郵政省の大宮地区「郵便貯金ICカードサービス実験」における新型端末機

                                        長谷川 貞夫
                                          E-mail:  pbb00564@nifty.ne.jp
                                          (1999年9月4日)

△1.はじめに

 埼玉県大宮地区で行なわれている「郵便貯金ICカードサービス実験」のシ
ステムにおいて、店舗の端末機が改良され、新しい端末機に置き替えられつつ
あります。この置き替えは、8月から9月22日までに行なわれます。

 郵政省のこの改良は、昨年9月からの、視覚障害者による問題提起と同シス
ムの改良の希望に応えたものです。

 昨年2月からの同システムにおける店舗の暗証番号入力の端末機は、キー配
列が電話式と異なり、いわゆる電卓式キー配列でした。

 この電卓式キー配列とは、最下段に「0」があり、下から2段目が「1,
2,3」、同3段目が「7,8,9」、同最上段の4段目が「7,8,9」と
なっているものです。

 その上、数字キーの「5」には、公衆電話機に付いているような凸点があり
ませんでした。

 視覚障害者側の希望は、「店舗に置かれる端末機のキー配列を、視覚障害者
だけでなく、健常者も含め、日常的に使い慣れている電話式キー配列にして欲
しい」、「金額表示を音声化して欲しい」、「表示の文字が弱視にも読みやす
いようにして欲しい」などでした。

 電話式キー配列ですと、数字「5」に凸点があり、数字の相対的位置関係が
直感的にわかりやすいということもありました。

 昨年の10月に、参議院議員の堀利和氏の斡旋で、参議院会館において視覚
障害者側と郵政省、大蔵省、通産省の関係部局の人と情報交換が行なわれまし
た。

 その後、11月になって、郵政省が、本省の会議室に視覚障害者とその関係
者を招き、点字シールを、電卓式キー上に貼るという、とりあえずの案を提案
しました。誠に速い対応でした。
 そのシールは、電卓式キー配列の端末機でも、指先の触覚で数字キーがわか
るように、「5」に凸点、「1」に「1」を連想させる縦の凸線、また、「0」
に「0」を連想させる輪状の凸線を付けるというものでした。
 シールは3種類の大きさが用意されましたが、視覚障害者の意見で、最も大
きいものがよいということでそれに決まりました。
 郵政省の努力により、12月18日までに、この点字シールを貼る作業が完
了しました。

 この直後に、平成11年度の補正予算として、大宮地区の端末機を、新しく
電話式キー配列のものに置き替えることが認められました。
 これにより、平成11年の夏から秋頃までに、大宮地区の端末機が電話式
キー配列のものに置き替えられるという予定を聞いていました。

 以下、この報告は、大宮地区の店舗で、それが実行されたのを、実際に見に
行って試した経験に基づくものです。


△2.端末機の種類

 端末には、オフラインの「ハンディターミナル」と、「POS連動型」の2
種類があります。
 前者は、ケーブルがなく携帯型で、後者はケーブルでレジにつながっていま
す。
 今回私が体験したのは、百貨店の「そごう大宮店」におけるオフラインの
「ハンディーターミナル」でした。


△3.端末機の概要

▲大きさと形状

 以下における長さの数字は、おおよそのものですから、各数字の「約」を省
略します。

 端末の大きさは、横10センチ、縦20センチ、厚さ3センチです。
 手前の12センチがキー部分で、その向うが表示部分です。
 キー部分は、暗証番号入力時に、手もとが盗み見られないように、奥と左右
が高さ2センチの手隠しの壁で囲まれています。
 奥の壁の長さは8.5センチで、左右の壁は11センチです。この左右の壁
の最も手前は、直角の部分を切って斜めになっています。
 表示部には、横6センチ、縦3センチの液晶表示があります。
 カード挿入口は、端末の後面です。

▲キーの種類と配列など

 手隠し部の内側に24個のキーがあります。
 奥の壁に沿って、横一列に、紫色で横長の楕円形の「F1」〜「F5」の機
能キーがあります。
 「F1」キーの手前に、点字シールを貼ったもので「はい」、「F5」の手
前に同じく「いいえ」とあります。
 これは、買物において、最終的に「確認」と「確認しない」を意味するもの
です。
 「F3」は、店舗側のキー操作による、「お支払い金額の変更」です。
 「F2」「F4」は未使用です。

 この「F1」〜「F5」のキーと少し離れて、手前に横4個、縦5段のキー
群があります。
 キーの「0」だけが大きくて楕円形で、他は円形です。
 このうち、数字キー群は、キー群最上段から2段目から手前までの4段で、
左側から3個のキーの範囲です。
 数字キーは、この範囲において、ほぼ電話式に配列されています。
 2段目が、左から「1,2,3」
 3段目が同「4,5,6」
 4段目が同、「7,8,9」です。
 5段目は、電話式と少し異なります。
 「7,8」の下にあたる左の2個分が「0」で、「9」の下が「00」です。
 電話式数字キーと異なるところは、「0」のキーだけが横2倍と大きいこ
と、「8」の下が「00」であることです。
 また、数字ではありませんが、「*」と「#」に対応するものがありません。
 数字キー「5」の上面に凸点があります。また、「1」の上に縦の凸線、大
きい楕円形の「0」キーの上に輪状の凸線があります。

 この数字キー群の上段と右側に合計8個の機能キーなどがあります。
 以下、数字キーとの隣接関係で説明します。

「1」の上  「ON/OFF」  ピンク色
「2」の上  「モード設定」(管理・補守)  灰色
「3」の上  「再印字」  灰色
「3」の右上角  (表示なし) 灰色
「3」の右  「キャンセル」(取引中止)  ピンク色
「6」の右  「訂正」(金額または暗証番号入力中)  黄色
「9」の右  「送信/更新」(管理)  灰色
「00」の右 「セット」(入力金額の確定)  緑色


△4.画面の説明

▲電源を入れて最初の表示は「郵貯売上」

▲カードを入れて暗証番号を入力する。

1行目  「郵貯売上」
2行目  「ご利用額 ¥0  残高 XXXX」
3行目  「ご利用額を入力して下さい」

▲端末機を店員に渡す

 店員が、端末機に購入金額を入力する。

▲客に端末機を渡す

 客は、「F1」の「はい」、または、「F5」の「いいえ」を押す。


△5.感想と意見

▲郵政省が、店舗の端末機について、視覚障害者の希望を取り入れ、点字シー
ルによる応急措置、予算による本格改良を行なったのは、利用者の誰もが便利
に使えるというシステムの実験目的から見て、非常に適切な対応でした。今後
も、このように、障害者の利用も含めた実験と改良を重ねることにより、バリ
アフリーのシステムが構築されるものと思います。

▲機能キー、数字キーなどは、ゴムの感触でしたが、わかりやすい大きさと材
質です。

▲視覚障害者側からの希望で、電卓式キー配列の端末機のキーに、とりあえず
の点字シールが貼られていました。
 今回、それが電話式キー配列のものになり、また、数字「5」の凸点、「1」
及び「0」に、それらの数字がわかるような凸線がつけられました。これは、
キーに直接表示されたものですから、はがれることはありません。そして、こ
れは非常にわかりやすいものです。
 電話を掛ける際は、電話式キー配列と決っていますが、電話以外のシステム
の数字キーでは、各種のキー配列のものが混在しているのが実情です。ですか
ら、この凸点と凸線は必要です。

▲機能キーなどのうち、「訂正」キーなど、明らかに客側も使う少数のキーだ
けには、キー上面に触覚でわかるマークなどが必要です。

▲カード挿入口が、以前のものと異なり、端末機の後面でしたが、これは、客
側から入れにくいので、以前のもののように、前面にあるのがよいと思います。

▲暗証番号入力において、「暗証番号一致」、「暗証番号不一致」の音響表現
があると、自分のキー操作の結果がわかります。音響は、「ピーッ」、「ピリ
ピリピリ」など、長目で、音質の区別がつきやすいものがよいです。

▲郵政省では検討中かと思いますが、端末機の金額表示について、是非とも実
現していただきたいと思います。

▲店舗により、また店員の経験により、端末機、レジなどの操作の慣れはまち
まちでしょうが、今回における2カ所の売場の買物において、いずれも店員は、
ICカードの取り扱いが、かなり不慣れでした。

 2カ所とも、店員は、カードを持ったまま、遠くの方まで取り扱いを聞きに
行った様子で、カードを預けた客としては、不安になる場合もあると思います。
 その間3分間ぐらいでしたが、1人の店員は、客が押すべき「F1」の「は
い」のキーを、自分で押してしまっていたようです。
 防犯上の問題があるのかも知れませんが、オフラインのハンディターミナル
を赤外線などでレジと結合し、客がカードを手離さないシステムの開発も必要
かと思います。
 いずれにしても、よりよいシステムへの改良と、店員教育の徹底が望まれま
す。

▲キーの色分けとディスプレイ表示は、全盲の私にはわかりませんので、弱視
による体験と報告が必要です。

▲私にとって、郵政省の大宮地区における、「郵便貯金ICカードサービス」
の実験は、他のICカード実験である、渋谷駅週辺の「SSS」、新宿駅周辺
の「スーパーキャッシュ」、都営地下鉄12号線の「ICカード乗車券」のシ
ステムと比較したり、デビットカードシステムの、J-Debitの改良をお願
いするのに大変役立ちました。
 少なくとも、現在では、「郵便貯金ICカードサービス」は、視覚障害者が
使いやすい方向に改良されつつあることがわかりました。


△6.おわりに

 以上の大宮地区における新しい端末機の観察は、まだ1機種について1回だ
けです。従って、私の認識の不充分さがあります。また誤解もあるかもしれな
いことをお断りしておきます。
 大宮地区を中心に、視覚障害者が郵便貯金ICカードを取得し、実験に参加
しています。
 本年1月24日には、郵政省の方が立ち合いで、大宮を中心とする視覚障害
者の約10名が、この「郵便貯金ICカードサービス」を体験する会がありま
した。何らかの方法で、大宮地区以外のもっと多くの視覚障害者も、この実験
に参加できるとよいです。

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