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大腸癌

成人の大腸の長さは1.5メートルくらいある.
その大腸に異変が生じている.
潰瘍性大腸炎が青年層で増加し,
大腸癌が成人病の代表格,相撲で言うと大関に昇進してきた.
いまや横綱も夢ではない状況である.


大腸の働き
むかし,といっても少し前のことだが,大腸は水分を吸収して大便を作るところと教えられていた.そうでしょう?違いますか?今でもそう思っている人も多いのでは.
 その頃,わが国では腸内細菌は,雑菌であって,特別有害でもないが有益でもない寄生菌くらいの評価しかいただいていなかった.細菌というと病原細菌をさすのが普通といった感覚であった.
 ところが,腸内には100種類以上もの細菌が住み着いていて,有機的な構造をなしていて,ネットワークをつくって連携プレイをしていて,あるときには健康を助け,またあるときには健康を害するということがわかってきた.
 大腸は大きく,細菌の住みかとして格好な場所を提供しているのである.たとえば,競走馬の巨大な大腸では盛んに腸内細菌が食物繊維を発酵して馬の栄養を助けているのだ

腸内細菌は人類の天敵か
ところが,腸内細菌は現代生活の豊満体制に反逆しているのだ.食糧としての家畜類を生産するために飼料生産が欠かせない,そのため多大な穀類,雑穀,牧草,魚介類を育成,収穫し,それをエサにして家畜を育て,人の食欲を満足させるというサイクルをとっている.
 エサの制限や天敵の活動が動物の個体数の制限因子になるのだが,人類は食糧増産によって無限に増えようとしているのだ.ところが,食糧増産があっても,その配分がかたよっている.日々の食糧にことかくかく人にはまわらず,裕福な人がより多くの食糧を消費している.
 腸内細菌は本来人類の天敵ではなく,共存共栄する運命にあり,平和に友好することを望んでいるのだが,ここにきて,そうした人びとに天敵として鉄拳を加えんとしているといってもよい.人類社会を支配している豊かな国ぐにの天敵であろうとしているのかもしれない.
 その天敵としての本性の一つが,今日,話題の大腸癌といってもよいのである.


食事の西洋化
どのくらい西洋化したかというと,肉類の摂取量は1960年当時の4倍あまり,動物性脂肪も4倍あまりの増加になっている.一方,米の消費は半減である.
 しかし,すくいは米(こめ)消費の低下が現在半分にとどまっていることである.これがさらに減少して,現在の半分とかになると,完全に食習慣も成人病も西洋化におちいることになることは間違いないだろう.
    
腸内の異変1.
胆汁による癌促進
胆汁酸の異変.
 では,腸内になにが起きているか? 脂肪の取りすぎは胆汁の分泌量の増大を招く.胆汁中には胆汁酸があって,脂肪の吸収を助けるが,胆汁酸腸内細菌によって二次胆汁酸に変換される.この二次胆汁酸はその毒性によって腸粘膜の炎症をもたらすだけでなく癌細胞の増殖を促進するのだ.
 胆汁酸は病原菌の増殖を抑えるという長所もあるが,「過ぎたるは及ばざるが如しだ」というところである.
 高タンパク高脂肪食では大便中の胆汁酸が増加することが証明されている.しかも,腸内で遊離しているものが多いのだ.遊離しているとは腸内の固形物,残さに付着していないこと.そのために粘膜に自由に作用してより強く悪影響を与えるわけである.
    
腸内の異変2
腸内腐敗
腸内腐敗の猛威.
アミン,アンモニア,フェノール類などの腐敗物質が増加する.さらにフェカペンタエンなどという変異原物質もできる.亜硝酸塩もできる.これらはタンパク質由来である.
 
これらは癌の原因物質の生成に関連する物質であり,癌促進物質でもあるといわれている.
 赤身の肉(牛肉や豚肉など)をたくさん摂取すると,ニトロソ化合物が増えることが明らかにされている.
 癌細胞はアンモニアに耐性であることもわかっている.アンモニアがあると細胞がガン化したときに正常細胞を押しのけて増殖する危険もあるのだ.
     
腸内の異変3
脂質の酸化
過酸化反応
脂質(脂肪といってもよい)の取りすぎは脂質成分の酸化の素地をつくる.脂質は酸化が酸化を呼び,過酸化脂質の増加をもたらす.この過酸化脂質はDNAの合成と細胞の増殖を促進するする.これは癌の促進になる.
 過酸化脂質から遊離するラジカルがほかの物質(芳香族アミンや炭化水素)をエポキシ化する.これは反応性が強くてDNAを変異させ,発癌を招くことが考えられている.
    
腸内の異変4
発癌物質のリサイクル

発癌物質のリサイクル
人の組織,とくに肝臓には有害物質を分解したりグルクロン酸や硫酸塩などを結合して無害にする.ところが腸内細菌のある種のものは酵素を出してその結合物質を分離させて再び有害物質にもどす,遊離させる.これがまた吸収される.つまり有害物質のリサイクルをしているのだ.
 ところが,西洋食の高タンパク高脂肪食を食べていると,腸内細菌がこの遊離化酵素を盛んにつくるようになる.当然,リサイクルが活発になる.リサイクルの中には有害なもの毒性のあるもの,発ガン性のあるものなど含まれる.
 こんなわけで西洋食はこんなところにも問題があるのだ.
    
どんな食事が
よいの
ごはん,お茶漬け

ごはんがおすすめメニュウ
ごはんを中心にした食事がよい.ごはん,野菜と海藻類の煮物,さかな料理,肉料理もまったくいけないというのではなく,ほどほどに取ることである.
 食べすぎはもちろんよくない.偏食もだめ.腸内を発酵状態に保つ気持ちで生活する.そのための食事が,ごはん中心の食事である.ごはんの量は,最低でも一日に茶碗3ばい程度,600グラムくらい食べる.いまから40年くらい前にはこの倍近く食べていたのではないか.
 お茶漬けは飲み込むので,消化が悪いというが,消化されない分たくさん大腸に到達し,大腸の発酵には有効であろう.ごはんが食べにくい人にはお茶漬けを薦めたい.そのとき抗がん性の酪酸がたくさんできるのだ.ごはん(米飯)は抗がん性酪酸の元なのである.
 お茶漬けのコマーシャルはジャラジャラと品がよくないのは,庶民受けを狙っているのかも知れないが,教養のある人にもお茶漬けの愛好者になってもらうのが得策と思ったりするのだが.
 

腸の長さ
日本人は腸が長いといわれる.そうかもしれない.日本食を食している日本人はそうかもしれない.食物繊維が腸を長くするという.動物実験でもそれは明らかにされている.
 牛や羊のような草食獣も,犬や猫の肉食性の動物よりも腸が長い野は事実だ.日本人に結腸癌が急速に増加してきたのは腸が長いところに肉料理主体の西洋食が浸透してきたからだ,という人がいる.これが真実かははなはだ疑問である.
 腸が短い(とすると)西洋人の結腸癌は減少するはずである.がそうではないのだ.アメリカでは日本の数倍も効率に結腸癌で死亡しているのだ.
 
腸の長さは生まれながらにして日本人とアメリカ人の間でちがうのではない.もし成人の腸の長さに違いが本当にあるとすると,それは離乳後の小児期からの食事が違うことに基づくことである.日本人も離乳後消化のよい食事をことさらに与え,米飯よりも麺類や菓子類やパン類を与えられて,また成長するにつれてハンバーグや焼肉などなど米飯を減らして西洋食に偏った食事を食する人の腸は短くなってきているはずなのである.
 日本で結腸癌による死亡者の腸の長さは,そうでない人に比べて短いのではないだろうか.そういう人は長い間,自身の食事の西洋化に尽くしてきた人なのだ.
 だが,長の長さだけから言えば,腸が短い方が有害物質の排せつにかかる時間は少なくてすむのだ.結局,長さが問題ではなくて食事が問題なのだ.幼少年期からの食事が米飯から離れた食事になってきていることが問題なのだ.そう考えるのが理にかなっている.

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