その2 チャイ
インドでカレーが美味いのは、ドイツのソーセージが美味かったり、信州の蕎麦が美味かったりするのと同じく、ごく当然のことであるから、ここであえてご紹介する勇気すらないが、チャイ、つまりミルクティーが美味いのは、是非お伝えしたいのだ。
チャイの語源は多分中国語の「茶」であろう。なぜインド人が茶を好むのか知らないが、きっと、旧宗主国のイギリスが、ライバル国に対抗上、コーヒー嗜好から紅茶嗜好に切り替えて、アッサム地方あたりで作らせたことが起源なのだろうね。とにかく現在では、あまり酒を飲まぬ(少なくとも表立っては)インド人にとっての、「ちょっと一杯」的な飲み物として、完全に定着してインド文化の一部になっているように見える。
インド人の好むのはミルクティー、それもメチャクチャに甘いやつである。よく東南アジアなどで、びっくりするほど甘いコーヒーに遭遇するけど、暑い国の人は、どうやら「甘さの刺激」がお好きなようだ。インド人もご多分にもれず、かなり甘党らしい。
さて、チャイの淹れ方だが、手鍋にお湯とミルクと茶葉と砂糖をぶち込んでグツグツ煮てしまう、という「ごった煮」流。どうやらこのとき、茶葉の他に、カルダモンかなにかの香料も入れているようで、それがチャイのうまさを引き立てているのだろう。こいつを大きな茶漉しで濾してしてやかんに注ぎ入れ、そこから各人のコップに注ぐわけだ。
インドのチャイがいいのは、味もさることながら、そのコップである。チャイ屋で出してくれるコップは、薄手の素焼きのもので、使い捨てである。インド人を見ていると、チャイを飲み干すと、この素焼きのコップを惜しげもなく地面にたたきつけて割ってしまう。なんとも贅沢な気がするが、これもまた「なんでも大地に帰っていく」インドならではの風習なのだろう。でも考えてみれば、プラスティック製のコップを使い捨てにする我々よりは、よほど合理的かもしれない。
この素焼きのコップだが、聞くところによれば、最近ではインドでもプラスティック製のものに押されて、だんだん使われなくなってきているとのこと。残念だなぁ。
私たちは、この素焼きのコップを2つ持ちかえった。これで日本でも「チャイ屋気分」を味わおう、という趣向である。でも我が家のことであるから、多分、「ぐいのみ」になってしまうのだろうが…。