
この病気はいま,世界とくに先進国でもっとも関心がもたれている厄介な病気だ.
厚生省特殊難病疾患だ.炎症性大腸疾患で,若者ないし若成人がかかるという年齢制限病で長期になることが多い病気である.
わが国でも年々十数パーセントづつ患者数は増えているという.
わが国では,今5,6万人の患者がいると推測される.もっと多いのかもしれない.ひそかにしつっこいおなかの具合の悪さを気に病んでいるヒトもいるのではないだろうか. 具合がよくなったと思いきや(緩解期),またまた腹痛あり,下痢あり,血便ありと症状が激しくなり(活動期),といった具合であると,要注意である.食中毒かなと,思っているヒトもいるかもしれない.食中毒はなおるとまたぶり返すことはまずないし,粘血便(粘液と血液の混じった状態)がでることも少ない.一種の免疫学的な過剰な反応に基づく病気で,体がもつ機能が健康を害するように作用するために発生する病気である. 先進国で患者が増えている.食べ物が関係することが当然考えられるが,困ったことに何が悪いのかとなると依然として不明だ.食中毒ではないと記したが,食べものが関係するとすれば,まったく食中毒でないと否定しさることは正直問題.これとはべつに患者は乳製品は避けるようにと指摘されているので要注意だ. とくに,洋風食品でも加工食品は要注意だ.食肉加工品ハムソーセージ類,プリン,アイスクリームなどには増粘安定剤としてカラギナン(あるいはカラゲナン)が食品添加物として使用されている可能性がある.カラギナンは海草抽出物だあるので,一見安全そうであるが使用基準がきめられていないので,添加量がさかでない.なぜこの添加物が危険かと?動物に潰瘍性大腸炎つくる実験でカラギナンが使用されているのだ.いとも簡単にできる.潰瘍性大腸がだ.ヒトの病変とそっくりなのだ. このような食品添加物にまったく使用基準がないのはどうしたことだろう. |
腸内細菌が直接的にこの病気を引き起こしているのではなくて,病変あるいは症状の進展に関係していることが考えられる.しかしながら,動物実験では無菌マウスにDS(デキストラン硫酸塩)を飲ませるとヒトの潰瘍性大腸炎そっくりの病変ができる.DSは先ほどのカラギーナンに似た物質である.無菌マウスというのは体のどこにも細菌がいないマウスで,ビニールハウスの中で無菌飼料と無菌空気を送って飼育する. 実験では細菌がいるマウスよりもも病変がやや強いいという報告もあるのだ.細菌がいなくても大腸炎を引き起こす物質と遭遇すると,大腸は炎症をを引き起こすのかもしれない.こんなことから腸内に常在する細菌が直接的原因ではないのではないか. しかし,例のカラギーナンの場合には無菌マウスではうまく病変ができないというのだ(できるという報告もあるが).カラギーナンを腸内細菌が少し分解してDSのような物質にすることも考えられる.カラギーナンとDSはよく似た物質で多糖体に硫酸塩がくっ付いたようなものなのだからだ. この硫酸塩から硫化水素を細菌がつくり,その毒性が原因だという見解もある.ワインの中には酸化防止剤として硫酸塩(亜硫酸塩として)が使用されているので,それから腸内細菌が硫化水素をつくる.温泉には硫化水素温泉もあり,そんなに悪いのかと問いたい気もする. この大腸炎の大腸あるいは大便の細菌叢を調べた成績によると,全体に菌数は少ないし,細菌の種類も少ないことがわかっている.通常,大腸内は空気がない環境(嫌気性環境)である.これが嫌気性細菌の生活には不可欠なのだ.しかし,出血したりすると,酸素が腸内に提供されることになる.そのために大腸内の環境は嫌気性細菌の生育には具合が悪いことになる.それで大腸内の細菌数が減少したり,菌種の数が減少したりするのである. 腸内細菌叢にはこの潰瘍性大腸炎を予防する働きも考えらている.大腸粘膜の細胞が正常に分裂増殖繰り返して,古い細胞を新しくしている(更新という).これがスムーズに運ぶにはエネルギーが必要だ.そのエネルギー元が腸内細菌の一部の菌種がつくる酪酸という有機酸である.腸内にある細菌がつくる有機酸のうち,酢酸,プロピオン酸についで多いものである.酪酸はエネルギー源になるだけでなくて,癌細胞を自然死させたり,あるいは正常な細胞に戻す作用をもつという.さらに,最近の研究では免疫性の障害である炎症,免疫過剰反応をしずめる働きも期待されている. 酪酸は腸内細菌のうちクロストリヂウムやフゾバクテリウムというグループに属する細菌が主として生産する.「酪」は牛や羊の乳から作られる滋養がある乳製品を意味する.ぬか味噌漬が変な匂いがすることがある.これは長い間かき混ぜないでおくと嫌気性の酪酸生産菌が活発になり,酪酸ができるためである.この匂いが嫌いでぬかみそが嫌いになる人もいる.しかし,もしかしたら多少酪酸集がすくらいがよいかもしれない.酪酸そのものだけでなく,ぬか味噌漬内の酪酸生産菌もいっしょに摂取すると大腸を丈夫にしてくれるかもしれないのだ.ぬか味噌漬に限らないことだが,漬物を食べる際に洗い清めない方がよい. 病気発症のメカニズムがまだ決定的解明までにいたっていないので,治療も対症療法にならざるおえないのが現状.活性酸素抑制,炎症関連サイトカイン遊離抑制,アラキドン酸という脂肪酸の酸化抑制などが治療の標的だが,その薬剤は高価らしい.たとえば5ASAという薬剤と副腎皮質ホルモンの併用が一般的である.活性酸素は白血球によってつくられるのでこの白血球を取り除くような治療法も考えられている. 酪酸を浣腸することが試みられているが,一定した改善は見られない.潰瘍性大腸炎では酪酸を酸化して利用する能力が低下しているので,酪酸が患者の誰でも効果があるというわけにいかないことも考えられる.酪酸はデンプンからできやすいので,デンプン特に生の消化されにくいもの,たとえばジャガイモのすりおろしを食べるのが,効果を発揮するのではと推測している.腸内細菌叢が混乱していて,酪酸生産菌の働きが落ちていることが考えられので,これらの細菌を活性化する食品の考案,研究を急がなければならないのである. 腹の調子が悪いといっても潰瘍性大腸炎の場合は,ほかの腸炎の対応の仕方をすると失敗するのでは.たとえばオリゴ糖が整腸作用を示すといってもこの病気には要注意である.潰瘍性大腸に効果があったというデータはない.むしろ悪くなるというデータが昨年デンマークのオレセンらが発表している.オリゴ糖は消化吸収されないので大腸で発酵される.そのときに刺激性の強い有機酸の類が多量にできて症状をむしろ悪化することが推察できる. 日常の食生活でデンプン質と食物繊維の植物性食事を欠かさないこと.この病気は腸内の酪酸が顕著に減少することがわかっている.酪酸はデンプンや不溶性の繊維質から腸内細菌が作る.アミノ酸からもつくるので動物性の食物繊維も有効かもしれない.しかし,食事内容はバランスを失ってはいけない. |
![]() トップ |
