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リミティッド 募る想い byよるの かいが
************************************************************************ 彼といささか強引な交渉を持ち、紆余曲折あって親友からなかば恋人としての新たな関係を結ぶことに成功した助教授は新たな悩みを抱えこんでいた。<オートリピートより> 彼が好きだ。こいつはなんて顔で笑いやがるのだろう。 彼というのは有栖川アリス――推理作家でこんなかわいい名前をしているが、俺と同じ年の三十路を過ぎた男性だ。感情は人間の目を曇らせ、客観などというものは有り得ない――つまり、俺の目にはアリスの顔身体声仕草、はっきり言ってすべてがとにかく愛しい。 アリスが笑えば胸をつかれ、俯けばどきりと下半身が――節操の無いことで仕方がないが、学生時代から自分でも気付かないほど、ひた隠しに募っていた想いがようやくかなった、ともいえるのだ。まあアリスには親友でもある男とこんな関係になってしまった、とおもっているフシがあるにしろ。 いつから、俺はこんなだったのか――我ながら驚く。いつからアリスを好きだったのか。熱心に原稿用紙に字を書き綴っていた横顔が目に触れたときかもしれないし、もっとゆっくり時間と共に生まれてきてしまった物かもしれない。 それはともかく。 とにかく、俺は、アリスと出会ってから、彼以外に心を動かされることがなかったのだ。女性男性ひっくるめてだ。恋愛にむいてない、淡白だ――そんな自分を、そう考えていたのだが、アリスと一線をこえてから、アリス以外に興味がまるきり持てなかった、というだけの話であると気がついた。 「なんやねん、君、さっきから気味悪いなあ〜、俺の顔になんかついとるんか」 「おまえ、こんど空くのいつだよ」 アリスはアレから俺をなかなか泊まらせない。かつては忙しいなかでも気晴らしと称して、飲むことが多かったのだが、酒のイキオイであんなことがあってからは翌日確実に予定がないときにしか呑まないし、泊まらせないのだ。 ああ、いったい、この前したのはいつだったか? 俺の我慢が切れないうちにとっとと原稿上げろよ、どうなっても知らないぜ、アリス。 「もっかいゆうとくけど、……今日はだめやで」 そんなことをいうのに、その目付きはなんだってんだ。誘ってんのか、ああん? 煙草の煙を勢いよく吸いこみ、吐き出す。しかし仕事があるというアリスの家に押しかけている身だ。そこまで無体を働くつもりはない、ないが……。 「空くのはいつだよ、アリス」 色目を使ったつもりが、俺の目付きは相当険悪かつ脅しを含んだモノになっていたらしい。 「みっ、3日後」 アリスがこころもち身体を俺から遠ざけ、ソファのクッションを抱きしめた。……そんな物で俺との間にガードを作ったつもりとは、笑っちまうぞ。 そんなかわいいこと、俺の前でしていいのか、アリス? ぐいと首だけ近づけて、クッションの影に縮こまるアリスをのぞき込む。 「で、いつまで空いてんだ」 「いちにち」 俺はアリスの胸に抱えられたクッションに肘を置いて体重を乗せた。 「前の夜から来ていいってことだなそれは」 「っせやけど、次の日、外行かなあかんねん。だから、あんま、ようない……」 アリスが言い終わる前に、俺はその憎たらしい予定を喋るアリスの口を塞いでいた。 「だ、だめやっていうてるやろっ」 「――がまんできねえよ、アリス」 わざと荒くした息と、押し殺してかすれた声をアリスの耳に吹き込んでやる。 これに弱いことは、ばればれなんだぜ、アリス。おまえだって、俺に反応するんだ。 特に、俺に欲しがられてるってとこに。 なかばコワイのだろう。アリスがびくっとする。ただしその恐怖は快楽にすれすれのものだ。 アリスには俺のを入れられる行為が、まるきり自分ではコントロールすることのできない快感であることが、ヨクテ、イヤなのだろう。だからそれを巻き起こす俺の欲望に敏感に反応する。 アリスが少しうつむき、それからぱっと顔を上げて俺をにらんだ。 「――イヤヤで」 「――わかってるって。で、いつになったら、――そうだ。一週間以上空けろ。春休みに、あかねえか」 アリスが本気で怒りそうだったので素早くひいた。だいたい、俺だって、仕事の邪魔だけはするつもりがない。 「ん――ちょうど、空くけど、な」 「じゃ、一ヶ月後の春休みにな」 「もう帰るんか。もう少し平気…ちょうど詰まってるとこやし」 押すと逃げるし、ひくとこんなことを言う。どうして素直なくせに素直じゃない態度を取りたがるんだろうか。 「もう一回キスしてもいいなら、いてやるぜ」 「――ええわ、帰れ。帰ってくれ。どうして君はすぐそうなんや。ほんまにうざったい男やなあ」 ……うざったい、だと? 「はああ。友達しとるほうが楽やったなあ。君、そんなで、付き合うた女性にうっとうしい言われたことないんか」 ――付き合ったといえるほど、付き合ったことも惚れたこともない。冷たいと言われこそすれ、しつこいといわれることなどない。そもそも、俺が自分から誘ったのはアリス一人だ。 「だから、カノジョおらんかったんとちゃう?長続きせえへんで」 「長続きしたくないっていうのかよ。あーあ、嫌われねえうちに帰る。帰ってやる」 俺はいささか腹を立てた。まったく、なんていいぐさしやがる。立ち上がり、身支度を整え、とっとと玄関へ向かう。振り向きもせず、玄関を叩きつけるように閉めて出た。 「……コドモみたいな男やしなあ」
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春休みには、10日ほど暇ができるはずだった。レポートの採点も、学生の評価もアリスと会えないうちに片っ端から片付けたのだ。 「――火村さん、春休み空いてる?心理学の国際セミナー、うちからの参加者たりないんだってけど」 同僚が研究室を訪れたときから、俺には嫌な予感がしていたが、案の定、彼は不吉な言葉を聞かせ始めた。 冗談ではなかったので、顔にイヤダと貼りつけて、様子を窺ってみる。 「あ、どうしてもってわけじゃないですよ。ほら、心理のほうの斎藤君、アレが急に結婚して新婚旅行中でしょう、彼がでるはずだったんだよね」 「ちょっと私用の予定が――」 どうしてもではないといいつつ、こいつはどうやらこの話しをおしつけようという考えだったらしい。声に説得の調子を感じる。 「ううーんこまったなあ、ほら心理学って討論英語でしょう。暇な年配の教授連は嫌がっちゃてんだよね。火村さんぺらぺらじゃない。火村さんにってさあ――」 なにをいうか。――親が危篤なので、とでもいってやろうかと思ったが、俺の両親はとっくの昔に死にきっている。 いっそのこと、俺だって新婚のようなものだ、とでも……。 「いや、ほんとに、すいません――わたくしごとですまないんですけど、ほんとうに、ちょっと……」 下げたくもない頭をさげ、とにかくムリだと繰り返す。しかたいかあ、急だもんねえ、と未練たっぷりの声をだしつつも、やっと引き下がってくれた。 出ていってくれたとたん、部屋に鍵をかけ、留守の札をドアにかけた。これで、おえらいさんにまで、出ろといわれてしまったら、休みはパーだ。 コーヒーをいれ、ぼろいソファに身体を沈ませながら、息をつくと、ほっとしたのとはべつに頭にくるものがある。 新婚旅行中のヤツの代わりに、危うくアリスとの時間をうばわれる所だったのだ。 まったく、本当なら、電撃結婚して、新婚旅行に出かけたいのは俺のほうだった。ろくにしてねえんだぞ。10年も前から、ただ一人だけすきだった相手と!ようやく30もこえた、男盛りの今になってようやくここまでこぎつけたというのに。 一週間どころか、ハニームーンの言葉どおり、一ヶ月は二人きりで部屋に閉じこもりたいくらいなのだ。 * アリスの言っていた空いている日の前夜、俺は泊まっちゃだめか?という電話をいれた。 『だから、あさって、用事あるんや。なんもせえへんなら、泊まってもいいって』 「――いかねえぞ、じゃあ」 『こんでもええよ、べつに! そしたら、もおぜんぜん会えんで―― 一ヶ月後まで』 「アリス、好きだ――わかってんのか?俺はおまえが欲しくてしょうがないんだぜ」 『欲求不満なんか、センセイ? こんでええわ、ほんまに――困るもん』 「アリス――おまえ、いやなのか、結局。俺と――」 切れたしまったのか、と思うほど長いこと電話からは音が途切れた。1秒ごとに胸が重くなる。かなりムリヤリ始めたこの関係だ。してるときは嫌がってなくても、アリスが俺をキライでなく、好きとさえいえるとしても、――こういう関係を俺と結んでいるのが、耐え難いというならば、友人に戻りたいと思う。――とにかく二度と会えなくなるよりは――。 『――君の春休みまでに上がるか、微妙なとこやねん。君、俺が休めなくてもいいんか』 「――絶対に上げろよ、アリス。明日、メシ作りに行ってやる。買い物行ってるまがあったら、とにかく書け」 『もう今日の夜食もないんやけど』 「……わかった。買い物してから行く。じゃあな、がんばれよ」
* その日のアリスは上機嫌だった。俺が飯を作ってやり、片付けて、風呂の用意までしてやった上なにもしなかった!のだから。 俺はなんて自制心溢れる理性的な人間であったのかと、自分で感心したくなる。アリスは、俺の無償の奉仕に感謝しきりで、さすがにわるく思ったのか、ありがと、を、笑顔で繰り返し、寝る前には俺の鼻の頭にキスを落としていった。 「貸しだぜ、貸し。いいから、仕事に集中しろ」 「すまんなあ〜、な、火村――ちょっとならええんやけど」 「ちょっとならいい。――むりだからな。止まらなくなったら、ほんとに困るんだろ」 アリスは、今度はいつかのように憎まれ口で返さず、目元を赤く染めてゴメンという。――ぐらりと理性のゆれる音が俺だけに聞こえたが、耐える。軽くすぐ目の前の唇をついばんで、アリスの柔らかな薄茶の髪をそっとすいた。 すぐ離した唇が今度はアリスから重ねられた。甘い。柔らかいからそう感じられるのだろうか。アリスの唇は甘い。もっと甘い舌がそっと這いこんでくる。じっくりと味わってから、上気しているアリスの顔を押しやって、体を離す。 もうすでに、俺は熱くなりかけていた。これ以上近づいていたら、一ヶ月後のアリスの休みをこの手で妨げかねない。 アリスが不思議そうに首をかしげ俺の顔をのぞきこむ。その大きな目がどことなく濡れて、息が熱っぽいような気がした。――そりゃそうだよな。ずいぶんしてないのはアリスも一緒だ。アリスだって仕事が忙しかったのだし。溜まってもくるだろう。 「――火村」 「我慢しろよ。やりすぎちまうって。いましたら、ほぼ確実に、おまえは明日出かけられないぞ。いいのか」 「ええわけない。けど、なあ、ひむら」 「一ヶ月だろ、たった。ああ、もう、あと2週間ちょいか」 「……うん、待っとる」 アリスの言葉が俺には信じがたいほど嬉しかった。――勃ってしまった自分に、顔を歪めてなんとか笑う。 「――我慢も限界だぜ」 「俺も。そうなん――、なあ火村ちょっとだけ――」 「馬鹿」 アリスが抱きついてくる。ソファの俺の隣へ腰掛け、腕を回して体を預け、もう一度キスを俺に降らせた。 キツイ。必死に努力している、お前のいうヘンタイ助教授になんてことをするんだ。 「だって、落ちついて仕事できひん――」 はあ、と俺はため息を付き、アリスの体を引き剥がした。鉄の自制心で、アリスを押し倒し、キスしながら――アリスだけを手に握りこんで高めてやった。 「火村…っ」 「ばか、呼ぶな」 キスで何より俺をそそるアリスの声をふさぎ、とっととイかせてしまおうと性急にアリスを追いたててやる。腰を押し付けアリスが俺の背を掻き抱いてくる。 アリスの腿に自分の熱を押し付けて、欲情を伝えてやりながら、煽る。 息を呑み、アリスが達した。 「……はっ…ふ」 快楽に乱れた表情に見入りながら、アリスの呼吸が整うのを俺は待ってやった。 「――ヒムラ、き、み…ええ、の……?」 アリスの腿に当たったままの俺も、このままいさめるのがムリなほどだったが。 俺は苦笑してアリスの体を離し、立ち上がった。 「――風呂、貸してくれよ。さすがにこのままじゃ帰れねえな」
一ヶ月後まで、我慢すると決めたら我慢するのだ。 くそ、待ち遠しいぜ。
************************************************************************ rimited――SEVEN DAYS SEX ************************************************************************ 昔からいらしてる方は読んだことがあるかもです。えんえん連載中で完結・・まだなの。まだなんですが・・とりあえずアップ。ごめんなさい |