Kiss to yourhand……。
朝にはNOドリーム
ユメの記憶はまだアリスには残っていた。意識が戻るなり吐き気がこみ上げる。
ユメだ――すぐさまそう気がついたけれども。正夢かと思うほど感触は持続していた。
全身がヌルついている。あまりの惨状にアリスは声も出ない。
……血ではもちろんなかった。いっそ悔しいほどアリスには傷などなく、当然赤いしみひとつない。擦られすぎてひりつくような感じはあるけれども……。
いったい昨夜自分たちは何をしたというのだろう。
というより、2人だけでしていたのか。
火村はすやすやと寝入っている。
なんて図太い神経なんや、このありさまのベッドで眠って悪夢に苛まれんなんて。
昨夜の火村の狼藉がアリスの脳裏に思い描かれた。
いくらなんでも人間としての限度をも弁えぬ振る舞いではなかったか?
ふつふつとアリスの中に怒りが込み上げてきた。
夢のなかでされた事まで加算された怒りだ。
「火村――っ!起きろや!」
角に追いやられていた枕で火村の顔面を直撃する。
「あ?」
間抜けな声を上げて火村が枕を顔から振り払った。火村の目に最初に映ったのは、自分のコンディションも考えず動き、身体中が上げた抗議に身悶えるアリスの姿だった。
「なんだ、アリス」
「なんだ、や、ないわ!きーみーはっ!あほ火村!だいっキライや!」
それにしても、どうしてこんなに背中が痛いのやろう?
腰および脚はいくら言ってもアリスの脚を開いてしたがる火村に慣れっこになりつつある痛みだが。背筋が今日はやけに痛くて、大きな声をだすのにえらく苦労する。
「……すげえな」
この惨状には火村もさすがに驚いたのか、すぐ気が付いて、そう呟いた。
はっとしたように火村がアリスを見る。……一番酷いのは、アリスの身体の上だ。
アリスは赤面した。それと同時に改めて自分の体の状態に気づき居たたまれなくなる。
とにかく身体から汚れを落としたくて、ベッドから抜け出そうとし、端から転げ落ちて、床に座りこんでしまった。
「……だいじょうぶか、アリス」
「……な訳ないやろ!立てへん……」
火村が身体を起こし抱えてくれる。肩に縋って立ち、よろよろとアリスは歩き出した。
「――風呂」
アリスを風呂場へ運んでくれ、シャワーの温度も調節してくれる。
「――上がったら呼べよ」
アリスは俯いて返事をしなかった。まだ怒りもおさまらない。
身体中を洗いたて、そこかしこの疼きに涙ぐんでいると、洗濯機の音がし始めた。
火村が部屋を片付けてくれているらしい。
迎えにこられた火村に、清潔なパジャマを着せられ、綺麗にされてはいるだろうけどもとても立ち入る気にはなれないベッドに入るのを拒むと、ソファに座らされ、毛布が投げて寄越される。
「なんか食べれるか」
アリスは無言で火村を見つめた。火村が困ったように苦笑する。
「どうすりゃいい、アリス」
「……反省しとるか」
「悪かった」
「……じゃあ今日は立てん俺のために講義は休講やな?」
「もちろんだ」
「ならさっさと、なんか美味いもんでも買うて来いや。ワインとウイスキーも!たっかいやつやで」
火村が一も二もなく従ったのはいうまでもないことだった……。