1999年11月19日(金)関視研数学部会資料
私の数学授業ノートより
        都立八王子盲学校 三崎吉剛

以下のものはインターネット上に書きこんだ数学の授業記録の一部です。
色々な方と意見を交換していますが、私以外のメッセージは省略してあります。
時系列順に配列しましたが、話題毎にわけてもあります。


1、数列の導入

5月9日
「64枚のハノイの塔」
金曜日は高等部普通科の遠足がありました。
そのとき帰りのバスのなかで私のクラスのある生徒が「先生は64枚のハノイの塔の回数を計算したことありますか?」というようなことを聞いてきました。

ハノイの塔とは、
--引用(ケイデッシュ「手づくりの数学」河出書房新社p37より)
ベナレスの大神殿のなか・・・世界の中心を示すドームの下に、一枚の真鍮の板がある。その板には、高さ1キュービット、太さがミツバチの胴ほどのダイヤモンドの針が3本しっかりと立っている。天地創造のとき、神様は、それらの針の1本に64枚の純金の円盤を積み重ねてお刺しになった。円盤は、一番大きいのが真鍮の板のすぐ上にあって、上にいくにしたがって順順に小さくなる。これがバラモンの塔である。絶対不変のブラーマの掟にしたがって、坊さんたちは明けても暮れてもうまずたゆまず円盤を一本のダイヤモンドの針から別の針へと移し替える。その掟では、役目にあたった坊さんは1回に一枚しか動かしてはいけないということ、および、別の針に移したとき、その円盤の下にそれより小さい円盤があってはいけないということが決められている。こうして64枚の円盤が、天地創造のとき神様がお置きになった針から別の針にすっかり移し替えられたとき、塔も神殿も坊さんもことごとくこっぱみじんに砕け去り、雷鳴とともに世界は消え失せるであろう。
--引用ここまで

数学の授業で3,4,5枚のときの場合を実際に紙で作ったもので行い、4枚の時の回数をもとに5枚の時の回数を求める方法を勉強しました。
さらにVDMに対応するパソコンのソフトでもやりました。

よく聞いてみると彼は3日かかって64枚の回数を計算をしたのだそうです!
一日3時間くらいといっていました。
そろばんに数をおいて点字でメモをとりながら計算したそうです。

生徒は「移動が終わると世界が終わるというのはどういうことでしょうか」といっていました。そこで、「1秒で一枚移動できるとしてどのくらい時間がかかるか計算してみたら」と話しました。

ハノイの塔を実際に遊ぶには大きさの異なる本を3冊用意して、下から大中小と重ねこれを机の上に3つの場所があると想定して上記のルールに従い移動させるとできます。普通高校などではわら半紙を半分半分・・・と切っていって重ねて教具としています。

3枚の時の最小移動回数は7回です。
4枚ではどうでしょう。
5枚ではどうでしょう。
そして64枚では?


5月9日
「お山のひっこし」
>  三崎さんのお話しした、塔をを山として
> 「おやまのひっこし」というゲームがあります。
> 内容は三崎さんの説明されたものとほとんど同じです。


これはまったく同じ「ハノイの塔」です。

> 三つのレベルがあって、ひとつは四つのブロックの移動。上から
> a.B.C.D.とあって他の場所に移動します。
> ふたつ目のレベルは八つのブロックの移動です。

このソフトは授業でも使っています。
8つの円盤の移動をある生徒が完遂しました。
このソフトは一度移動したら「まった」がかけられませんので、手数を最小にするため一度もミスはゆるされません。
今朝紹介した生徒とは違う生徒ですが、ある生徒が授業のなかでやりとげました。

その生徒いわく「三崎先生は8枚の移動をやったことあるの?」と聞かれました。
私いわく「やってません・・・」

私はその生徒の学級担任に8枚を完遂したことを報告しました。
担任は数学科ですので、「すごい!」と感動してくれました。

5月18日
「授業の話題からのひろがり」
授業のことで感想を書いていただくとそれをわが生徒に話すことができますのでうれしいです。
今日は中間試験ですので、あしたの授業でSさんのことをご紹介したいと思います。
2進法とハノイの塔と電子メールということで試験後の授業の話題にしたいなと・・・

> もう20年以上も前の話なので記憶が怪しいですが、
> ハノイの塔と似た考えをする知恵の輪でチャイニーズリングと
> いうのが「パズルの源流」(岩波新書だったかな)という本に
> 紹介されていました。

おー
このパズルはしっています。
わたしの持っている本では
池野他著「数理パズル」中公新書427の101ページに「チャイニーズリング 2進法で解く」というものがあります。
興味の有る方はご覧ください。

> ハノイの塔に対しても数値への対応ができないかと思い、以下の
> ような対応規則を考えてみました。

おもしろい方法ですね。
上にかきましたように明日の授業で紹介しますね。

とろこでハノイの塔についての「小説」があります。
根上著「第三の理 ハノイの塔 修復秘話」日本評論社99年3月10日1600円です。

伝説のハノイの塔が崩壊し、これを数学者が再建するためその理論をつくるというような話です。
空想数学小説といったものです。
小説のコーナーではなく数学のコーナーにあると思います。

昨日、秋葉原で電子投票の会議があり、わたしも参加させていただきました。
いきかえりにこの本を読んで、柴田さんの書き込みについてや授業のことを視覚障害をもつかたとはなしていたところ、「ハノイの塔」はどこで売っているか?という質問がありました。

ちょっと大きなおもちゃやさんであれば置いてあるのではないでしょうか。

その方は日点においてないのか?といっていました。
日点にはないですが、確かにそのままでバリアフリーのパズルです。

パズルの発案者は19世紀の数学者リュカという人です。この人はフィボナッチ数列という名称を使った方でもあるそうです。

6月20日
「数列の和の学習にオセロを使う」
昨日(6月19日)の数学の授業の様子です。

1年生2名と1年生1名からなるグループで点字1名、墨字2名の構成です。

朝、小学部の教材から小さな木製のブロックの教材を三つ借りました。
これは、たぶん、算数の数え棒のような教材ではないかと思います。

授業の始まる前にある英語の教員にそれでなにをするのか?と聞かれました。

今日は1^2+2^2+3^2+4^2という「級数」(という言葉は教科書にないですが)を学習するので、はじめに実際にブロックを積み上げてイメージをつかんでもらおうと思うと話しました。

教科書では「いろいろな数列の和」というところです。

これはキャノンボール問題とかいうもので大砲の弾の積み上げの問題のようですし、また別の本ではピラミッドの問題ともありました。正方形の底面をもつピラミッドの積み上げられた石の総数を求める問題でもあるようです。

授業では、3段の積み上げを実際にしました。上に積み上げると崩れるので横においていきました。

そのあとでピラミッド数という言葉を教えて
p1=1^2
p2=1^2+2^2
p3=1^2+2^2+3^2
などというものを確認した後に

晴盲両用オセロを2台用意して、オセロ盤に玉を並べて今のものを再現しました。上に積み上げるのではなくp3であれば、3*3の正方形に玉を並べその隣に2*2を並べさらに1*1を並べるといったようにしました。
(オセロ盤はとても便利なので、教材によく使用します。)

3*3や2*2などという数はオセロの玉で実現すると正方形の形になりますので、正方形数、四角数などと呼ばれています。

同じくオセロを使って、1^2,2^2,3^2などという正方形数をグノモンに分解しました。

グノモンもある図形数です。次回に紹介します。

6月20日
「グノモン」
今学期の初めの方で、すでに生徒にはグノモンを紹介してあります。
グノモンとは語源的には「曲尺」のことなんだそうで、オセロ盤でいうとL字の形に駒を置いたものです。ただし、L字の底辺と高さは等しくなるようにします。

たとえば、3*3の正方形に置いたときに一番左の縦一列と一番下の横一列で駒数5のグノモンができます。
2*2の時には、左の一列と底辺の一列で駒数3のグノモンが出来ます。
1*1のときは駒数1のグノモンです。

こうしてみると、グノモンは1、3、5、7、・・・となることがわかります。

またおもしろいことに、グノモンを小さいほうから足していくと正方形の形ができます。
1のグノモンと3のグノモンで2*2の正方形ができます。3のグノモンのL字型の隙間に1のグノモンが収まり正方形になるわけです。
1と3と5のグノモンでは3*3の正方形です。
これは、5のグノモンの隙間に1と3のグノモンで出来た正方形数がおさまり、正方形ができるというわけです。

こうしたことは、教科書的にいえば奇数を連続して足すと平方数となる、ということなんですけど、図形数としてみると生徒はおもしろがってくれます。
こうしたものもマグネットつきのオセロ盤を使って学習しました。

さて、先ほどの
p3=1^2+2^2+3^2
をオセロ盤に並べたものを並べ替えました。
いまのグノモンを利用したのです。

5のグノモンは3^2にひとつある
3のグノモンは2^2と3^2のふたつにある
1のグノモンは1^1と2^2と3^2の3つにある

すなわち
p3=1^2+2^2+3^2は1のグノモン3つと3のグノモンふたつと5のグノモンひとつの和でもあったのです。

そこで、これをオセロ盤並べてみることをしました。
一番手前に5のグノモンの形をくずしてその駒5を横に並べます。
その次の列に3のグノモンをやはり形をくずし、2列そろえてセンターと「一階」のセンターと一致するように並べます。
これで3階だてです。
さらにその上に1のグノモンを3こ縦に並べます。1の駒は3個並んだ下の駒の真中に縦に並べていきます。
すると塔のような形ができますね。
全部で1+2+3で6階だてです。

授業では、次に、裏返ししたオセロの駒を一階の左右に一個づつ置きます。次に、2階と3階の脇に2*2の四角数を左右にひとつ置きます。さらに4,5,6階の左右の脇に3*3の正方形数をおくことができます。

すると底辺が7で高さが6の長方形が実現します。

弱視の生徒は先ほどの塔の両側に正方形数が並びそれがふたつのp3であることに気がつき、声をあげていました。

全盲の生徒は手で触りやはり「ほーっ」と言っていました。

私はこの声を聞いて、「おお、この授業は成功だ!しめしめ」と思ったのです。

そして
p3=1^2+2^2+3^2は
先ほどの長方形7*6を3で割ればいいことが以上から明らかになったのです。

授業では、同じ事が他のピラミッド数でも可能かどうかp4でもオセロを並べ検証しました。
さらに、p100ではどうなるか、など推理し頭の中でオセロ盤をつくり並べることをしました。

以上で30分くらいだったと思います。

2、点字を教える中学の数学授業

5月22日
「中学校数学で点字を教える」

今朝、素数関連の資料を検索している途中に中学校の数学の授業で点字を扱っているという授業記録などのページがみつかりました。(どなたかからこちらへすでに紹介があったかもしれませんが・・・)
http://www.fuzoku.okayama-u.ac.jp/ml/kyouka/math/tenji.html

岡山大学教育学部附属中学校数学科のホームページで紹介されている授業は「点字で考える二進法」というもので川上先生が中学2年生に教えているものです。

「福島県立盲学校の小野祥一郎先生との出会いが、点字学習のきっかけとなりました。
小野祥一郎先生の「点字と私」のwww に感動しました。私は読みながら涙が出そうに
なりました。もちろん生徒にも紹介しました。」とありました。

もうひとつは
『点字の秘密』
http://www.nsknet.or.jp/~y_aoki/tenji.htm
です。

金沢市立高岡中学校 青木 芳文先生のつくられた「数学の部屋」というページからのリンクのひとつです。
ここには『点字の秘密』をはじめとしたたくさんの数学教材があるようです。
http://www.nsknet.or.jp/~y_aoki/index.htm

現在私のホームページからリンクを張っています。

3、素数の自習課題から

5月26日
「関視研出張のための課題からの発展」
先週の金曜日は山梨県立盲学校にての関東地区視覚障害教育研究大会に参会していました。
ですから、授業は自習課題をだしてありました。

数学のあるグループにはエラトステネスの篩により素数を選び出すことを課題としてだしました。

昨日授業で500番目までの素数の表(点字と墨字)をわたしながら素数の話をしました。
素数にはいろいろあり、4で割ると1余る素数はふたつの平方数の和に一意的に表すことができる・・・といった話です。

たとえば
5=2^2+1^2
13=3^2+2^2
などです。

それでこの4で割って1余る素数ともう一方の4で割って3余る素数の分布の話もしました。
両者の数を比較すると第2946番目の素数まで4で割って3あまるものがリードを続けるのです。
それで第2946番目の素数は26861であり、これが確かに4で割って1余ることを生徒に確かめさせました。

生徒にこれもふたつの平方数の和になるのだけど、こんな大きな数では確かめるのは大変かもしれない・・・
ということをいいました。
生徒は、やってくる!といっていました。
たいへんかもしれないから、やらなくていい!といったんですが・・・

まさかとは思ったのですが今日の授業では電卓や(盲人用)そろばん、そして頭脳を使って深夜まで計算してもとめてきていました。

うまく計算すると20分くらいででることもあるようで、同僚の社会の教員が昼食の時に生徒のこの話題を聞いて職員室で計算して答えをだしていました。
でも、生徒たちはずいぶん時間をかけたようです。

今日は生徒の知的好奇心にとても感動して、数論の未解決問題の「ゴールドバッハの予想」や「双子素数」の話をしてしまいました。

それから昨日の昼休みに計算した社会の教員は、解の一意性に興味をもったようでした。

4、数式の音声読上げ 全盲生徒のための電子数学教科書

8月21日
「HTMLと数式表現」
数式をHTMLで表現することはなかなか難しいです。
さらにそれをどのように音声で表現するかというのも問題がありそうです。

近い将来のバリアフリー教科書としてHTML形式によるものが考えられ、全日盲研情報処理部会で少し話題になりました。
そのとき数学の記号などはどうなるんだろうか、と考えてちょっとメモをつくりました。

現在のHTMLにはTEXなどで作った記号の画像を貼り付けるということを別にすれば数学記号の表現力はあまりないです。
そこで、以下の提案がW3Cで検討されているとのことです。

http://watch.impress.co.jp/internet/www/article/980225/mathml.htm
をみますと、

--引用ここから
 インターネット関連技術の標準化策定を行なう団体、World Wide Web Consortium(W3C)は24日、WWW上で数式を表現するためのマークアップ言語「Mathematical Markup Language(MathML)」を勧告案として公開した。同案は今後W3Cの会員により約6週間にわたって検討・投票が行なわれることになる。

 MathMLはXML 1.0に準拠し、数式の表記用と、数式の意味を伝えるための2種類のタグを用意している。これにより、単に数式を表示するだけでなく、HTMLファイルにMathMLで作成された数式を組み込むことによって、クライアント側でXML対応アプリケーションを使って数式を直接処理することもできるようになる。
--引用ここまで

とあります。

これが一般化すれば画面上にはきれな数式がでてくるのでしょう。でも上に書いたようにそれをどのように音声にするのか、ということがあるのではないでしょうか。

さらに
http://home.twin.ne.jp/WWW/HTML/math.html
には

--引用ここから
数式タグ

数式は、HTML 3.0 で利用できますが、ブラウザとしては Arena や W3 for Emacs のみが一部をサポートしているのみです。
--引用ここまで

とあります。

私のホームページhttp://member.nifty.ne.jp/ymisaki には上記のHTML 3.0の数式タグにあたるらしい<sup>〜</sup>や<sub>〜</sub>をたくさん使ってしまった文章「1999年夏休み研修レポート 和差分法を使ったべき乗和の公式の研究」というのがあります。

もしかすると音声でアクセスするとバリアが生じるかもしれません。
あとでチェックしてみようとおもいます。

また、HTMLとTEX(という数式などを表示できる組版言語)との変換や、点字への変換の研究などがあります。WEB上に報告やソフトがあります。
こうしたものも将来の視覚障害教育のことを考えて、少しづつ調べてみたいと思っています。

11月19日(金)に関東地区視覚障害教育研究会の算数・数学部会が都立久我山盲であります。私も出席して発表してくる予定ですが、そのとき話題にしてみようかとも思いました。

8月26日
「慶応大Nさん紹介によるRAMAN氏の数式読み上げの研究」
慶応大学のNさんが紹介してくださったhttp://www.cs.cornell.edu/home/raman/には

Speeking of Mathematics
Braian Hayes

というものが掲載されています。

ラマンさんという全盲の大学の先生が作った数式読み上げソフトの紹介がされています。
A4で7ページほどです。

ざっと読んでみたのですがとてもおもしろかったです。
以下簡単なメモです。

通常の言語は音声から始まり、これが書くということにつながっていったので、音声化はたやすいが、数式は書くことからはじまっているのでそうはいかない。

数式は、左から右に読んでいくということでは理解しずらいということでもある。
例えば(こういう例が書いてあるわけではないですが)「(a+b)/(c-d)という式をそのまま「かっこaプラスbかっこスラッシュかっこcマイナスbかっこ」と読むこともできますが、分母がcマイナスd分子がaプラスdと読んだ方が分かりやすい。
(実際にはアスターはラテフの数式を解析の対象にしています。)

そこで、アスターというラマンさんが作ったソフトは、数式の意味解析をまずおこなって、そののち、音声で読み上げるということをしている。

また音声読み上げもいろいろ認識しやすいように工夫されているようです。例えばx^n+1とx^(n+1)を聞き分けやすくするために上添え字は高い声で行う。

式の音声でのブラウジングも可能であり、複雑な式の構造を声でさぐることもできる。この構造は先の構造解析によるもの。

とても雑駁ですが、以上のようなことが書いてあるように思います。

10月10日
「日大山口先生達による視覚障害者のための数式読み上げの研究」
昨日(10月9日)日本大学で「視覚障害者のための数式音声読み上げ」の研究成果の途中報告やデモがありました。
これは日本大学の山口先生が主催したものです。

数人の数学の得意とする全盲の方たちがいらしていました。
その方たちはLaTexを生業とされているようでした・・・

私は、招かれた側としてはある意味では唯一の晴眼者でした。
盲学校で数学を教えていてなにやら音声読み上げでもいろいろいっているということで招いていただけたようです。

日大の山口先生はご自身弱視であるために、数学の論文を読んでもらうことがあるそうです。そのときに英語であればどのように読むかという標準があるが、日本語ではないということでまず数式をどのように読むと良いかという研究を開始されたそうです。

その後九州大学の鈴木先生とであい、今回のLaTeXを音声で読み上げる研究をすることになったそうです。
鈴木先生はLaTeXと点字の変換の研究の指導をされているということです。

さて、「中身」はWZに書かれたLaTeXファイルを、読み上げるマクロです。読み上げは98リーダーです。
LaTeXのtagを適当な音声に置き換えたり、ブラウジングを行ったりするものです。

1、どのようにtagを音声で置きかえるか
(例えば、ルートの中にa+bという式があったときに、音声で「ルートa+bルート終了」というようにいっていましがた、冗長かもしれませんね。
「終了」だけでいいかもしれません。もし、そうであれば言葉よりサイン音の方がいいでしょう。ただ式が入れ子になってくるとただの終了ではすまないかもしれません。などなど)

2、どのように数式をブラウジングできるとよいか
(例えばルートの中にルートがある2重根号の式について中の根号は外とは独立に読めるとよいとおもうのです。今回のはそのような仕様では無かったです。などなど)

といった検討事項がありそうです。

さらに、
3、上記のブラウジングをどのようなキーに割り当てるか。
という検討事項もあるようです。

このマクロは山口先生の外部仕様書に基づいて茨城大学のマスターの方がつくったそうです。
当日いらしていて発表を行っていました。

私も評価に協力することになり、マクロをいただいてきました。
上に書いたことの他に色々思うところがありましたので、実地での検証を踏まえつつ、ここにも内容を書いていきたいと思います。


5、2学期の授業 場合の数

9月18日
「生徒の発見の発見」
昨日の数学の授業のことです。

普通科の私の数学のグループでは、1学期の数列に続き2学期は「場合の数」といわれる分野に入りました。数学では「離散数学」と呼ばれる分野として接続されています。

しばらく「導入」で教科書を離れていました。数学者がいう「鳩の巣原理」にもとづく問題をやっていました。
今日はじめて教科書にはいりました。

「問題が3問あり、それぞれに、まるかばつをつけるとそのつけ方はどれくらいあるか?」といった例題をやりました。

1問だけならまるの場合とばつの場合で2通り、2問ならば、まるまる、まるばつ、ばつまる、ばつまつ、の4通りといった具合に枚挙してといていました。

1問のとき2、2問のとき4、3問のとき8、4問のとき16といった場合を枚挙して上げいって、5問のときはいくつになるか予想してもらいました。それぞれ倍倍になっていくので32ということでした。

これを説明して、今度はそれでは20のときはいくつかな?と質問しました。
生徒たちは(といっても3人だけですが)これに挑戦していました。

ある全盲の生徒はそろばんを出して、ある弱視の生徒は電卓でやっていました。
2倍の計算をしていったのです。

やがて、1048576通りという答えを二人の弱視生徒が出しました。そろばんの全盲生は、電卓でずるい!といっていましたが、電卓を使っていたのは実は一人だけでした。

他の一人の弱視生徒が、私は使っていない!といって自分のやった方法を説明しました。

その生徒は
2問のとき4、4問のとき16をみて2問のときの場合の数をかけ合わせると4問のときの数になることに気がつき、8問のときの数256が4問のときの数16と16の積であることに気がつき樹形図というものでそれを証明したのでした。

4問+4問=8問ですが、4問のときの場合の数256を256+256とすると今度は8問のときの場合の数になることを見つけたのです。

それで10のときの10241をふたつかけ合わせ1048576を求めたのでした。
つまり10問+10問=20問のとき、10241と10241のかけた結果は20問のときの場合の数になるというわけです。

私は、生徒の素敵は発見を発見したのでうれしくなりました。
授業はこうした予想外のことがあるからやめられないですね。

そのあとこれに関連した対数の発見の話をしてしまいました。

私は家に帰る途中、志賀浩二著「数の大航海 対数の誕生と広がり」という本を買いました。
これは最近出版された本で上記の生徒の「発見」したことなどを歴史的に書いているものです。

上記の本によれば、等差数列と等比数列の比較からかけ算を足し算に直すことができるということが16世紀のヨーロッパで広くしられていまいした。

0 1 2 3 4 5 6 7 8・・・という初項が0で公差が1の等差数列と1 2 4 8 16 32 64 128 256・・・という初項が1で公比が2の等比数列を比較するのです。

するとたとえばはじめの等差数列で3項目の2と6項目の5を足すと8になりますが、対応する等比数列の3項目は4であり、6項目は32ですが、4と32をかけた答えは128であり、等比数列の8項目の値になっているのです。

乗法を加法を利用して計算できることが可能なのです。しかし、等比数列は2項目の2と3項目の4の間の3に対応する等差数列の値がないです。

そこで、ネピアという人が等比数列の3などの対応する等差数列に相当する数を新たに発見したのです。かれはそれをロゴスの数(すなわち目に見えない理想の数)となずけたのです。

これによって数学ではlogという記法が使われるようになったそうです。

教科書になぜ対数のことをlogと書くのか知らなかったのですが、こうした背景があったのですね。

今日の授業で上記の本を少し読んであげました。

9月21日
「全盲生徒と樹形図モデル」
今学期は私の教えている数学のあるグループでは「場合の数」にはいりました。
前回は教科書の樹形図というものを使いました。
これは、場合の数を図示するひとつの方法で、木の枝分かれのように記述されるのでこの名称がついています。

弱視の生徒はそのまま書いたりできますが、点字使用者にはそういうわけにはいきません。
教科書には点図があり、これをよみとってもらうことにしました。

念のためレーズライタで写してもらうと違うものを書いていました。これは教科書の樹形図の枝分かれの結節点のところが離れているためによくわからなかったようです。

教科書では、結節点の間に丸の図やばつの図が書いてあるためにこの生徒にとって理解しづらくなっているというわけでした。

そのときふと思って、MSDOSの階層構造の話をしました。この生徒はパソコンを使っているからです。
ピンとこないようでしたが、今日ちょっと脱線してみんなにファイル構造と樹形図の話をしてみようかなと思っています。

点字での樹形図やファイル構造のうまい記述方法はあるでしょうか。

6、数式処理ソフトやプログラム言語を使用した授業

10月8日
「スクリーンリーダーoutSPOKENがもたらす全盲生徒の数学教育へ可能性」
私は実は数学を盲学校で教えていますので、数式処理ソフト(文字式、多項式、極限、微積分などなどをソフトで計算するものでRISA/ASIRというもの)や有効桁の大きい数値計算ソフト(たとえば(仮称)十進BASIC)などが音声で出力などできるといいなとおもっていました。

これらはどちらもMSWIN上のソフトです。
RISA/ASIRはftp://endeavor.fujitsu.co.jp/pub/isis/asir
(仮称)十進BASICはhttp://hp.vector.co.jp/authors/VA008683/
より最新版が入手できるそうです。(RISA/ASIRについては確認していません。)

98リーダーやPCトーカーではだめだったのですが、outSPOKENでしゃべるようです。
先ほどお試し版で試してみました。うまくいきそうでした。

盲学校の数学教育に影響を与えるかもしれません。

10月9日
「数式の表示とそのスクリーンリーダーによる読み上げ」
> outgrammerをstandardにしておくと、
> 分数や階乗が2行に渡ってしまうので読み上げるの辛いかもしれませんが、
> outgrammerをtexにしとくと、TeXに慣れている人は簡単にわかると思います。

数式処理ソフトRISA/ASIRでは、例えば、x^2やa/bといった表示しかできません。
ですから入力した式や出力した式を音声で読み上げることがすぐにできます。
商業ベースのソフトのDERIVEでもこうした表示モードを持っていたようにおもいますが・・・
いずれにせよ、TeXやなんらかのテキスト出力ができないとスクリーンリーダーではお手上げですね。
幸いにRISA/ASIRでは可能なのです。(というかそれしかできない・・・)
そしてそれをoutSPOKENが実際に読むことができました!

こうした数式処理ソフトが全盲の生徒の数学教育をうまく支援してくれることを期待しています。
便利なそろばんも文字式の扱いには無力ですからそれを補ってくれるといいと思うのです。

どんな使用方法をされているのでしょうか。
全盲の人が数式処理ソフトを使用するにあたって、なにかアドバイスがありましたらお願いします。


10月9日
「数式処理ソフトRISA/ASIR+outSPOKENによる階乗の計算の授業」
数式処理ソフトというのがあり、文字式の計算や微分積分などをやってのけます。
以前ご紹介したRISA/ASIRというフリーのようなソフトもあります。
このRISAがoutSPOKENで読めるので授業で使ってみようと考えていました。

本日、中間試験も終わったのであるグループでみてもらいました。
弱視と全盲の生徒に数式処理ソフトRISAでいろいろためしてもらいました。

私がfacという関数の機能をあてるようにいうと、いろいろ数値をいれてこれがなんであるかあてていました。
結構おもしろがってくれて、全盲の生徒は自分のパソコンにいれてくれといってきました。

デモ版について再インストールの許諾を確認して、いれてあげようとおもったのですが・・・

ところがoutSPOKENは彼のもっている9821では動かないのでした。DOS/V専用です。
試しに学校の9821にいれてみましたが、テンキーでカーソルを動かすことができないようでした。
ユーザー補助でテンキーでマウスを動かせるようにしても音声読上げが機能しませんでした。

他の弱視の生徒はiMacの「グラフ計算機」というソフトで2次関数のグラフをいろいろかいていました。
そのうち指数を3にしたり4にしたりすると、横にいたもう一人の弱視生が「4次関数とか5次関数なんてならってないよ!」なんていっていました。
5次関数の様子をみて「ほーこんなになるんだ!」なんていっていました。

10月20日
「RISA/ASIR+outSPOKENによる数式の因数分解」
今日も数学の授業でRISAとoutSPOKENを組み合わせて授業をしてみました。
a^2-1、a^3^1、a^3-1・・・という式を次々と実数の範囲で因数分解することをしました。
そしてなにか法則性がないかさぐるというわけです。

RISAではfctrという関数に式をいれると因数分解してくれます。

弱視の生徒も、outSPOKENを使用している全盲の生徒も操作にはなれてきたようです。

10月21日
「いろいろな数式処理ソフトの情報」
> > 全盲の人が数式処理ソフトを使用するにあたって、なにかアドバイスがありましたら
>
> 利用するにあたっては特にないです。
> DOS窓で使うことの出来るsoftwareをよく探すことくらいです。
> 特にUNIX使いはCUIを利用する事が多いので、
> 数式処理ソフトのような理系好みのsoftwareについては、UNIX上に選択肢があります。

盲学校の教育現場ではUNIXを音声で利用するという状況ではないです。
ネットワークの整備によってしだいにハードルが低くなってきているようにおもいますが・・・

> cygwin(http://sourceware.cygnus.com/cygwin/)を使えば、
> UNIX上のCUIなsoftwareがDOS窓で利用出来るようになります。

そんなものがあったんですか!
うまくいけばVDM100Fで音声にのるかもしれませんね。

> それから環境整備に苦労するのだから、
> あまり特殊なsoftwareとか、この先どうなるか分からないsoftwareに
> 依存しないことです。私の紹介したJACALはopen sourceのsoftwareで、
> 長い間利用することが可能だと思います。

JACALのwebサイトをみると
http://www-swiss.ai.mit.edu/~jaffer/JACAL.html
DOS版はFDで供給するようですね。
ちょっと面倒かな・・・

数式処理ソフトの部屋http://www2.gunmanet.or.jp/mow/math/suusiki/index.htmというところを見ると、MuPADhttp://www.mupad.de/が紹介されてました。

UNIX、Linux、Win95、Macintoshに対応しているそうです。ダウンロードできるそうですが、約7Mということでやめときました。
どこかで入手してスクリーンリーダーとの相性を調べてみようと思います。

そこには他に
Mathcad(マスキャド、住友金属工業)
カルキング(株式会社シンプレックス)
中学校数学「数式処理ソフト」(東京書籍株式会社)
が紹介されていますが、サンプルの計算結果表示をみるとグラフィカルな記号をつかっていて、音声にのらなさそうでした。 

> 個人の枠を超えた環境整備の方向性については、MathMLに尽きます。
> MathMLが普及するまでは、LaTeXがその橋渡しをしてくれるでしょう。

数学の電子的教材をどのようにするか、ということでこちらにも関心があります。
こちらの方は、数式表示の言語をどのように音声ユーザ用に読上げるかという大きな課題がありますね。

このことに関して夏に、慶応大のNさんが以下の情報を教えてくださいました。
T. V. Raman のホームページは http://www.cs.cornell.edu/home/raman/

この読上げ仕様については日大の山口先生の研究がありまして、ソフトの評価にかかわっていますのでこれを通して考えてみたいと思っています。これはLaTeXの数式の読上げの研究です。

10月31日
「(仮称)十進BASIC+outSPOKENによる素因数分解」
あさってから八王子盲の文化祭です。
で、土曜日は2時間目以外は文化祭の準備でした。

その2時間目の数学の授業では、outSPOKENで(仮称)十進BASICを操作し、素因数分解をしてもらいました。
弱視の生徒はスクリーンリーダーなしです。何回か紹介した数式処理言語RISAを使っている授業の生徒たちです。

(仮称)十進BASICはフリーソフトでhttp://hp.vector.co.jp/authors/VA008683/から最新版を入手できます。
数学の計算などに威力を発揮するように桁数の大きな計算が正確にできます。JISFull BASIC規格に準拠した問題解決指向のBASIC言語処理系です。

以前数学の授業でUBASICというDOS上の数学計算向きのフリーのBASICを使ってみたことがあるのですが、VDMではうまく読めなかったのです。
でもこのWIN上の(仮称)十進BASICはoutSPOKENでしっかりと読めていました。

授業ではまず、私が(仮称)十進BASICにサンプルとしてついてくる素因数分解のプログラムを呼び出しました。

以下、outSPOKENで行った操作を書いて見ます。結構面倒ですが、でも出来るということがうれしいです。
生徒は1、2回私とやってあとはほとんど自分でやっていました。

テンキーの8の上の/キーを押すと読上げのポインタがそのプログラムの書いてあるウィンドウの上部枠内のメニューバーのとこ
ろへ移動します。メニューバーは上下に2段になっていてますので、上の段へテンキーの8のキーで移動します。

さらに、そのバーのなかを右横方向にテンキー6で移動し、実行ということろでクリックに相当するテンキー5を押してプルダウンメニューを開示します。
テンキー2のキーでその中を下におり、実行のところでテンキー5を押すのです。

すると、素因数分解プログラムが起動し、数値入力のウィンドウが手前に開きます。
入力のカーソルと「擬似」ポインタはそちらへ移動しています。必要な数値をキーボードから入力して、テンキー6でOKボタンへ移動しテンキー5を押します。

これで素因数分解が開始されます。
結果は、また別のウィンドウにでますので、これを読上げます。
次の数値入力のために、この結果ウィンドウを/キーとテンキーを使いとじ、プログラムウィンドウに移行し、最初の動作を繰り返します。

弱視の生徒も全盲の生徒も、やがてなれてくるとオーバーフローになるような大きな数値をいれてためしていました。

複数のウィンドウが開くソフトですので、使えるかなと一時は思いましたが、生徒の使用している状態をみていて大丈夫だと思いました。

さて、上のoutSPOKENの操作は最適なものかはわかりません。試行錯誤でやっている操作です。/キーの意味もその時間に発見しました。
もっとうまい操作方がありましたらおしえてください。

FEPのウィンドウが手前にあるときは、/キーを押すとそこへいってしまうようですが・・・

11月8日
「outSPOKEN製品版到着」

先週末にoutSPOKEN製品版がとどきました。これで「これはデモバージョンです。」
というアナウンスから解放されます。
いやそれ以上に詳しい墨字マニュアルがついて来たのでうれしいです。

今日は、理療科の生徒の統計の授業で、(仮称)十進BASICを使って確率の問題をシミュレーションしました。
n人いたときの同じ誕生日を持つ人がいる確率という問題です。すでに、歴代総理大臣の生年月日を使用して「実験」をしたり計算で求めたりしていますので復習になります。(この確率はとても意外なものです!)

さて、(仮称)十進BASICにはこのシミュレーションのサンプルプログラムがあるのでこれで、人数をいれて確率を算出しました。
なれてきたら、確立を0.1刻みになるような人数を推測して求めノートにメモをしてもらいました。

おもしろがってくれました。全盲の生徒もoutSPOKENになれてきたようです。

今日の理療科の生徒にしろ普通科の生徒にしても、習熟がとても早いです。

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