息苦しいような息づまるような、寝苦しさにサンジは目覚めた。 (・・目があかねえ・・?) 寝返りを打とうとして、手も足もぴくりとも動かない。物理的に動けないのではない、動かせないのだ。 痺れたり、体のダメージで動けないのでないのは分かる。自分の身体はそこまで傷んでない。傷めた腹は鈍く傷むが背中に触れる冷たい甲板の感触も感じる。 ただ指の先すらぴくりとも動かせない。 (な、なんだよ、動けネェ・・くそっ、なんだってんだよ・・!?) 目が覚めない。完全に覚醒すれば、たぶん普通に動けるはず、ただどうしても眼を開けることが、完全に意識を覚醒させることができない。 視線を感じる。殺気のような・・完全なソレなら飛び起きるが。 (・・か、かなしばり・・っ) 幽霊か悪霊か、とにかくなにか尋常でない力を視線から感じる。 (ひ、ひぃーっ) 恨み買う覚えなんかねぇーぞ、とサンジはきっぱり思った。海賊なのに。海賊だが。先刻の戦闘でのことなどきれいさっぱり忘却の彼方なのだ。 わたわたと気分は焦るのにやっぱり身体は動かない。 ねむれ、と寝ていろと、その視線はサンジに強制的な睡眠を呼びかける。 『起きんな』 だれかの声に似ていた。 ほわほわとカラダがあったかい。撫で回されているような、舐めまわされているような、微妙に気持ちよく気持ち悪い。なんだか馴染んだ感触だ。 とろとろの眠りに落ち込む前の、ヤツ、の無駄に熱い手の感触を思い出す。 幽霊でなく、金縛りの原因がゾロの視線にあるらしいことに気づいてサンジは憤った。 (・・てめ、何みてんだよ?・・イヤまじでゾロ?・・らしくねぇ・・) じいっと見られる心当たりなんかない。やりたいならやる、用があるなら起こす、はずだ。 (つぅか起こせ、起こしてくれ・・。) なんだかもうツライ。動かそうとしても動かせない体が辛い。じんわりと熱を帯びてうずうずしてきた下半身も辛い。 指に力をこめる。 (うごけ、うごけ、うごけ・・動けゴラァ!) 指に熱い痛みが走った。 ぱちりと目があく。 「てめぇ、何してやがった・・」 呆然と呟いたサンジの文句に返答はない。 ゾロはサンジの上で長々とカラダを伸ばして寝入っている。片手はサンジのウシロ頭を抱え込み、片手は腰へ、片足をからめ捕らえて、ちょっとやそっとでは抜き出せない。そのくせ、イッタ肋骨には負担を感じさせない絶妙の位置取りだ。 いつもより、体温の低い冷たいカラダが熱を持った自分には心地よいのも蹴り飛ばせない理由のひとつだ。 な、何してやがった、ナニしてやがっ・・。 びっくりして、蹴り倒すこともできずにサンジがあわあわしていたら、あっという間にサンジを抱え込んで、逃げるように目を閉じてゾロは寝入ってしまったのだ。 きゅうと目を閉じてサンジは息をつく。ゾロの精液の匂いが鼻をつく。 ・・当たり前だ。ダした手を拭っただけでサンジの頭をゾロは抱え込んで寝入っている。うんざりでげんなりで今すぐ(手ぇ洗ってこいクソマリモッ!!)とどつき倒したくもなったが、どうにも自分の熱は萎えない。 ヒトを金縛るような凄い目で、ただただゾロはサンジを見ながら、抜いていたようだ。やっとあいた視界に飛び込んできた、そのモノスゴイ目つき。 (指、咥えてやがった・・) カーッとサンジの頭に血が上る。頭を抱えて恥ずかしさにのたうちまわりたくなるほど。 胡座をかいた姿で、頭だけをぐっと下げて、ぱくんとつまみとるみたいに、サンジの指を口にしていたのだ、ゾロは、ゾロが。 目が合った瞬間、・・シマッタ、みたいなカオをした。悪戯が見つかって決まり悪いみたいななんともいえない子供っぽいふて腐れた表情だった。 狼狽していた。 思い出してもハズカシイ。恥ずかしさにサンジはハフハフ息を乱してゾロの匂いを嗅ぐ。 元気になると自身のムスコはちょうどゾロの逞しすぎる太ももに押し付けられちゃったりしている。 (やべぇよう・・) なんだって自分がこんな羞恥プレイに巻き込まれる羽目になっているのかわからない。 カクカクとゾロの脚に擦り付けながら肩口に顔を押し付けてちょっと負け負けな気分だが「起きろ、てめぇ・・」とかサンジは呟いてみた。 起きない。起きそうにない。 うずうずする下半身をいさめようにも、原因そのものに抱きかかえられていたらそれは収まるわけもなく。 抜け出そうとすると、それをけものの本能で察するのか押し留められる。ぐっと足をさらにキツクからめとられて、高ぶったそこへの刺激が余計にヤバイ感じだった。 (ちくしょ・・) 我慢の限界だ。 サンジはスーハーと深呼吸。開いた目は据わっている。腰を浮かせて窮屈な場所からムスコを取り出し、あとは無我の境地。 ・・ゾロが起きたら海のそこまで蹴り飛ばしてやろう。 密かに物騒な決意で黙々とシた。 終えて身じまいを整えて、すやすや眠る男の腕のなか、ようやく安らかな眠りに自分も落ち込みながら、サンジは少し泣きたい気分だ。 |