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糸(縫合糸)の話
Suture Care and Infection Control

5月21日

 編者は2000年より胸部創を真皮縫合して抜糸を不要とし、美容(整容性ともいう)にもいい方法を用い、創感染もありません。術後感染2008に関連資料あり。

2008年4月8日

 2004年の記事だが、米国のパスから学ぶ周術期管理(医学書院)は必読。

糸があっても・・・

最近の肺外科ではカメラの手術が取り入れられてきています。カメラの孔は1cmくらいでお臍程度ですが、そこに2本くらい糸をかけます。普通、ぬった糸は1週間で抜糸できますが、この糸は2-3週間目にとるようにしています。これはなぜか、そしてその間のシャワーなどについてお話します。

#1.従来の抜糸

 普通、盲腸(正確には虫垂炎、あるいは虫垂切除術)のあとには1週間で抜糸するといわれています。これはメスで切ったキズは、そのまま合わせると自分の治る力で1週間でキズが付くからです。ただし肘や膝など、つっぱるところの糸は1週間ではずすとまだ付く力が弱いので10日や2−3週間まで延ばすことが多いです。

#2.カメラの孔の糸

 肺のカメラの孔の糸も1週間では、抜糸しても開いてしまうことが多いです。これは、その孔を通してクダを入れている間に皮膚が弱っていることや、胸の皮膚は呼吸で伸びたり縮んだりするので引っ張られることによると考えられます。そこで肘や膝のように2−3週間待って抜糸するほうが、開いてまた縫い直す苦痛や手間がなくてよいわけです。

糸があるときのガーゼやシャワー

#1.日本のガーゼ交換

(1)「ふしぎの国の医療」

 1999年、朝日新聞のコラムでわが国の病院で行われていることが、世界の目からすると「ふしぎ」なことがあると報道されました。ガーゼ交換もそのひとつで、外国ではクダ(排液管、ドレーン)がない場合は毎日代える事はないですが、この国では毎日ガーゼ交換する習慣があります。

 もちろん、手術時に腹膜炎などで菌が止むを得ずついた場合などは毎日観察する必要がありますし、欧米でもキズの痛みや熱があるときは、ガーゼを開けます。しかし一般の場合は、ガーゼ交換そのもので菌を植える可能性もありうるのですが、あまり知られていません。消毒液を使ってガーゼ交換しますが、消毒液でも死なないバイキンが存在しうるのです。

(2)米国の指針

 米国政府の疾病予防センター(CDC)は、感染症に対していろいろな指針(ガイドライン)を出していますが、キズの手当てについても基準を示しています。それによると、クダのないきれいなキズでは48時間まではガーゼなどで覆ってそのままとし、その後は開けてそのままでシャワーをしてもいいとされています。これは、日本式の方法などど比較検討して、この方法でよいと科学的にデータが出たから、というわけです。

(3)私どもに当てはめると

 私どもの肺外科では、クダは数日内にぬけるようにしており、その後はキズの上に透明な膜のようなものを貼って入浴や、シャワーをしてもらっています。米国の指針のように糸があっても風呂などは1週間で退院後に家でどうぞ、としています。糸はそのままでよいのですが、当たってチカチカする、といわれることが多いので「カット絆」などをしていいですよ、といってます。どうしても気になる方には消毒液をだしています。

 手術から2−3週めに外来で糸をとっています。その後はカット絆も何もありません。なお、この抜糸方法は築地の国立がんセンター中央病院に準拠しています。

#2.その結果は?

 根本的には胸のクダが早くとれる方が、バイキンが付きにくいです。また肺腫瘍などでもキズが小さいと感染が少ないです。

(1)キズの感染

 カメラの手術では、小さな切開部も美容外科的な縫い方(埋没縫合)で抜糸が要らないようにしていますので、感染もありません。またカメラの孔の糸があって、退院後にそのままシャワーや入浴してもらって感染は起きていません。

(2)稀にありうること

 普通とは違うキズの治り方の場合、遅らせて抜糸しても水(胸水)がでるひとがありえますが、予想される場合は、さらに抜糸を遅らせます。また皮膚の深い部の糸が数ヶ月後などに皮膚の上に出てくることも稀にあります。これに対しては、なるべく皮膚の深い部では糸を使わないようにしています。

今後のガーゼ交換と抜糸は?

#1.国内の常識と世界の常識

 糸が抜けるまでは絶対に水につけてはならない、というのが国内の常識です。しかし、2-3週間もシャワーすらできないと、全身に菌が増えることになりえます。なお看護系の雑誌では、抜糸前シャワーなどに積極的です。世界とインターネットで寸秒も違わないリアルタイムの時代、まったく米国式とはいかないにしても、いいところは取り入れていくようになるかと思われます。

#2.私どもの今後

(1)説明

 肺のカメラの手術が多いので、抜糸前退院の方が圧倒的多数です。さらにガーゼを敢えて交換しないのは、上記のようなわけがあってです。これらのことは、わかりやすく説明を続けてまいります。

(2)軌道修正

 米国のやり方がアメリカ大陸では科学的に当たっていても、この島国では当たらないこともありえます。そこで問題があれば、謙虚に改めます。ご意見をどうぞお寄せください。

もっと知りたい方へ

#1.米国CDC

 米国政府の疾病予防センター(CDC)では、英語ですが、自由にガイドラインなどを閲覧できます。最近は、自動翻訳するソフトウエアのあるようですから、一度開いてみたらよいかと考えます。なおリンク許可の条件として

1)資料は自由にダウンロードできますが、出典をCDCと明らかにする、ただしCDCのロゴは使えない

2)リンクを掲げることは、本サイトとCDCとの何らの関係を示すものではありません

3)リンクを掲げることによってCDCは本サイトを支持するものではありません。

米国疾病管理センターCDC

#2.ガーゼ交換についての新著

 ある医学雑誌社から依頼で、ガーゼ交換や回診のことについて拙稿があります。ご希望の方は、表紙からメールにてご連絡ください。

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