郵政大臣への手紙
長谷川 貞夫
私は、昨年の6月から埼玉県大宮地区の「郵便貯金ICカードサービス」実証
実験に参加し、その後、ICカードによる電子マネー、デビットカードにおける
J-Debitのあり方などについて発言してきた者です。
今回、それらの延長として、郵政大臣、野田聖子氏に手紙を差し上げました。
皆様にご参考になれば幸いと思い、ここに紹介させていただきます。
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平成11年9月22日
郵政大臣
野田 聖子殿
長 谷 川 貞 夫
Email:pbb06564@nifty.ne.jp
拝啓、政務にご多用のことと拝察申し上げます。
私は視覚障害者ですが、郵便貯金を利用し、また「郵便貯金ICカードサービス」
実証実験に参加させていただいている者でございます。
そして、本年2月10日付けで、J-Debit(日本デビットカード推進協議
会)に関するお手紙を差し上げたこともございます。
ICカード実証実験につきましては、当初、店舗の端末機を視覚障害者が利用でき
ないことに気がつきました。
そこで、他の視覚障害者とともに、郵政省へその改良の旨のお願いをいたしました
ところ、平成10年12月までに、とりあえずの対処を行ない、平成11年8月まで
に店舗の端末機の本格的改良を実施してくださいました。この間の行政としての速や
かな対応に感服いたしております。
また、ICカード実証実験の関連で、バランスリーダーの開発につきましても、7
月27日に視覚障害者を招き「バランスリーダー開発の意見を聴く会」(仮称)を開
いて下さいました。きっと、よいバランスリーダーが完成するものと期待いたしてお
ります。
今回このお手紙を差し上げましたのは、郵便貯金の利用及びICカード実証実験の
体験より、次のことを郵政行政で実現していただくためのお願いからでございます。
よろしくご検討下さいますようお願い申し上げます。
1.郵便局のCD、ATMの数字キーを電話式にして下さい。
8月27日の「バランスリーダー開発の意見を聴く会」の折に、特に時間をいただ
き、既に関係職員の方に申し上げたことですが、ここで改めてお願い申し上げます。
それは、郵便局のCD、ATMの数字キーを電話式に改良していただきたいという
ことです。
郵便局のCD、ATMは、昭和59年の設置以来、点字及び音声による視覚障害者
対応ができていました。これは、民間の金融機関における、それらの対応が著しくで
きていないのに対照的でした。
現在、民間の金融機関は、ごく一部のものを除き、その後における機械の技術的変
更により、画面のタッチパネル化が進みました。そのため、この手掛りのない画面で
は、全盲の視覚障害者は、金額や暗証番号を全く入力できない事態になりました。こ
れはバリアフリーの立場から言えば、一層悪くなったということです。
これに対し、郵便局では、視覚障害者も、CD、ATMを利用することができま
す。
もし、郵政省で、郵便局のCD、ATMの一層の改良を行なうとすれば、それらの
機械の数字入力用キーを横一列式から電話式に変更していただくことです。
本年1月4日から、ごく一部の金郵機関と会社で実施を開始した、J-Debit
のシ
ステムにおいても、当初は、各店舗の端末機がまちまちのキー配列であったり、全盲
が全く利用できないタッチパネル方式で発足いたしました。
ところが、私達視覚障害者の申し出により、バリアフリーのためのガイドラインを
設け、電話式キー配列に統一し、またタッチパネル方式のものには、電話式キーを併
設するようになりました。結果的には、健常者にも、この方が便利であったかと思わ
れます。これは、言わば「ユニバーサルデザイン」になったわけです。
実は、この日本デビットカード推進協議会への申出は、大宮地区における「郵便貯
金ICカードサービス」実証実験の体験が大変参考になっているのです。
CD、ATMの設置された昭和59年当時は、既に押しボタンの電話式キーはあり
ましたが、当時は、まだCD 、ATM利用者の誰もがその電話に慣れているとは言
えなかったかもしれません。しかし、当時に比べ、圧倒的に各種の電話機が普及した
今日においても、電話機のキー配列につきましては、いずれの会社のものにおいても
共通です。
そこで、数字を入力する郵便局のCD、ATMにつきましても、この電話式キーを
採用するのが、視覚障害者だけでなく、利用者のだれにも共通に便利かと存じます。
視覚障害者の場合、なぜ電話式キーが便利かと申しますと、公衆電話の数字キー
「5」のように、そのキー表面に凸点がついていますと、それを中指で確認すれば、
点字を知らなくても、中指を中心とする3本指で、手を上下にわずかに動かすだけ
で、どの数字などのキーも自由に押すことができるからです。
郵便局における現在の横一列のキーには、その各キーの近くに点字がついていま
す。
点字がついていることは、どのような場合にもよいのですが、最近では点字の読め
ない高齢失明者が多く、また、点字が読める者でも、横1列のキーより、慣れている
ので現在では電話式キーが便利です。これは、この10数年間における電話事情の変
化によるものです。
2.郵便局の「ふるさと小包」などの振替端末機を視覚障害者も利用できるようにし
て下さい。
「ふるさと小包」の振替端末機についてですが、本年5月より主要な郵便局から順
に、いわゆるマルチメディア端末による利用が可能となりました。郵便貯金キャッ
シュカードで自動的に支払えるタッチパネルの機械です。最近では、その台数も20
0台近くに達しているようです。
私が特にこのシステムに注目する点は、いつから視覚障害者が、郵便局のCD、A
TMを現在視覚障害者が使用できるように、合成音声などで使えるようになるかとい
うことです。
現在、この端末機が扱う対象は、当初の5月における「ふるさと小包」だけでな
く、その後、「郵便局の振替端末メニュー」により、「ふるさと小包」、「デパート
特選便&バラエティーグッズ」、「観光券・チケット券」と増加しています。観光券
は、全国の観光地に分れ、またチケットには航空券まであるのに驚きました。このよ
うにメニューが豊富になりましたことは、郵便局がそれだけ便利な生活拠点になるわ
けですからよいことです。今後も、一層、その取り扱う範囲が増すものと考えられま
す。
民間のコンビニにこれによく似たマルチメディア端末が置かれ、旅行券、遊園地入
場券などの各種チケットが扱われているものもあります。
勿論、民営のものについても、視覚障害者が利用できるようにして欲しいのです
が、郵便局に置かれるものの場合、CD、ATMのように民営の手本となるよう、公
衆端末機のあり方を是非とも示していただきたいのです。
これからのマルチメディア時代において、それをいかに音声だけでも利用できるよ
うにするかは、視覚障害者のバリアフリーにおける基本的なテーマなのです。
3.家庭に簡易なカード端末を置けるようにして下さい。
「郵便貯金ICカードサービス」実証実験における、家庭に置く「移替端末」のよ
うな簡易なカード端末装置を家庭に置けるようにして下さい。
これは、郵便局に行くのが、身体的に不自由な障害者や高齢者には特に便利かと思
われます。
最近、民間の金融機関で、「テレホンバンキング」の機能の一つとして、電話によ
る現金の配達が行なわれています。障害者や高齢者の郵便貯金利用者を考えると、郵
便局においても、可能なかぎり、このようなサービスを取り入れる必要があります。
しかし、安全という面から考えると、電話口の口頭の申出だけで処理を行なうのは
危険が伴います。
その点、簡易端末が家庭にあれば、その端末機で接続できる電話番号とカードを指
定し、また現金の配達先も固定することにより、安全を確保することができます。簡
易端末における各種の設定は、利用者により決めればよいと思います。
◆視覚障害者などによる簡易端末の利用方法
(1)
貯金の残高照会、入金、支払いの履歴を確認する。
(2)
デビットカード利用において、安全のため、高額の口座カードから、他の自分の口
座(例えばボランティア貯金)などへ、自分の預金を5〜10万円程度移す。
この場合、1人の口座数制限を見直す余地があるかもしれません。つまり、これは
ICカードの「保留」に似た機能で、小額のカードは、日常の「ショッピング用カー
ド」ということになります。これからのデビットカード時代には、郵便貯金カードに
おける必要な機能かと思われます。
(3)
現金を下ろす場合、簡易端末で手続きを行ない、現金書留のように家まで届けても
らえるようにする。
一部の銀行が既にこのサービスを実施しているようですが、現金の配達は郵便業務
に依頼しています。この現金配達は、郵政事業だからできるのかと思います。それな
ら、郵便貯金の業務自体もこのようなサービスを実施するのがよいと思います。
この場合、安全のために、最高額の制限が必要かもしれません。また、障害者、高
齢者の利用も考え、手続きは、合声音声だけでなく、利用者の選択により、人による
対応も必要かと思われます。
(4)
郵便局における「ふるさと小包」などの振替端末の機能を簡易端末に持たせる。視
覚障害者の場合は、画面が不要ですから、この簡易端末の音声だけによる利用が可能
です。
この場合、郵便局のマルチメディア端末が音声化されていれば、その音声化ソフト
が、ほぼそのまま、この簡易端末で使えます。
これらの取引の場合、送り先などの文字入力が必要ですが、音声化された数字キー
さえあれば、視覚障害者にも文字入力は可能です。方法は幾つか考えられますが、こ
こでは省略させていただきます。
また、(3)と同様に、必要な場合は、電話で人による対応をし、カード操作と暗
証番号入力だけを、家庭で本人が行なうようにすることもできます。
以上は、私の個人的な意見ですが、これらを実行する場合は、日本盲人会連合、全
日本視覚障害者協議会、通信NETなどを通じ、より広く視覚障害者の意見を聴く必
要があると思います。
私の提案は以上のようですが、提案の内容を、あらかじめ視覚障害者及び、その関
係者に理解していただくため、この内容を、通信、点字新聞などにより、広く紹介し
ておきたいと存じます。
郵政省におかれましては、これからも視覚障害者への暖かいご配慮をお願い申し上
げます。
敬具
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