2000年6月15日の学会(胸部外科学会関西地方会、倉敷市)において発表した画像を圧縮ファイルで用意していますが、著作権はHonma, Y, MDにあります。ここをクリックしてジャンプしてください。
肺実質とは、肺の本来の働きをする場所、つまり酸素を取り込み炭酸ガスを出すところです。まだ、早期の肺癌の定義は確定していませんが、気管支に生じる場合とは別に「肺胞」というガス交換の場で癌ができるプロセスが推定されてきています。
肺胞という小さな部屋の内壁を細胞が覆っており、この細胞が癌になる途中段階が、腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia: AAH)と言われています。肺癌の「なりかかり」とも言えます。
野口先生が学術誌Cancerで、2cm以下の肺癌で、癌としては”おとなしい”型から普通に見る転移する型まで分類されました。そのうちおとなしい型は今までのように肺の上葉や下葉切除のように大きめの葉切除でなく、小さめに切除しても再発しないと思われるグループが判ってきました。
上記の”おとなしい”肺癌は、たまたまCT(コンピュータ断層撮影)で発見され、普通の胸部X線では写らない場合が多いです。逆にいうと、検診の効果を上げるにはCTが必要、ということになりますが、被爆と費用の面から検討されているところです。
さらに胃透視でバリウムが流れる様子を透視でみるように、CTでも透視ができるようになりました。これにより、CTでしか判らない病気の印しつけができるようになり、さまざまな印しつけの方法(マーキング)が提案されています。
胸腔鏡(カメラ)の手術の発達とともに、小さな肺の病気を印しつけする方法が模索されてきました。はじめはCT室で針を病気の近くに刺して色素を注射したり、釣り針のように針から出ると曲がる針金を置いたりしてきました。国内では、この「釣り針」から「釣り糸」のように糸がついているマーカーが市販されています(成毛式マーカー)。特殊な方法としては、CT室で気管支鏡(カメラ)をして病気の近くにバリウムを注射する、ということも東京の施設でされています。その施設では過去には「釣り針」より小さく”くるまる”コイルの方法について1例報告されていました。
私たちも「釣り針」と「釣り糸」の方式でしていましたが、実際の手術のときは肺をつぶすので、よく糸に引っ張られて針が抜けることがありました。また”おとなしい”肺癌が1cm以下の5mmなどの状態で見つかることが増えて、かなり正確なマーキングが必要となり、プラチナ製のコイルによる方法に1998年から変更しました。
手術では胸腔鏡(カメラ)の補助下、X線透視を使ってコイルを含めた肺切除を行い、孔から出すときは点滴セットの包装を再滅菌した「リサイクルパウチ」を用いて、癌細胞の孔における散布を防いでいます。
患者さんはCTマーキングは1回ですが、これを行う放射線科医は繰り返し同様の操作で被曝します。特に針を刺すときにCT透視面に手・指が入ると相当量の被曝となります。そこで当院では胆嚢炎のときの排膿(ドレナージ)をする方法のように、1度針を刺したら、針の入れ替えなしにコイルを置く方法をとっています。この方法の利点は、被曝軽減の他にも、針の入れ替えのときに生じうる空気塞栓の合併症を防ぐ効果があることです。
圧縮ファイルではワンステップでする道具のパーツと、刺すときの方法を示しています。
以下は「肺外科」ボタンのページで記したことを、参考のため記しています。
CTをしながら肺で、雲の病気の近くに小さな印を置きます。
手術室で透視を使って印を見つけ、これを頼りにカメラで印を含めて肺を切除します。すぐ顕微鏡検査をして問題がなければ終了します。
退院しています。
なお、この一連の流れはクリニカルパスとして学会に提出しており、詳しくは左ページの「パス」ボタンをクリックしてみてください。
2000年1月現在18人19病変に対して印しつけをして、翌日の胸腔鏡(カメラ)補助の手術では全例、場所決めと全切除に成功しています。なお、上に述べた野口論文では2cm以下の”おとなしい”肺癌のデータでしたので、3cmあった”おとなしい”型の1人では古典的な葉切除とリンパ郭清を行っています。
一方、大きな合併症(処置による偶発的な病気)は生じていません。軽い気胸(肺がしぼむ病気)は生じることがありますが、手術に支障がでるような気胸はありませんでした。
悪性病変は14例(原発13例、転移1例)、異型腺腫様過形成(AAH、肺癌の「なりかかり」)1例および良性病変が4例でした。
皆さん元気にされています。普通の肺癌も、”おとなしい”肺癌の再発も有りません。