その1 はるかなる仏塔の国


 見渡す限りの彼方まで無数のパゴダ(仏塔)で埋め尽くされた景色。
 それは何かのテレビ番組でほんの数秒間映し出された光景だったのだが、私はその景色にすっかり心を奪われてしまった。そしてそこがミャンマーの古都のパガンという場所だ、ということを、そのとき初めて知ったのだ。
 それが私とパガンとの出会いだった。

 パガンはミャンマー、つまり旧ビルマの北部にある仏教遺跡の村だ。カンボジアのアンコールワット、ジャワ島のボロブドゥール、そしてこのパガンが「仏教の三大遺跡」なんだそうだ。
 テレビの画像を見てからというもの、「パガンに行きたい!、パガンを見たい!」そう思いつづけたけれど、でもパガンはあまりに遠かった。
 そもそもミャンマーと日本の間に直行便なんてない。行くなら、まずタイのバンコクへ飛び、そこからミャンマーの首都ヤンゴンへ飛び、さらにそこから北部への旅をしなければならない。
 時刻表で見ると、便の接続が悪く、どうしてもバンコク、ヤンゴンで各1泊をしなければ、パガンへはたどり着けないようだ。つまり往復6日。これはまるで「アマゾンの奥地へ行く」みたいな距離感だ。サラリーマンの1週間の夏休みじゃ、こりゃとても無理だな、と半ばあきらめていたのだった。

 ま、それが結局パガンに行くことになった経緯についてはここでは省くが、とにかく上司や同僚の白い目をよそに、強引に16日間の休みを取り、1996年の夏、私はパガン行きを「決行」したのだった。

 しかしほんと、海外渡航ってのは、今も昔も「命がけ」だなって感じる。
 昔は船が嵐に合ったり、熱病に冒されたり、なんていう危険を旅人は乗り越えたわけだが、現代のサラリーマンは「休みすぎて会社からリストラされるかも」という不安を乗り越えなくてはならんのだ。いつの時代も旅に出るのは命がけ、なんである。

 さて、そんなこんなで私は、成田発バンコク行きのインド航空の機中の人となったのであった。




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