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腸管感染防衛機構

ビフィズス菌防衛系とクロロホルム耐性菌防衛系
前者は乳児の防衛系統であり,後者は大人の防衛系統である

感染症対策は,腸内細菌,食べもの,体の免疫機能の三者協同の総合防衛機構に依存している.
赤ちゃん時代は病原菌の侵入が脅威である.赤ちゃんの感染症対策は実にうまくできている.その一つは,赤ちゃんの食べものである
母乳だ.母乳の中にはさまざまな防御因子が含まれている.たとえば,お母さん由来の抗体,ラクトフェリン,ラクトペルオキシダ−ゼ,脂肪酸,オリゴ糖,糖タンパク質などである.体自体は免疫力は弱体である.胃酸だってすくない.だから母乳だのみなのだ.

だが,赤ちゃんの腸内ではビフィズス菌と母乳が野球で言えば大魔神佐々木投手と女房役の名捕手のごとく活躍している.これがビフィズス菌防衛系である.ビフィズス菌(ビ菌とよぶ)だけいてもだめだ.名捕手の母乳がひかえてビ菌は力を存分に発揮するのだ.

なぜかって?母乳は上記のように各種の有効因子をもつだけでなくて,母乳はビ菌によって発酵されて,腸内が著しく酸性にになるのだ.人工乳も酸性になるが,母乳は酸を中和する力が弱いのだ.だから,人工乳よりもより酸性つまりすっぱくなるのだな.これがよいのだ.病原菌は酸に弱いからだ.酸性のもとつまり,腸内を酸性にする物質は酢酸と乳酸である.

一方,おとなでは,ビ菌以外に重要な感染防衛組織ができる.これがクロロフォルム耐性細菌防衛系だ.こんなことを知っている人はごく限られているのだよ.クロロホルム耐性細菌(CRBとよぶ)は,麻酔薬のクロロフォルムに耐性の腸内細菌ということだ.これは多種多様なクロストリヂウムという細菌仲間からなる.こんなことを知るだけで腸内細菌の世界に一歩も二歩もいや百歩も近づいたといってもよい.

腸内は実によくできているのだ.これをうまく活かすことが腸力の増強になる.このCRBたちは腸内だけでなく土壌にもいるのだ.動物やひとの腸内と土壌の間を循環しているといってもよい.むかしは大便だって生活の周辺近くの草原や川原や田畑に排泄されていたのだ.クロロホルムに耐えるということは環境にも耐えるということでもある.

だから,土と人や動物の間を循環することができるのだ.ところが,現在は水洗便所だ.そのためにこの循環がうまくいかなくなったのだ.畑には農薬である.これでは細菌はたまらない.CRBたちも当然苦難である.腸内のCRBたちが減ってくること必定だ.わかりますか.

CRBたちが感染防衛組織としてどうして重要かというと,離乳後,CRBが腸内の大腸菌や腸球菌などを強く抑制することが明らかにされたからだ.これは病原大腸菌O157も抑制するということ意味しているのだ.だから,きれい好きで,戸外での土遊びを敬遠すると,CRBとも疎遠になるのは当然である.
しかしこれが現実でもある.


CRBだけでいいかというそうではないことは,いうまでもない.CRBを育てるためにご飯や野菜類をたくさん食べることが大切である.年取ると食べるものが偏ったり,量が減ったりする.これでは腸内細菌も貧困状態になる.CRBもどうようである.お年寄りにはお茶漬けをすすめたい.これなら比較的容易に食べられる.茶漬けは消化が悪いというが,それがかえって腸内細菌にとってはいいのだ.歯が悪くなって噛めないときには野菜ミキサーでジュースにしてもらうとよい.栄養士は噛め噛めというかも知れないが,気にしないことです.
お年寄りでは腸内の悪玉菌が増えるというのもCRBが弱るからだ.ビフィズス菌だけが善玉ではないのだ.年取るとビフィズス菌が減少するというのは実はご飯や野菜の摂取が減少することと関係することが考えられるが.これはご飯や野菜の摂取量が減ると,それを利用して分解してオリゴ糖をつくる腸内細菌,CRBやその他の菌,が減るからなのだ.細菌ネットワークが機能するように食事を考えなければならないのだ.食事が偏ると腸内細菌のネットワークが機能しなくなっていくるのだ.お年寄りは消化力が弱いから消化のよいものを与えることは大切であるが,同時に消化に悪いものも与えて腸内細菌ネットワークを元気付けることが欠かせないのだ.栄養士のかた介護にあずかる人はこの点を十分理解してください.

手術すると静脈栄養になることが多いが,このような場合にも腸内細菌を丈夫にするために,できるだけ早くデンプンや繊維質を食べさせたり,食べられないときには経腸的(腸管内に直接に与えること)に与えることが回復にも早いし感染にも強いというのだ.これも上記の理屈で説明することができる.


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