MACRO-SWITAR




 マクロスイターってレンズがある。
 昔、スイスで作られていた「アルパ」という一眼レフの標準レンズだったものだ。このレンズはその名の通りマクロレンズで、「マクロレンズでは世界で一番明るい」とか「一眼レフ用では最高の標準レンズ」などと、レンズマニアにはとかく評判の高いレンズだ。
 なにしろ一眼レフ用の標準レンズでアポクロマート(色の三原色の色収差を全て補正したレンズ)なのは、唯一これだけなのだとか。
 ま、そんなスペックは別にしても、私の場合は、昆虫写真家の海野和男さんがこのレンズを高く評価しているのを読んで、これはどうしても欲しい、と思ったのが入手のきっかけだった。

 このレンズを初めて使い、そのプリントが上がってきた時の印象は「え?、なにこれ!?すごい!!」というもの。まるで中判カメラで写したようなシャープな描写と、うわさ通りの上品なボケ味、そしてレンズ自体の作りの精密感や個性的でカラクリめいた動作などが実に魅力的。一度使ったら手放せなくなるレンズだ。



 写真左は無限遠の状態。ここからヘリコイドをまわし始めると、まわるまわるまわるまわる・・・と、クルクル回ること2と3/4回転。ここまでヘリコイドの回るレンズは珍しい。普通のマクロレンズは1回転もしないもんね。
 あと、写真ではよく分からないかも知れないけど、絞りを動かすと被写界深度が小さな丸窓に赤い印がでて表示される。あんまり意味もないけど、このあたりの機構が「マクロスイターファン」を生むんだろうね。
 同じメカニカルな機構と言っても、旧フォクトレンダーのメカは、悪い言い方をすればロボットがロボットを作っているような、ちょっと血の通わない雰囲気があるけど、このレンズのカラクリは人間臭い。

 こいつの残念なところは、「アルパ」にしか付けられない、ということ。
 アルパというカメラは他のレンズ、例えばライカやニコンやペンタックスのレンズが付けられるように、フランジバックが浅く作られているのだが、これが災いして、アルパ用のレンズは、逆に他のメーカーには使えないのだ。

 さらに追い討ちをかけているのが、そのアルパ自体の生産台数が極めて少ないことだ。
 写真は「モデル9d」というタイプだが、これは、アルパの中では一番沢山売れたカメラだというけど、それでも生産台数は5千台。さらにこの写真のブラックタイプに至っては、たったの665台しか作られなかったという。これはとても日本人の感覚で言う「工業製品」の製造数ではない。




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