「蛇の交わり」           ......... 習作です。


 ――君の中心でゆるやかに尖る棘。  このとがるとげは柔らかく、けして猛々しくは成らないのだ。
 関口巽という作家の中の本来的Penisは、内部へ向かって膨らむ。強く屹立したモノは、その青白く病んだような体の中へ向かって怒張を重ね、幻想のそのPはやがて誰かによって実体化する宿痾を背負う。
 その背に実体化する彼の幻想の男根として、かなしく覆い被さりながら私は名前を喪っている。
 そして彼の中心を、せめても彼の中から引き出そうと、指でとぐ。そしてゆるやかに膨らむそのとげは、手の中に熱さを帯びて柔らかく尖る。
 彼が私の屋号を呼ぶ。この愚かな知人はそれが私の名前だとでも言うようにその古書店のナを呼ばわり続ける。
 私は仕方なく、それに相応しい、つまり、カレトカレライーコール作家達の残骸を収集し、その屍骸を弄んでは切り売りする残酷な売買人として、それに応える。
 モウ、ヤメテクレ――
 と、ロボットのようにぎこちない言葉を、手酷い愛撫に耐えかねて彼が上げる。止められないんだよ、君のナカにあるのは実はボクのではナイ、キミノナンダ――。
 アア、ヤメテクレ、モウドウニカナッテシマウジャナイカ。
 私の指を彼は自分の中心から押しのけようと身を捻るが、彼はすでに深く刺し貫かれ一切の自由を奪われているために、そんな動きはなおいっそう彼の中の幻想を猛々しくする役にしかたたない。
 アア、アア……
 震え始める彼の両足に挟まれて、私は中々に心地が良い。そう伝えるとふりむいて彼は私を睨んだ。
 三度ばかりしただけじゃないか。
 私の言葉に、彼はサンドモダ、コチラハタマラナイ等と憎まれ口を叩いた。
 黙って私は動きを止め、また彼の中心を尖らせ始める。吐き出し尽くして充実を失ったトゲは柔らかく張り詰めながら震えている。
 「蛇だ」
 呟いた私の言葉に彼がビクンと竦む。
 「なにがだい、気持ちの悪いことを言わないでくれよ・・」
 息を詰めながらようやく彼も人がましい声を出した。私はまた彼をデク人形のようにしようと腰を動かし、言葉はまた途切れる。
 蛇の交わりはこのようだろうか。蛇精の淫というが、蛇の交尾はダラダラと続く。シンボルとして描かれる蛇に双頭が多いのはえんえんと繋がりつづけたままでいるからだが。
 腰を沈めてどこまでも終わりのない器官にずぶずぶと入り込みながら私は彼に説明を注ぎ込んだ。
 「蛇のように繋がりつづけようか」
 「ヤメテクレ・・コワイヨ・・コワレテシマウヨ」
 すでに請われたオートマタそっくりのいいように私は彼に微笑の顔を向けた。すると余計彼は慄いたようにコワレテシマウヨと繰り返す。性能の悪い人形である。
 しかし、実際に彼は座って書かねばならない人間である。繋がり続けでは都合が悪い。座位にて交配し続けながら彼は書くというテもあるが、足が痺れてしまうし、第一重くて適わない。
 その上、私は愛書家であるので、彼の書くものだけしか読めないのでは生きてるカイというものが無い。
 「じゃあ関口君、君の中にコレを取り外して残していくから、せいぜい君は壊さないようにしてくれたまえ」
 クツクツとこみ上げる笑いに突き動かされて、私はひょいと自分のPenisを外し、彼に突き入れたままで私自身は不毛な蛇の交わりから離脱した。  私から離れても憶えた動きをそれは繰り返しているようで彼に不自由はないようだ。