現実があるからです。三井は、アルティスシリーズを擁する伊藤忠ブランドのアドバンス・レジデンス投資法人の低迷なども参考にするべきでした。
さて、今回の当初予想価格ですが、548,000円〜573,000円としておきます。これは上場翌期の利回りで4.3%〜4.5%というレベルですが、先駆者である日本レジデンシャル投資法人の今期予想よりも0.5%前後低い水準ですので、無難な評価ではないかと思います。日本アコモデーションファンドよりも単位面積あたりの収入が高い、高額家賃物件中心のビ・ライフ投資法人や、先に述べた伊藤系REITの状況なども踏まえると要求利回りはもっと高くなりますが、不人気の住居系にもかかわらず、ブックビルディングの上限で価格が決まったこともあるので、他銘柄のような暴落は想定しにくいと言えそうです。機関投資家を中心に、幅広く人気のある三井ブランドゆえに、上離れの可能性も多少は残されているでしょう。
●ジャパンエクセレントの価格予想(2006.6.24)
Excellentなどではなく、トップリート投資法人の劣化コピー版ファンドだというのが第一印象です。みずほグループに巨額の債権放棄を強いる形で生き永らえた、旧興銀系の興和不動産が中心となって組成され、コアスポンサーには第一生命と積水ハウスも名前を連ねています。平均築年数14.8年のポートフォリオは、都心の比率が低く、大森・川崎といった競争力で劣る地域の比重が高いのが特徴となっています。興和不動産は、優良物件を多数保有していますが、拠出した興和の名を冠する4物件はいずれも規模が小さいものや、立地の見劣りする物ばかりであり、しかも平均築年数は22.8年という体たらくです。それなりのビルを拠出した第一生命に申し訳が立たないとか、これから物件提供で協力を仰ごうとしている積水ハウスに示しが付かないという発想はないものと判断せざるを得ません。
ただ、モルガン・スタンレーの拠出した中小オフィスビル3棟のu単価が少し高い点を除けば、全体としては好条件で物件の組入れが出来ていると考えて良さそうです。実際に、平均築年数が20年超のクリード・オフィス投資法人やDAオフィス投資法人の上場時データと比較してみると、この傾向は鮮明となります。ジャパンエクセレント投資法人の賃貸可能面積1uあたりの営業収益を100とした場合、クリードが81.7、DAが88.4となり、ざっと見たところポートフォオリオの質ではJエクセレントに優位性が認められますが、同様にuあたりの物件取得価格を比較すると、Jエクセレント100に対しクリードが90.0、DAに至っては130.0という結果になります。以上の相対評価から、一部の例外を除けばJエクセレントが極めて真っ当な価格で物件を購入するという推測は、恐らく間違ってはいないでしょう。
これは、資産運用会社にみずほコーポレート銀行やみずほ信託銀行の資本が入っており、興和不動産も銀行の強い影響下にある企業なので、たかだか数十億程度の転売益のために糾弾されるリスクを取りたくないという、グループの意向が色濃く反映された結果であると思われます。この部分は、取引時点における利益を脱法スレスレまで追求する、長期的視点の欠落した一部の私募ファンド系とは一線を画していると言えるでしょう。ただし、Jエクセレントもしっかりしたもので、資産残高連動型の運用報酬については、他の同系ファンドよりも約5割増しに設定し、利益確保には抜かりない体制となっています。ここの場合、物件取得報酬をゼロにした点は評価できますが、資産残高に応じた報酬が高めなので、結局のところ長い目で見れば投資家が負担するコストが割高となるのが難点です。
さて、Jエクセレントは公募当選により既に筆者のPF上位銘柄になっていますが、価格予想では中立を目指し、厳しくいきたいと思います。みずほグループのブランドイメージはあるものの、連続公募割れにより疑心暗鬼に陥ったマーケットでは、立地の面で優位性が低いこのファンドに強気で臨む個人投資家は少ないと考えられます。反面、上場前にムーディーズの発行体格付けでA3格を取得済であり、かつ借入条件が良好である点は機関投資家受けしやすい要素と想定できます。これらに加え、IPOで容易に入手できたことや、需給が崩れやすい大型上場であることなども勘案すると、当初は価格が低迷する可能性が高いということになりそうです。波乱含みのREIT市況ゆえの難しさもありますが、今回の予想レンジは第2期基準利回り4.6%〜4.8%、即ち502,000円〜524,000円としておきます。
●リプラスレジデンシャルの価格予想(2006.6.19)
かつてクレッシェンド投資法人は、1口44万円で第三者割当により投資口を大量発行した直後、IPO価格50万円で資金を募るという挙に出たことがありました。このケースでは前者の単価が低かったことから、一般投資家が割を食う格好となり、1口あたりの純資産はもちろんのこと、分配金にも悪影響が出ています。その後遺症もあり、上場時から保有し続ける投資家が最近の価格低迷で苦しめられている裏で、いまだに含み益を保持する上客が存在するというのも不条理と言えば不条理です。無論、投資は自己責任であり、差別増資のことも目論見書を一瞥すればわかる事なのですが、誠実さに欠けるやり口であることは否定できないでしょう。
上記の例とは逆のパターンになっているのがリプラス・レジデンシャル投資法人です。リプラスグループは、この投資法人の投資口を既に18,000口も保有していますが、出資価格は1口あたり50万円であったため、今回45万円に決まった上場時公募価格は、帳簿上の1口純資産に対して微妙にディスカウントとなる見込みです。つまり、一見すると、リプラスがみすみす損を被ってまで、一般投資家のために安く投資口を発行するようにも見えます。しかし、試しにファンドの中身を類似銘柄柄と比較してみたところ、大部分をリプラスの息がかかった先から仕入れる物件の取得価格にカラクリが潜んでいる可能性があるということがわかってきました。
今回は比較対象として、平均築年数やuあたり賃料&取得価格がほぼ同等であり、総合的なクオリティも近いレベルになると推定されるスターツプロシード投資法人の上場時ポートフォリオ及び開示資料を使います。リプラスレジデンシャルの賃貸可能面積1uあたりの営業収益は、地方の比重が高いことが影響して、スターツプロシードよりも8.6%低いのですが、uあたりの物件取得価格では逆にリプラスレジデンシャルが11.5%も高いという計算結果となりました。ここでは物件の個別性が全く考慮されていませんが、幅広く分散されたポートフォリオが全体として高値買い的な傾向にあるということは、気にしておいたほうが良いかも知れません。
リプラスレジデンシャルの特徴としては、オリジネーターの得意とする滞納家賃保証システムの積極活用が挙げられます。このサービスはキャシュフローの安定化に寄与するという意味で、小規模経営の大家さんにとっては確かに魅力的なのですが、J-REITのような大きなポートフォリオでは既に一定のリスク分散がなされているため、メリットは限定的であると思われます。キャシュフローの安定性については、わざわざムーディーズからCFV-1というお墨付きをもらっていながら、上場前の段階で21.4%の入居者が契約しているというこの契約をさらに拡大させようというのは、単に受注を拡大したい誰かの意向を汲んでいるからなのでしょうか?
さて、今回の価格予想ですが、いつも基準にしている上場翌期の利回りで5.9%〜6.1%、即ち409,000円〜423,000円といった水準を当初の価格帯として提示しておきます。相変わらずマーケットで低評価の住居系ですので、残念ながらやはり公募割れは避けられないでしょう。ただ、あえてクオリティにこだわらず高利回りを狙って地方にもよく分散させたポートフォリオというのは、インカムゲインを特に重視する層などには受けがいいのではないかとも思います。マイナス面ばかり強調してしまったので最後に少しフォローすると、運用報酬の面では他の同系ファンドよりも若干ですが低めに抑えてあるのが、特筆すべき点ということになります。
●日本ホテルファンドの価格予想(2006.6.10)
「違法改築は既に治癒済みであり、騒動により一時期落ち込んだ稼働率もすでにほぼ回復しています。万が一、賃料を負担する東横インに不測の事態が起きるようなことがあっても、JR博多駅にほど近い集客力のある立地なので、新たなオペレーターを確保することは可能だと考えています。」
以上が、筆者が東横イン物件を含むことについて切り込んだときの、日本ホテルファンド投資法人の対応でした。確かに、このREITの取得物件は、沖縄のリゾートを除けば、ビジネスホテルが主力となるため、全体としてそれなりに交通アクセスが良好であり、仮にホテル運営で躓いても、オペレーターの切り替えや用途変更などでそれなりの収益を狙えるのではないかと思います。つまりテナント代替性の高さという観点では、ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人などと比較して、若干リスクが少ないと考えても良さそうです。
売上歩合賃料の比重が、実績ベースで賃貸収入の1%未満(目論見書P41参照)となっており、かつ長期契約が中心ですので、収益の安定性でも日本ホテルファンドの側に軍配が上がります。大部分が固定賃料契約となっているため、ホテル運営の巧拙が直接業績に影響しにくいこともあり、業績予想の信頼性も高いでしょう。
ただ、物件取得価格については、好立地とはいえ築25年以上経過しているスターホテル東京のu単価が新鋭Aクラスレジデンスと同等となっている点と、ザ・ビーチタワー沖縄の利回りがリゾート物件にしては不十分と思われる点が気がかりです。これら2物件でポートフォリオの46.5%を占めますので、筆者の抱く疑念が妥当だとすると、ファンドが台無しになっている可能性もあります。また、平均築年数13.4年というのは、一般的なレジデンス銘柄などと比較すると古い印象が拭えませんし、当初は低く抑えると明示しているものの、運用報酬の上限値が高すぎるのも全体のイメージを悪くしています。
さて、ホテルファンドはサンプルが1つしか無いので予想が難しいと言い訳した上で、恒例の価格予想に入ります。ジャパン・ホテル・アンド・リゾートがそれなりの価格を維持している点から、マーケットにおいてはホテルREITに対する引き合いは一定程度あると考えて差し支えないでしょう。ただ、日本ホテルファンドの核となるビジネスユース型の物件については、これを含む住居系REITの苦戦もありますので、割り引いて評価する必要がありそうです。ファンド規模が小さいことや、東横インを含むことなどは、機関投資家に敬遠されやすい要素ですし、ブックビルディングの結果も上限価格では決まらず、芳しくはありませんでした。オリジネーターのブランド力が不十分であるというのも不安要素として挙げられるでしょう。
これらの点を踏まえると、実質運用期間が約9ヶ月半の今期(第2期)ではなく、第3期を基準とした利回りで4.6%〜4.8%、即ち483,000円〜504,000円あたりが客観的に見た場合の落ち着きどころになるのではないかと思います。ただし、筆者の本音を口にすると、低迷する他の後発REITと比較して日本ホテルファンドに特別な魅力があるとは考えられませんので、現状のマーケットなら少なくとも5.0%程度の利回りは欲しいということになります。なお、怒涛の4連続上場がありますので、予告してある「修繕費と資本的支出」のコラムは7月以降、落ち着いてから掲載することにします。
●エルシーピーの価格予想(2006.5.20)
耐震偽装問題などの外部環境に配慮し、半年近くも上場を延期したにもかかわらず、残念ながらエルシーピー投資法人の前途には暗雲が立ち込めています。昨年12月と同様に、住居を多く含む後発銘柄の市況が、悲惨の一語に尽きる様相を呈しているからです。この投資法人の場合、せっかく半年ほどの時間が出来たにもかかわらず、取得物件は全く変わらず、それ以外の内容についても、工夫の手が加えられた形跡が見当たらないのが残念でなりません。そのままでも市場に受け入れられるという自信があったということなのかも知れませんが、上限価格から2万円もマイナスとなったブックビルディングの結果から明らかなように、現状で投資家の評価が芳しくないのは紛れもない事実でしょう。
ただし、筆者はファンドの中身を検討した結果、これは意外に面白いのではないかという感触を得ました。物件は平均築年数8.52年、コアのレジデンスをはじめ、老人ホーム・商業施設・オフィスビルといった多種多様な構成で、地方のビルも多く、全体的なクオリティは率直に言って二流以下です。しかし、購入価格がそれなりに妥当なので、開示資料によれば高い分配金利回りを実現できる見込みです。谷澤総合鑑定所や日本不動産研究所といった信頼に足る鑑定機関を中心に、無理のないレベルで拠出物件の評価を依頼したのがその理由と思われます。現時点では推測の域を出ませんが、この点からオリジネーター連合が短期的な利益のみを追求するタイプとは異なる可能性もありそうです。
さて、意外に面白いのでは、とは言ってみたものの、上場当初から苦戦が避けられないだろうというのが、今回の筆者の考えです。いま市場で不人気のレジデンスが過半を占めるポートフォリオですから、第2期を基準とした利回りで5.6%〜5.8%、即ち424,000円〜439,000円といった水準まで売られることは想定しています。オリジネーターにブランド力がありませんので、さらに売り叩かれる展開も考えられないことはありませんが、利回りもここまでくるとさすがに魅力的ですから、インカムゲイン狙いの層が支えるのではないかと思います。勝ち組ファンド入りの可能性は低いので値上がり期待はあまりできませんが、暴落して6%近い利回りが実現するようだと、かなり面白い投資対象になるでしょう。
●コラム再開にあたって(2006.5.7)
例の問題を扱って以来、コラムの執筆を中止していたにもかかわらず、4月度のアクセス数は、過去最高を大幅に更新しました。これもひとえに立地評価研究所の対応に注目が集まっていることの表れなのでしょう。今日までの間、先方からは何も言ってきていませんが、名誉毀損で訴えるとしてプロバイダに接触したからには、現在も当サイトが立地評価研究所の監視下にあるのは確実と思われます。
このような中で、再び同社の鑑定に対して意見を述べるのは得策ではないのかも知れませんが、投資家保護の観点から無視できない、”興味深い事例”が出てきましたので、いずれコラムで取り上げることにします。タイトルは「修繕費と資本的支出」(予定)とし、クリードオフィス投資法人の追加取得物件であるCOI渋谷神山町ビルを実例として扱いますので、立地の担当者の方は、予めご了承ください。
もしも筆者の見解に誤り等があるようでしたら、裏から手を回すようなことをせず、鑑定士の誇りにかけて正々堂々と反論文をお送りいただければ幸甚に存じます。もちろん、上記のキーワードから、筆者が何を言いたいかは容易に推察できると思いますので、事前にご連絡の上、鑑定士の見解を送付頂くことも可能です。その場合、筆者の意見と並べて、読者に公平なジャッジを求めることを確約します。
さて、ただその前に、新規上場銘柄としてエルシーピー投資法人が出てきましたので、J-REIT研究室では先にこちらの話題を取り上げる予定です。悲運の出戻りファンドの評価やいかに?詳しくは、5/20頃に掲載予定の「エルシーピーの価格予想」をご笑覧ください。現段階では、一部のファンドに見られるような救いようのなさは感じられないものの、あまり高い評価も出来ない、とだけ言っておきます。
立地評価研究所の担当者の方へ
当方には、御社が侵害されたとする名誉を回復するための”意見表明の場”を提供する用意があります。正々堂々と反論していただく機会を設けるにあたっては、あらゆる労を惜しまないつもりです。ご連絡いただけた場合、頂戴した文面は、担当者名を伏字としたうえで、間違いなくJ-REIT研究室に全文を掲載することを約束します。メールアドレス
yukikaze_type2@yahoo.co.jp まで、早めのご連絡をお待ちしております。
●立地評価研究所への反論(2006.4.2)
プロバイダ経由で、1週間以内に何らかの回答がなければ、送信防止措置(サイトの強制的閉鎖)を取るとの文書が届きました。立地評価研究所が「上記情報(筆者註:当サイト)は「勘ぐりたくなる」「予感がする」などと全く根拠を欠いた推測に基づくものであり、そのような全くの推測に基づき、『プライドのかけらもない鑑定事務所』などと侮蔑的発言がなされたことにより、社会的評価が著しく傷つけられたから。」(原文のまま掲載)という理由で、名誉毀損による損害賠償請求訴訟を提訴する予定だとしているためです。
指摘された8つの侵害情報のうち、7つまでは同社とプロバイダであるニフティの努力に敬意を表し、表現をマイルドなものに修正したり、全文削除することで対応しましたが、権利が明らかに侵害された理由として挙げている「プライドのかけらもない鑑定事務所」(2.18付コラム上段参照)という語については、架空の案件を例示する文脈から、具体的に実在する機関を指しているのではないことは明白であり、これをもっていかなる企業も社会的評価が著しく傷つけられる事はあり得ませんので、手を加えてはいません。(注-1)
立地評価研究所の担当者の方は、このサイトをご覧になっている筈ですから、コチラまでご連絡いただくか、REIT掲示板への意見表明をお願いします。
(注-1)
仮に文末の「断定は出来ませんが、もしも上記のようなトリックが使われていたとしたら、5年後の契約更新の際に、賃料減額などの形で歪みが噴出するかも知れません。」という表現が名誉毀損に該当するのであれば、「もしもソニーのコア事業が計画未達になれば、経営者は失脚するかも知れない。」というような“仮定の話”を書いただけで訴訟沙汰になり、濫訴から収拾がつかない事態になります。
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当面はニフティ法務部がどう対応するか次第ですが、J-REIT研究室は誕生から約10ヶ月目にして早くも存亡の危機に立つことになりました。筆者はこれまで、いかなる金銭的利益を得ることも目的とせず、投資家の立場で公正・誠実に不動産投信に意見を述べる存在でありたいと願い続けてきたつもりです。若輩者ゆえ至らない面も多々あったと思いますが、REITという金融商品に関心を抱く多くの人々との交流のなかで切磋琢磨しつつ、ともに向上していくことを目指した歩みは、決して無駄なものではなかったと信じています。
言いたいこと、伝えたかったことは、まだまだ山ほどあります。しかし、更新をいつまでも続けられる保証はありませんので、今回は今もっとも強調したいことを書いて締めくくることにします。これが筆者の最後の言葉にならないことを祈るばかりです・・・
REIT市況は 警戒を厳に 半身の構えで 足元を掬われるな
危機を乗り越えれば チャンスは有る きっと 有る
●ある聖戦・前編及び中編(2006.3.26) ※前編部分は2006.3.5公開
親会社による子会社資産の収奪 ----- 、それが100%子会社に対するものであれば、トラブルに発展する可能性は小さいですが、外部の株主が少なからず居る場合には事情が全く異なります。市場で起こる様々な事件の影響により、株主の権利にかかる話題が異様な盛り上がりを見せる昨今、投資先が大株主に利益供与するような茶番を黙って見過ごせる程の“お人よし”ばかりではないからです。
今回は日本ビルファンド投資法人のオリジネーターである三井不動産とその関係会社、国際観光会館を舞台に繰り広げられた不透明な不動産取引に対して憤り、立ち上がることを決意した、ある男たちの熱い戦いを紹介します。この事件は、オリジネーターとの利害の相克に苛まされるJ-REITについて考える上でも、重要な意味を持つ事例であると筆者は信じます。
ことの始まりは2000年9月、国際観光会館が東京駅八重洲口前に持つ土地の権益の47.42%を三井不動産に差し出し、代わりに芝の土地・建物の一部を得るという資産の交換が実行された時に遡ります。この取引に疑念を抱いた大株主の一人が不動産鑑定士に取引の正当性について調査を依頼したところ、八重洲の評価はほぼ妥当だが、芝の物件は不当に高く押し付けられている可能性があるという結論に至りました。
国際観光会館に多額の資金を投入していた彼やその仲間が激しく憤ったのは言うまでもありません。しかし、2004年7月には、そんな彼らをあざ笑うかのようなリリースが、三井不動産と国際観光会館の連名により出されることになります。そのリリースとは、国際観光会館が東京駅八重洲口前に保有していた権益のうち、残りの部分を三井不動産が主体となって開発予定の物件の一部と交換するというものでしたが、問題はその取引における評価額でした。
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不動産関連のニュースに目を光らせていなくても、普通に新聞を読んでいる方なら先刻承知だと思いますが、この4年あまりの間で都心などの利用価値の高い土地は不動産ファンドの物件取得競争を背景に、大きく値上がりする例が目立っていました。それだけに、東京駅の目の前という最高の立地に国際観光会館が保有していた権益は、客観情勢から見ても評価が高まっていて然るべきものです。ところが、驚いたことに両社が新たに出したリリースから算出した評価単価は、同場所の路線価がこの間に3.4%上昇し、実勢相場はさらに高騰していたと想定されるにもかかわらず、実に11%あまりも下落しているという、俄かには信じがたい内容でした。
「一般株主を馬鹿にするにも程がある!これは親会社に対する利益供与だ!」
個人大株主たちの怒りは頂点に達し、とうとう会社への様々な働きかけに動くことになります。決断した後の彼らの行動は迅速でした。2004年8月には、上記契約の差止のため警告を発し、それでも会社側が取引を強行したので、翌月、監査役に対し提訴を求める文書を送付、一方、この手続と並行して同年11月、帳簿閲覧権を行使して証拠固めのため会社へ乗り込み、2005年2月には、監査役が法定期限内に訴えなかったことを受けて、ついに株主代表訴訟の提訴が現実のものとなりました。請求額は約18.2億円、訴えられたのは三井不動産出身者を中心とした、国際観光会館の役員、及び元役員の計4名です。
これに対して三井不動産が選んだのは、国際観光会館にTOBをかけるという奇策でした。同社では、訴訟とTOBの関連を否定する筈ですが、訴えられた直後にこのような挙に出るのは、やましい部分があったと言っているに等しいでしょう。三井不動産が総株数の2/3超を確保した翌月には、株式交換による完全子会社化の発表が待っていました。完全子会社化されると、提訴した株主の保有する株式は三井不動産株式となり、国際観光会館の取締役への提訴権は失われます。原告資格喪失
----- 、経済暴力装置により、大企業の利益相反取引に異を唱えた勇気ある個人株主たちの訴えは、こうして闇に葬られていったのです。
●ビ・ライフの価格予想(2006.3.19)
以前にネットを徘徊していた折に、とあるマンションについて、「何だかJ-REITの物件みたいだなぁ」と言っている人を見かけたことがあります。書いた本人は、何の特徴も無いありふれた仕様について皮肉っていたようなのですが、ファンドの組入れ物件には確かにそういう側面があることは否定できません。しかし、この分野に限らず他の業界でもそうであるように、ソツがない代わりに、特別なセールスポイントもないというような“規格化された商品”では、競争激化が即座に価格(賃料)にはね返る可能性があります。
ビ・ライフ投資法人の組入物件には、そんな画一的マンションに対し、デザインや意匠を工夫することで差別化を図ろうとする姿勢がうかがえます。ありふれた住居にはない独自の生活空間を提供することで、勝ち残りを目指す姿勢には、筆者も共感を覚えますが、問題はやはり売買価格が適正なのかどうかという部分に集約されるでしょう。今回は比較検討の対象として、平均築年数や1部屋あたりの規模、地域別分布状況が比較的似通っている、アドバンス・レジデンス投資法人の上場当初のポートフォリオを使います。
ビ・ライフの平均築年数は2.56年、アドバンスレジデンスも余計な物件を追加する前は、ほぼ同等といっていい数値です。立地はどちらも都区内のウエイトが86%ですが、個別ではビ・ライフに若干の優位性が認められます。実際に、両者の購入物件のu単価を算出してみたところ、ビ・ライフの方が4割も高くなりました。物件の質から考えて、ビ・ライフが多少高くなるのは当然なのですが、その差が4割ともなると判断が難しくなります。モリモトの代表取締役の親族企業を経由するマンションの単価が高いのも気がかりです。
さて、恒例の価格予想ですが、ビ・ライフは既に第2期に入っているため、今回は第3期(固都税負担見込額:9百万円)のデータを基準にした利回りで4.9%〜5.1%、価格帯470,000円〜490,000円といった水準を提示することにします。現在入手可能な情報だけでは詳細は解りませんが、留意事項として、第3期の費用の割合が他の住居系REITと比較して不自然に低いため、税負担の先送りや修繕・維持管理費の過少見積等の、何らかの特殊要因によって、純益が嵩上げされている可能性がある点を指摘しておきます。
●クリード・オフィスの価格予想(2006.3.12)
あるファンドの目論見書に、他の投資法人が開示しているデータが掲載されていなければ、それはそのREITの弱点とみていいでしょう。クリード・オフィス投資法人の場合は、物件の築年数別構成比のグラフがどこにも載っていませんので、これが隠したい部分であることが容易に想像できます。事実、取得予定物件の平均築年数は20.9年、上位5物件に限れば32.3年ですので、図表を出し渋るのは無理もありません。目論見書には、「重要なのは築年数ではなく立地環境である」というようなコメントもありますが、好立地の物件を揃えているわけでもないファンドが、竣工から年月が経っていても交通至便であればよいなどと言うのもおかしな話です。
物件取得価格については、時としてアグレッジブとなりうる鑑定に惑わされないために、数字のマジックの入り込む余地の少ないu単価を用い、イーアセット投資法人のオフィス部門(平均築年数15.7年)のデータを比較検討に使います。イーアセットの1棟あたりの取得単価は22.6億円、対するクリードオフィスは19.5億円とほぼ同レベルであり、クリード側が若干首都圏寄りですが、いずれも地方に分散されたポートフォリオとなっていますので、比較対象としては悪くない選択かと思います。
さっそく計算してみると、イーアセットが取得した9物件の賃貸可能面積1uあたりの単価は51.4万円ですが、クリードオフィスは実に65.5万円になるという少々意外な結果となりました。はっきり言って、筆者はイーアセットというREITを白眼視していますが、それを3割近くも越える売買単価が出てくるとは、予想していませんでした。物件をファンドに嵌め込むクリードグループは、一連の目まぐるしい転売(目論見書P55参照)で、一体どれだけの利鞘を抜こうというのでしょうか?
物件高値買いの疑念は、収益性を同時期上場のトップリート投資法人(平均築年数13.9年)と比較するとさらに深まります。トップリートは現状で出資金772.17億円、物件取得額1,043.86億円、第2期の利益は19.57億円を見込んでいますが、クリードオフィスはそれぞれ、470.02億円、740.50億円、11.51億円と公表しています。クリードオフィスはトップリートと違い、第2期に固都税4千万円を費用化する予定なので、同列で比較しやすいように、どちらも税負担なしとして、出資金10,000あたりの物件取得額と第2期の利益を並べてみます。
以上の前提では、トップリートの物件取得額が13,518、クリードオフィスは15,754となりますが、第2期の利益はどちらも253という数値になります。つまり、クリード側はトップリートよりも積極的に借入れをして物件を組入れる予定で、しかもその質が誰の目にも明らかなように劣るにもかかわらず、あるべき利回りを確保できていないという結論が導かれるわけです。15%以上高く物件を買っているのであれば大体辻褄が合うことになりますが、本当のところはどうなのでしょうか?仮に物件価格の15%分だけ無意味にオリジネーターを儲けさせるのだとしたら、公募価格500,000円での実質PBRは1.22倍程度ということになってしまいます。
さて、批評はここまでにして、価格予想に移ることにします。今回は、J-REITの分野では同じ穴の狢であるイーアセットやDAオフィスの市場における評価を参考にすると、第2期を基準とした利回りで4.7%〜4.9%、即ち472,000円〜492,000円あたりが妥当な水準となりそうです。多少の外部成長余地もありますので、素直にそれを評価すれば、もう少し上もあるかも知れませんが、どちらかと言うと先々のことよりも直近のブックビルディングにおける不人気の方を重く見るべきですので、やはり底割れの可能性が高いと言わざるをえません。
●ある聖戦・前編(2006.3.5) ※3.26付で中篇と一緒にしました。
●トップリートの価格予想(2006.2.26)
今まで様々なファンドについて、厳しい批評をしてきましたが、これは必ずしも筆者が本意とするところではありませんでした。新たに登場するREITの多くが、余りにも醜悪であったために、そうせざるをえなかったというのが実情です。心の中では賞賛に値する本物を待ち望んでいた筆者にとって、今度上場するトップリート投資法人はまさに“期待の新星”と呼ぶべき存在となります。伝統ある大企業3社、住信・日鉄・王子紙のコラボレーションが生み出す輝きは、目先の利益にとらわれた愚か者達が散々に踏み荒らした市場の中では、ひときわ眩しい光彩を放っているように感じられます。
コア物件である日本電気本社ビル・トリトンスクエアのオフィス棟や、ファンドの運用報酬などのコスト部分については、大きな問題点はなさそうです。取得価格や鑑定評価にも、これといった不審な部分は見受けられません。細部では、若干気になる点もありますが、全体としてはやはり、最近上場しているREITとは比較にならない程の誠実さで作り込まれた高品質ファンドであると言えるでしょう。
ただ、長期では多少意識しておいたほうがよいと思われる要因として、商業施設の競合の問題があります。ポートフォリオの11.5%を占める準主力物件、イトーヨーカドーを核テントとする相模原SCの隣にイオングループでも売上上位となるジャスコの巨大店舗がそびえ立っているからです。同時期・同規模で開業し、初めは共栄共存の関係にあったものの、平成12年にジャスコが大規模な増床をして以来、イトーヨーカドーの旗色が悪いため、将来的には敗退する可能性があることも念頭に置く必要があります。
さて、最後に今回の価格予想をします。筆者の高評価とは反する格好で、ブックビルディングへの応募は低調だった模様ですので、当初は第2期を基準にした利回りで4.0%〜4.2%、即ち600,000円〜630,000円といった水準からの滑り出しになるのではないかと思います。ただし、低LTVで外部成長余地が大きいことに重点を置けば、さらに上もあると考えて良いでしょう。「TOPの名に恥じぬ大器」、筆者をしてそう言わしめるだけの風格を、当初から備えるこのファンドが、価格面でも他の後発組を圧倒し、誉れ高き名門企業群を背景とした“格の違い”を見せ付ける展開もありそうです。
●濡れ手で粟の錬金術(2006.2.18)
セール&リースバックという売買形態をご存知でしょうか?これは文字通り、前所有者が物件売却後、引き続きテナントとして入居するような形式をいいます。通常であれば何の変哲も無いありふれた手法ですが、貪欲すぎるオリジネーターとプライドのかけらも無い鑑定事務所が組んでこれを悪用すると、驚くべきトリックが成立してしまうことがあります。以下は単純簡略化した“濡れ手で粟の錬金術”の例です。
物件価値100億、売上45億、賃料9億というホテルが仮にあったとしましょう。売上の20%に相当する賃料は、無難なレベルです。ところが、セール&リースバックのもと、売主であるオリジネーターが買い手の投資法人と自社系列のテナントをコントロール可能なのを利用して、賃料を12億、契約期間は5年、といった設定にすると、どうなるでしょうか?現行契約を基準としたDCF法メインの鑑定では、正当な割引率を用いなければ、賃料が1/3上がると物件価値も大幅に跳ね上がるという現象が起きてしまいます。
即ち、物件そのものは何も変わらないにもかかわらず、契約を操作するだけで評価額が何十億も上昇し、賃料増加差額を差し引いても、巨額の売却益がオリジネーターの懐に転がり込む計算になるわけです。オリジネーター系列のテナントは、契約更新時に賃料を妥当なレベルに落とさせたり、ノウハウやブランドを提供するホテル運営支援会社に経営権を譲るなどしてしまえば、無事に逃げ切ることが可能でしょう。こうしてセール&リースバックならではの錬金術が完結します。利益額は勿論“お手盛り”です。
このような脱法的操作は、(1)ホテル売上高に対する賃借料の比率が不自然に高くなっていないか、(2)鑑定評価額が積算価格よりも異常に高くなっていないか、等を調べることで、ある程度は見抜くことができるかと思います。実際に、これをジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人の旗艦物件であるホテル日航アリビラにあてはめて見ると、賃借料の対売上高比率が27%、鑑定評価額は積算価格の3倍以上となっています。断定は出来ませんが、もしも上記のようなトリックが使われていたとしたら、5年後の契約更新の際に、賃料減額などの形で歪みが噴出するかも知れません。
(注-1)ホテル日航アリビラについて
実際のテナントはゴールドマンサックス系列。JALグループが運営支援。沖縄ではトップクラスのリゾートホテルだが、(1)料飲部門(推定原価率30%台)のウエイトが高い、(2)宿泊特化型と比較してスタッフの職種・人数が多い、(3)建物以外に広大な敷地やプールなどを抱える、という特徴があるため、ランニングコストが損益分岐点を高くしていると思われる。
●ジャパン・ホテル・アンド・リゾートの価格予想(2006.2.12)
本邦初のホテル特化リートとして、間もなくジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人が上場します。目論見書には、色彩も鮮やかに“光り輝く白亜の城”の魅力が余す所なく掲載されていますので、すっかり魅了されてしまったという人も少なくないのかも知れませんが、実際にファンドの中身を見ていくと、いくつものおかしな点が浮かび上がってきます。疑惑を抱いたまま見ると、美麗なホテルを写すカラー写真も、すっかり色褪せた巨大な構造物のそれと感じられてしまうから不思議です。
詳細は今回だけでは書ききれないので、次回以降にまわしますが、「敷金の不足」「ワシントンホテルのリスク」「契約条件と鑑定評価」といったキーワードを柱に、今後数回にわたってジャパンホテルアンドリゾートの問題を特集していきます。初のホテルREITは、後発の同系ファンドに与える影響が大きいだけに、今回のゴールドマンサックスグループの所業は本当に残念だというのが、各種情報から判断した筆者の意見です。
さて、マイナスイメージのことは一旦忘れ、気分を切り替えて価格予想に移ります。市場では郊外型商業施設や物流施設のようなテナント代替性の低い、即ちハイリスクな物件を組み込んだファンドでも、低い利回りまで買い進まれているという、動かしがたい現実があります。そういった傾向は、いつか中核物件で解約が生じ、どこかのファンドの収益が大幅に悪化するという事態を見るまでは続くと考えて差し支えないでしょう。この点で、今回のジャパンホテルアンドリゾートも、リスクは高いものの、当初から買い進まれる素地は十分にあると思われます。
現状では、J-REITを取り巻く市場の環境は熱気を帯びていますので、筆者の懸念など何処吹く風で、第2期を基準にした利回りは4.6〜4.8%程度になってもおかしくはないと思います。それゆえ、当初予想価格としては540,000円〜565,000円といったレベルを想定しています。無論、地域分散需要とホテルという資産種別への引き合いのことまで考慮に入れると、さらに上まで行ってもおかしくはありません。ただし、実質的な資産価値から判断して、50万円台やそれ以上での投資は、到底リスクに見合うものではないというのが、筆者の偽らざる感想となります。
●バリューアップは儲かる?(2006.1.29)
バリューアップとは、不動産から生み出される収益を最大化することにより、その価値を高めることをいいます。具体的な手法としては、耐震補強工事や内装・空調・電気設備などのリニューアル、需要を勘案してオフィスビルをマンションに用途変更をするようなコンバージョン、空室率改善のためのテナントリーシング活動などが挙げられます。広義では、管理コスト削減によるキャッシュフロー向上なども、その範疇に入るのではないかと思います。
バリューアップという言葉自体、ここ数年よく耳にしますので、以上に書いたような内容は既に知っているという方も多い筈です。中には、“不動産のバリューアップ=儲かる”と思い込んでいる人もいるでしょう。しかし、世間のイメージとは裏腹に、残念ながら現実はそんなに甘くはありません。バリューアップで多額の転売益を得られた時期は、確かに過去には存在していましたが、不動産を取り巻く環境は既に大幅に様変わりしてしまっているからです。
最近では、バリューアップを売り物にしている業者が、雨後の筍のように乱立気味です。その結果、売買の現場では、急増した参入業者が物件を落札しようと押し寄せることにより、価格がバリューアップ後の収益を前提としたものに吊り上ってしまっているという現実があります。この辺の流れは関係者以外でも推察できるかと思いますが、要するに、現在の市場では落札した物件をバリューアップしても、転売益を得ることが難しくなっているわけです。
変化の帰結として、バリューアップを収益源にできなくなった業者は、自ら設立したファンドに物件を転売して稼ぐという方向に舵を切りました。この手の企業の挙動が、J-REIT全体の信用を失墜させる危険性をはらんでいるのは言うまでもありません。3/1上場予定のトップリート投資法人は、そういった業者ではなく、新日鉄や王子製紙を設立母体とする総合型リートですので、久々に真っ当なファンドにお目にかかれるのではないかと期待しています。
●弱気の株式市場、強気の鑑定評価(2006.1.22)
ライブドアショックにより、日経平均株価は1週間で663円あまりも下落するという、最近では珍しい展開となりました。国内の取引終了後、シカゴで売買される日経225先物は、大阪・シンガポール市場の終値と比較して485円ものマイナスとなっていますので、週明けの株式市場も厳しい滑り出しが予想されます。このところ、新興市場の商状なども悲惨の一語に尽きますので、場合によっては“自殺者が出る相場になる”ということも想定しておくべきでしょう。状況が状況なだけに、株価が崩落する中においても、割安と見れば高笑いしながら買い向かえるだけの資金的・精神的なゆとりを保持することが、やはり勝ち残るための鍵となりそうです。
混迷を極める市場においても、東証REIT指数が比較的堅調に推移していることからわかるように、弱気相場ではJ-REITがディフェンシブ銘柄として脚光を浴びる展開も考えられます。ライブドア事件に押し出される格好で、問題マンション関連の報道も下火になってきましたので、目先的には住居を含むREITに中立以上のスタンスで臨んでも良さそうです。ただし、今後新たな耐震偽装マンションが出てこないという保証はありませんし、一部の高PBR銘柄については、資産価値による株価の下支えも期待しにくいことから、もちろん過度の楽観も禁物でしょう。
ゴールドマン・サックスグループの新規上場REIT、ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人については、筆者も調べようとしたのですが、物件の購入利回りを見て一気に意欲が霧散しました。筆者同様に、目論見書のキャップレートを見た瞬間に放り出す人間が続出するような予感がします。鑑定した立地評価研究所によると、難波や浦安の築10年クラスのホテルが、都心の新鋭レジデンスと同等の利回りでも良いらしいです。立地評価研究所については、阪急リート投資法人の高槻城西ショッピングセンターの評価を見たときも幾分違和感を覚えましたが、今回のホテル案件もアグレッシブな評価を連発しているように感じられます。REIT投資家は、インリックスに続いて、立地評価研究所の名前も心に刻んでおく必要がありそうです。
●それぞれの冬支度(2006.1.14)
世界各国の株式市場が好調に推移しています。一部のマーケットに例外はありますが、日本だけでなく、欧米やアジアの指数を見ても年明け以降、昨年来高値の更新が続いているケースが目立ちますので、「もう笑いが止まらない!」、というような人が少なくないでしょう。しかし、好調なときにこそ、はたと立ち止まって考えてみるべきです。相場の世界ではとりわけ、”失敗の芽は絶頂期に、ひっそりと、しかし確実に育まれる”という性質があるからです。
真夏の熱狂の中に身を置けば、やがて訪れる秋のことなど憂えたりしないのが世の習いなのかも知れません。ただ、そんな環境においても、長い冬の時代を知る角山氏やKEN氏といった尊敬すべき個人投資家の代表選手たちが、冷めた目で市場を見つめているという事実を忘れてはなりません。熱狂に身を任せた挙句、焼き出されるようなことのないよう、自ら冷静さを取り戻し、市場から退場させられることなく、末永く投資を楽しんで欲しいと思います。
好調な時は資金にもゆとりが生まれますから、後で躓かないための備えをするいい機会となるでしょう。ポートフォリオが値動きの激しい銘柄に偏っているような人なら、REITを一部組み込むことで全体のリスクを抑えることも可能です。REIT未経験者にはスターツプロシード投資法人などが手がけやすく、面白いのではないかと思います。他にも冬支度の選択肢は無数にありますので、これを機に自分に合った資産防衛法を検討してみてはいかがでしょうか?
(2006.11.25付追記)
スターツプロシードは、拙速すぎる連続増資で株主資本をすり減らしたため、初心者にお奨めできる対象とは言えなくなりました。
●同じ轍は踏ませない 〜日銀の英断〜 (2006.1.8)
日本では、不動産証券化ビジネスを拡大させるための法整備や規制緩和が、今から6〜8年前に矢継ぎ早とも言えるスピードで進められました。流動化スキームの導入が急がれた背景には、地価が下がり続けるために不良債権の増加が止まらず、疲弊しきっていた金融機関の救済が喫緊の課題であったという当時の経済情勢がありました。そんな状況を打開するために、幅広い層の資金を不動産市場に呼び込むことで、地価の反転を促し、金融システム不安解消の一助にしようという狙いで急遽舞台にあげられたのが、J-REITなどの不動産ファンドだったわけです。
この目的は見事に達成され、旺盛なファンド関連の買い意欲により収益物件の価格は上昇の機運に乗り、最悪期の何倍にも上昇したメガバンクの株価が象徴するように、銀行の信用不安も遠い過去の話になりつつあります。ここへきて、日銀による不動産融資への監視強化を報じるメディアが目立ってきましたが、主要な金融機関の健全化が実現した今、将来を見据えてバブルの芽を摘む方向に舵を切るという政策は、経済全体で見れば合理的であると考えられますので、投資家はJ-REITを含む不動産関連銘柄に対する警戒レベルを若干引き上げる必要がありそうです。
不動産への過剰融資抑制策が現実のものとなれば、リスクスプレッドの反転、即ち借入金利の上昇という形で、影響は殆ど全ての不動産ファンドに及びます。ただ、物件の競争力とキャッシュフロー生成能力、さらに含み益でも優位にあるジャパンリアルエステイト投資法人のような信用力の高い勝ち組に対する影響は軽微ですが、反対にムーディーズやR&IでA格を取得できないJ-REITや、LTVが60%を超えるタイプの私募ファンドなどには、想定外の金利負担が重くのしかかるケースも充分に考えられます。今後は一層、ファンドの優勝劣敗の構図が鮮明となりそうです。
※「日銀による不動産融資への監視強化」関連報道の流れ
12/31日経新聞が第一報、1/5ロイターが否定、1/7毎日新聞が日経を追認
●オリックス不動産の外部成長試算(2006.1.1)
今年最初のターゲットはオリックス不動産投資法人とします。この投資法人は当初、規模の半端な物件を多数組入れていましたが、最近ではそうした中小ビルを一括売却し、競争力のあるやや大きめの物件を組入れる動きが続いています。運用報酬の面では、グローバル・ワン投資法人やケネディクス不動産投資法人とほぼ同等の標準的なレベルですので、新興REIT全般と比較すると無論かなり安いフィー体系ということになります。
試算にあたっては、第9期(平成18年8月期)の公式データを活用します。期中に取得予定の2物件の実質稼動期間が約4ヶ月なので、苦肉の策として、両物件の取得価格に2/3を掛けた金額が現状のポートフォリオに加わり、そこにさらに未発表の物件取得が上乗せされるということにして計算します。
結論から言うと、相当に低い利回りとなりますが、これは市場がこの投資法人のポートフォリオ戦略や運用実績を高く評価していることの表れなのでしょう。ただし、利益率の高い物件を外して、良質ではあるけれど利回りの低い資産の組み入れを続けた結果、ファンド全体としては、収益性が悪化している点に注意が必要です。
〔 試算の前提 〕
1)第9期の公式予想データを使用する
2)1.59倍のファンド膨張率は物件購入で1.75倍に拡大する
3)追加物件の利益率(純利益/取得価格)は現保有分を100とした場合75
〔 計算結果 〕
1)外部成長後予想分配金 12,918円(上乗せ幅904円)
2)外部成長後予想利回り 3.35%(時価771,000円)
3)利回りから逆算した価格
3.2%→807,000円 3.4%→760,000円 3.6%→718,000円
3.8%→680,000円 4.0%→646,000円 4.2%→615,000円
●ジョイントリートの外部成長試算(2005.12.25)
ジョイント・リート投資法人は目下、筆者のPF1位銘柄となっています。分散された資産種別・立地を評価し、ケネディクス不動産投資法人に対する相対的な値ごろ感を根拠に買い進みましたが、構造計算書偽造問題の影響がどこまで波及するのかが未だ見えない中ですので、リスクが極めて高い投資行動である点は否定のしようもありません。偽造問題では築浅の方が危ないというのが通説となっていますので、住居の平均築年数が1.92年であるジョイントリートは、やはり割を食う格好となっています。例の事件は既に、野村不動産系の非上場ファンドが所有するアーバン武蔵小金井に累が及ぶにまで至っていますので、引き続き関連ニュースからは目が離せない日々を送ることにそうです。
ジョイントリートは上場後に物件の追加取得を公表していますが、それに合わせて業績予想を修正してはいませんので、公式予想の分配金データは全くあてになりません。ちなみに、大和総研の中川雅人氏による新規に3物件が戦列に加わることを加味した試算では、平成18年3月期15,625円、同9月期12,321円となっています。一般事業会社と違い、精度の高い予想が出せるのもREITの特徴の一つですから、アナリストの予想は決して的外れなものではないと考えられます。なお、追加物件の利益率を25%割り引いて計算する筆者の単純なやり方では、新規3物件以外に追加取得がない前提で9月期12,104円、ファンド膨張率が1.75倍まで拡大すると仮定すると、以下のような数値となります。
〔 試算の前提 〕
1)第2期の公式予想データを使用する
2)1.58倍のファンド膨張率は期首までに物件購入で1.75倍に拡大する
3)追加物件の利益率(純利益/取得価格)は現保有分を100とした場合75
〔 計算結果 〕
1)外部成長後予想分配金 13,117円(上乗せ幅1,745円)
2)外部成長後予想利回り 5.30%(時価495,000円)
3)利回りから逆算した価格
4.6%→570,000円 4.8%→547,000円 5.0%→525,000円
5.2%→505,000円 5.4%→486,000円 5.6%→468,000円
●警戒を要するイーアセットの資産取得動向(2005.12.18)
今回の検討対象は、このところ軟調に推移しているイーアセット投資法人です。既にご存知の方も多いと思いますが、イーアセットは住居の比率が33.2%であり、そう高くはないにもかかわらず、耐震データ偽造問題で揺れるレジデンシャルREIT並に大きく値を崩しています。これは以前に他の方や筆者も言及した(注-1)、物件取得価格に対する疑念を、警戒心の強い市場参加者も感じ取っていることが一つの要因であると考えられます。
さらに悪いことに、オリジネーターであるアセットマネジャーズの決算説明会資料を見ると、イーアセットが追加取得を行っていないにもかかわらず、毎月100億円規模で同社が受託する不動産関連資産の積み上げが続いていると書いてあります。これは主に私募ファンドによる取得でしょうから、従来路線で行くと、その相当部分はいずれまた可能な限りの高い利幅を乗せてイーアセットに移し替えられると考えるのが妥当です。
REIT投資家から見れば、わざわざワンクッションおいて、中間搾取された後にイーアセットが購入するなどという流れは、デメリット以外の何物でもありませんから、市場がこの投資法人の先行きに悲観的になるのは無理もないことでしょう。さすがに、これだけ下落すると利回り採算を基準に投資に動く層が出てくることも考えられますが、より慎重を期するなら、イーアセットの“次なる一手”を見極めてからでも遅くはないのかも知れません。
(注-1)物件取得価格に対する疑念
アセットマネジャーズ系列から購入した5つのレジデンスの、賃貸可能面積1uあたりの単価は115.6万円(平均築年数2.47年)です。代官山や白金台・南青山といった好立地であるとはいえ、ファーストクラス物件への集中投資を謳うFCレジデンシャル投資法人のホテル・サービスアパートネントを除いた六本木・麻布十番などの11棟の平均が1uあたり83.4万円(同2.01年)であるのと比較すると、割高さが際立っていると考えられます。
●LCPに望むこと(2005.12.11)
前回のコラムを書くにあたって、12月2日に電話取材をした折には、「上場延期は検討しないのか?」との問いを即座に否定していましたが、結局エルシーピー投資法人は12月6日の日経朝刊にも報じられている通り、上場の一時延期を決定しました。「世間のマンション等の安全性に対する不信感の高まりに配慮した」としていますが、一連の騒動が、全物件の建物状況調査報告書を作成させた日本ERIに飛び火したことも、恐らく無関係ではないでしょう。
問い合わせの際、エルシーピーは「33物件には日本ERI以外にもデューデリジェンスさせているものがある」という事を強調していました。オリジネーター連合からの取得物件については、確かにそういうケースも十分に考えられますので、再調査をするにしても、さほどの手間にはならないかも知れません。今回の件は運がなかったとしか言いようがありませんが、あのまま上場しても悲惨な結果になっていたでしょうから、延期という判断は賢明だったと思います。
エルシーピーにはこれを期に、上場に失敗しないための“ファンド自体の設計の見直し”に期待したいところです。具体的には、@物件取得報酬を1.0%からケネディクス不動産投資法人と同等の0.5%に変更する、A購入価格の割高さが目障りなデザイナーズマンションカーザ・エルミタッジオを取得対象から外す、B地方の物件か或いはシニア物件などを追加して投資法人の独自色を強める、という3点を筆者が考える改善ポイントとして列挙しておきます。
一連の騒動以前からレジデンス銘柄に対する市場の評価が芳しくなかったことから判断して、投資家が“都心の良質なマンションを中心に投資”などと謳うファンドに飽き飽きしているのは確実です。今回の上場延期にあたり「物件を入れ替える可能性がある」と説明するエルピーシーには、ただ黙って嵐が過ぎ去るのを待つのではなく、臨機応変に最善の道を模索するチャンスを得たものと考えて、果敢に従来案を見直すだけの度量を見せて欲しいものです。
●迷走する日本ERI、不運のLCP(2005.12.4)
姉歯建築設計事務所による耐震データ偽造問題に絡んで、アドバンス・レジデンス投資法人などの建物エンジニアリングレポート作成者でもある、建築確認検査大手の日本ERIが揺れています。実際、同社では、この問題について当初は無関係とするリリースを出しておきながら、突如、現在調査中という内容のものに差し替え、その後は次々と欠陥物件を見逃していた事実が明るみになっています。
また、イーホームズ社長が国会中継で「日本ERIは偽造の問題を知っていたのに隠蔽した」と語ったのに対しては、怒りも露わに刑事・民事両面で告発することも辞さない構えだとしていながら、別方面からも問題を表面化させなかった事実を指摘され、大々的に報じられるに至っています。
日本ERIが精査した物件でも、休業や工事の中止に追い込まれるものがチラホラ出始めていますので、同社のこれまでの検査全般に対する信頼が揺らいでいるのは間違いないでしょう。今話題となっている、建築基準法に定められた建築確認と、J-REITのデューデリジェンス業務とは、同列に述べられる性質のものではありませんが、偽装を見逃したのと同じ建築士が関わっている可能性もあることは頭に入れておきたいところです。
既にニュースにもなっているように、偽造問題で名前の出た業者が関係していると発覚した為に、安全確認が取れるまで営業を中止しているホテルが全国各地にあります。販売予定のマンションで建築確認がイーホームズや日本ERIとなっているようなケースでは、大慌てで再調査に動く業者もあるでしょう。J-REITの場合はどのような対応となるのか、何が出来るのか、全ての取得予定物件を日本ERI
に精査させているエルシーピー投資法人の、今後の動きに注目したいところです。
●スターツプロシードの特徴&価格予想(2005.11.27)
スターツプロシード投資法人の特徴を一言でいえば、二物以下の小型物件の寄せ集めにより、高利回りを実現するファンドということになるでしょう。事実、立地は郊外や地方のウエイトが高く、最寄り駅へのアクセスも良好ではありません。また、平均築年数11.95年は、住居特化型の中では圧倒的に高い数値です。運用コストもJ-REITでワースト3に入りますが、これについては「資産規模との関係で相対的に高い」として、投資法人自らも認めています。(目論見書P110参照)
建物状況調査報告書の作成は、全ての物件を一流ゼネコンの前田建設工業が担当していますので、深刻な瑕疵を見逃している可能性は低いと思いたいところです。しかしながら、取得物件は、全体としてPML値が高くなっているため、地震災害に対して比較的脆弱なポートフォリオとなっています。ただし、これはJ-REITの中でも珍しいケースなのですが、スターツプロシードは全ての物件に地震保険を付保する予定であると、運用方針の中で明言しています。(目論見書P51参照)
耐震データ偽造問題が騒がれる中ですので、上場のタイミングは最悪と言わざるを得ません。ただ、東京グロースリート投資法人のようなファンドでも値を保っていることから解るように、中身よりも利回りを重視する個人を中心とした層による買いも期待できると考えられますので、公募割れは回避されるだろうというのが今回の筆者の見方です。市場が求める第二期の利回りを5.5〜5.7%とすると202,000円〜210,000円(推定PBR1.06〜1.10倍)が当初価格の目安となります。
留意事項としては、@JASDAQ上場ゆえ東証REIT指数連動投信の買いがない、A当初からファンド膨張率が高く分配金の増額余地が限られる、B上記予想価格は先行住宅系REITのPBRから判断して割安ではない、という3点を挙げておきます。
●アドバンス・レジデンスの特徴&価格予想(2005.11.20)
「原則として、取得時において築15年以内とします。」
これはアドバンス・レジデンス投資法人の投資基準に書かれている言葉ですが(目論見書P39参照)、言行不一致となっていることは、旗艦物件の日吉台学生ハイツ(築年数36.6年)の例からも明らかです。前にも述べたように、この物件が遠くない時期に問題が表面化しそうな既存不適格物件であり、しかもその前所有者が伊藤忠不動産だったとなれば、アドバンス・レジデンスがオリジネーターによる“体のいい厄介払い”に利用されたと考えるのが妥当かも知れません。(注-1)
ファンド全体を見渡しても、特に優れた要素は見出せませんので、伊藤忠グループの総合力を活かした組成がなされたという感じではありません。これといった特色のない住居系REITで、しかも運用報酬が高めとなっていますので、やはり価格面では苦戦を予想する向きが多そうです。他のレジデンス銘柄との対比で考えて、順当にいけば公募価格から10%程度は簡単に下落するところですが、伊藤忠ブランドの威光により、どのあたりで踏みとどまれるかが注目点となります。
第一期中に取得予定の2物件を加えたファンド膨張率は実に1.88倍となるため、早い段階で増資を意識しなければならないものの、当然の結果として見かけの利回りは高くなっています。少々甘口という気もしますが、筆者は今回、第2期を基準とした利回りで5.0〜5.1%となる440,000円〜449,000円(推定PBR0.95〜0.97倍)を当初予想価格とします。
(注-1)日吉台学生ハイツについて
目論見書には、建築基準法上の瑕疵を治癒するための処理をすると記載してあります。しかし計算上容積オーバーが解消されるとは思えないので、「治癒されるとあるが完治するのか?完治するならどういう特例が適用されるのか?」と問い合わせましたが、返答は「目論見書に記載されている以上のことは言えない」というものでした。ただ、「アスベストの問題はない」との回答はすんなり引き出せています。
●FCレジデンシャルの外部成長試算(2005.11.13)
少し古い話になりますが、日経ビジネス2005年9月5日号で「誰も知らないマンションバブル」と題する特集が組まれていました。記事では、供給過剰だった分譲マンション業界に不動産ファンドの一棟買いという神風が吹いた結果、販売用在庫が容易に捌けるようになった代わりに、賃貸向けに転用された物件が大量に出回っている構図がわかりやすく解説されています。高級物件への急激な賃料下落圧力という、一般にはあまり知られていなかった業界事情に青ざめた投資家も多かったのではないかと思います。
さて、今回はこうした事業環境を反映してか、公募価格比で軟調に推移する住宅系REITの一つ、FCレジデンシャル投資法人について、外部成長試算をします。この投資法人はファーストクラス物件を多数組入れていますが、実質上固定賃料型となっている物件(ファルコン心斎橋を含む)が全取得価格の63.0%に上るので、比較的賃料の下げ圧力には強いと評価して良さそうです。FCレジデンシャルの投資判断にあたっては、11月9日に公表された要約版説明資料も、良くまとまっていますので参考になるでしょう。
〔 試算の前提 〕
1)第2期の公式予想データを使用する
2)1.63倍のファンド膨張率は物件追加取得により1.75倍に拡大する
3)追加物件の利益率(純利益/取得価格)は現保有分を100とした場合75
〔 計算結果 〕
1)外部成長後予想分配金 10,440円(上乗せ幅559円)
2)外部成長後予想利回り 4.88%(時価428,000円)
3)利回りから逆算した価格
4.2%→497,000円 4.4%→475,000円 4.6%→454,000円
4.8%→435,000円 5.0%→418,000円 5.2%→402,000円
●既存不適格物件にご用心(2005.11.6)
アドバンス・レジデンス投資法人の取得予定物件の中に“時限爆弾”があります。物騒な言い回しを使いましたが、近い将来問題が表面化するであろうという意味で、やはりこの表現があてはまるのではないかと思います。私が言う“時限爆弾”とは容積率の規制により既存不適格となっている日吉台学生ハイツのことです。
この物件は第一期中の取得予定資産に含まれていますが、収益への貢献度という意味ではポートフォリオ内最高額のアルティスコート赤坂桧町よりも高くなると見込まれますので、アドバンス・レジデンスの旗艦物件と言って差し支えないでしょう。築年数36.6年という老朽化が進む物件ゆえに、そろそろ建替えを意識する時期にさしかかっています。
しかし、この日吉台学生ハイツですが、建替えを実施しようとする際には容積率の問題が顕わになると考えられます。土地面積4706.63uに対し、指定容積率が100〜200%に過ぎませんので、新築できるのはせいぜい現状の延床面積(15,801.61u)の半分程度の建物でしかないからです。リニューアル後は貸付面積が大幅に減少しますので、収益も当然落ち込むことになるでしょう。
建替え実施による建築資金需要の発生と、2年前後にまたがる賃料収入のストップ、新築後に満室稼動してもかつての収益に遠く及ばない・・・、私が“時限爆弾”と言ったのはこのためです。以上のようなケースがありますので、ファンドが築30年を超えるような古い物件を取得する際には特に、土地の容積率についても目論見書でチェックしておいた方が良いでしょう。
なお、同様の問題は既存不適格物件であるダイエー碑文谷(築年数30.6年)への依存度が高いユナイテッド・アーバン投資法人も抱えています。
●ニューシティレジデンスの外部成長試算(2005.10.30)
以前に中期目標株価試算と題するシリーズを連載していましたが、当時の計算方式は前提条件が少し甘かったように思うので、より厳しい見積もりで各投資法人の外部成長による収益の上乗せ幅について試算してみることにします。第1回は、新規上場の住居型REITに足を引っ張られるような形で軟調に推移するニューシティ・レジデンス投資法人が対象です。
同投資法人の運用報酬は、運用資産が1,000億円に達するまでは年率0.35%と安く、それを超えると0.5%に跳ね上がるという仕組みでしたが、案の定、すごい勢いで1,000億円まで積み上げて、資産運用会社の受取額を急増させてきています。取得報酬などの面でも高コスト体質となっており、のちの住居型REITの悪しき手本となっているような側面があります。
11月上場のアドバンス・レジデンス投資法人がこれを見習ってしまったのは残念な限りです。
〔 試算の前提 〕
1)第3期の公式予想データを使用する
2)1.63倍のファンド膨張率は物件追加取得により1.75倍に拡大する
3)追加物件の利益率(純利益/取得価格)は現保有分を100とした場合75
〔 計算結果 〕
1)外部成長後予想分配金 12,407円(上乗せ幅607円)
2)外部成長後予想利回り 4.64%(時価535,000円)
3)利回りから逆算した価格
4.0%→620,000円 4.2%→591,000円 4.4%→564,000円
4.6%→539,000円 4.8%→517,000円 5.0%→496,000円
●阪急リートの特徴&価格予想(2005.10.23)
10月18日の日経金融新聞1面で「資産運用の旗手たち」と題して、福岡リート投資法人の特集記事が組まれていました。福岡リートといえば1口50万円で発行した投資口を、あろうことか88万円というスッ高値で投資家に売りつけるという悪辣な手口で物議を醸し出したのが記憶に新しいところです。インタビューでは臆面もなく「正当性をアピールするため地元財界を巻き込んだ」とか「投資家のニーズにも答えていける」などと応じていますが、現状で上場時の公募・売出に応じた投資家に大損をさせていることについては、もちろん何ら触れられていません。
残念ながら、今週上場予定の阪急リート投資法人もこれとほぼ同様の手法を使って上場することになります。ただ、阪急リートの場合は50万円の投資口を62万円で売出すということですので、悪質さのレベルは相当に異なります。しかしやはり、投資口価格が「大幅に値上がり」して58万円になっても上場時に取得した投資家が含み損を抱えるという上場スキームには、えもいわれぬ嫌悪感を覚えずにいられません。こういうことをする企業グループに、果たしてクリーンな投資法人の運営が出来るのでしょうか?
目論見書を見ると、旗艦物件のHEPファイブの鑑定評価額が取得時よりも22億円あまり上がっていますが、利回りから考えて、含み益があると捉えるのは早計のようです。その他の物件では、鑑定評価額よりも高く取得することになる高槻城西ショッピングセンターの利回りが低すぎるのも気になります。なぜかこの物件だけ、評価をしているのはあまり名を聞かない立地評価研究所という会社ですが、高い売買価格に正当性を持たせるために、あえて高評価を提示する鑑定機関を選んだのではないかと勘ぐりそうになります。
阪急リートの特徴の一つとして、株式新聞では売上歩合契約の比率が51.1%にのぼるため、「景気拡大局面では賃料アップが期待できる」とコメントしています。これだけ読むと、店舗売上が悪いと収入の大幅減に見舞われるような印象がありますが、年間賃料の内訳(実績値)を見ると、売上歩合契約分2,130百万円の中には固定徴収部分1,805百万円が紛れ込んでいるため、実質上は総収入の約92%が固定賃料によりカバーされていたことになります(目論見書P65参照)。収益の安定性を確保しつつ、店舗売上の伸びによるプラスアルファを狙えますので、これはなかなか面白い仕組みです。
運用報酬・取得報酬はフロンティア不動産投資法人の約3割増しですが、福岡リートとはほぼ同等となっており、特に安いということもありません。3銘柄連続の公募割れという環境での出発となりますので、当初はそれなりに自己の投資判断に確信のある胆の据わった投資家以外には目立った買い主体が不在となる可能性があります。売出価格の62万円は、類似銘柄である福岡リートとの対比ではかなり割安となりますが、地合に引っ張られてこれを割り込むこともありそうです。筆者は今回の当初予想価格として、第2期を基準とした利回りで4.1〜4.2%となる605,000円〜620,000円(推定PBR1.21〜1.24倍)を提示します。
●DAオフィスの特徴&価格予想(2005.10.16)
数年来、輝かしい急成長の足跡を残してきたダヴィンチ・アドバイザーズが組成するJ-REITということで、一部に期待する向きもあったのかも知れませんが、蓋を開けてみたらとんでもないシロモノが飛び出してきました。DAオフィス投資法人は、平均築年数20.67年の古い都心のオフィスビルを中心に投資するファンドですが、既に述べてきたとおり、物件の取得価格が尋常でないこともあって、魅力薄の投資法人となってしまっています。なぜこのようなことになったのかは、同社の得意とする私募ファンドビジネスの実情を探ることで把握できるでしょう。
そもそも、ダヴィンチの運用する私募ファンドの想定利回りは他の業者と比較してあまりに高すぎるものが多いのです。パシフィックマネジメントが10%以上、森ビルが8%以上、とか謳っているのに対し、ダヴィンチの私募投信は先日発表された1兆円ファンドもそうですが、25%以上を目標にしていたりします。レバレッジだけではこんな数字は達成できませんので、利回りの実現には、確実な出口を確保して物件売却益で稼ぐほかありません。つまり、そのしわ寄せを受け、犠牲となるのがDAオフィスや今後上場予定のダヴィンチ系ファンド群というわけです。
J-REITの運用報酬は、特定の投資法人の決算データに各項目ごとの設定料率を代入することで銘柄間の比較が可能ですが、DAオフィスはケネディクス不動産投資法人と比べて、およそ5割もの高コスト体質となっています。また、資産運用会社に支払う物件取得報酬は、オリジネーター関連からの取得の場合は、外部の半分程度の費用に抑えるというのがこれまでの通例でしたが、DAオフィスはこれをも破ってきました。私募ファンド物件を押し付けるだけでなく、取れるところからはいくらでも利鞘を抜こうという意欲に溢れていることの証左と言えるでしょう。
新興REITの価格が振るわない中での上場ですので、やはり当初からの苦戦が予想されます。ただ、「地獄に堕ちろ!」と叫びたいのを我慢して客観的に評価すれば、ダヴィンチ・アドバイザーズの堂々たる過去の運用実績を背景としたネームバリューに支えられて、それなりの水準でとどまる可能性も高いのではないかと思います。第二期の利回りで4.3〜4.4%に基準を設定すると、当初予想価格は481,000円〜492,000円というレベルとなりますが、これでも筆者推計による株主資本の毀損を加味した実質PBRで判断すると、決して安いとは言えません。
●悪徳商法とビジネスの境界線(2005.10.15)
先日読んだ朝日新聞の記事に、大胆すぎる手口のために、すぐに社会問題となり、結局は行き詰る悪徳商法がある一方で、海外から持ち込まれるその手の商売(主に化粧品販売)の中には、無茶な利幅を取らないために違法性の判断が難しく、長く続くものがあるという記述がありました。こうした傾向は、通常の商いの世界でも同様と考えて良いのではないかと思います。即ち、極端な暴利を貪るようなやり方では必ずどこかで綻びが生じ、遠からず挫折に見舞われるということです。
国内屈指の私募ファンド運営会社であるダヴィンチ・アドバイザーズが組成するDAオフィス投資法人を調べていて感じたのは、まさにそういった懸念でした。同社が経営の柱に据える私募ファンド事業の受け皿という使命を帯びて設立されるDAオフィスの物件購入価格や運用報酬体系等のスキームが、目に余る惨状を呈していたからです。96億円で取得した旧銀座OMCビルとその東館を私募ファンドからDAオフィスに171.5億で”転がす”という案件たるや、その最たる例と言えるでしょう。
ダヴィンチ・アドバイザーズが目標とする「投資家とともに成長する」という企業理念を長期にわたって実現していくことを真に望むのであれば、「川上・川中・川下戦略」の川下を担うJ-REIT事業に対する取り組み方針を根本から見直すことが不可欠です。さもなくば、ダヴィンチが計画する出口戦略において重要な役割を果たすはずのJ-REITの資金計画に狂いが生じるのは、時間の問題となるのではないかと思います。
“出口”が詰まれば何が起こるのか、考えておく必要がありそうです。
●FCレジデンシャルの特徴&価格予想・後編(2005.10.10)
取得予定資産のうち、東京23区内にある16物件の賃貸可能面積1uあたりの購入単価は82.2万円ですが、同地域内におけるジャパン・シングルレジデンス投資法人やジョイント・リート投資法人の住居の数値がそれぞれ84.4万円、83.3万円ですので、それほど違和感はありません(注-1)。ファーストクラスの物件に特化すると謳っているだけあり、それなりに好立地の物件を確保することになっています。平均築年数は2.23年ですので、既存のどの投資法人よりも真新しい物件で構成されたポートフォリオとなる見込みです。
資産運用会社に支払う運用報酬のうち、総資産にかかる部分は当初年率0.2%と安く、第2期0.3%、第3期以降は0.4%と、段階的に値上げしていきます。物件購入時にかかる取得報酬は日本レジデンシャル投資法人やプロスペクト・レジデンシャル投資法人もそうなのですが、物件価格の1.0%となっており、かなりの高コストです。その他の運用報酬の事も考慮に入れると、トータルでは後発組の中では標準的ですが、全J-REITの平均と比較すると、高めの運用コストとなっています。
類似銘柄としてはジャパン・シングルレジデンス投資法人(平均築年数3.32年)が挙げられますが、公募割れが続くこの銘柄と比較して、FCレジデンシャルが特に優れている要素は見出せませんので、上場当初の価格はやはり弱含む展開となりそうです。借入比率が高く、分配金の伸びにはあまり期待できませんが、第2期を基準とした利回りで4.2〜4.3%が求められるとすると、価格帯459,000〜470,000円(推定PBR1.01〜1.03倍)といった水準が一つの目安になりそうです。
(注-1)違和感のあるレジデンス購入価格
イーアセット投資法人が投資する中古レジデンスの賃貸可能面積1uあたりの購入単価は115.6万円と、一般的な新築物件以上の価格となっています。売主である前所有者はオリジネーターのアセットマネジャーズが設立したSPCであり、前々所有者も同様に系列SPCとなっています。
●FCレジデンシャルの特徴&価格予想・前編(2005.10.9)
公募価格が仮条件価格帯の上限ではない水準に決定されたこともあり、FCレジデンシャル投資法人の価格推移については、厳しい予想をする向きが多いのではないかと思います。筆者もポートフォリオの中身やファンドスキームなどを調べましたが、残念ながら弱気のコンセンサスを覆すような材料は発見できませんでした。ただ、一部の投資法人にみられるような、「えげつなさ」も見当たらないという意味で、粗悪品が増えてきた後発組の割には、まともな投資法人に成長していくだけの潜在力を秘めているという見方も出来るのではないかと思います。
ファンドクリエーションが、2003年11月に運用を開始したオープン型投信レジット不動産証券投資信託から、最優良物件をFCレジデンシャルに持ってくる狙いは、経営資源をJ-REITに集中し、この分野で運用実績を積み上げることで同社の知名度を上げ、ファンドビジネスの業容拡大を目指すという意図があるものと推察されます。このように、J-REITに広告塔のような役割を担わせるという手法は、日本レジデンシャル投資法人を使ったパシフィックマネジメントによる成功事例がありますので、ファンドクリエーションがそうしたスタイルを目指すのであれば、それなりに誠実な運用が期待できると言えるでしょう。
ただ、同社は業歴が浅く、これまでの不動産ファンドの運用実績も、開示情報だけでは評価が難しいという面がありますので、もちろん過度の楽観も禁物です。つまり、オリジネーターについては、現段階では信頼に値する企業かどうかは未知数ですので、この点ではFCレジデンシャルの評価も低めに見積もっておくのが無難であると思われます。
●インリックスとDAオフィス(2005.10.1)
ダヴィンチ・アドバイザーズが組成するJ-REIT、DAオフィス投資法人の取得予定物件を調べていて、購入利回りに異常値が見つかったので、その理由を探ったところ、ある特定の鑑定評価会社の名前が浮かび上がりました。その名もインリックスです。同社に鑑定評価が任された物件は取得価格ベースで392.3億円、全体の49.3%にも上りますが、このポートフォリオの大きな部分を占める8つのビルの鑑定評価と取得価格が、ダヴィンチ・アドバイザーズのJ-REITに対する今後の取組方針を知る上で非常に重要な意味を持っています。
DAオフィスに組み込まれる物件の取得価格を加重平均した平均築年数は20.64年であり、既存の投資法人と比較しても相当に古い物件を買うという傾向が鮮明です。前出のインリックスに鑑定評価が依頼された8物件に限るとその数字は26.91年と、さらにきわどい数字になりますが、これらの物件のDCF法ベースによる鑑定評価を見ると、好立地のファーストクラス物件への特化を標榜するFCレジデンシャル投資法人(平均築年数2.20年)よりも低い利回りの、非常に割高なDCF価格が堂々と提示されているのに唖然とさせられます。
さらに驚かされるのは、DAオフィスの22物件は全て鑑定評価額と同額での取得となるのですが、この価額がDCF価格よりも高いのはインリックスが評価した8物件のみであるという点です。高すぎるDCF価格をさらに5%以上も上回る価格での購入を強いられることにより、DAオフィスの株主資本は当初から大幅に毀損することが避けられないでしょう。破格の高利回りを謳うダヴィンチ系私募ファンドの“出口”として物件を引き受け続けなければならないDAオフィスには、今後もこの手の取引が頻発すると考える必要がありそうです。
・インリックスが鑑定した8物件
平均築年数 26.91年
DCF価格 372.80億円(最終還元利回り5.04%)
鑑定評価額 392.30億円(左記価格で取得)
・中央不動産鑑定所・森井総合鑑定が鑑定した上記以外の14物件
平均築年数 14.55年
DCF価格 403.43億円(最終還元利回り5.84%)
鑑定評価額 403.43億円(左記価格で取得)
●水面下の脅威(2005.9.23)
いまだ投資法人からは何のアナウンスもありませんが、不動産業界はこのところアスベストの問題で揺れています。安価で耐火・断熱・防音性能等に優れていることから、アスベストはかつて、建造物の材料として当たり前のように使用されてきました。その使用時期は、東京都環境局の資料によると1963年〜1988年頃という長い期間にわたる為、ポートフォリオの大部分が中古物件であるJ-REITにおいても、この問題の影響は軽視できません。
ただ、「アスベストの状態を見極め、むき出しなら除去し、飛散しないなら解体時まで傷つけずに使うのが現実的」という専門業者の弁もありますので、即座に除去作業をする必要があるのは、危険性の高いと言われる「吹き付けアスベスト」やアスベストを混入したタイプの「吹き付けロックウール」に限定されると考えてよいでしょう。これらの使用時期は前者が1975年、後者が1980年頃までと前述の東京都の資料では指摘されています。
それゆえ、1963年から1980年前後に竣工・改修された物件を保有する投資法人は、アスベストの使用の有無を公表し、危険性の度合いや対応方針・除去費用等についても開示する必要がありそうです。特需により、処理工事費用が高騰しているものの、その負担はせいぜい分配可能利益の数%程度で済むでしょうから、該当物件の投資比率が高い投資法人は特に、情報開示によりおぼろげな不安も速やかに”除去”して欲しいものです。
DAオフィス投資法人 (ダヴィンチ銀座/アネックス 21.6%)
日本ビルファンド投資法人 (JFEビルディング 16.2%)
森トラスト総合リート投資法人 (三田MTビル 12.3%)
ユナイテッド・アーバン投資法人 (ダイエー碑文谷 11.3%)
野村不動産オフィスファンド投資法人 (イトーピア日本橋本町ビル 10.3%)
※「吹き付けアスベスト」の使用された期間(1963〜1975年頃)
に竣工・改修された物件の投資比率が高い投資法人
●筆者の投資判断・8月号(2005.8.13)
このところ軟調に推移しているREIT市況ですが、逆相関の強い長期金利の動向しだいでは、調整局面が長引きそうな展開となっています。プレミア投資法人を例にとると、アナリストミーティング資料の2006年4月期業績予想が前提とするファンド膨張率は1.77倍と、当サイトの中期目標試算の際に使う「1.75倍」に近い数値ですが、予想分配金は12,800円、
単純計算による利回り4.0%になる価格水準は640,000円(推定PBR1.26倍)でしかありません。
筆者の主観を入れて要求利回りを3.7〜3.9%に設定しても、価格帯656,000〜692,000円が投資判断でいう”ニュートラル”な水準となり、時価の691,000円と比較すると幾分厳しい評価となります。ただ、これは何もプレミアに限った問題ではなく、多くの先行上場組が、外部成長余地を考慮に入れても、似たり寄ったりの状況であることを付言しておきます。
このような環境下ですが、一部に相対的割安感が出始めている投資法人も存在します。日本レジデンシャル投資法人・東急リアルエステート投資法人・フロンティア不動産投資法人、さらに日本ロジスティクスファンド投資法人などもそれに該当します。これらの銘柄は7月の新規上場組には劣るものの、試算ではそれなりにいい評価がはじき出されますので、そろそろ買いを検討しても良い水準だと筆者は考えています。
その他の気になる事柄としては、目論見書でLTVの上限を60%と明記しているニューシティ・レジデンス投資法人の増資が近い将来見込まれること、分配金の権利確定が目前であることを考慮してもオリックス不動産投資法人のPBRに違和感があること、の2点を挙げておきます。なお、9/7付上場予定のイーアセット投資法人については、中期目標価格試算も集計済ですので、折を見てコメントしていく予定です。
全てのJ-REITが、投資家のためを第一に思って誠実に運営されているわけではありません。むしろその多くがオリジネーターの利益最大化のために利用される道具と化しています。投資判断をするにあたっては、そうした事情をまず理解しておくことが出発点となります。
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