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5月25日
佐々木譲『制服捜査』新潮文庫、¥590
佐々木譲『笑う警官』ハルキ文庫、¥686
佐々木譲『警察庁から来た男』ハルキ文庫、¥686
 いずれも、北海道警が舞台。一気読みさせる面白さがある。

5月4日
 
この半年で読んだ本。

藤原正彦・小川洋子『世にも美しい数学入門』ちくまプリマー新書、¥760
吉村昭『漂流』新潮文庫、¥705
小池真理子『青山娼館』角川文庫、¥590
久間十義『刑事たちの夏(上)(下)』新潮文庫、各巻¥590
中嶋博行『検察捜査』講談社文庫、¥619
手塚治『アドルフに告ぐ 1〜4』文春文庫、1巻¥600 2・3巻¥638 4巻¥657
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋(上)(下)』宝島社文庫、各巻¥476
海堂尊『ナインチンゲールの沈黙(上)(下)』宝島社文庫、各巻¥476
海堂尊『チーム・バチスタの栄光(上)(下)』宝島社文庫、各巻¥476
吉川英治『三国志(一)〜(八)』吉川英治歴史時代文庫、各巻¥760 

11月3日
 
読書の秋です。最近読んだものは下記のとおり。

帚木蓬生『ヒトラーの防具(上)(下)』新潮文庫,(上)(下)とも¥743
帚木蓬生『三たびの海峡』新潮文庫,¥629
 N市とは、やはり中間市のこと?
有吉佐和子『恍惚の人』新潮文庫,¥629  
 介護保険制度もなかった約40年前に今日の高齢者介護の問題を提起。

9月28日
 
2008年夏読了したものは下記のとおり。感想は省略する。

立石勝規『国税査察官』講談社文庫,¥667
京極夏彦文庫版 魍魎の匣』講談社文庫,¥1,038
柴田翔『されど われらが日々−』文春文庫,¥533
帚木蓬生『安楽病棟』新潮文庫,¥819
帚木蓬生『臓器農場』新潮文庫,¥781
帚木蓬生『閉鎖病棟』新潮文庫,¥552
加藤廣『信長の棺(上)(下)』文春文庫,上巻¥505,下巻¥543

7月3日
サタミシュウ『私の奴隷になりなさい』角川文庫,¥476
サタミシュウ『ご主人様と呼ばせてください』角川文庫,¥476
 SMの連鎖。人間の関係性を考える。表紙モデルはAV女優だと後で知る。

6月25日
久間十義(セント)ジェームス病院』光文社文庫,¥876
 医療小説。地域の中核病院に勤務する研修医が主人公。

6月12日
横山秀夫『震度0』朝日文庫,¥800
 阪神の震災の前日に、組織の要であるN県警の警務課長が「失踪」する・・・

6月5日
杉本彩『官能小説家R』徳間文庫,¥629

5月18日
松本清張『犯罪の回送』角川文庫,¥540
 上京中の市長が突然の失踪。数日後にその死体発見。
 政治的な謀殺というより、男女の愛憎を背景としたあまりにも世俗的な結末。
 巨匠最晩年の作品。 

5月17日
北方謙三『水滸伝十七 朱雀の章集英社文庫,各巻とも¥600
      『水滸伝十八 乾坤の章
      『水滸伝十九 旌旗の章
 
全19巻読了。敗北の美学です。

4月20日
江上剛『失格社員』新潮文庫,¥629
 現代サラリーマン小説あるいは会社小説ともいうべきジャンル。モーゼの十戒になぞらえたサラリーマンの掟。面白いの一語に尽きる。

3月5日
渡辺淳一『光と影』文春文庫,¥562
 初期の医学もの四篇。表題作のほか、「宣告」、「猿の抵抗」及び「薔薇連想」

2月24日
パトリシア・コーンウェル著相原真理子訳『捜査官ガラーノ』講談社文庫,¥619
 いまひとつ物足りない。

2月19日
ジョン・グリシャム著白石朗訳『無実(上)(下)』ゴマ文庫,各巻とも¥762
 死刑寸前のところから冤罪が晴らされる感動の実話。

2月11日
神崎京介『成熟』角川文庫,¥514
 官能小説です。

2月10日
北方謙三『水滸伝十三 白虎の章集英社文庫,各巻とも¥600
      『水滸伝十四 爪牙の章
      『水滸伝十五 折戟の章
      『水滸伝十六 馳驟の章

1月20日
北方謙三『水滸伝十一 天地の章集英社文庫,各巻とも¥600
      『水滸伝十二 炳呼の章
 
晁蓋死す。盧俊義捕縛される。梁山泊VS宋帝国の死闘が繰り広げられる。

1月14日
宮尾登美子『天璋院篤姫(上)(下)』講談社文庫,各巻とも¥667
 幕末激動の時代、薩摩の分家出身ながら将軍の室となり、夫婦の交わりはなくとも、夫(13代将軍家定)の死後も一貫として徳川家を守ることに尽くした48年の生涯。

1月3日
横山秀夫『臨場』光文社文庫,¥590
 殺人現場を検視する警察官の読み。意外な事件の真相にどこで気づくかが試される。

1月1日
幸田真音『日銀券(上)(下)』新潮文庫,上巻¥552,下巻¥476
 21世紀、基軸通貨としてのドルの地位が低下するとき、「円」は一体どうなるのか。

12月15日
谷崎潤一郎『谷崎潤一郎犯罪小説集』集英社文庫,¥457
 中央公論社版「谷崎潤一郎全集」を底本にして、悪魔主義的な犯罪小説である「柳湯の事件」「途上」「私」「白昼鬼語」を集録。

12月2日
勝間和代『お金は銀行に預けるな 金融リレラシーの基本と実践光文社新書,¥700
 リスクを恐れてはリターンは得られない。自己決定・自己責任の下、きちんとリスク管理の上、投資すべし。

11月30日
渡辺淳一『幻覚(上)(下)』中公文庫,各巻とも¥552
 美貌の精神科女医の心の闇に迫る。

11月28日
城山三郎『男子の本懐』新潮文庫,¥629
 逮捕された前防衛事務次官と敵対した女性大臣の著『女子の本懐』というのがあるらしいが、男子の方をまだ読んだことがなかったので常識を付けるべく読む。昭和初期金解禁を断行した浜口雄幸首相と井上準之助蔵相の生涯。

10月25日
杉本彩『インモラル』新潮文庫,¥362
 こういうのって、2時間もかからず読めるけど、立ち読みというわけにもいかないし・・・・・・。

10月10日
北方謙三『水滸伝六 風塵の章集英社文庫,各巻とも¥600
      『水滸伝七 烈火の章
      『水滸伝八 青龍の章
      『水滸伝九 嵐翠の章
      『水滸伝十 濁流の章
 
全十九巻の折り返し地点。

9月2日
北方謙三『水滸伝二 替天の章集英社文庫,各巻とも¥600
      『水滸伝三 輪舞の章
      『水滸伝四 道蛇の章
      『水滸伝五 玄武の章
 宋朝の体制側陰の組織「青連寺」の李富。もちろん梁山泊と敵対する人物であるが、魅力がある。

8月8日
北方謙三『水滸伝一 曙光の章集英社文庫,¥600
 登場人物は多いが、問題ない。第一巻は、豹子頭林冲が中心。

7月30日
今野敏『リオ 警視庁強行犯係・樋口顕新潮文庫,¥590
 リオという名の高校生の女子が、犯人というスジに異議申し立てする刑事の物語。

7月24日
谷崎潤一郎『痴人の愛』新潮文庫,¥629
 筋書きはあまりにも有名。15のときから育てたナオミが、手に負えないほどの妖婦となるも、別れることができない譲治。その心情は痛いほど分かるが、経済力が一体いつまで持つのだろうか。なお、巻末の注解が詳しすぎる。

7月14日
東野圭吾『天空の蜂』講談社文庫,¥838
 大型のへりが遠隔操作により盗まれ、原発の頭上でホバリング。犯人は、すべての原発を停止しないとへりを落とす、と政府を脅迫。犯人の人物像を早い段階から読者が知るところになるので、緊迫感が不足するのが難。
7月7日
京極夏彦文庫版 姑獲鳥(うぶめ)の夏』講談社文庫,¥800
 「この世には不思議なことなど何もないのだよ」と友人関口に語ったとおり、京極堂は、二十ヶ月以上の妊娠と密室からの失踪事件の謎解きに立ち合う。

6月30日
司馬遼太郎『燃えよ剣(上)(下)』新潮文庫,各巻とも¥743
 昭和40年代、、夕方になると、同名のテレビドラマ(再放送)を見るために急いで小学校から帰ったものである。新撰組副長土方歳蔵のはまり役、栗塚旭は本当にかっこよかった。ところで、お雪は?・・・思い出せない。まだ色気付いてなかったわけだ。

6月24日
八幡和郎『歴代知事三〇〇人 日本全国「現代の殿さま」列伝光文社新書,¥1,200
 戦後公選の各都道府県知事を概観。こういうふうに1冊にコンパクトにまとめられたものがほしかった。
 ただし、誤りと思われる記述を下記のとおり2点見つけた。
 ・「・・・、民主党は、代議士の稲富修二を対抗馬として擁立したが、・・・」(377頁)(→2005年の衆議院選に立候補した稲富)
 ・「(東国原は、副知事に)安藤の副知事をつとめた自治官僚で総務部長の河野俊嗣を指名した。」(417頁)(→安藤知事時代の総務部長の河野)

6月19日
司馬遼太郎『馬上少年過ぐ』新潮文庫,
 伊達政宗の生涯を描いた「馬上少年過ぐ」ほか6編。

6月10日
横山秀夫『深追い』新潮文庫,¥552
 三ツ鐘警察署の七人の男の物語。

5月26日
武田泰淳『ひかりごけ』ちくま日本文学全集
 「ひかりごけ」見物の紀行文ふうに始まるが、羅臼の地で大東亜戦争末期に起こった難破船船長人喰い事件を知るや途端に重い話になる。想像を巡らせた戯曲形式の心理劇が続く。第一幕(マッカウシ洞窟の場)、第二幕(法廷の場)を通じてひたすら「我慢」を続ける船長の心情は、人肉を喰うか喰われるかの体験がない余人には到底計り知ることができないものである。昭和29年3月発表。

5月23日
浅田次郎『憑神』新潮文庫,¥514
 貧乏御家人にとりついた貧乏神、疫病神、死神の三連発。一気に読む。

5月4日
大鐘稔彦『孤高のメス 外科医当麻鉄彦 第4・5・6巻幻冬舎文庫,各巻とも¥571
 卓越した技量をもつ主人公が田舎の一民間病院で本邦初の生体肝移植手術を行い成功するが、予想どおり大きな波紋をよぶ。

4月30日
大鐘稔彦『孤高のメス 外科医当麻鉄彦 第1・2・3巻幻冬舎文庫,各巻とも¥571
 大型連休前半、天気も良く、どこに出かけても人出が多く疲れ、金もなくなる。
 そこで、1日1冊のペースで晴耕雨読に努める。

4月24日
浅田次郎『日輪の遺産』講談社文庫,¥752
 これも『シェエラザード』と同様戦争を題材とし、現代と1945年8月の二時点を交互に行ったり来たりしながら、後半に、その接点が見えてくる構成。

4月17日
花村萬月『♂♀オスメス』新潮文庫,¥552
 屹立した中年男の触角はパワフルです。

3月20日
浅田次郎『シェエラザード(上)(下)』講談社文庫,上、下巻とも¥619
 読み出したら、ぐいぐい読者を引き込むストーリー展開。ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフの交響組曲『シェエラザード』を本書により初めて知り、手持ちのベストクラシックのCDの中にあった「カランダール王子の物語」を聴く。

3月11日
横山秀夫『影踏み』祥伝社文庫,¥638
 異色なのは、犯罪者の視点から描かれている点である。
3月6日
神崎京介『h エッチ』講談社文庫,¥619
      『h+ エッチプラス』講談社文庫,¥571
      『h+α エッチプラスアルファ』講談社文庫,¥495
 エッチ小説三連発。こういう肩の凝らないものもたまにはいい。1冊当たり所要時間平均1時間10分。

3月1日
落合博実『徴税権力 国税庁の研究文藝春秋,¥1,419
 情報収集と資料分析において最高の官庁である国税庁研究の書。政治家・宗教団体、マスコミとの攻防、検察庁との確執等、長年国税庁を担当した元朝日新聞記者が内幕を詳細に描く。

2月25日
松本清張『三面記事の男と女』角川文庫,¥514
 『たづたづし』、『危険な斜面』、『記念に』、『不在宴会』、『密宗律仙教』の5作を収録。特に昭和45年に書かれた最後の作品は、オウム事件を予告する内容で興味深く読んだ。

2月20日
林真理子『ミルキー』講談社文庫,¥552
 女性のものの考え方を理解するには適切な素材。短編12作。

2月15日
山崎豊子『華麗なる一族(上)(中)(下)』新潮文庫,上巻¥819,中巻¥781,下巻¥743
 関西の阪神銀行頭取の万俵大介は、子供たちの閨閥結婚を利用し、金融再編に向けて「小が大を喰う」合併を狙う。豪邸の中では「妻妾同衾」の暮らしをしながら、阪神特殊鋼専務の、息子鉄平との間には、出生の疑惑も絡み確執がある。
 山陽特殊製鋼の倒産事件(1965)に想をを得たフィクションである。キムタクが鉄平を演じるドラマが日曜日に放送中だが、佐分利信、京マチ子、仲代達矢、田宮二郎、山本陽子等出演の映画の方をDVDで早急に観ることとしたい。

1月27日
松本清張『わるいやつら(上)(下)』新潮文庫,上巻¥667,下巻¥705
 女たらしの病院長が、己の欲望のまま次々と金を巻き上げるが、破滅への道もまた早い。一体、最後に、一番のワルは誰なのか、ゆっくり考えてもいい。

1月19日
さくらももこ『まる子だった』集英社文庫,¥457
 筆者と年齢が近いせい(長女とほぼ同じ)か、小学生「まる子」は自分の記憶とも重なる。現在のように陰湿ないじめもなく、教師にも威厳があって、しあわせな時代であった。

1月18日
手塚治虫『どろろ@AB』秋田文庫,1巻¥581,2・3巻¥562
 40年前に少年サンデーに連載されたものであるが、現在でも十分に楽しめる。実写化された映画の公開は今月27日である。

1月16日
藤沢周平『又蔵の火』文春文庫,¥514
 昭和47、48年に発表された初期の短編5編。いずれも暗い。とくに、博打が絡んだ人生の転落話は気が滅入る。

1月9日
みのもんた・福井康之『腰痛スッキリ!』角川oneテーマ21,¥686
 腰部脊柱管狭窄症の手術を受けた、みのもんたと主治医の著。腰痛に関しては、この新書1冊で十分な基礎知識が得られる。
 私も、30代のときある日突然、椎間板ヘルニアに襲われ、人生が一瞬暗くなった経験があり(MRIに入り、神経ブロック注射で劇的に快復)、人ごとではない。日常生活の姿勢と運動も重要である。

1月2日
湯川裕光『瑤泉院 ―忠臣蔵の首謀者・浅野阿久利―新潮文庫,¥857
 忠臣蔵というと、誰しも四十七士、なかでも家老の大石内蔵助を中心人物と考える。本書は、一挙の成就には、浅野内匠頭の婦人の役割が大きかったという視点で描かれている。幕府(柳沢吉保)に対して、また赤穂の同志の間でも、資金に裏打ちされた心理戦・情報戦が展開されいく。

12月26日
城山三郎『落日燃ゆ』新潮文庫,¥552
 「自ら計らわぬ」生き方を通し、東京裁判において絞首刑に処せられた唯一の文官である元総理(第32代)、外相(齋藤・岡田、第1次近衛内閣)広田弘毅の生涯。先に自決した妻静子の埋葬のため福岡の聖福寺に行く息子と、巣鴨で面会し、ついでに自分の戒名ももらってこいという。その心境を想うとき、胸に迫る感動がある。

12月21日
山本周五郎『町奉行日記』新潮文庫,¥667
 表題作を含む10編。昭和15年から35年にかけて書かれたもの。日に2、3編ずつ読む。

12月16日
三浦綾子『道ありき〈青春編〉』新潮文庫,¥590
 敗戦後の価値観の転換によって虚無感が漂う中、7年の小学校教員生活に別れた筆者は、二重婚約を起こし、結核、さらには脊椎カリエスを発病する。13年にも及ぶ療養生活の中で、たしかな信仰を得て奇跡的に快復し、37歳にして結婚するまでの過程を赤裸々に綴る。

12月10日
山崎豊子『沈まぬ太陽(一)(二)アフリカ篇(三)御巣鷹山篇(四)(五)会長室篇』新潮文庫,¥620〜700
 小説的に再構築したということだが、多くの登場人物のモデルが誰だかすぐ分かり、あまりに生々しい。ナショナルフラッグを掲げる航空会社に巣喰う魑魅魍魎と会社の体質は、いかんともしようがなく、御巣鷹山事故の犠牲者の鎮魂の日はいつ訪れるのか絶望的な気分になる。

11月26日
浅田次郎地下鉄(メトロ)に乗って』講談社文庫,¥525
 兄の自殺、父親との確執。タイムトリップをしながら、真実を知り、人生において新たな地平を開くのである。
 銀座線及び沿線駅は、国内で一番古いだけあって、たしかに古色蒼然としている。半蔵門線永田町駅と丸の内線・銀座線赤坂見附を結ぶ長い通路も、気持ちの悪い風とともに懐かしい。

11月21日
齋藤孝『子どもの日本語をきたえる』文春文庫,¥419
 太宰の「走れメロス」は中学校2年の教科書に載っているが、国語力が急速に伸びるゴールデン・エイジである小学校4、5年で読むべきだと説く。質量ともに劣化し、(色だけで中身がない)絵本に化した現在の教科書がもし商品として書店に並べられたとしても、それを買い与える親はいないだろうともいう。適切な年齢に、(少し背伸びするくらいの)適切な素材にめぐりあえるかどうかが決定的に重要なのだ。自分のことを思い起こせば、芥川の「鼻」や太宰の「走れメロス」は小学校時代に文庫本で読んだ。
 中学生の自殺が続く今日、「人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。」の「人間失格」では洒落にならないので、逆に大人になるまで読まない方がいいものもある。

11月20日
司馬遼太郎『風神の門(上)(下)』新潮文庫,上巻¥667下巻¥629
 大坂夏の陣前夜、伊賀の忍者霧隠(服部)才蔵は、真田幸村に仕えている甲賀の猿飛佐助と手を結ぶことになる。徳川方の忍者、風魔の獅子王院との死闘はすさまじい。

11月11日
横山秀夫『真相』双葉文庫,¥600
 『真相』、『18番ホール』、『不眠』、『花輪の海』、『他人の家』の五話。苦い皮肉な真相をご賞味あれ。

11月8日
藤沢周平『凶刃 用心棒日月抄新潮文庫,¥590
 月日は流れ、青江又八郎も中年の域にさしかかっている。だが、幕府隠密、藩内の黒幕、江戸の嗅足組の三つどもえの争闘の中にあって、その剣は衰えていなかった。

10月31日
藤沢周平『刺客 用心棒日月抄新潮文庫,¥590
 シリーズ第三弾。江戸に放たれた五人の刺客vs又八郎&佐知。

10月25日
藤沢周平『孤剣 用心棒日月抄新潮文庫,¥629
 間宮中老の指示により、藩主毒殺の陰謀の証拠書類を持つ剣鬼大富静馬を追って、再度脱藩の形を取って江戸に出る又八郎。またも用心棒暮らしをしながら目的を達する。

10月19日
藤沢周平『用心棒日月抄』新潮文庫,¥705
 青江又八郎は、偶然にも藩主毒殺の陰謀を耳にしたことから、その陰謀の一味であった許婚の父を斬ったうえ脱藩し江戸に出る。そこで雇われ用心棒として暮らすが、請け負う仕事が、なぜか吉良・浅野両家の争いに関係する。

10月3日
乙川優三郎『かずら野』新潮文庫,¥514
 どうしようもない男と別れようにも別れられない女の不幸、と単純には言えない深みがある江戸時代の物語。

9月28日
遠藤周作『深い河』講談社文庫,¥590
 五人の主な登場人物について、「磯辺の場合」「美津子の場合」「沼田の場合」「木口の場合」「大津の場合」と章立てして配されている。とりわけ、大津という人物に関心が寄せられる。神父になりそこなった彼は、十字架を背負いゴルゴダの丘をのぼるイエスの真似事のように、ヒンズー教の地インドでアウト・カーストの行き倒れの人々をガンジス河のほとりにある火葬場まで運んでいたのであった。しかし、我々は、その行為を滑稽などと嘲笑できるだろうか。

9月25日
浅田次郎『姫椿』文春文庫,¥514
 人生に行き詰まり自殺を図ろうとする会社社長が、妻との生活の原点の地に立ち、貧しかった当時を想い出す(『姫椿』)ほか七篇。しんみりとさせられる人生の断章、寝る前に一篇を読むのが手頃です。

9月23日
本上まなみ『ほんじょの鉛筆日和。』新潮文庫,¥438
 18歳年上と結婚したことで世の中年(独身)男性に絶大な支持を得た「ほんじょ」のエッセイ。ほんわか癒されます。NHKトップランナー見てまっせ。

9月21日
松本清張『蒼い描点』新潮文庫,¥819
 箱根を舞台とした複雑な連続事件。雑誌社社員の椎原典子、崎野竜夫の素人探偵二人組が仙石原に犯人をおびき出す。昭和34年作。

9月12日
高村薫『照柿(上)(下)』講談社文庫,上¥648下¥619
 幼少期を大坂でともにした合田雄一郎と野田達夫の二人は、東京でそれぞれ刑事と工場労働者となったが、30を半ばにして再会し、その夏、人生を狂わす事件に至る。解説によると、現代版の『罪と罰』というべきこの作品は、文庫化にあたり全面的な改稿を施し、ひきしまったという。

8月20日
井伏鱒二『黒い雨』新潮文庫,¥590
 中学生あたりの夏休み読書感想文として、頻出する名作だが、恥ずかしながらこれまで通しで読んだことがなかった。いまの集中力と読解力なら2日で十分読むことができる。ただし土地勘に乏しいので郡部の地理関係がよく分からない。
 この夏新聞で広島・長崎の二重被爆者の話を知って非常にショックであった。

8月15日
半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版文春文庫,¥590
 ポツダム宣言に対し、二度にわたり天皇の聖断を仰いでもなお、陸軍内部では不気味な動きが起こる。畑中少佐ら青年将校は森師団長を斬って近衛師団を乗っ取り、全軍決起を促すため天皇を擁し宮城に籠城しようとするとともに、録音盤を奪取すべく宮城内の探索を続ける。2.26を思わせるクーデターである。一方、すべてをのみこんだ阿南陸相は、15日早朝「一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル」と血染めの遺書を書き、静かに切腹を果たす。これら61年前(1945年)の8月14日正午から玉音放送のある翌15日正午までの24時間は、まさに日本の一番長い日であった。

8月5日
三浦綾子 氷点(上)(下)』角川文庫,上、下巻とも¥460
 「続」の方はゆるしがテーマである。すなわち、ヨハネ福音書の「あなたがたの中で、罪のない者が、まず(姦通をした)この女に石をなげつけるがよい」((下)357頁)と言ったイエスの言葉である。
 陽子の出生の秘密をめぐる筋立ての面白さは、「冬ソナ」ばりであるが、それよりも、読む者の胸にズシリと響く読後感がすばらしい。

7月22日
三浦綾子『氷点(上)(下)』角川文庫,上、下巻とも¥460
 原罪という重いテーマであるが、宗教くさくなく、人間というものを深く考えさせられる小説。不倫、誘拐、殺人、復讐、事故、いじめ、恋愛、自殺(未遂?)とストーリー展開が見事で、何度もドラマ化されたのももっともである。
 なんの罪もないはずの陽子が、育ての親の娘を殺した殺人者の子だと知り、遺書を書き終え、深い雪の中を自殺に向かう場面では、不意に涙が滲む。

7月16日
三島由紀夫『青の時代』新潮文庫,¥362
 「・・・・・・僕の金儲けには目的がないんだからね。」(129頁)という主人公川崎誠の言葉から、ふと「金儲けってそんなに悪いことなんですか」という最近聞いた饒舌を思い出す。戦後間もなく大学生でありながら高利貸しをはじめた彼は、事業展開に伴い、社屋を銀座に移し、自らは築地の高級アパートに住んで酒場の女をつまみ食いする。彼の自意識過剰と孤独感はいかんともしようがない。

7月14日
蓮見圭一『水曜の朝、午前三時』新潮文庫,¥476
 平成4年、享年45で脳腫瘍で死んだ四条直美。昭和45年大坂万博のコンパニオンをしていたときに知り合った臼井という名の青年との悲恋と、二人のその後の人生について娘に語るため、死の床でテープに残す。それは、夫には聞かせられない内容かもしれないが、たしかに意味のある人生といえるものであった。

7月10日
横山秀夫『顔 FACE』徳間文庫,¥620
 男社会の警察の中で「だから女は使えねえ」と言われながらも、悩み奮闘する婦人警察官平野瑞穂。様々な事件を通じてプロとして成長する。

7月8日
有吉佐和子『不信のとき(上)(下)』新潮文庫,上巻¥552,下巻¥590
 妻道子38才をもつサラリーマンの浅井義雄42才と、銀座の女米倉路子29才との浮気の顛末(代償はとてつもなく大きい)。今週から始まったテレビドラマ(フジ木曜夜10時)の原作である。
 また、「有卦に入る」、「千慮の一失」、「九仞の功を一簣に欠く」、「武士は相見互い」、「半畳を入れる」等々随所に使われる慣用句が勉強になる。
6月27日
宮城谷昌光『香乱記(三)』新潮文庫,¥476
 項羽と劉邦の時代を、斉の田横を中心に描く。陰険な秦の宦官、趙高ついに斬殺される。

6月24日
司馬遼太郎『最後の将軍 ―徳川慶喜―文春文庫,¥476
 15代将軍徳川慶喜の伝記小説である。わずか二年足らずの将軍職であったが、歴代将軍で最も頭脳明晰といわれるこの人物であったからこそ、時勢に抗わず大政奉還の決断できたのだという気がする。

6月20日
藤沢周平『義民が駆ける』中公文庫,¥743
 三方国替えによる突然の転封問題に直面した荘内藩の農民が立ち上がり、藩主を引き留めようと江戸幕府への直訴という大胆な行動に出る。ときの老中水野忠邦をはじめとする幕閣内外の政治的駆け引きと心理描写が細かい。

6月18日
三浦展『下流社会 新たな階層集団の出現光文社新書,¥780
 今日の日本において統計的なジニ係数の上昇をもって、格差社会が本当に進行していると言えるのか。また、小泉=竹中路線が格差社会なり社会的不平等に一層の拍車をかけたのだろうか。
 本書によると、1955年体制の「一億総中流化・平等化モデル」が、不況、少子高齢化、人口減少社会の中で2005年型「階層化・下流化モデル」への転換がみられるという。団塊ジュニアを中心に、これまでの中流が「上」と「下」へ二極化しており、根拠のない自己能力感を持ちつつ自分らしさを志向する「下流」とその子供たちが、階層社会を決定づける可能性がある。しかし、親が下流だと子も下流になるしかない社会、すなわち階層社会の固定化こそ防がなければならないと主張する。

6月15日
半藤一利『昭和史 戦後篇 1945-1989』平凡社,¥1,800
 戦後の昭和史といっても、自分の同時代史としては、「第14章 嵐のごとき高度成長 オリンピックと新幹線」以降の100頁ほどである。毎日寝る前に巻末の年表を参照しながら二、三章ずつ講義を読む。「戦前 1926-1945」の方は、今後時間をかけてゆっくり読む予定。

6月13日
垣根涼介『ワイルド・ソウル(下)』幻冬舎文庫,¥686
 幼くして両親を亡くしたケイと松尾と流民生活を続けた山本、この三人の男たちが、ブラジルで病床にある衛藤の指示のもと過去との決別のため日本政府に挑戦する。外務省襲撃、関係者の誘拐という二つの事件を起こしながらも結果として誰一人傷つけず、爽やかなカタルシスを覚える結末を迎える。

6月11日
垣根涼介『ワイルド・ソウル(上)』幻冬舎文庫,¥686
 「カリブの楽園」は飛んだ嘘っぱちであったという国の棄民政策、いわゆるドミニカ移民訴訟の判決が先週あった(7日東京地裁)。本書もまた、アマゾン奥地への戦後移住政策がモチーフとなっている。農作物の栽培など到底不可能な苛酷な気候や土壌にあって、夢破れた日系移民たちは想像を絶する苦労を重ねる。そして30数年の時を経て、三人の男たちが綿密な計画の下、怨嗟の的である外務省仮庁舎(芝公園)でいよいよ復讐の事件を起こす・・・・・・。

6月1日
津本陽『巌流島 武蔵と小次郎角川文庫,¥476
 慶長17年(1612年)下関から小舟で佐々木小次郎との決闘の地である船島に向かう武蔵。木刀で十三才にして初めて人を殺し、廻国修行の旅に出たそれまでの半生を描く。相思相愛の幼なじみお千が現世にないと知ったときの苦しみも克服して不動の心を得た武蔵は、京の吉岡一門も、佐々木ももはや好敵手とは呼べぬほどの強さを得ていたのである。

5月27日
ダン・ブラウン著越前敏弥訳『ダ・ヴィンチ・コード(上)(中)(下)』角川文庫,各巻とも¥522
 映画が公開される前に読む予定であったが、少し遅れた。
 ルーブル美術館長が自らウィトルウィウス的人体図を描くという怪死事件から物語は始まる。フィボナッチ数列・黄金比といった数学的暗号、ダ・ヴィンチの宗教画「最後の晩餐」の解釈など興味は尽きない。一連の事件は、パリからロンドンへと舞台を移す。その中で登場するウエストミンスター寺院のニュートンの墓は、5年前に見たことがあるが、やはりパリ、ルーブル美術館に一度は行かなくっちゃと思った次第。

5月17日
宮城谷昌光『香乱記(二)』新潮文庫,¥514
 始皇帝の死後、陳勝・呉広の乱が勃発する。

5月10日
宮城谷昌光『香乱記(一)』新潮文庫,¥476
 
圧政に名高い始皇帝の御代、田氏三兄弟が現れる。文庫版四分冊の一冊目。

5月6日
手嶋龍一『ウルトラ・ダラー』新潮社,¥1,500
 これほど現実感のある「物語」はないだろう。北朝鮮が日本人印刷工を拉致し、ウルトラ・ダラーといわれる精巧な偽百ドル札を大量に刷り、マカオなどでロンダリングした資金を使って、核弾頭の運搬手段としてノドンやテポドンより命中精度が遙かに高いウクライナ製の巡航ミサイルを入手しようとする。しかも、これには老獪な中国の意思が働き、将来の台湾海峡危機に際し日本がアメリカに加担しないよう牽制するため、北朝鮮に日本に対する核カードを持たせたのだ。

4月22日
松本清張『昭和史発掘 1 』文春文庫,¥829
 「陸軍機密費問題」、「石田検事の怪死」「朴烈大逆事件」「芥川龍之介の死」「北原二等卒の直訴」の五篇。特に、文学論としてではなく人間論として作家の死に至る過程を検証する「芥川龍之介の死」は読みごたえあり。

4月20日
リリー・フランキー『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン扶桑社,¥1,500
 哀しくも心温まる母と子の物語。年齢、福岡、東京、そして母の死と、ボクとも類似点が多いだけに感情移入して読んだ。2006年本屋大賞作。

4月13日
横山秀夫『陰の季節』文春文庫,¥448
 警務課を主舞台とした異色の警察小説。表題作ほか3篇。

4月11日
司馬遼太郎『功名が辻(三)(四)』文春文庫,各¥543
 「そなたはいつまでたっても子供だな」
  「だから、いつまでも若くてきれいだといわれるのではありませぬか」
  「自分でそう申しておれば世話はない」
  「一豊様」
  ちょっと、目をすえてやった。
  「一豊様はそう思いにならないのでございますか」
  「千代がいつまでたっても若くてきれいだと」
  「思っている」
  「ほんとう?」 
  「ああ、まぎれもなく思っている」」(『功名が辻』(四)230‐231頁)
 美しき夫婦愛であるが、もう勝手にしてほしい。

4月5日
門田隆将『裁判官が日本を滅ぼす』新潮文庫,¥590
 ギリシャ神話に出てくる正義と法の女神ユスティティア像が日本の最高裁にもあるが、なぜか「目隠し」をしていないという。本来、「目隠し」には予断と偏見を排し、心眼をもって公正に裁くという意味がある。筆者が取り上げる数々のトンデモ判決を読み進むにつれ、絶望的な気分になる。

3月30日
横山秀夫『第三の時効』集英社文庫,¥629
 F県警強行班シリーズ全6篇の傑作。一気に読み終える。

3月26日
柳澤桂子『生きて死ぬ智慧』小学館,¥1,143
 般若心経の科学的な訳文。昨年の暮れ、BSアンコール特集で観て感銘を受けた。

3月25日
司馬遼太郎『功名が辻(二)』文春文庫,¥543
 秀吉と家康の高度な駆け引きの中で、政治的嗅覚に優れてた千代のおかげで一豊は運命を拓くのであった。

3月16日
司馬遼太郎『功名が辻(一)』文春文庫,¥543
 NHKの大河ドラマとは異なり、原作では、山内一豊の妻千代は大柄な肉感的な女として描かれている。
 第一巻のクライマックスは、戦前の教科書には必ず登場したといわれる黄金十両の馬の話である。美談である。

3月13日
藤原正彦『国家の品格』新潮新書,¥680
 世の中、論理だけでは説明できないことは多い。悪いことは、問答無用で、悪いのである。ホームレスに火炎瓶を投げつけてなぜ悪いのか、なんて理由を考える必要はない。「論理だけでは世界が破滅する」という筆者の主張には大賛成。
 「「法に触れないなら何をやってもいい」と、財力にまかせてメディア買収を試みた人がいますが、日本人の過半数が彼を喝采しているのを見て、何とも絶望的な気分に襲われました」(29頁)は、明らかにホリエモンのことを指しているが、彼は現在、法に触れたとして捕まっている。
 まだ日本語が確立していない小学生に週に2,3時間英語を学ばせても何の足しにもならないという指摘にも、実体験からも賛成。

3月7日
藤沢周平『決闘の辻 藤沢版新剣客伝』講談社文庫,¥619
 『二天の窟(宮本武蔵)』、『死闘(神子上典膳)』、『夜明けの月影(柳生但馬守宗矩)』、『師弟剣(諸岡一羽斎と弟子たち)』、『飛ぶ猿(愛洲移香斎)』所収。剣豪たちの決闘シーンをリアルに描く。劇画よりいいよ。

2月16日
神崎京介『盗む舌』徳間文庫,¥571
 二時間で読み終えるくらい柔らかい話。

2月11日
杉本苑子『冬の蝉』文春文庫,¥571
 短編全八編。心温まる表題作よりも、『墓石を打つ女』『ゆずり葉の井戸』のような隣人トラブルがエスカレートする凄みのある話の方が強烈な読後感がある。

2月6日
麻生幾『極秘捜査』文春文庫,¥638
 副題は、政府・警察・自衛隊の[対オウム事件ファイル]。
 日本を震撼させた世界初のサリンテロから早くも10年が過ぎた。第7サティアンのあった上九一色村も、まもなく南北に分かれて市町村合併により消滅する。
 95年元旦の読売の記事が出た時点でルート5作戦が実行されていたら、地下鉄の事件もなかったのだが・・・・・・。
 327頁「Nシステム、PAT、POTによりヒットした場合、直ちに車を停車させ、照合センターに紹介を行うこと」の「紹介」は「照会」でしょう。

1月17日
松本清張『けものみち(下)』新潮文庫,¥629
 「けものみち」に踏み込んだ女の末路はやはりこんなものか。

1月15日
司馬遼太郎『一夜官女』中公文庫,¥552
 一夜の戯れの契りが、その男女にとって生涯を通じて珠玉の恋愛であったという『一夜官女』ほか、作者初期の短編五編。

1月13日
松本清張『けものみち(上)』新潮文庫,¥629
 31歳の民子は、脳軟化症の夫を焼殺し、謎のフィクサー鬼頭老人の人身御供のような存在となるが・・・・・・。
 「ニコヨン」やら「BG」などと、時代を感じさせる言葉が出てくる。

1月7日
藤沢周平『冤罪』新潮文庫,¥590
 現代人には端倪すべかざる「武家もの」の世界。しかしよく考えてみると、人間の本質なり人情の機微はそうかわらないのではないか。
 表題作のほか、八篇。なかでも、『臍曲がり新左』は、娘をもつ男親の心情がユーモラスに描かれており、秀逸。

1月2日
司馬遼太郎『人斬り以蔵』新潮文庫,¥667
 『鬼謀の人』、『人斬り以蔵』、『割って、城を』、『おお、大砲』、『言い触らし団右衛門』、『大夫殿坂』、『美濃浪人』、『売ろう物語』
の短編八篇。個人的には、ユーモラスな『おお、大砲』が最高。
12月29日
井上靖『風林火山』新潮文庫,¥514
 晴信(信玄)やその側室由布姫(勝頼の母)に命を捧げた、武田の軍師山本勘助の生き様を描く。興味に尽きないので、非常に読みやすく感じる。
 カラオケで ♪人は石垣 人は城 とご存じ武田節を熱唱される昔の上司を思い出した。

12月28日
松本清張『Dの複合』新潮文庫,¥705
 浦島伝説と羽衣伝説、補陀落国渡海の伝説(井上靖『補陀落渡海記』を参照)など民族学的な知の旅と思いきや、経度線と緯度線の複合(Dの複合)あたりから、人間くさい復讐劇が見え隠れしだす。

12月24日
司馬遼太郎『梟の城』新潮文庫,¥819
 娯楽小説の最高峰。主人公の伊賀忍者「葛籠重蔵」になりきって読むべし。勝手に自分の「小萩」を想像しながら。映画もたしか以前新宿で観た記憶がある。

12月18日
渡辺淳一『かりそめ』新潮文庫,¥629
 女性には少なくとも三つの顔がある。妻として、母として、そして女として。男もまた同様である。不倫といえば手垢のついた俗なイメージがあるが、愛の究極にもなりうる。

12月13日
渡辺淳一『花埋み』新潮文庫,¥552
 医師国家試験による日本最初の女医荻野吟子の一生。前半生は、最初の夫から淋病をうつされ奮起し、艱難辛苦の末医者となるまで。一回り以上下の学生風情の牧師と再婚し、周りの心配どおり振り回されてしまう後半生もまた、苦労の連続である。

12月10日
松本清張『ゼロの焦点』新潮文庫,¥590
 『点と線』と並び称される代表作ということだが、こちらの方はまだ読んだことがなかった。一気に一日で読む。金沢近辺の地理が必要。登場人物が次々に死ぬので、消去法的に真犯人が見えてくる。

12月8日
瀬戸内寂聴『釈迦』新潮文庫,¥514
 最後の旅に出たブッダ(釈迦)は、涅槃の地に・・・・・・。 仏教小説も面白い。

12月3日
司馬遼太郎『項羽と劉邦(下)』新潮文庫,¥590
 楚の人である項羽が、漢軍に取り囲まれ、たしかに城外の四面から楚の歌を聴く。「四面楚歌」である。彼は、煮詰まった状況にありながら最後まで歴史に残る死に方に執着する。

11月8日
井上靖『氷壁』新潮文庫,¥791
 じっくり3日間かけて読む。前穂高の東壁においてなぜナイロン・ザイルが切れたかという問題よりも、「魔性の女」である人妻美那子に関心を持つ。

10月24日
藤沢周平『秘太刀馬の骨』文春文庫,¥514
 秘太刀を探索するため矢野藤蔵の五人の高弟に対して時には卑劣な手段を使いながらも一人ひとりと勝負を挑む石橋銀次郎。家老の命により石橋とつきあう羽目になった近習頭取浅沼半十郎は、やがて秘剣の裏に潜む藩内の暗闘が見えてくる。
 読了後、解説を読むと読者の大半は「真犯人」を間違えて読んでいるはずだ、とある。エー!?

10月16日
松本清張『渡された場面』新潮文庫,¥514
 四国の県警の捜査一課長がたまたま文芸雑誌の同人誌評に目をとめたことから、思わぬ方向に捜査は展開していく。
 地図を見ると「織幡神社」は宗像市(旧玄海町)鐘崎にあるが、小説中では赤間からより海老津からの方が近いという「釣江」(実際には波津漁港?)近くにあるように描かれている。

10月6日
司馬遼太郎『項羽と劉邦(中)』新潮文庫,¥667
 劉邦は、項羽の不在中に彼の首都を直撃し、一時的に占領するが、これに激怒した項羽によりたちまち反撃を食らう。その後、「鴻門の会」において劉邦は項羽に殺されかかるも、辛うじて難を逃れる。
 中巻は、張良をはじめ劉邦の家臣群の人物像にも焦点を当てる。

9月27日
高村薫『マークスの山』講談社文庫,上・下巻とも¥648
 情景を想い浮かべながら、2日間で読了。学生時代に多少山登りをしたことがあるので、土地勘もある。
 この小説は、単なるサイコスリラーではない。10年前(平成7年)に映画化されているらしいが、当時は映画を観る余裕、気力がなかった。

8月28日
藤沢周平『漆の実のみのる国(上)(下)』文春文庫,上・下巻とも¥514
 作者最期の作品である。米沢藩の改革に取り組む上杉鷹山であるが、改革はままならない。

7月18日
山本周五郎『赤ひげ診療譚』新潮文庫,¥552
 「人間のすることにはいろいろな面がある。暇に見えて効果のある仕事もあり、徒労のようにみえながら、それを持続し積み重ねることによって効果のあらわれる仕事もある。おれの考えること、して来たことは徒労かもしいれないが、おれは自分の一生を徒労にうちこんでもいいと信じている」(「徒労に賭ける」)赤ひげこと新出去定。小石川養生所の医長である。
 長崎遊学から江戸に戻ってきた保本登は、遊学中に婚約者に裏切られた傷が癒えず、また養生所の医員という職にも不満を持っていたが、赤ひげに付いて貧困のどん底にある人々の診療を行う間に見事に人間的成長を遂げ、やがて幕府の目見医(→御番医→典薬頭)というエリートコースを自ら投げ捨てる。
 黒澤映画(昭和39年)の方は、観たことがないので、そのうちDVDを借りようと思っている。

7月16日
吉村昭『大黒屋光太夫(上)(下)』新潮文庫,上・下巻とも¥514
 漂流記は、やはり寝食を忘れるほど面白い。1日で2冊読破。
 飢えと寒さで、ロシアの地で仲間が次々と倒れるが、日本へ帰還する上で最大の罠は、ロシア女宗教であった。磯吉は、透き通った白い肌と青い瞳をもつエレナと情交する仲になるが、日本に帰るため何とか思いを断ち切った。対照的に、帰還に絶望的な新蔵は、死して屍が野に曝されることを恐れ(異教徒はきちんと埋葬してもらえない)、ギリシャ正教に宗旨替えするが、日本のキリシタン禁制を考えると、それは同時に帰国することを自ら断念することにほかならなかった。光太夫が女帝エカテリナに謁見しロシアへの日本人漂着者として初めて帰国を許されたことを知ったときの新蔵の心の動揺は実によく分かる。
 なお、十年にわたる漂泊の後に帰国した光太夫は四五歳で一八歳の嫁を取り、七八歳まで充実した人生を江戸で送る。本当にエライ。

7月15日
遠藤周作『沈黙』新潮文庫,¥514
 島原の乱後の苛酷なキリシタン弾圧下にあった日本にあえて潜入したポルトガル宣教師ロドリゴ。しかし彼は、日本人のユダともいうべきキチジローの裏切りで御上に捕縛され、やがて神は沈黙し背教の危機を迎えることとなる・・・・・・。

7月12日
司馬遼太郎『項羽と劉邦(上)』新潮文庫,¥667
 改版により文字が一回り大きくなったので購入した。老眼にはまだなっていないが、最近、字が小さいと読む気力が持続しないから。
 秦の始皇帝は、中央集権的統一を成し遂げるがその死後、陳勝・呉広の乱が勃発し、天下は再び大乱の時代を迎える。楚人の項羽と沛の劉邦それぞれの生い立ちと出会いから、クライマックスの鉅鹿の戦い、項羽の捕虜となった二十余万の秦軍に対する人類史上最大のジェノサイドまでが上巻。以下、中巻に続く。

7月9日
三崎亜記『となり町戦争』集英社,¥1400
 250名もの町民の犠牲者が生じたというが、読んでいて最後まで、偵察業務に従事した僕と同様、舞坂町ととなり町との戦争のリアルさを実感することはできなかった。だからこそ、この日常の中の戦争は、僕と香西さんとの結末の含め、怖く哀しい。
 「となり町の広報紙には、終戦特集が組まれていた。「さあ終戦だ!新しい町づくりを!」と題して、終戦復興特例債によって計画されている、念願の町民ホールの建設や、道路や公園整備の事業が華々しく列挙されていた。」(第5章戦争の終わり156頁)。
 ところで、上の文章の「終戦」や「終戦復興」を、「合併」と読み替えてみると、市町村合併もまた「となり町戦争」と言えるかもしれない。
 第17回小説すばる新人賞受賞作。筆者は福岡県久留米市在住の公務員(男性)とのことである。

6月27日
永井龍男『青梅雨』、井上靖『補陀落渡海記』、梅崎春生『赤い駱駝』(浅田次郎編『見上げれば星は天に満ちて 心に残る物語−日本文学秀作選』文春文庫,¥629)

 『青梅雨』は、老人四人家族の一家心中をねっとりと描写しており、はっきり言って暗い。『補陀落渡海記』は、最高に面白いストーリーであり、誰しも一度読んだら忘れないだろう。多くの寺の僧侶が補陀落の浄土を目指して熊野の海岸から、次から次へと海に出る話である。『赤い駱駝』は、終戦を知った直後に精神に変調を来す帝国海軍予備士官の話だ。

6月26日
山本周五郎『ひとごろし』(浅田次郎編『見上げれば星は天に満ちて 心に残る物語−日本文学秀作選』文春文庫,¥629)

 
福井藩家中でも侍の風上にもおけない臆病者と評判の双子六兵衛が、上意討ちの役目に名乗り出る。しかもその相手は、強者のお抱え武芸者である。さていかなる結果に・・・・・・。

6月25日
中島敦『山月記』、『狐憑』(浅田次郎編『見上げれば星は天に満ちて 心に残る物語−日本文学秀作選』文春文庫,¥629)

 『山月記』は高校の教科書あたりの定番であるが、後者の『狐憑』は初めて読んだ。いずれも超短編であるが、一字一句噛みしめながら、話の寓意を掴むべきである。

5月30日
高橋哲哉『靖国問題』ちくま新書,¥720
 靖国神社への首相参拝をめぐり、中国や韓国との間で絶えずゴタゴタが繰り返されているが、そもそも靖国問題とは何か。もちろんA級戦犯合祀だけではない。感情の問題、歴史認識の問題、宗教の問題及び文化の問題の四つの位相から、この問題を論理的に明らかに説明している書である。

5月18日
横山秀夫『動機』文春文庫,¥514
 『動機』、『逆転の夏』、『ネタ元』、『密室の人』のミステリ短編4編。どれも読み出したら、結末を知るまで止まらない。解説によると、前2作はそれぞれ上川隆也、佐藤浩市主役ですでにテレビドラマ化されている。
5月16日
小川洋子『博士の愛した数式』新潮社,¥1,500
 交通事故の後遺症で、事故後の記憶が80分間だけの重ね取りテープのような状態となってしまった初老の数学者と、日々彼のもとをたずねる家政婦さん、その息子"ルート"の三人の交流を描く。ちょっぴり哀しいけれど心温まる話だ。数学のように美しい小説とも言えそうである。2004年本屋大賞作。

5月12日
佐藤優『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて新潮社,¥1,600
 本書は、鈴木宗男衆議院議員の逮捕に先立ち、イスラエルの国際学会に関連した背任容疑と、国後島ディーゼル発電機供与事業入札における偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部によって逮捕、起訴された外務省職員の手記である。担当検事によると、この事件は「時代のけじめ」をつけるために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪する「国策捜査」であって、つかまったのは運が悪かったのだという。筆者の見方では、現在の日本において、内政ではケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交では地政学的国際協調主義から排外主義的ナショナリズムへの転換という二つの線で「時代のけじめ」をつける必要があり、これらの線が交錯する位置にある鈴木議員(及びこれに親しい筆者)が「国策捜査」のターゲットになったのではないか、とする。
 とにかく読んでいて面白い。筆者の、映像にして記憶する記憶力や、決して筋を曲げようとしない強靱な精神力にはただ舌を巻くのみだ。
5月8日
原田宏二『警察内部告発者』講談社,¥1,700
 10年ほど前に各県で食糧費や旅費の不適正支出が問題となったが、いつかは警察もターゲットとなる時が必ず来ると思っていた。北海道警の警視長で退職した幹部(筆者)の告発であるだけに、組織に衝撃を与えるともに社会的影響力が大きい。本書を読んで分かるが、警察の場合の特殊性は、@捜査費(国費)・捜査用報償費(道費)について「捜査上の秘密」が常に壁になること、Aその階級制から「裏金」を作るのは「下」、使うのは「上」とかなり二極化していること(上納システム。また人事異動の度の「餞別」には驚かされる)、Bその権力性から、議会やマスコミ等による追求はどうしても及び腰になること、などである。

5月1日
桐野夏生『柔らかな頬』文春文庫,上¥590下¥562
 五歳の娘が誘拐される。しかも二組の家族が子連れで出かけた別荘地での不倫の最中においてである。事件の始まりは、二時間で結末が分かる火曜サスペンスのようであるが、単なる犯人探しではない。漂白する主人公カスミと、ガンに侵され余命少ない元刑事の内海。それぞれの心象風景を辿りながら、真実と人の生き方を考えさせられる。 
4月23日
村上龍『半島を出よ』幻冬舎,上¥1,800下¥1,900
 東京にいた時にも感じなかったような強烈な地震を、この1か月に2度も福岡で体験した。世の中平穏のように見えても、まったく何が起こるか分からない。だからこそ、この近未来小説も決して荒唐無稽とは思えないのだ。
 物語の舞台は、6年後の福岡。ホークスとマリーンズの開幕戦が行われている福岡ドームを北朝鮮の9人のコマンドが占拠し、その2時間後には、アントノフ2型輸送機20数機が兵士を載せて雁ノ巣飛行場跡に着陸する。福岡統治のため彼らはシーホークホテルに司令部を設置し、後続の12万人の船団の受入れ準備を行う。
 一方、日本政府は、北朝鮮の「反乱軍」と名乗る彼らに対して、福岡を「封鎖」する以外に何ら有効な策を打てない。すでに経済が破綻し世界的な地位が低下した日本は、アメリカのみならず、昨今の反日デモが暗示するように中国や韓国とも良好な関係にはない。そのため、この侵略行為に際し、日本を支援する国は現れない。
 そして結果的に、「日本を」でなく「福岡を」救うのは、自衛隊でも警察でもなく、少年犯罪や家族崩壊によって社会から見放された若者たちだった。

4月18日
『文藝春秋5月号』
¥695
 ライブドアとフジテレビは和解が成立したが、特集の平成ホリエモン事件をチェック。三島由紀夫『青の時代』のモデルとなった光クラブ事件の山崎との対比に注目したい。
 また、「愛の流刑地」(日経新聞朝刊に連載中)か、「冬ソナ」かという、渡辺淳一と麻木久仁子の対談も要チェック。

4月13日
乙川優三郎『生きる』文春文庫,¥467
 「生きる」「安穏河原」「早梅記」の時代小説中編の三編。いずれも暗いテーマで気が滅入るような人生を描くが、ラストに感動のクライマックスがある点が救いだ。

4月8日
遙洋子『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』ちくま文庫,¥620
 涙ぐましい努力をしながらフェミニズム社会学を学ぶタレントのエッセイ。単行本で20万売れたというだけに、読み物としての面白さは秀逸。

3月10日
渡辺淳一『ラヴレターの研究』集英社文庫,¥600
 島村抱月(自殺)と松井須磨子(後追い自殺)、有島武郎と波多野秋子(人妻との軽井沢心中)、佐藤春夫と谷崎千代=谷崎潤一郎(三角関係の末、妻を友人に譲る)など、高校生の頃、現代国語の教師Mの授業はコノテの話だけ大変興味深く聞いていたのを思い出す。本書の研究対象となったラブレターをながめるだけで、日本近代文学史のお勉強になる。

1月9日
宮城谷昌光『沙中の回廊 下』文春文庫,¥581
 秦に一時期亡命するが、晋に戻った士会は、徳を積み、ついに景公の御世に宰相たる「正卿」にまで昇りつめる。

1月4日
山内昌之『嫉妬の世界史』新潮新書,¥680
 人間関係において、妬み、嫉妬の感情が常に大なり小なり渦巻いていることは誰しも認めるところであろう。人は、一方で妬心を忌みながらも、妬心の呪縛から逃れられない。そして、嫉妬とは決して女の専売特許ではなく、むしろ男の嫉妬のほうがときに国を傾けるほど始末に終えない代物であることを、本書は次のような豊富な事例に基づき立証する。
 徳川慶喜と勝海舟、ナースィルとサラディン、森鴎外、近藤勇と伊東甲子太郎、ヒトラーとロンメル、石原莞爾と東条英機、スターリンとトハチェフスキー、毛沢東と劉少奇、島津義久と義弘、ゴードンとベアリング等々。
 嫉妬という切口によって古今東西の歴史から、人間の普遍的心理を鮮やかに浮かび上がらせている。
 なお、最終章において、偉大な業績を上げながらも奇跡的に誰からも嫉妬を受けなかった人物として紹介されている保科正之(1611〜72)に興味を覚えた。

1月2日
宮城谷昌光『沙中の回廊 上』文春文庫,¥581
 周王室が衰微し群雄割拠の時代を迎えた春秋時代の晋の兵法家士会の人生を描く。新聞連載小説(朝日、平11.9.6〜平12.8.21)である。

12月23日
松本清張宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション 下』文春文庫,¥667
 最終章の「西郷札」「菊枕 ぬい女略歴」「火の記憶」まで読み終えると、さすがに暗い気分になってくる。救いようのない陰鬱な話が多いが、これも社会、人間の真実である。
 巨匠の作品の中でこれまで読んだ記憶があるのは、中学生の時の「点と線」(冒頭、国鉄香椎駅が出てきて懐かしい)、「霧の旗」(明らかに百恵ちゃんの影響)と最近の「黒革の手帖」ぐらいだ。今回、こうして多数の短編群をまとめ読みしたのは有意義であった。

12月18日
松本清張宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション 中』文春文庫,¥667
 中巻には、「第五章 淋しい女たちの肖像」として、「遠くからの声」「巻頭句の女」「書道教授」「式場の微笑」を、「第六章 不機嫌な男たちの肖像」として、「共犯者」「カルネアデスの舟板」「空白の意匠」「山」を収録している。
 「遠くからの声」:妹が姉の婚約者を好きになるというシチュエーションからして、今井美樹・松下由樹が出ていたTBSドラマ「想い出にかわるまで」(内舘牧子作)を瞬間的に思い起こす。だが、この小説の場合、姉から男を奪うような現代的なストーリーではない。姉の幸せな生活とは地理的にも心理的にも遠ざかり、自ら堕ちていく妹の気持ちが哀しい。なお、義兄が妹と再会する筑豊炭田の幸袋は、現在の飯塚市。

12月16日
松本清張宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション 上』文春文庫,¥667
 この短編セレクションの中では、「恐喝者」や「理外の理」のようなあっさりブラックな結末が好きだ。「真贋の森」も、企みが計画的に徐々進行する過程が面白い。

12月5日
浅田次郎『蒼穹の昴 4』講談社文庫,¥590
 光緒帝親政による変法改革は見事に挫折し、日本に逃れる船上において、梁文秀は自らの心の内にこそ変法自強が必要だったことを覚る。
 近代の歴史的事実と筆者のイマジネーションとの境界がどこにあるのか分からないが、物語としては最高に面白い。

12月4日
浅田次郎『蒼穹の昴 3』講談社文庫,¥590
 謎の占星術師白太太は思いがけないところで現れる。袁世凱の危険性を確信した李鴻章は、王逸をして刺客に使わす。だが暗殺は見えざる力が働き失敗。
 一方、西太后の佞臣栄禄と李蓮英は、改革派の精神的支柱であり梁文秀の岳父の楊長官謀殺を企てる。

12月3日
浅田次郎『蒼穹の昴 2』講談社文庫,¥590
 清朝末期第11代光緒帝の御代、先帝と同様、西太后の垂簾聴政が続く中、李鴻章の軍は日本に敗北。しかし、未だ紫禁城内では守旧派と改革派の対立は続く・・・・・・。
 なお、上下巻2冊を文庫版4分冊としているが、分量をそろえるためか章の途中でぶったきられている。厚みは違うことになっても、章単位で切るべき。

11月30日
浅田次郎『蒼穹の昴 1』講談社文庫,¥590
 三位一体の改革等説明会のため上京中の機内で読み始める。文庫化されたので手にしたところ、文句なく面白い。主人公は、光緒12年の科挙で進士登第する梁文秀と、糞拾いの貧民の子李春雲。二人の行く末はともに白太太に予言されている。
 ちなみに「浄身」とは、宦官になるため陰茎と陰嚢(=「宝」(パオ))を切り取ることだとはじめて知った。

11月28日
藤沢周平『驟り雨』新潮文庫,¥552
 江戸の市井にいきる人々。人間の不しあわせや哀しみを考えさせられる話ばかりである。

11月27日
高樹のぶ子『透光の樹』文春文庫,¥448
 中年男女の一途な大人の愛。まあヨン様を追っかけるオバ様の方が健康的か。

11月25日
渡辺淳一『シャトウ ルージュ』文春文庫,¥667
 セックスレスの若い夫婦。医師である夫は’悪党’に依頼し、「O嬢の物語」を連想させる仏蘭西の古城に妻を幽閉しドレサージュ(調教)を試みる。しかし、自分でしないで他人に調教を依頼したため、妻は肉体的にも精神的にも予想を越えた変貌をとげ、結果的には悲しい結末を迎えることとなる・・・・・・。

11月18日
藤沢周平『時雨みち』新潮文庫,¥476
 この短編集の中では、「幼い声」、「亭主の仲間」、「時雨みち」が秀逸。

11月13日
藤沢周平『神隠し』新潮文庫,¥476
 江戸町人たちの様々な人生模様。男と女、夫と妻、親と子。表題作のほか、「拐し」、「疫病神」、「鬼」が面白い。

11月8日
藤沢周平『橋ものがたり』新潮文庫,¥552
 江戸市井もの。橋にまつわる男女の情愛十編。解説の井上ひさしが言うように梅雨時の土曜の午後にもってこいの小説。

11月6日
水上勉『飢餓海峡(上)(下)』新潮文庫,上下巻とも¥590
 主人公の樽見京一郎も殺害された杉戸八重も、その運命の根底に貧困があることを想うと暗い気分になる。40年以上前に書かれた長編であるが、一気に読む。

11月1日
藤沢周平『時雨のあと』新潮文庫,¥476
 いずれも読者の内面に余韻を残す短編7作。

10月29日
藤沢周平『竹光始末』新潮文庫,¥476
 珠玉の時代小説6編。時代が異なっても人間心理は普遍。

10月24日
松本清張『黒革の手帖(上)(下)』新潮文庫,上下巻とも¥514
 今秋テレビドラマ化された(先週の2回目の放送が日本シリーズのせいでなかったので大ブーイングが起きたらしい。)。原作を知らないので読む。

10月20日
藤沢周平『隠し剣秋風抄』文春文庫,¥590
 続けざまに「隠し剣」シリーズを読了。九編の中で「盲目剣谺返し」がベスト。

10月16日
藤沢周平『隠し剣孤影抄』文春文庫,¥590
 「邪剣竜尾返し」「臆病剣松風」「暗殺剣虎ノ眼」「必死剣鳥刺し」「隠し剣鬼ノ爪」「女人剣さざ波」「悲運剣芦刈り」「宿命剣鬼走り」の八編。必殺の秘剣の持ち主でも悲運の結末が多い。「女人剣さざ波」はハッピーエンド。「暗殺剣虎ノ眼」は背筋が寒くなる。「隠し剣鬼ノ爪」は映画化される。

9月26日
浜辺祐一『救命センター当直日誌』集英社文庫,¥514
 日本版ERの生と死をめぐる現実を描くシリーズ第三弾。アルコール性肝硬変による食道静脈瘤破裂、浮浪者の脳幹出血による昏睡、交通事故による頭蓋骨骨折・急性硬膜下血腫・脳挫傷・多発肋骨骨折・肺破裂・大腿骨及び頸骨の開放骨折、フグ中毒、HIV陽性者の飛び降り自殺、劇症肝炎・・・・・・修羅場である。

8月1日
平野啓一郎『日蝕』新潮文庫,¥400
 漢文調で語彙も極めて難解であり、復唱しながら、あるいは行きつ戻りつしながらでないとなかなか前へ進まない。もっとも、両性具有者の登場や魔女焚刑の場面以降は一気に読むことができた。

7月27日
幸田真音『日本国債(上)(下)』講談社文庫,上下巻とも¥521
 単行本から3年後、文庫本化にあわせてデータの更新等が行われている(「改訂最新版」)。
 本書のキーワードは、日本国債(JGBs)の「未達」である。
 現実にも、平成14年9月20日に10年利付国債(第242回)の国債募集引受額の割当てに関する入札において、割当決定額が割当予定額を下回る札割れが生じている(もっとも、割当残額については、国債募集引受団の各構成員が引受割合に応じて引受ており、国庫の資金繰り上の問題は生じていない。)

7月24日
貫井徳郎『慟哭』創元推理文庫,¥720
 連続幼女誘拐殺人事件と新興宗教が絡み合う。徐々に警察から追いつめられる犯人の様子から、おおよそ話が見えたねと安心したとき、読者には衝撃の結末が待っている。

7月21日
藤田宜永『愛の領分』文春文庫,¥629
 大人の恋愛小説というか、若い時分から始まる男女四人の因縁めいた昼メロ話である。
 私には、幾人かの女性との間で”兄弟”となる主人公淳蔵と高瀬との交情に、どうしてもついていけない。だがこれも、影のように諦念の中で生き、愛の領分を知る主人公だからこそなせる術なのであろう。

7月11日
三浦綾子『塩狩峠』新潮文庫,¥552
 明治末期、主人公永野信夫の信仰生活と壮絶な死を描く。読者は、「犠牲」とは何かを強く意識させられよう。
 信夫の死後、母菊から婚約者ふじ子に宛てられた手紙が胸を打つ。人は誰でもやがて死ぬのであるから、「祝福される死」に導かれたいと思うが、私などはまだまだ修練が足りない。
 クリスチャンでなくとも中・高校生の健全な精神発達の過程において推奨すべき書物である。

7月9日
宮本輝『錦繍』新潮文庫,¥438
 決して憎しみ合って別れたわけでない二人の男女が、十年の歳月の後、東北の地で奇跡的に再会する。そして、離別の原因となった事件の真相や、それぞれの十年間の苦闘の人生が、往復書簡によって徐々に明らかになってくる。
 たんなる男女の愛憎を超えた、生きることの意味を考えさせられる。

7月5日
小池真理子『恋愛映画館』講談社,¥1,600
 73の映画の中の24人の俳優を扱う。
 actress:ベアトリス・ダル、ホリー・ハンター、イザベル・ユペール、メリル・ストリープ、ジュエーン・バーキン、グレン・クローズ、シャーロット・ランプリング、カトリーヌ・ドヌーヴ、アヌーク・エーメ、モニカ・ヴイッティ、樋口可南子、桃井かおり
 actor:ヴィンセント・ギャロ、ロバート・デ・ニーロ、アラン・ドロン、ミシェル・ピコリ、ジェラール・フィリップ、ダーク・ボガード、豊川悦司、佐藤浩市、松田優作、藤竜也、三國連太郎、佐分利信

6月26日
片山恭一『雨の日のイルカたちは』文藝春秋,¥1,238
 四つの短編が、映画『彼女を見ればわかること』のような登場人物のリレーをする。共通するテーマは、喪失感の後の再生である。福岡の情景が随所に描かれている。

5月23日
藤沢周平『夜消える』文春文庫,¥438
 江戸の市井に生きる人々の人情の機微を描く七篇。表題作「夜消える」の外、「にがい再会」「永代橋」「踊る手」「消息」「初つばめ」「遠ざかる声」を所収。就寝前にこれら短編を一つ読むと、心穏やかになり、自然と寝付きもよくなる。

5月11日
青山やすし『石原都政副知事ノート』平凡社新書,¥740
 石原東京都知事1期目の副知事である著者からみた石原都政。世間では毀誉褒貶相半ばする石原知事である。著者は、役人として忠実に仕えつつも、率直に1期目の評価を行い、2期目の課題を提示している。
 ところで、三位一体の都の独自案はどのようなものだろうか。大体想像できるが・・・・・・。
 (注)「やすし」は、「イ(にんべん)」の横に「八」を書いて「月」。都のHPでもひらがなであった。

5月4日
長谷部恭男『憲法と平和を問い直す』ちくま新書,¥680
 
日本国憲法は立憲主義に基づく憲法である、とは誰もが知っていることだが、そもそも立憲主義とは何かについて、西欧政治思想の系譜に従い徹底的に説明している。それは、比較不能な多様な価値の共存をはかる立憲主義の視点が、戦争と平和を考える際に必要となるからである。

5月2日
酒井啓子『イラク 戦争と占領』岩波新書,¥740
 いまやアメリカによるイラク占領政策の失敗は、誰の目にも明らかであろう。
 筆者は、「あとがき」で「・・・・・・「他国」に対する個人の思いと、その国に対して自国政府が掲げる看板とに齟齬が生じないことは、幸せなことであろう。・・・・・・・そして、「他国」の人々が、すべての国民はその国の政府の掲げる看板のために行動するもの、としてしか見てくれなくなったとき、個人は、掲げられた看板の内容に否応なく責任を取らなければならなくなる。」と述べている。日本人人質事件を考えても、その言葉の持つ意味は重い。

4月20日
養老孟司『死の壁』新潮新書,¥680
 昨年大ヒットした『バカの壁』の続編であり、筆者によると、本書によって自分の中に溜まっていたものはすべて吐き出した心境にあるという。
 個人的には、「一人称の死体」、「二人称の死体」、「三人称の死体」の話に共感した。自分自身の死は、考えるだけ無駄なことだよね。

4月6日
三沢明彦『捜査一課秘録』光文社,¥1,600
 警視庁捜査一課は、355人(2003年度)の大組織である。読売新聞社会部の記者の手によって、この捜査一課の刑事たちが捜査に人生のすべてを注ぐ姿を丁寧に描かれている。
 本書の大半を占める「第一部 オウムとの死闘」では、証言を取った一人ひとりの警察官の視点で無差別サリンテロとの闘いの日々が綴られており、被害者の証言によって事件を構成する、村上春樹『アンダーグラウンド』(講談社)と併せて読むとよいと思う。
 「第二部 凶悪犯逮捕の舞台裏」では、有楽町三億円強奪事件、宮崎勤事件などを扱っている。

4月1日
田口ランディ『できればムカつかずに生きたい』新潮文庫,¥514
 過去にも、同じ著者による『もう消費すら快楽じゃない彼女へ』『スカートの中の秘密の生活』(いずれも幻冬舎文庫)を読んだことがある。このエッセイ集を手にしたのもタイトルの引力のせいだ。

2月25日
綿矢りさ『蹴りたい背中』文藝春秋3月号,¥780
 蛇ピに比べ、こちらの方が安心して読める。アイドルオタクの男子の背中を蹴りたくなる女子高生の気持ちは十分理解可能だ。
2月21日
金原ひとみ『蛇にピアス』文藝春秋3月号,¥780
 背には龍のスミ、そしてスプリットタンを持つ男アマと出会い、価値観が根底から崩れ去ったルイは、自らも麒麟のスミを入れ、舌のピアスの穴を拡張させていく。アマと彫り師シバさん、この二人の男とのセックス(前者は意外とノーマル、後者は変態SM)とアルコールに溺れる日々。
 一体何なんだ。健全な青春とはあまりにほど遠く、アングラ変態の非生産的な生活であり哀しすぎる。フリーターや引きこもりなど大人の社会との接点が少ない現代日本の若者の間では理解できる話なのだろうか。

1月25日
酒井順子『負け犬の遠吠え』講談社,¥1,400
 論争の書である。男がこれを書けば袋叩きにあうのは間違いない。
 自らも「負け犬」に当てはまる筆者によれば、狭義の「負け犬」とは、未婚、子ナシ、三十代以上の女性のことをいう。都会に多く棲息する「負け犬」には、「地場負け犬」と「外来負け犬」、「独居負け犬」と「パラサイト負け犬」など様々のパターンがあって、「負け犬」の中にも結婚歴の有無などによりヒエラルヒーや差別が存在するが、何といっても「勝ち犬」である子持ち専業主婦とは、およそ別の世界で生きているのが特徴である。
 また、究極の勝ち犬は緒方貞子であり、伝統的負け犬は土井たか子、そして負け犬のカリスマは向田邦子であり、負け犬がシンパシィーを寄せるのはサーヤこと紀宮様という指摘も面白い。
 負け犬の身の処し方は非常に難しく、元美人であっても、いつまでも若いと錯覚しかっての美脚をさらして周囲を困らせてはいけないし、また眉間にしわ寄せ腕組みしながらイヤ汁を出すのは論外であるらしい。
 なお、「オス」の負け犬論には異論があるが、ここでは述べない。

1月21日
麻生幾『38℃ 北京SARS医療チーム「生と死」の100日新潮社,¥1,500
 BSE、口蹄疫、SARS、コイヘルペス、鳥インフルエンザ・・・・・・。最近、自然界の摂理に明らかに異変が生じているのではないかと漠然とした不安感を持っている。家畜との濃厚な接触がヒトへの感染をもたらし、ある段階でアウトブレイク(感染爆発)が起き、人類とウイルスは共に生存をかけた壮絶な戦いをするのだ。ダスティン・ホフマンの映画「アウトブレイク」は、決して単なるSFではない。
 本書は、北京の医師、看護師等の医療従事者を中心に行ったインタビューに基づき、自分や家族への感染に対する恐怖の中でSARSウイルスとの生物戦争を命を懸けて闘う姿を克明に描いている。

1月15日
山本譲司『獄窓記』ポプラ社,¥1,500
 学部は異なるが、筆者と卒業大学・卒業年が同じであることから気になって手にした。
 秘書給与詐取事件で逮捕され、一審の懲役1年6カ月の実刑判決を受け入れた元衆議院議員が語る受刑生活。かっての先生は、刑務官に対し「先生」と呼ぶこととなる。府中刑務所から那須連山を望む黒羽刑務所に移され、掃き溜めのような寮内工場で汚物まみれになりながら、障害を抱えた受刑者たち世話する日々。本当にここまでさせられるのかと驚かされること多し。
 出所後、障害者の授産施設やグループホームの運営を夢に持つが、社会福祉士など「士」資格は刑期満了後一定期間の欠格事由がある。しかしあきらめず、今後の人生は、反面教師は自分の中にあることを常に自覚しながら愚直に生きていこうと決意する。
 同様の事件で往生際の悪い印象を強く世間に与えた辻元清美元代議士は、筆者と大学のゼミが一緒だったという。彼女の判決及び今後の生きざまも興味があるところである。

1月13日
塩野七生『迷走する帝国 ローマ人の物語(12)』新潮社,¥2,800
 「危機の三世紀」といわれる紀元211年から284年までの73年間、皇帝22人についての語りである。
 260年のササン朝ペルシャによる「皇帝捕囚」からローマ帝国は未曾有の国難に見舞われることとなるが、それにしても、この書で扱われる期間は皇帝の数が夥しい。皇帝は終身制であり、ゆえに皇帝の不信任の多くは皇帝の謀殺となるからである。しかし政策の非継続性は、危機をより深めるという悪循環を繰り返すこととなる。
 第一部、第二部が三世紀前・後半の淡々とした通史であるのに対して、第三部「ローマ帝国とキリスト教」はキリスト教がローマに浸透する要因についての著者の深い洞察であり読みごたえがある。

1月5日
野中広務『老兵は死なず』文藝春秋,¥1,500
 全回顧録とあるが、96年橋本政権から2003年の総裁選までの8年間の出来事が記されており、それ以前については、前著『私は闘う』(文春文庫所収。なかでも、オウムとの攻防が興味深い)参照。昨年10月10日の解散とともに政界を引退した筆者がもう回顧録を出した早さには驚く。
1月4日
片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』小学館,¥1,400
 タイトルの強さに惹かれて購入。映画の時間ぐらい、2時間もあれば読める平易な文章。
 たしかに、大事な人の死による喪失感は分かるが、これは、涙するほどの話ではない。もはや僕には「泣きながら一気に読みました」(柴咲コウ)といった感性が無くなったのかもしれない。

1月3日
正高信男『ケータイを持ったサル』中公新書,¥700
 よくぞ書いてくれた!と心から喝采したい。常にケータイを持ち歩き、メル友と四六時中意味のない交信をし、ルーズソックスで靴のかかとを踏みつぶし、電車内で化粧をし、デパートの階段などで地べたに座り込む、といった公の空間を知らない傍若無人たる女子中高生に代表される若者の振舞いは、まさに「メル友を持ったニホンザル」(第3章)そのものである。IT社会も一歩間違えば、人間をサル化したコミュニケーションに後退させるのだ。
 しかも、ケータイ族と非ケータイ族のグループ別に取引ゲームを実験すると、前者の利己的な行動と後者の信頼関係に期待する行動が明らかになり、かつ、経済的成果において結局は利他的な後者が優位になるという。そのうえ、「裏切り」をためらわないケータイ族の行動は、サルが狼のような捕食動物を前にして、他のサルに対し声をかけずに逃げ出す行動と近いらしい。
 「ウェーソンの4枚カード問題」への正答率から「社会的かしこさは四〇歳で衰える」(第5章)、真の少子高齢化の原因を考えた「そして子どもをつくらなくなった!」(第6章)も必見。

1月2日
武藤博己『入札改革 談合社会を考える岩波新書,¥700
 今日の談合社会の体質改善を行い、共生社会あるいは責任社会の実現に向けて、自治体の政策手段としての「政策入札」を提唱する。それは、総合評価方式(自治法234条、自治令167条の10の2)における「価格その他の条件」に単なる性能評価にとどまらず、企業の社会的責任を踏まえ、環境、福祉(障害者雇用等)、男女共同参画、公正労働基準といった社会的価値を組み込もうとするものである。談合やダンピングが絶えないのは、「価格」という一元的な価値を絶対視するからだという。さらに、そうした社会的価値を取り入れた落札者決定基準例や自治体契約の基本条例案を示している。だが、筆者も認めているように、分権的な「政策入札」導入のプロセスは一朝一夕に完成するものではない。

2004年1月1日
向田和子『向田邦子の恋文』新潮社,¥1,200
 没後20年近くたって、9つ下の妹が、姉の遺品である姉と、当時別居中だが妻子あるN氏の手紙やN氏の日記などを読み返す。
 これら手紙類の時期は、東京オリンピック前の冬である。当時実家は本天沼にあったが、ラジオのストーリー執筆のため都市センターホテル(千代田区平河町)に缶詰状態となるほど多忙を極めていた。それでも時間を作っては、夕方に高円寺近くに(西武新宿線なら都立家政か野方?)住む病のN氏のもとを訪れ、食事の準備など献身的な介護をするといった日々。だが、その生活は、そう長くは続かなかった・・・・・・。
 本と同名のドラマが、明日TBS系で山口智子主演で放送されるらしい。

12月28日
天木直人『さらば外務省!』講談社,¥1,500
 今日の朝、田原総一朗の番組「緊急生特番!徹底追及」に著者が出ていたので興味を持ち読む。
 役所を辞めることにより、これまでの心の葛藤から解き放たれて、一気に内幕を暴露する。本人も覚悟の行動であるが、これだけ書けば、現体制側からは危険分子と目されても仕方がない。
 官僚の無謬性や政治家の無責任体質等々、週刊誌の記者でなく当事者が書いたものだけに、読むほどに暗澹たる気持ちになる。

12月16日
半田滋『自衛隊VS.北朝鮮』新潮新書,¥680
 10年前に防衛庁が作成した『K半島事態対処計画』に基づくシミュレーション。
 北朝鮮南部から発射されるスカッドCは、7分後には福岡に着弾する。しかも第1次湾岸戦争の例でもわかるように、パトリオットによる迎撃は限定的な成果にとどまる。
 また、千人にも満たない2個中隊程度の兵力によるテロ攻撃でも日本は極めて脆弱であると筆者は予想する。

12月6日
猪瀬直樹『道路の権力』文藝春秋,¥1,600
 道路関係四公団民営化推進委員会の意見書(平成14年12月6日)が提出されて早くも1年が経過したが、それまでの攻防の記録であり、非常にリアルである。民営化委員会のHPの議事録等を参照しつつ読む。
11月3日
向田邦子原作『阿修羅のごとく』文春文庫,¥590
 女きょうだいがいない私には、アシュラのような女の愛憎はなかなか理解できないが、ただ、それが男のずるさに起因することは十分わかる。また、もし年老いた父親に愛人がいたとしても、作中の四姉妹のような大騒ぎはしない(であろう)だけの「大人」になったつもりである。本作は、昔、NHKで連続ドラマ化され母が熱心に観ていた記憶があるが、近々映画化(東宝系)されるそうである。

10月11日
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会『家族』光文社,¥1,524
 他国による自国民の拉致(テロ)に対して、日本という国が長年にわたって何もしてこなかったことがよく分かる。
 たらい回しや言い逃れといった無責任体質丸出しの外務省をはじめとする役所、北朝鮮の代弁としか思えないような不可解な言動や不誠実な対応をとる多くの政治家、時には沈黙・事実を無視するかと思えば、時には過剰報道によって被害者感情を逆撫でするマスコミ。
 それでも家族は、家族の再生を求め、この国を信じるしか道は無いのである。

10月5日
岩中祥史『博多学』新潮文庫,¥552
 かってタモリによってミソくそにこき下ろされた名古屋人である著者であるが、博多の魅力について最大限の賛辞を捧げる。
 今日、博多は、単身赴任者の楽園にとだまらず、逆単身世帯(博多にハマって奥さんや子供が残ってしまう現象)すら生み出している。地元の人間も、博多を再認識する意味で、武野要子「博多」(岩波新書)とともに一読の価値あり。

10月4日
マイク・ブラツケ『北朝鮮「楽園」の残骸』草思社,¥1,800
 ベルリンの壁の崩壊を自らも体験した旧東独出身の青年が、NGOスタッフとして北朝鮮で3年半の間活動する。そして、首都平壌のほかにも地方の極貧状況を写した数々の貴重な写真を持ち帰ることに成功した。
 本書に掲載された170点ものカラー写真を、一つひとつ丁寧に見ながら、この国の未来について考え、嘆息せざるを得なかった。
 北朝鮮は金日成の理想にもとづいて築かれたのでなく、SF(「1984年」(ジョージ・オーウェル 新庄哲夫訳 ハヤカワ文庫))の恐怖の未来像として存在しているかのように思えた、と筆者は実感をもって語っている。どう考えても、この全体主義国家が「大爆発」する日は近いと思うし、その際の日本に対する影響を考えると背筋が寒くなる。
9月28日
五木寛之『運命の足音』幻冬社文庫,¥476
 筆者は、「地獄は一定(いちじょう)」という歎異抄の親鸞の言葉は、「明日は我が身の地獄行き」ということではなく、まさにいまここに地獄があるという意味ではないか、と考える。真の浄土とは、地獄のなかにあって、かすかに光をはなつ浄土であるとし、それを願う。
 そして、筆者にとっての「地獄の一定」は変わらないが、「いいのよ」という母の声が聞こえた現在、戦後57年を経てはじめて朝鮮半島での衝撃的な体験を告白する。

9月27日
大嶽秀夫『日本型ポピュリズム 政治への期待と幻滅中公新書,¥920
 解散風が台風のごとく日本中を吹き荒れている。本書は、来るべき総選挙を前にして一読の価値あり。
 90年代前期の細川護煕の登場、90年代中期の「六大改革」の橋本龍太郎、90年代末から2000年代初頭にかけての「加藤の乱」、小泉・眞紀子旋風。政治学上のポピュリズム概念を用いてこれらの政治現象を分析している。
 劇場型政治とか政治のワイドショー化と云われて久しい。最近でも総裁選の過程で飛び出した「毒まんじゅう」には笑ってしまった。
 今度の選挙では、内政上は「大きな政府VS小さな政府」、「都市VS農村」、外交上は特に北朝鮮政策について「強硬か穏健か」を判断の座標軸としつつも、単純な善悪二元論を排した冷静な有権者判断が求められよう。一方で、個人的には、いまから各党党首のテレビCMが楽しみであるが(CMの出来栄えが投票行動に与える影響を思索するために)。

9月23日
李友情『マンガ金正日入門』飛鳥新社,¥1,200
 核とミサイルで日本を脅かす金正日の実像を描く。太陽政策をとる韓国では出版禁止であるという。

9月14日
佐野眞一『東電OL殺人事件』新潮文庫,¥705
 
「何が彼女をそうさせたのか」、その核心的疑問に対して明快な解答はやはり得られない。拒食症から売春という自己処罰に至る死者の心の闇は深い。
 それにしても、典型的な中流家庭の働き盛りの父の死、女性総合職に対する東電人事のホンネ、予断と偏見を持った警察捜査、日本の女を買うアジア系不法就労者など、一人の女性の死によってまざまざと現実を見せつけられると、バブル崩壊後世の中すべてがメルトダウンしているように思えてくるから恐ろしい。

8月22日
太田裕美『太田裕美白書』PARCO出版,¥1,905
 
書店で買うのはお恥ずかしいので、AmazonでGET。写真満載。最近ちょこちょこテレビで拝見しますが、実は隠れファンです。
 もう一人、気になる女性シンガーは、「異邦人」の久保田早紀。SANYOのCMで曲が流れるたびに、芸能界から彗星のごとく消え去った彼女が気になります。
 ラジオを聞きながらの受験勉強中、「黙っていては 友達になれない 叫ばなければ 消え去ってしまう 私たちが生まれてきた時から育ててきた 何かを伝えあうために ちぎれかけた世界の 心と心をつなぎあうために 私たちの歌が 今ここにある・・・・」で始まる「大石吾郎のコッキーポップ」の中で流れた「異邦人」を、初めて聞いた時はまさに衝撃でした。

8月20日
小塩隆士『高校生のための経済学入門』ちくま新書,¥700
 
高校の「政治・経済」から大学の経済学(ミクロ・マクロの基礎)への橋渡しをする書。
 世の中、直観では当然と思えて実は結構あやふやなコトが多い。また、それをあらためて万人が納得するように、本質を説明することは難しい。
 だが本書はそれを実現している。

8月13日
藤沢周平『蝉しぐれ』文春文庫,¥629
 
逆境にありながらも少年藩士牧文四郎は剣に打ち込み成長していく。細やかな情景描写であり、まるで映像を観たかのように脳裏に残る。主人公に感情移入というより主人公になりきった感じで長編を一気に読み終えた。

7月22日
小谷野敦『性と愛の日本語講座』ちくま新書,¥740
 
恋愛や性に関する言葉の変遷を江戸後期から昭和(平成)期にかけて論じている。
 巻末の関連年表は、1682年西鶴の「好色一打男」から始まり、2000年「29歳の憂うつ」(ドラマ)まで。
 それぞれの「ことば」はどれも、時代における恋愛観を写し出す鏡である。

5月26日
養老孟司『バカの壁』新潮新書,¥680
 
本のタイトルが気になり、買ってしまった。
 一元論にはまるとロクなことはない(イラク戦争、カルト)。21世紀は一元論を超えた世界になるべきだが・・・。

5月13日
齋藤孝『読書力』岩波新書,¥700
 筆者は、現代の学生の読書力低下が日本の地盤沈下につながると相当な危機感を抱いている。
 読書力としては、中・高で文庫系(推理小説・娯楽系を除く)100冊、高校の終わりから大学2年までに新書系50冊が、「力」を「経験」の観点から捉えた一つの規準であるという。
 その規準に照らすと、私の学生時代、新書系は絶対にクリアーしている自信があるが、文庫系は数えてみないとどうも分からない。
 巻末の文庫百選(多少とも精神の緊張を伴い歯ごたえのあるもの)は参考になる。

5月12日
南木佳士『阿弥陀堂だより』文春文庫,\505
 
昨年、映画を見逃したので原作を読む。
 人生の折り返し点をやや越した今の私には、爽やかな読了感が残った。

3月26日
大森彌・大和田建太郎『どう乗り切るか市町村合併』(岩波書店),2003.3

 合併後の地域の将来構想を、コンサルに丸投げしている例があるという。
 「22か月」などというから、補助金を財源として安易に業者に委託する行動に出る。過去の合併事例に基づく複数の調整案の中から選択するだけで、合併協議を進めるものさえある。分権一括法の施行に伴う条例整備のときと同様、多くが思考停止に陥っている。
 でも、そんな情けない団体が合併すれば、少なくともそういう団体の数は確実に減るのだからよいのではないか。
 地域自治組織の重要性は理解できる。
 しかし、広域連合の発展形態としての「市町村連合」論に対しては疑問。介護保険中心の現行の広域連合は地方公共団体としての住民認知度は低い。一部事務組合・広域連合・さらに市町村連合とは、ますます複雑になるばかりである。  
12月15日
自治・分権ジャーナリストの会編『この国のかたちが変わる 平成の市町村大合併』(日本評論社),2002.11

 地方紙記者による各地の報告。合併協議とは権力闘争であるとは名言。
 福岡県北野町の住民投票結果開票(投票率50%超で開票するらしい)まであと2時間。買い物感覚で久留米かな。

10月6日
櫻井よしこ、伊藤穣一、清水勉『「住基ネット」とは何か?−国民と自治体のための脱「住基ネット」論』(明石書店),2002.9

 <ディベートのテーマ例>
 「A市の市長は、住基ネットに参加(接続)すべきか。」
 肯定論、反対論のいずれに立つにせよ一読したい書。
 
8月5日の1次稼働が順調に推移し、1週間後課内で打ち上げをしたが、この問題の根っこには国民の公務員に対する度し難い不信感があることを忘れてはならない

9月16日
小西砂千夫『地方財政改革論』(日本経済新聞社),2002.9
 商売柄購入し、とりあえず斜め読み。

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