企業戦士ガンダム

 

   新婚生活編

 

                                    BYよるの

 

薔薇の花束と、日付とイニシャルの刻まれたリング

それは、久し振りのデートのときだった。

シャアは忙しいひとだ。何週間もアムロと会えないのも珍しくない。

ここのところシャアは特に忙しく、ほとんどアムロとは連絡も取れなかった。

シャアとアムロはまだ出会ってから半年足らずだ。『仕事』がきっかけで出会ったのだが……二人の組織は対立しているため、二人の関係は内緒なのだ。

 

そんなこともあって二人の中はなかなか進展していなかった。

彗星の、と呼ばれるほど手が早いシャアにしては珍しくアムロと最後まで至っていない。

想いあっているのは分かっているのに、アムロはシャアを警戒し続けている。シャアはそんなアムロに強引な解決を決意したのだ。

 

待ち合わせ場所に、シャアは豪華なバラを抱えて来て、アムロを驚かせた。

シャアは、珍しくサングラスは外していて、綺麗なアイスブルーの瞳を見せている。仕立ての良いスーツに、上品なタイ、と、これからパーティーにでもいくようにドレス・アップしていた。

シャアの貴族的な美貌には、華麗な装いがよく似合っていて、アムロは目を奪われた。

連絡もなしに放って置かれたのを拗ねてわざとつくっていた不機嫌な顔も忘れてしまっている。

「アムロ……ずいぶん長く会えなかったな」

シャアは囁いて、アムロを抱き締めた。

「シャアッ、こんなところで……」

アムロは顔を赤くして、シャアのくちづけからにげようとする。

ここは人通りは少ないが、まったくの無人ではない。

シャアはかまわず、アムロのあごを引き寄せてキスした。

「一カ月も、くちづけ一つしていないんだぞ」

「そんなの……あなたが忙しかったせいだろ」

「これからは、毎日、こうしていよう――二度と離れないように」

「――シャア……」

シャアはそっとアムロを放して、花束とリングを差し出す。

 

「結婚しよう」

 

 

地価の高い都心に、二人で暮らすには広すぎるほどの豪華な一戸建てだった。

二人はいまそこに暮らしている。

(シャアの、大嘘つき野郎――っ!)

 

 

耳元での囁きと、首筋への熱いキスに、アムロは夢中でうなずいたのだ。

式はやらなかった。アムロの両親は亡くなっているし、シャアにも肉親は妹しかいない。

アムロの友人でもある妹のセイラさんは二人を祝福してくれて、食事を一緒にした。

事情もあって周囲には結婚したとはいわずにアムロはシャアと暮らし始めた。

最初の夜、アムロとシャアは外で食事をシャアムロはワインを飲み過ぎてよろめきながら新居に入った。

アムロは食事の時からそわそわと落ち着かなげで、シャアを微笑ませた。

一口食べるごとにワインを飲み、シャアと視線が会うたびまたワインを飲む。

「今夜は ……」

シャアが窓から街を見て云ったとき、アムロはガタッと椅子の上で跳ね、ワインをのみ込みそこねて、むせた。

「どうした……?」

シャアは、何気なく今夜は人通りが多いな、とでも言おうとしただけだったので、驚いてアムロの反応を見た。

「な、なんでもないよ」

顔を耳まで赤くして、アムロは首を振った。カチャカチャとナイフを皿に激突させて、慌ててワインを飲む。

ワインばかり二本も飲んで、アムロの料理はほとんど減っていない。

シャアはおもしろそうに見ていたが、そっと立ち上がった。

「家に帰ろう。……このままでは食器を壊す」

アムロは無言で思い切ったように立ち上がった。よろめく足をシャアに支えられてよけいにバランスを崩す。

家に着くと、いきなりアムロはシャアに唇を重ねられた。

「……シャア…ア」

「ベッドへ行こう、アムロ。君は私のものだ」

……寝室にはダブルベッドが一つ。それを選ぶのだって、アムロはこのときのこと、今の、つまりこの初夜を想像して、走って逃げ出したくなるほどハズカシイおもいだったのだ。

「それほど怖がるようなことでもないだろうが?」

……シャアの口調はひそかに嬉しげだ。シャアにはアムロの強張りぎくしゃくとする純情さが可愛らしくて仕方なかった。

暗闇の中で触れ合う肌は、アムロの呼吸を荒くさせたが、それと同時にどこか心を安らがせた。

アムロの全身の素肌はどこもみんなシャアに触れて、シャアだけが感覚世界のすべてになる。

闇に眼が慣れて、たがいの顔が見えた。見つめ合って、ゆっくりと唇を合わせる。シャアの舌が確かめるようにアムロの中を撫でていく。

アムロは、シャアの舌が自分の唇をなぞる感触に、ぞくりと身を震わせた。

シャアの手がアムロの身体のあちこちに触れた。なぜそんなになってしまうのか、アムロは、触れられるたび身体が跳ねて、逃げ惑ってしまう。

そのたびシャアに抱き寄せられて、身体の緊張を解かれる。

そっとシャアの手がアムロの脚に伸びてきたときだった。

アムロはじんわりと熱くなりつつあったそこに、熱がカッと集中するのに息を飲んだ。呼吸が、乱れる。

ほとんど窒息しそうなほどの呼吸困難にアムロは喘いで、シャアを押し退けようとした。

身体が、震える。

アムロは身を竦めて、シーツにすがりつこうとする。

シャアはあくまで優しく緩やかに動きながら、甘い酩酊感を感じていた。アムロにのめり込んでいく。

 

シャアは翌朝に目を覚ましたとき、腕のなかの心地好い重みに微笑んだ。

キスしても眠り込んだアムロは目覚めない。昨夜ので疲れているのだろう。

シャアは今日も仕事に行かなくてはならない。アムロは数日休みだが。

シャアとアムロの『仕事』 ……二人は仕事のせいで、結婚式もハネムーンにもいけないわけだ。

というのは、二人の会社がライバル社であるせいなのだ。

シャアは、父が創始者である複合企業『ネオ・ジオン』グループの会長なのだ。ネオ・ジオン社は子供のおもちゃから、宇宙船まで製造販売する。

シャアはいま政府の開発予定リゾートコロニーの権利を得るために、二週間ほど後のその権利の競売会議へ向けて、とても忙しい。

いつも一番の邪魔者、『地球連邦』社が、この会議でもシャアの一番の敵だった。

そして、アムロは地球連邦社の社員なのだ。地球連邦社の社長はブライト社長といって、アムロの父と親友であり、父が死んでからは、ブライト社長はアムロの親代わりのような人なのだ。

ネオ・ジオングループと地球連邦社の対立は昔からだが、シャアがアムロと出会ってから、ますます敵対している。

シャアは地球連邦社など潰してしまいたいのだ。アムロが自分以外の人間の配下であるなど、シャアには耐え難い。

そんなわけで、新婚で新妻を寂しがらせても、シャアは競売会議でアムロの会社に勝つために、会長自ら走りまわっているのだった。

アムロが目を覚ましたのは、お昼ごろだった。

(いない。……ああ、仕事か)

重い身体で、家の中を探し回ってしまったが、シャアはいない。ムリに昨日休んだからしばらく忙しい……と聞いていたことをアムロは思い出して、ひどく気が塞いだ。

一人でいるには、この家は広すぎる。

「シャアのばかやろ」

唇を尖らせて言うと、アムロは深呼吸して立ち上がった。まず、シャワーを浴びて、荷物を片付けなくては。アムロが休暇を取ったのは新居の荷物の整理のためなのだ。

 

夕方にはアムロはすっかり暇になってしまった。食事は一人で食べて、ワインを用意して、ビデオなんかを見ながら、シャアが帰るのを待っていたのだが。

 

その夜、シャアは帰ってこなかった。

 

夜明けにはアムロは起きて、大きなベッドの自分の隣りにシャアが寝ていないのを見ると、シャアの枕を壁へ投げ付けた。

 

(シャアの、大嘘つき野郎っ!)

(なぁにがっ!!ずっと一緒にいようだよっ!)

さすがに、その日のお昼にはシャアは帰って来たがほんの一時間ほどで、また出掛け、その夜三時すぎにしか帰ってこなかった。

アムロはシャアのキスで夜中に起こされたが、完ぺきに腹を立てていたアムロは、布団を被って寝てしまった。

 

 

アムロは、その日から会社に出勤していた。アムロの仕事は新技術の開発部門チーフで、研究職なので、社長といくらコネがあるといってもやっかまれることもなく、居心地のよい職場だった。しかし、ブライト社長は、アムロにちょっと見当違いの期待をかけているようだが。

一日に一度は呼び出されて、会社の方針のような重大なことをもちかけられるのだ。

この日、呼び出されたのもアムロはまたそれだと思ったのだが。

ブライト社長の話に、アムロは狼狽した。……シャアとのこと、だったのだ。

「分かっているのか、アムロ。シャアは我が社の最大のライバル、ネオ・ジオンの会長なんだぞ」

結婚した、というのが、ばれてしまったのだ。

「信じられん。君がそんなことをするとは。あのシャアだぞ。背信行為だ!」

あのシャアの『あの』に、憎々しげに力を込めて言われて、アムロはむっとした。

「会社と恋愛は無関係でしょう! 気に入らないのなら首にでもなんでもしたらどうですか!」

アムロに叫ばれて、ブライト社長は押し黙った。

失礼します、と言い置いて、アムロが部屋を飛び出す。残されたブライト社長は憮然としていた。いま、まさにシャアと激突の最中で、憎らしさもひとしおだったのだ。

ブライト社長は、その競売会議のことを思い出すと、不意に深刻な顔になって考え込み始めた。

 

アムロは退社時間にもう一度社長室に呼ばれた。

「アムロ、いま我が社がリゾートコロニーの競売会議でシャアと争っているのは知っているな? ……これをシャアに取られたら我が社はかなり苦しい状況になる」

「……」

ブライト社長はアムロにちょうど卵のようなカプセルを差し出した。意味が分からず受けとって、アムロは不思議そうな顔をする。

「これには、空気感染ウイルスがはいっている。……命には別状はまったくない。シャアが病

気になれば、我が社の勝利は間違いないのだ。……やってくれるな、アムロ」

アムロがその言葉を理解するのに数秒かかった。

理解したとたん、アムロはそのカプセルを床になげすてた。

「できるわけ、ないでしょう!」

「あ……!」

ブライトの蒼白な顔に、アムが床を見ると、そのカプセルは割れていた。

「そ、んな、ばかな。キーワードがなくて割れるはずが……」

「……なんのウイルスなんですか」

「インフルエンザ……風邪、だ」

未来においてガンもエイズも不治の病ではなくなったが、風邪だけはなくすことができていない。

アムロはほっとして、それから呆れてブライト社長を見た。アムロは別に数日寝込んでもどうということもないのだ。しかしブライト社長は、会議がある。あわてふためいて、医者を呼ぶブライトに、アムロは風邪が治るまで休みますからね、と冷たく言い捨てて、家に帰った。

アムロはその日はなんともなかったが、次の朝、シャアに揺り動かされて、起こされると、息苦しくて視界がぼやけていた。

「なんて熱だ……アムロ」

(ん、……シャア…ア)

シャアの声に答えようとするのだが、意識が朦朧として、まともに喋れない。

アムロの意識は混濁して、しばらくそれから何がどうなっているのか分からなくなっていた。

 

 

「シャア……?」

「ああ、起きたのか」

シャアはほっとしたように笑った。アムロの額のタオルを代えてくれている。

「済まなかった。……かならず、そばに居ようといったのにな」

シャアはアムロの看病にずっとそばにいたのだ。

シャアはアムロにくちづけた。掌でアムロの体を触るとまだ熱っぽいものの、ずいぶん良くなっている。シャアは安心して溜め息を付いた。

「汗をかいてるな。拭いてやろう」

シャアがタオルを持って、そっとアムロを抱き抱えた。

「いい、よ。自分でするって…」

パジャマを剥がされて、素肌をタオルがなぞっていく。

するりとタオルは取られて、シャアの手が直接アムロの身体を撫でた。キスも降ってきて、のどや胸にシャアの唇が跡を付けていく。

「あ、…いやだ、シャア……」

ちからなくアムロの手足がもがく。アムロの身体はぐったりとしていて、シャアの身体のしたで、くずれる。

「風邪は、うつるんだぞ……」

「……かまわんよ」

深くくちづけて、熱い息を口移しする。

 

 

そして、リゾートコロニー開発権利競売会議のことだった。

ブライト社長はあおざめ、息も絶え絶えで、政府にプランを尋ねられても、声などでないありさまで、……権利は得られなかった。

シャアは、というと。

 

今までアムロの横たわっていたベッドに入れ代わりにダウンして、アムロに看病されていた。

アムロは目を閉じたシャアの額のタオルを代え、そっとその寝顔をのぞきこんだ。

「あ……」

眠っていると思っていたシャアにぐいとひきよせられて、アムロはシャアの上に倒れ込んでしまう。

くちづけられて、服に手を差し入れられて、アムロはのけ反る……。

シャアの風邪はそれほどひどくなかったのだが、こんなことばかりしているからなかなか治らないのだ。

 

……実はアムロもそれを見越して、こうしているのだったりして……?

 

 

 

 

 


 

  ……ノーコメン、……。

  いえ、やっぱりいいわけさしてください。誰がかいたん、こんなんっ!!(笑)も〜かき逃げ、

  はっずかしいなあ。ちょっとだけ、改稿しましたが、もおう、やめたです。本でもってる10数人の方に謝ります〜陳謝。