THE WHEEL OF FORTUNE

                   ――運命の輪――

                                   by よるのかいが

                  

 

(――シャア! シャア・アズナブル)

(アムロ……?)

シャアは首を傾けて、後方を見た。

茶色の髪、なぜか頼りなげな背中。

あの目が見つめているような気がしたのに、アムロ・レイはシャアを振り返ってはいなかった。

シャアは確かに呼ばれた、と思った。相手は他ならぬアムロ・レイ――間違うはずはないのに。

(――シャア)

また、だ。

(どうした、アムロ)

シャアがふりかえり、見ていることをアムロがわからないはずは――アムロは、シャアに背を向けて歩き去ろうと――、

凍り付いたように立ち止まったままだ。

シャアは歩みよって、アムロの背に触れた。

そのまま無言で促すと、アムロはぎくしゃくとシャアに従った。

 

シャアの私室にたどりつくとようやくアムロはシャアを見た。

シャアはおもしろくなった。アムロは昔と変わらず、子供のような目をしている。――驚くと、目を丸くする。

いつも、そうだ。子供のようだった。

シャアがサングラスを取ると、アムロがその目をした。その顔に自分のを重ねて、シャアは笑った。――つと離れてグラスを取る。

「――飲むか」

「ああ、貰う」

――もう一度、シャアはアムロにくちづけた。

シャアの唇から解放されて、アムロは震える声をこぼした。

「昔を、思い出す……」

「いつ、殺しても、殺されても不思議はなかったな、昔は。……セックスもまるで殺し合うようだった……今は違う」

「……そうか?」

アムロが顔を伏せてくすくすと笑った。

シャアはアムロを抱き寄せて、ゆっくりキスした。

ベッドの上で、シャアの下で、アムロはすぐに息を弾ませた。久し振りでも、身体がシャアの手を覚えている。

昔は、この快楽は苦痛と紙一重だった。シャアはいつもアムロの骨がきしむほど強く抱き締めて、性急にアムロをえぐり貫いていた……。

「……こういうのを、優しい、と、っ、云うのかっ、シャア…ア」

「優しくないか?]

シャアの声には意地悪な微笑が滲んでいる。

「――ッ、やめて、くれ、…もう」

シャアの手はとても優しい。

くすぐったいほど優しくアムロの身体を這いまわる。

ひとなでされただけで、アムロの身体はどこもかしこも張り詰めた。ツンと立ち上がった二つの乳首を甘く擦られる。アムロがその刺激に呻いて、身を捩って胸をそらすと、今度は立ち上がったアムロの中心を指で弄んだ。

それからも逃げを打つアムロを、シャアは昔のように腕で掴み止めて、無理やりに犯したりはしなかった。

ベッドの上でシャアに背を向けて身体をひくつかせるアムロの後ろに身体をそわせる。背中に舌を這わせるとアムロの身体は滑らかにしなった。

いちばん、敏感な部分を目指して、シャアの唇は澱みなく進んだ。いきつく先を予想してか、アムロの息が熱く高ぶっていく……。

「あうっ」

アムロは悲鳴を飲み込んだ。強く吸われて腰がくねる。シャアの指が熱いそこの周辺をなぶる。

優しく意地悪な指が巧妙に入り込んで、いやらしくアムロの中を掻き混ぜた。アムロの中は熱く柔らかくシャアの指を締め付けた。

「シャア…ア、も、いやだ、はやく…」

アムロの言葉も、自分自身の急く熱も無視して、シャアはゆっくり指を出し入れした。指を増やして、中を広げるように掻き混ぜる。

「シャア……シャア、シャアッ」

アムロは上半身を捩じってアムロの肩にすがりついた。シャアの肩や首筋に狂乱したような激しいキスを降らせる。

「アムロ……ッ」

シャアはアムロの唇を塞いでその身体を激しく抱き締めた。

アムロは我を忘れたようにシャアの腕の中で身体をくねらせる。その肌をシャアにすりよせ、シャアの熱と自分の火照りきったそれを触れ合わせて、声を上げた。

「アムロ」

シャアはそっと、アムロが足を開いてシャアの腰をもどかしく引き込むくらいゆっくりと、熱く猛る己のものをアムロの口に呑み込ませていった。

アムロの中は熱く、ヒクついていた。痛いほど、シャアを締め付けて、シャアの鼓動を早くさせる。

奥まで受け入れて、いつものように激しく痛いほど動いてはくれないシャアにアムロは焦れて思わず腰を揺すりたてた。だが、それもシャアに腰を抱き止められて、ゆっくり、ゆっくりと動かされる。

「あ、…ああ――ッ」

ずるりと変に生々しくそこの感触が冴えて、アムロは声を張り上げた。自分の敏感なそこがゆっくりと動くシャアの力強いものにまつわりつき、こすられて、身悶えずにはいられない。

「シャア、ア…ッ、嫌だ、もっと、もっ、と…殺して、…ああ、殺って、はや、く……」

シャアもすでにコントロールを手放し掛けていた。アムロの両脚をいっぱいに押しひらいてアムロがひしゃげるくらい、えぐり込む。アムロの声は言葉にすることもできなくなって、切れ切れに悲鳴がにじむ。

打ち込まれる熱い棒を中に感じながら、アムロはスパークした。熱いものが弾け、アムロは果てていた。身体が痙攣する。疲れきり意識を手放しかけても、シャアのそれはまだ熱くアムロを穿っていた。

撃ち殺され続けている……アムロは意識が遠くなっていくように感じた。

 

シャアはそっと身体を離そうとした。シャワーでも浴びてこようとしたのだが。

アムロは失神してしまったようだが、ぎゅっとシャアの背につかまって放そうとしない。

(どうしたんだ、アムロ。……お前も、寂しかったというのか……)

シャアは目を開けないアムロをそっと抱き締めた。

再会を祝すにしても、口付けひとつ交わすこともできない。恋人同士ではないのだ。元は敵。今は属す陣営が同じ、味方でもやはり違う。

(こんな寂しさは宇宙で戦っているのときには感じなかったのにな)

返って、離れたようだ……。同じ宇宙に漂い、時折、巡り合っては殺し会っていた……今は同じ味方ながら、シャアは宇宙、アムロは地球……それもアムロは自らを地球の重力に閉じ込めさせている。

昔はどこにいても宇宙にアムロを感じられたのに、地球にいるアムロはシャアには遠い。

シャアはアムロを抱き締め、これ以上ないそばにいながら、どこか遠く、寂しさを感じていた。

 

昔を思い出した。

初めて、アムロと出会うその刻を……

 

 

 

 

かれらは敵として出会った。

宿命と呼ぶのが相応しい。惹かれあい、お互い相手の命にしか興味がなくなるほどの強い感情で結ばれながら、かれらは永遠の敵だった。

……リィンカーネーション、転生してもかれらは敵どうしだろうか? ……それとも、もしもかれらの出会いが戦場で敵でさえなかったら、かれらは殺し合わずに済んだろうか……。

シャア・アズナブルとアムロ・レイは……。

 

人類は宇宙に発展を遂げていた。しかしエリートは地球に固執し、宇宙に暮らす人々は地球に服従すべきだという傲慢な考えを捨てられなかった。

そんな地球連邦政府に独立戦争を挑んだ、それがジオン公国である。……しかし、ジオンの主張は地球に固執する人々のエゴを裏返したものに過ぎなかった。宇宙に暮らすジオンこそ優秀であり、地球に住む愚者どもを粛正しろ、というのだ。

愚かな主張はぶつかり合い、『一年戦争』の幕開けとなった……。

 

 

シャア・アズナブルはジオンの赤い彗星と呼ばれていた。

そう伝説になるほどの奇跡を起こすパイロットなのだ。

かれの赤いモビルスーツはまったく他の機と性能が変わるはずもないのに、その動きは彗星を思わせて認識不能なほど素早い。

士官学校を首席で卒業し、血縁がものをいうジオン公国で、その身元を隠したまま実力と戦果だけでシャアは大佐となるほどだった。

 

アムロ・レイはまったくの素人で、ほんのコンピュータマニアの少年であった。それが戦争に巻き込まれ、地球連邦軍の新型モビルスーツを軽々と操った。

アムロ・レイは一年戦争のなか、英雄となりつつあった。だが、シャアと出会うこの時では、命令に従い生き残るために目の前の敵を倒すのがせいいっぱいの一戦士に過ぎなかった。

アムロの初めての敵はシャアである。それから戦場で二人は幾度も巡り合った。しかし決着はつかなかった。お互いを他とはっきり区別しながら、かれらはいままで戦いの中でしか出会うことがなかった。

 

中立の都市にかれらはいた。

シャアは任務のあいまの休暇中ともいうべき身の上で、次の作戦行動に近いこの地に滞在していた。

シャアは軍服のままだった。ジオンの華やかなそれがかれにはよく似合う。金髪にマスクをしていても整っていると分かる顔だち、背が高くすらりとして、優雅なものごしにその若さで大佐の称号……

少々世情に聡い人間ならば、かれのことを知っているだろう。ここはどちらかというとジオンの影響が強い場所だ。かれを振り返って見つめるものも多かった。

シャアはその視線にうっとうしげに髪をかき上げた。かれの金髪が柔らかに光を振り撒いてゆれる。私服にするのだったな、という思いがよぎる。

余りに突然過ぎる余暇にシャアは途惑っていた。

そして、それを吹き飛ばすようなおもしろいものをそのときシャアは見付けた。

なんとなく引かれるようにして近付いた路地裏に、言い争う人影があった。

「放せっ、はなせよ!」

「連邦軍のクソガキが! 何をしていた!」

(あれは――あの少年は――?)

二人は軍服だった。一人はシャアと同じジオンの、もう一人、小柄な少年の方は連邦軍のものだ。その少年をシャアは知っているような気がした。知っているというか、不思議なシンクロ二ティのようなものを感じたのだ。

(ニュータイプか……?)

「貴様、やめないか!」

シャアは少年に殴りかかろうとしていた男を止めた。相手の階級はシャアよりだいぶ低い。不服そうなその若い男にシャアはきびしく云った。

「ここは中立地域だ。――連邦軍の兵士一人を殺すことが何になる。くだらんもめごとはひかえろ」

「はっ、大佐、申し訳ありません!」

敬礼して去った男から少年へシャアは視線を移した。

少年は丸い眼を見開いてまじまじとシャアを見つめていた。

「シャア…ア…」

少年が掠れた声で云った。育ちの良さそうな子だな、とシャアは微笑みを誘われた。その驚きようがとても純粋で子供っぽい。

「そうだ。私はシャア・アズナブルというが。君は?」

「あ、アムロ……アムロ・レイです」

「アムロ君、……聞いたこともある気はするが……。無謀だな――いや勇敢と呼ぼうか。ここはジオンの影響が強い。その服装で一人で歩くべき所ではないよ」

「中立地域です――ここは、非戦闘区域指定だ」

シャアにつっかかるような言い方をアムロはした。子供っぽい正論をいうアムロをシャアは好ましく思った。

「そうであるから、私が止めたのだ」

シャアは笑って歩き出した。

「付き合わないか、もしよければ」

「え、――シャア……大佐」

「呼び捨てにしてかまわんよ。敵を大佐と呼ぶのもおかしなものだろう」

アムロは成り行きに途惑っているようだったが、シャアが歩き出すと素直に付いて来た。

シャアはつくづくとアムロを見つめた。

アムロはくせのある茶色の髪と同じ色の大きな眼をしていた。幼い顔立ちだ。なにかとても暖かいものを感じさせる。明るく人の良さそうな好青年……しかし、そんな雰囲気と同時にひどくナイーブで脆そうな瞳が、青年と呼んでもおかしくはないのだが、アムロを少年にしている。

シャアは若い活力をたたえながらも、すでに成獣のしなやかな美しさを持つ青年だった。涼やかで流麗な美貌はときに氷のように冷たくも見える。シャアのその美貌はたいていの人に威圧感を与える。アムロも怯えているようだった。

シャアとアムロは周囲からじろじろと見られていた。二種類の軍服姿が人目を引く。

「君は目立ちすぎる」

「貴方といると、よけいにです」

シャアは苦笑して車を止めた。無人の、もちろんガソリンなどというもので動くのではない自動制御のタクシーに行き先を告げた。

 

アムロの視線はシャアから一時も離れなかった。シャアは平然とそれを受け止め、ときおり微笑さえ見せた。

シャアの心は濃いサングラスに隠されて窺えない。……シャアはアムロをホテルの自分の部屋へ招くと、服を私服に改めていた。

シャアの部屋はルームバーを備えてあるスイートだった。ジオン軍の大佐というシャアの身分と赤い彗星という評判にホテル側が気を使ったのだ。

「ジオンの赤い彗星、……貴方は、ニュータイプなんですか」

アムロはシャアの用意したアルコールを口に運んで、そう尋ねた。

「興味があるのか、私に」

「ええ。……戦場の貴方に僕は会ったことがあるんです、シャア」

アムロのシャアという言葉には緊張と昂ぶりが込められていた。

「君は不思議な子だ……アムロ・レイ……」

シャアはサングラスを取るとアムロを見凝めた。

「――あ、……」

掠れた声をアムロは漏らした。アムロの顔をシャアの手が捕らえていた。

シャアはじっとアムロのブラウンの瞳をのぞきこんだ。……視線は絡み合う。

「やめてください、……」

「分からないのか、アムロ」

ひどく優しげに、愛しげにシャアは囁いた。

「これほど近くにいて、何も……?」

アムロは目を伏せて首を降った。

「分かりません、僕は……っ!」

シャアの手はアムロの頬から離れない。シャアの美しい唇がさらに近付いて、そっと囁いた。

「君も、ニュータイプだ……分からないか、これでも?」

二人は、重なった。

「やめて、ください……」

長いくちづけのあとに抱き締められてアムロがうめくように云った。

「……貴方は、分からない」

再び重なった唇にアムロは震えて目を閉じた。

腕がシャアの肩を拒んで押し返したが、力は込められていなかった。

 

アムロの顔と首筋は健康的に日焼けしていたが、服に隠された肌もなめらかで小麦色をしていた。

アムロはもう拒めない体勢に追い込まれていたが、この成り行きにあおざめていた。

シャアの身体は巧みにアムロの抵抗を弱め、拒絶を忘れさせるように動いた。熱を帯びて抵抗とは反対の方向へアムロの身体に力が入り出す。

シャアはアムロの身体を翻弄した。一度、上り詰めてしまうとアムロの身体は、シャアの手に敏感すぎるほど反応した。なんどもいかせて、アムロを息もままならぬありさまになるまで追い詰めてから、シャアはアムロに侵入した。

劇痛にアムロは泣きわめいた。容赦のないシャアの無残な犯し方にアムロは最後には声を絶えていた。

「私の服を着ていくといい。……それとも、このまま私のそばにいないか」

シャワーを浴び、身体からシャアの匂いは消えても、アムロはぐったりとして虚ろなままだった。

それでも、シャアの誘いに力なく首を振った。

シャアの服はアムロには大きすぎた。シャアは見事に均整の取れた鍛えられた体付きだが、アムロはまだ細い。

「アムロ君、私と戦場で会ったことがあると云ったな。……いつだ」

シャアはアムロのために車を呼んで、そのドアを開きながら、ふと思い出して云った。聞かなくてもその答えをシャアは知っているような気がしたが。

「……僕は、ガンダムのパイロットです」

アムロがシャアの腕から擦り抜けて車に乗り込む瞬間、微かに唇が触れ合った。

 

****

 

……再会はシャアの予想より早く、唐突に巡ってきた。

舞台は宇宙ではない。ジオン軍の地球地表にある研究施設を兼ねた軍事基地である。

シャアは新たな彼の機体の微調整のためにこの基地にいた。

その基地をいま慌ただしく緊迫した空気が流れていた。珍しいことだ。ここは前線基地ではないのだが……不審に思ったシャアが自室を出たときだった。

シャアは微かな声を聞いたような気がした。荒い息遣い、切迫した苦しげな……思い当たることは唯一つ。アムロ・レイの気配だ。この騒ぎの原因はアムロ・レイか!

『警報発令! 総員、第四次戒厳態勢を取れ!侵入者あり。エリアA−3からF方向へ逃走』

やや慌てた声が繰り返した。Fとはシャアのいる場所とは離れているが……? いぶかしんだが、シャアはエリアFには向かわず、その反対方向に足を向けた。情報より、シャアは自分の感覚を優先したのだ。

第四次戒厳態勢では基地の戦闘部員たちだけが動き、あとの技術者たちは安全な部屋にこもることになる。シャアのいる場所は居住エリアであるため、戦闘部員が駆け出していくと静かになった。

(……いる!)

シャアは確信を持った。噛み殺した息遣いが、耳元で聞くようにはっきりと聞き取れた。 その先は居住用品の倉庫室だった。

シャアは一気に飛び込むと、暗闇の中、感覚のみに頼って飛びかかった。

闇の中で格闘して、やっとシャアは相手の身体を押さえ込んだ。

「…シャアッ!」

それは、確かにアムロの声だった。

「アムロ……」

アムロの身体が、急速にたわんだ。シャアを押し退けようとしてもがき回る。蹴り飛ばされた倉庫の何かが派手な音を立てた。

『……何か、音がっ!』

壁の向こうから数人の物音が聞こえた。

シャアの下に押さえ付けられたアムロの身体がびくりと震えて、いっそう強く抵抗をしめす。

(命が惜しかったら静かにしろ、アムロ。ここで見付かれば命は無いっ)

渾身の力を込めてシャアはアムロを押さえ付けた。そして冷静な声をつくると、云った。

「自分はシャア大佐だ。捜し物をしていた。ここに不審な者はない。エリアFへ向かえ!」

「はっ、失礼致しました」

駆け去る足音が消えると、ほっと一瞬、アムロの身体から力が抜けた。シャアはそのアムロのすきに強く殴り付けて、彼を昏倒させた。

アムロを部屋へ運んで武装解除させてしまうと、気を失ったままのアムロをベッドに投げ出しておいて、シャアは現状の確認を急いだ。騒動はすでに治まりかけていた。アムロは数人と基地に潜入したらしいが、アムロ以外は脱出に成功したのだ。

その確認がされた為、基地の中の戒厳態勢は解かれていた。

アムロたちの目的は新型モビルスーツの情報だろうが、あいにくここには調整をする程度のものしかなく、さほど重要な機密はない。

「う、うう……」

呻き声を上げてアムロが身体を起こした。

「久し振りだな。アムロ君」

「シャア……」

アムロは身体を堅くして、ベッドから飛び上がった。ごくりと息を呑んだのがわかる。シャアの手に光る衝撃銃を見たからだった。

硬直するアムロにシャアは歩み寄った。……銃は接近すると不利だが、シャアはためらいなくアムロのそばに寄り、その銃口をアムロの胸に押し当てた。

「なぜ、ここに来た? ……目的は?」

シャアは捕虜への尋問の言葉を、アムロの耳元で甘く囁いた。アムロの身体が強張るのが手にとるように分かる。

「……云うもんかっ! 拷問でも何でもすればいいんだ」

シャアは声を殺して笑った。研究所に忍び込んだ者の目的など聞かなくとも分かるのに、まともに反応するアムロは可愛らしかった。

「私に会いに来たのではないのかな……」

「……違うっ、そんなわけないだろっ」

シャアのからかいにアムロは身体を震わせて叫んだ。その声をシャアはキスで封じた。アムロは首を振ってそれから逃れ、そして銃口を叩き落として、殴りかかろうとした。

シャアはもちろんそれを見越して身構えていた。アムロの拳を受けると銃のグリップでしたたかにアムロを張り飛ばす。容赦のないシャアの一撃に、アムロは床に倒れ込んで壁際に這い逃げた。

「そうだと云ったらどうだ……アムロ・レイ。私は君を気にいっている。殺したくはないのだが?」

「……っ!」

アムロは手元にあるものを手当たり次第にシャアに投げ付けた。飛んできた椅子を蹴り飛ばし、花瓶を避けてシャアは溜め息を付いた。

「仕方のない子だ……」

シャアは冷たい眼で、銃の引き金を引いた。

アムロの身体が痙攣して、叫びを上げる。

肩と足、腕に数初撃ち込むとシャアは銃を手放した。

呻きを上げるアムロをシャアは乱暴に引き起こすと、押さえ付けて唇を塞いだ。舌をねじこまれて悲鳴すら噛み殺される。

アムロに傷は付いていない。衝撃銃の出力をシャアはきちんと調整してあった。

アムロがシャアのくちづけをおとなしく受入れ始めたので、シャアはアムロから唇を放した。

撃たれた痛みにベッドの上でうずくまるアムロを横目に服を脱ぎ捨てた。

「それほど痛みは長引かんよ、アムロ君」

「……っ、あうっ」

シャアに強く掴まれてアムロは悲鳴を噛み殺した(うそだっ、こんなに痛い)と抗議の声を上げかけたのだが、すこしずつ痛みは治まっていった。

だが、シャアの力強く重い身体に押し潰されるとアムロの身体は悲鳴を上げた。痛みに肌が熱くなっている。

「……嫌だ、やだ、やだ、やだっ……」

子供のように、アムロが首を振る。

それがシャアには奇妙に快かった。

暴れる手足を強引に押さえ込む。両脚の間に身体を捩じり込むとアムロは怯えたように身体をすくめた。

シャアの指が、アムロのきついそこに突き刺さるように這いこんだ。ひっ、と息を詰めるアムロをシャアは眼を細めて楽しげに見た。

「シャア、や、嫌だ、やめて…! あ、う…う…あ」

シャアの指が強くうごき、掻きまわすたび、律義にアムロの声は跳ね、微妙な音色がシャアを愉しませた。

そこの刺激に苦痛と歓びを引き出されて、啜り泣き出したアムロの膝をシャアは抱えた。

多分、まだキツすぎる……分かっていたがシャアは手加減する気にはなれなかった。……アムロには、いつもコントロールが利かない。

アムロは、常に冷静なシャアに、理性を失わせる。

一気に最奥まで突き貫いた。淫らな音を立てて、アムロの身体はその侵略を受け入れ、さらに次を誘うようだ……。

「――っ!!」

アムロの顔から血の気が引いた。悲鳴もあげられないらしい。奥歯を噛み締めて、蒼白のアムロだった。

ぐいっ、ぐいっ、とシャアはもっと深くアムロのそれを味わおうとする。アムロの中は熱く狭く、シャアを昂ぶらせた。ひくん、とアムロの柔らかで敏感な肉の壁がシャアを締め付けると、それだけでアムロは悲鳴じみた喘ぎをあげた。

アムロの痛みはそれでも、次第に快楽に変わっていくようだった。シャアのえぐる動きに悲鳴を上げ、ひきつっていた躰がシャアの動きを受けいれ熱くなっていた。

シャアはそれを見取るとアムロを抱き締めて、動きをゆるめて、アムロから快楽を引き出そうとする。その刺激にアムロの身体は小刻みに震えた。

シャアはアムロの躰に愛撫の手を走らせた。

「あっつ!……」

苦痛の声を不意にアムロが上げる。シャアの撃った跡が、アムロの肌に赤く熱を持って腫れていた。

シャアの指が腕の跡の上をそっと這った。肩の傷にも唇を這わせる。シャアは優しいともいえる巧みな動きでアムロの中を掻き回しながら、強く、赤く腫れ上がったそこを指でいじり舌でなぶった。

痛みにアムロの身体がのけ反って、きつくシャアを締め付ける。自分の熱をおもいきりアムロの中に吐き出しながら、シャアは残酷にアムロをなぶり続けた……。

 

翌日、シャアはアムロを逃がした。まだ連邦政府に善戦してもらわなくてはシャアは困る。シャアの真の敵は、ジオン軍の総統、ザビ家なのだから。

 

それから幾度もシャアとアムロは戦場で出会った。もちろん互いの命を狙って。身体を重ねたからといって戦うのを厭うシャア・アズナブルではない。もちろんアムロにも敵を選ぶような余裕はない。

なにより、アムロにもシャアにも、お互いが何よりも倒したいと願う敵であったのだ。

二人がそう望むからか、運命が命じたからか、二人の軌跡はときには平行線を描き、またクロスして、離れることはない。

 

 

 

……これからも、そうだろうか。

シャアはアムロの寝顔を見つめていた。

幾度かの共有した夜への追憶から覚めて、シャアは確かな感触が腕の中にあるのに気付いた。

追憶に浸る必要はないはずだった。今、シャアはザビ家への復讐を果たし、アムロと同じ組織、エゥーゴにいる。

同じ夢を見ているはずが、なぜかシャアにはそれが正しいことだと思えない。

アムロは、その純粋な性格で、味方になったシャアにほっとし、わだかまりなくシャアを見る。

「私が危険なのか……?」

そっとシャアはアムロに呟いた。安心しきってシャアの腕のなかで眠るアムロにも愛しさは感じるが、シャアは冷静だ。

あがくような交わり、張り詰めた空気の中でせめぎあうあの関係でないと、シャアは夢中になれない。

我ながら危ない趣味だ……と半ば自嘲する。愛に酔うには、シャアは苛烈すぎた。優しいものは刺激が少なすぎる……。

シャアは眠り込むアムロの無防備な身体をそっと開いた。シャアのくちづけの跡が日に焼けたアムロの肌を飾っている。胸元にそっとキスを繰り返すと、アムロは薄目を開いてシャアの金髪に触った。

シャアの耳元をアムロのクスクスと笑う心地好い息がくすぐった。

アムロは、はにかんだような笑いを見せ、身体をのけ反らせる。その首筋にシャアはくちづけて、歯を立てる。シャアは穏やかにアムロを抱き込んでいった。

今は、こうしていていい、と思う……。

(今は、休息の時間だ……いつか、終わる時がこようとも、今は……)

 

 

                                1996/夏


お疲れさまでした!……長かったですね?

……ひゅー、感想お待ちしてます。

文章が、まるで他人のもののように感じられるのでしたっ!

最初に書いたガンダムです。おもいいれがたっぷりすぎぃ〜恥かしいよう〜(笑)ま、このころはまだ青臭いガキだったので!(笑)

いくつか続きがあるんですが、とりあえず一個のせて見ました!