モツカレー



野外料理のチャンピオンといえばやはりカレーライスでしょう。
中学生の頃、夏合宿のキャンプで、ほぼ1週間連続でカレーライスだったことがありますが、これが不思議にあきないのですね。ま、野外の新鮮な空気のなかでは、何を食べても美味いのですが。

ここでご紹介したいのはモツのカレー。モツというと煮込みはあるけど、カレーって意外にないでしょ?、これが実に美味いんですよ。ぜひお試しを。

さて、まずモツの入手からです。
通常スーパーなどでは、シロモツしかなく、それも真空パックされていたり(いつのものだ?)、お節介にも焼き肉用に味付けされていたり・・・。
ま、こういうものを使ってもいいのでしょうが、モツは新鮮さが命ですから、できれば大きな肉屋に注文されることをお勧めします。ちなみに私がいつもモツを買うのは、御徒町のコリア街にある梁川食肉店という店。さすがに韓国朝鮮人街だけあって、モツは種類も多く、新鮮で、そして安価。日本の肉屋とは「キャリアの違い」を感じますね。

コブクロ(ブタ) ギアラ(牛)
ハチノス(牛) ホルモン(牛)


今回買ったのは、ハチノス(牛の第二胃)、ギアラ(牛の第四胃)、コブクロ(ブタの子宮)、ホルモン(腸)の4種。できればミノ(牛の第一胃)も欲しかったのですが、今回は生がなく断念。モツはできればカット前のものを買ったほうが、より新鮮(な気分)です。(上の写真は細切り後)

(ハチノスはこんな状態で売られている)

基本的にカレーに入れるモツはなんでもいいと思うのですが、私は自分の好みから、ハチノスは絶対に欠かせません。逆にセンマイ(牛の第三胃)はカレーには合わないと思います。

まず下準備として、モツを湯掻きます。
モツには独特の匂いがありますので、煮込み始める前に、鍋の湯のなかで、沸騰させてはその湯を捨てる、ということを2〜3回繰り返したほうがいいと思います。ここで使っている肉は新鮮ですので1回湯掻いた程度でOKですが、スーパーの冷凍品などはかなり念入りに湯掻いてください。

次に煮込みです。
湯に塩少々をふり入れ、モツを弱火でコトコト3時間〜5時間くらい煮ます。このとき、月桂樹の葉、粒胡椒、あるいはローズマリーの1枝などを入れて煮込むと、臭みが取れると同時に風味も高まります。

煮込みが終われば、湯を切り、冷ましたあと「ジップロック」に入れて冷凍をしておきましょう。
野外では、鍋に湯を沸かし、このモツを入れ、あとは市販のカレーのルーを入れて1時間ほど(できればそれ以上)煮込めば出来上がりです。本当にこれは美味ですので、是非お試しを。なお、このときジャガイモとかニンジンとか、なるべくなら入れないで欲しいなぁ。モツだけのカレーを是非味わってみてください。

もちろん、ここで煮込んだモツは、カレー以外に「モツ煮込み」や「モツ鍋」にも使えます。大量に処理して小分けに冷凍しておけば、いろいろ便利です。


<市販のカレーのルーなど使いたくない方へ>
カレー作りの楽しみはルー作りにある。その楽しみをS&Bやハウス食品やグリコに奪われてたまるか。・・・そうお思いの方。お気持ち、よく分かります。私も同じです。
私は最近、ほうれん草のカレーにはまってますので、その作り方をちょっとご紹介しましょう。

まずほうれん草を手でちぎりながら、水を少量入れたミキサーに徐々に入れて、ドロドロのジュース状(ほとんど青汁ね)にします。

その「青汁」を鍋で煮ながら、唐がらし粉、ターメリック、カルダモン、コリアンダーなど、その日の気分でどんどん入れていきます。ここにモツを煮汁とともに入れて煮込んでいくわけですが、モツだけだと脂肪分が足りないので、ラードを入れて補っています。さらに私はこの中に、粉チーズ、自製の「ギー油もどき」(バターを煮詰めて上澄みを固めたもので、無塩バターみたいな感じ)などを入れていきます。
このままだと味が「平べったい」ばあいは、スープストック、あるいはスープの素で味を調整します。
私は基本的に小麦粉でトロミを付けたカレーがあまり好きではありません。したがって今回も小麦粉は使っていませんが、ほうれん草を煮込むことで適度なトロミがでてきて、実に美味なのです。

出来上がりはこんな感じ。こりゃうまい!


<モツについて・・・>
昔、アラスカでは鮭を取ったあと、スジコを捨てている、という話を聞いて愕然としたことがあります。
小学3年のときに担任から聞いた話でしたが、それを聞いた時、ガイジンというのは、なんと大雑把でもったいないことをするのだ、連中には「美味」というものがわからないのか、なんて思ったものでした。
でも日本人が豚肉や牛肉でやってることも、考えてみれば同じなんですね。
売られているのは赤身ばかり。モツ類はきわめて少ないですよね。
モツでも、今回使った胃や腸など、消化器系の内臓はなんとか入手できるけど、脳や腎臓などになると簡単には入手できません。これらは食肉加工の段階で捨てられてしまうのか、あるいはキャットフードなんかに化けてしまうのか。
いずれにしてももったいないことだと思います。


最後にモツについて、作家、開口健氏の作品からちょっと引用させていただきます。

「魚でも獣でも相手を倒したらまっさきにモツから食べにかかるというじゃないか。今晩はひとつそれをどうだろう。前菜にはカタツムリだな。(中略)やがて壺がほかほかと湯気をたててあらわれる。フォークを入れてべろべろしたものをひきあげて皿にとってみると、胃袋だった。とろとろに煮込んであってむっちりと柔らかいがどこかに弾力ものこしてあるので、歯ごたえを楽しむことができる。濃厚なソースが芯までしみこんでいて、そのとそのとろとろさとくると、”煮込む”というよりは”熟し”ている。(中略)皿のソースを一滴のこらずパンで拭いとり、そのパンのさいごのひときれを呑みこみおわると、女はぐったりとなって壁にもたれた。薄く汗ばんで、頬が薔薇いろに輝き、うつろな眼がうるんで、暗がりにキラキラ閃めいた。「完璧だわ」女はひくくつぶやいた。」
(開口健著「夏の闇」新潮文庫刊)

(2002年5月)