rimited――SEVEN DAYS SEX
Tue−T
電話はアリスからのものだった。――普段なら嬉しいそれも、今だけは嫌な予感がしておそるおそる次の言葉を待ってしまった。
『――はやく来てや、火村、もう腹へって動けへん』
「すぐ行く――もう出ようとしてたんだぜ。おまえが電話しなきゃ、5分は早くついたな」
『ほんま、すぐ来れるんやな』
「ああ」
じゃあな、と通話を切る。俺はほっとした。アリスの仕事は相当ぎりぎりだったのだ。それでも、俺が休みに入ったら一緒に過ごすことだけは約束してもいたが、「やっぱりだめや」といわれはしないかとびくびくしていたのだ。
しかし、まだ満足な食事もとってないということは、行ってもアリスは仕事中ってわけか。
「ちっ」
舌打ちして俺はコートを羽織った。桜も咲き初めるころだというのに、今日は朝から雨の上気温が低い。……こんな天気では、外に食いに出るのも面倒だし、徹夜あけの弱った作家など風邪をひきかねない。買い物をして行ってやったほうがいいだろう。
大阪のアリス宅の玄関へたどりつき、チャイムを押す。……すぐ返事がない。
連打してやる。10秒間に16回は押したころ、ばたばたという足音が響き、がちゃっとドアが開かれた。
「なにやってんねん、君は」
「おいそがしいところに失礼したな」
「……さむかったか?はよ上がり」
アリスからは、ほかほかと上気が上がっているようだ。頬はピンクで風呂上り特有のいい匂いがしている。
俺の不機嫌の理由はすぐさまアリスにもわかったらものらしく、可笑しそうにアリスは小さく笑い、「仕事、終わった」と呟いた。
「それを早く言え」
スーパーの袋を足元に置き、靴も脱がずにアリスを引き寄せる。アリスが笑っているのは気に食わないが…、まあ、この際だからかまわない。しかめっ面を作っている意味もないだろう。緩みそうになる頬を引き締めるなどという馬鹿げたことに労力を費やしても意味はない。
「んんっ……」
素直に唇は重ねさせたものの、すぐに離れようとしたアリスの顔を押さえつけて貪る。アリスが、舌を奥まで入れられるのを、嫌がっていることなどかまわず撫で回す。
足を踏みつけられた。しかし、靴の上から素足で踏まれてもこたえない。かまわず続けていると背中をどつかれた。
……まあ、湯冷めさせて風邪でもひかれちゃぁな、と思ったので解放してやった。
「アホっ、も…、苦しいやないか」
目が潤んでいる。そのもっと上気した顔を俺が覗きこむと、予想と反対にアリスはぎゅっと抱きついてきた。
「アリス……」
「どうするんや、俺、腹へってるのに…」
「……飯にするか?」
アリスの腿の間に膝を割りこませて、きゅっと押してやりながら、俺はゆっくりと尋ねた。
俺の背中に回っているアリスの手に、ぐっと力がこもったのがわかる。その婉曲なこたえに俺はついのどの奥で笑い声を立てて、もう一度どつかれた。
顔や姿、形、それから声。それらに欲情することは確かだ。それが男のものであっても。そんなことは意味を成さない。アリスの顔、身体、声…なのだから。が、それよりも仕草や表情、そして口調。どうしようもなく俺を煽りたて、欲望させるのは。
アリスはベッドの上から俺をちらちらと見ている。
アリスは風呂上りでパジャマ、俺はコートまで着込んだ重装備だったので、とりあえず寝室のベッドにアリスともつれこんだのち、いったん俺はベッドから降り、服を脱いでいっているのだ。
気勢をそがれることこのうえない。
俺は服を着たまま行為に及びかけたのだが、アリスの抗議で仕方なくそうした。雨粒のついたコートまで着たままでは、アリスが拒むのも無理はないが。
「……やっぱ、飯にせえへん?」
「……なにいってやがる」
その気にさせといてそりゃあねぇだろ、と俺は呆れ、当然却下した。
ベッドに上がり、アリスの腕を引っ張って引き寄せる。もごもごと空腹を訴えるアリスの唇を塞いで、アリスのパジャマを脱がせにかかる。
「……こんなんで飯食えんのか、え、アリス?」
性欲と食欲、どちらが優先順位は高い?
こうなっている状態では、ひとまずすませて栄養補給にとりかかるのがあたりまえ…だろう、やはり。
「あっ、……お、おさまりかけとったのにっ」
「一人でおさまってんじゃねぇよ」
アリスの身体はやたら温かい。ひっぱりあげてぴったりと重なると、冷えた俺の身体の唯一熱い部分が、もちろんアリスのなかでも一番熱い部分に触れる。
アリスが黙る。ぐっと押し当てると、アリスが息を詰めた。……どくんとそれに俺が反応する。
「アリス……」
貪り尽くすような俺のキスをアリスは嫌がる。首を振って逃げるのを追いかけて、無理やりにキスを浴びせる。と同時にアリスのものを手におさめて握り締めるとアリスの抵抗は止んだ。
もう、アリスはかなり熱くなっていた。俺も、ご同様だが。……挿入れたいとは思うが、もたねぇだろう。無理にすれば傷つけてしまう。
上に載せていたアリスを退け、反対に俺がアリスの上に重なるよう位置を入れ替える。
身体を重ね、腰を押し付けて揺さぶる。アリスの腕が俺の肩にすがりついてきた。爪を立てられて痛みが走る。
「んっ、はあ…っ」
体重をかけてのしかかると苦しげにアリスが息を吐き出す。……俺が中にいるときのような甘く苦しそうな息に似ている。
きつく狭いアリスの熱さが、欲しい。指を唾液で湿らすと俺はそっとアリスの後ろを探った。
「あっ、あかん…っ、無理やっ」
「つっ、アリス……」
ぎゅっとしがみつかれて、肩に痛みが走る。しかしそんなことにかまうことはできなくなっていた。アリスのものに自分のをすりつけ煽りながら、指を進入させていく。熱いそこはまだぎちぎちに硬くて、俺の指すら拒む。
どうしても、なかの感触を味わいたかった。
「あっ、あ、あ……」
「は、あ、アリス……」
アリスの下腹にぶちまけながら、奥まで指で犯した。
「ああ…っ」
アリスは俺の背にしがみつきながらいった。
「――っ!!」
声にならない悲鳴を上げたのは俺のほうだ。
「ア、アリス、痛ぇって、放せっ」
文字通り俺は飛びあがった。余韻もなにもなく、アリスの上から身をもぎ放しその手をつかむ。
「なんだ、この爪!むちゃくちゃ伸びてるぞ」
アリスのその長い爪が俺の背を掻き毟ってくれたのだ。しかもその左手の爪など、割れてぎざぎざになっていた。
「……つめきりが行方不明なんや、よう探すひまもなくってやね」
「この爪はなんなんだよ」
「カッターで短くしようとして失敗したん」
俺は深く溜め息をついた。
――Wed U――