
六十三巻にも及ぶ長い長い奇妙な冒険が記された書物を二人は読み終えたところだった。
<なにを、選びます・・?>
最終巻をもう一度めくり返し、飛ばし読みした扉の文章を読み返していたアリスは、反応するのに時間がかかった。
火村は火のついたタバコを咥えている。
「へ?なに・・?えっと・・」
「ん、何だよ、アリス」
「ああ!えっと、スタンド?選ぶんやったら・・そうやなあ、やっぱあれが一番役に立ちそうや、あの…」
「・・選ぶんならか。俺なら決まってるな。『ムーディ・ブルース』だ」
<エランダ、ヒムラハエランダ、カレノエランダスタンドハ・・>
「『ムーディ・ブルース』!!」
「うわっ、君なんやの、それ、火村ばっかずるいわ」
すっと、自分の体が、軽くなったような感触を火村は感じ取った。スタンドとは――かたわらに立つもの。自らの魂のカタチ。
確かに、それが、自分だとわかる。火村が選んだことによって、それがあの力を得ていることもわかる。これはあの書物の中に記されていたとおり、実体化する超能力、なのだ。
ニヤリ、と火村は人が悪く微笑んだ。
「……実は、使い道も決まっているんだ」
「なに・・えっと、その、火村、まさかおれ攻撃したりせぇへんよな」
「攻撃ってなんだよ。ばかだな」
なんというか、明らかにヒトガタな、それでいて魂のカタチそのままの、幽霊というか悪魔やなにかそんなものに似たものをかたわらに従えた火村に、怯えたアリスは後退する。
「大体、攻撃むきの能力じゃないだろ、コレ」
アリスは近づいてくる火村からじりじりと逃げている。混乱と怯えに目を見開いて火村とそのスタンドを見詰める。
「なあ。いつだったかな。2週間前か3週間前か。3週間前だよな。時間は・・」
「な、なにしようって、いうんや、ヒムラッ」
「コレの――能力はリプレイ、『その人物に起こった過去の出来事を再現する』――3週間まえの、夜からだアリス」
「さ、さんしゅうかんまえ、の、おれ?」
パチンと火村は指を鳴らした。ムギュムギュゥゥと、スタンドが蠢く。その気味の良くない眺めにアリスは視線をそらした。
ザーッとちょうどビデオテープがまき戻るような音が流れ――
その気味の良くない崩れた形が一瞬にしてカタチを取る。
「う、わ・・っ」
ぴたり、と動きを止めたその形は、身体をかがみこむ動作の途中で止められたよくできたマネキンみたいだ。見慣れた顔だった。ただし鏡の中で、だが。
「リプレイする」
「って、おい、これ・・」
呆然とするアリスを、火村がうしろから抱き寄せた。そのまま、ソファに運んで、「まぁ、見てろよ」と何でもないことのように言った。火村はとても楽しげだ。
リプレイされた<アリス>は3週間前――正確に504時間前の行動を再現し始める、服まで正確に同じ。あの日は夕食を外で取った為、アリスはシャツとズボンという姿でいた。
『ひむら、おれにも・・』
もちろんアリスしか再生されていないので、そのときに<アリス>が話しかけたはずの火村は応えない。なにかを受け取るようにさらに椅子に身を寄せたアリスがすっと顔を突き出す。
<アリス>は目を眇める。大きく息を吐き出す。煙。紫煙を吐き出したのだ。煙たそうに目は細めているが、口元は緩んでいる。
「最後の一本、だったんだよな・・」
火村が腕の中のアリスにささやいた。アリスはまだ目の前の事態が理解できずに、ただ自分のあまりの・・その様子に唇を噛んだ。
「お、おれ、おれこんなっ、こんなんちゃうっ!うそやうそっ」
<アリス>の顔が持ち上げられる。目はさらに細められながらも、かすかに誰かを映している。不自然な角度に固定された顎は、誰かの指がかかっているからだろう。<アリス>は目を閉じない。だが、瞳には霞がかかっている。鮮やかに唇の色が変化した。赤みを上らせて、ゆっくりとひらかれている。
唇が奇妙な形に押しつぶされている。へこんだ皮膚のあとからでなくとも、それが火村の歯が押し当てられたためだと言うことはわかる。この男にはキスのとき、唇を食む癖がある。
<アリス>の口がひらいた。したたる唾液すらリプレイされて。中で蹂躙される舌の動きがわかる。逃げるようでいて、逃げていない。手が、現在にはそこにいない、500時間過去にはしっかりとした感触でアリスの手をすがらせた肩を抱きしめる。
<アリス>が苦しそうに、顔をそむける。・・いや、そむけたんじゃない。あれは・・首筋への感触をねだった仕草だ。
『やっ・・』
イヤダ、といって首を捻る先がもう…次のいいところへと確実にあいてを誘っていて、稚拙で、正直な<アリス>の身体に、火村は眼をすがめてその様子を見ていた。腕の中のアリスは少なからぬショックを受けているようで、顔中を真っ赤にし、呼吸が不自然に早くなっている。
「み、見たらあかんっ、やめ、やめやめ!!」
「いいじゃねーか。イイぜ、アリス?」
「アホウ!」
<アリス>はびくんと身体を引き攣らせてあおのいたところだった。シャツのボタンがひとりでに外れて行くように見える。見えない手でゆっくりと脱がされて行くその状態は、ストリップショーよりも、変態的な眺めに見えてしまう。
「い、いやや・・!!」
『ひっあっ、ひ、むらっ』
震えた声で<アリス>が呼ぶ。シャツが肌蹴られて、剥き出しになった肩と胸をくねらせてもだえている。
なによりも耐え難いのは<アリス>が一人だという点だ。そうさせているはずの火村が見えないから、なにもかも一人で<アリス>が蠢いているように見え、しかも、それをとても楽しげに火村に見られている。
「見んな、いうとるやろっ!!」
火村の眼を強制的に塞ぐべく、アリスは火村の顔に手を振り上げた。しかし実践派の犯罪学助教授に、非力で流血沙汰が大嫌いな推理作家がかなうわけもなく。
逆に腕をとられ、手馴れた仕種で身体を火村の下敷きに押さえ込まれてしまう。
ソファの上でじたばたと二人が責めぎあうあいだにも、みだらな<アリス>の動きは続けられていた。
なだらかな丘を作るアリスの肌が、指のカタチにへこむ。お尻の肉を火村がつかんで揉みしだいているのだ。繰り返されるうちに、もともと色白な上、そんなところを日に焼いた事がないから真っ白だったものが、ピンクに血色を上らせていく。
ぶるぶると両腿から震えが伝わり、膝までがくがくと揺れた。力を失って、そのまま床に崩れた。
『はあっ』
押し潰されたような声を<アリス>があげる。ひどく安堵と快感を滲ませた吐息だった。アリスはそれが自分が経った今、火村の重く確かなからだを感じて上げかけた声と恥ずかしいほど一致していることがいたたまれない。
『あっ、あ、あ・・っ』
……動けない、呼吸もできない。アリスは火村を止めることもできずに身をこわばらせ続けた。そんなアリスを腕に閉じ込めたまま、火村は、<アリス>から目が離せなかった。そうさせているのが<自分>だった、ということさえ忘れそうになり、思わずごくりと息を飲みそうになる。
<アリス>は後ろを弄られていた。蕾が濃く色づいて、開いている。たっぷりと塗られた潤滑剤が、尻から腿までを濡らして、アリスの身体にはひっきりなしに痙攣が走り、声も甘く堪えきれずに漏らしている。 床に這ったまま、腰だけを持ち上げさせられ、自分の欲求さえ火村に握られたそのみっともないまでに露な姿に、裏腹に顔を歪め頬を染めた表情が、あまりにも……で、火村は思わず、その<アリス>を見つめたまま、腕の中のアリスの肩へ歯を立てた。
痛いほどすでに火村自身が高まっている。
「・・ゃっ、やめてや…火村、なあ、アレ、止めて、ええやろ、オレ抱けばええ!なんでこんなん・・」
「アリス…」
「っ!、待てって!さわんな!あれ、その前に消せっ!」
「…っ、お願いやからッ! 消してくれたら、何してもええからっ」
涙ぐんでいうアリスに、火村は、「なんでも・・?」と聞き返した。
「ええからッ消せ、消してくれっ!」
だれが、自分が貫かれてイくところを、そっくりそのまま再現されたいだろうか。あまりにも情けなさ過ぎる。
「あんなっ!使い方、卑怯や!君はなんちゅうことをっ!」
怒りのままに喚きたてるアリスに、火村はしれっとした顔を崩さず、平然といった。
「さあ。読者の八割八分が考えただろう『スタンドの使用方法』ってやつだぜ?」
「その確率はいったいなにが根拠や!俺は考えもせえへんかったわ!」
「ふふん。……それより、さっき言ったこと、覚えてる、よな」
火村の微笑みが、涙をためたアリスの目に、かすかにダブって見えた・・気がした。
ごめん、意味なきエロで。全国一億八千万人のJOJOファンさま、ごめんなさい。
さて!リプレイの続きはッ!
2005.9.18追加コメント。続きは書いてないみたい・・たぶん。な、ないと思うデス。 ジョジョねたで各キャラえっちをやってみよう企画アリス編だったんです・・。ジョジョを読んだことのある婦女子ならきっとだれでも一度は考えるスタンド悪用シリーズと題してアップしたら、「そんなことかんがえませんよ〜」とあったかい突っ込みコメントをいただいたのが印象に残ってます(笑)