
私たちの腸内には100種類以上もの細菌が生活している.
100種類もいれば,腸内で作り出すものもそれ相応にたくさんあっても不思議ではない.
そのうちの有機酸についての話である.
今日の話はちょっとかたいが,教養がつく話
![]() 有機酸の働き (8)貧血予防 |
ヘモグロビンは血液の赤い色の元だ.ヘモグロビンは肺で酸素と結びついて心臓に戻り全身に運ばれて細胞の活動を助ける.心臓が停止して死ぬというのは酸素の供給が停止することであることは皆さん とっくにご存知だ.女性は貧血におちいることが多い.これはヘモグロビンの不足のためである. 腸内で細菌がつくるプロピオン酸,酪酸,吉草酸はヘモグロビン元であるガンマ-グロビン合成を促進するという.このグロビンは胎児ヘモグロビンの形成に利用される. ヘモグロビンはヘムという赤い色素成分で酸素を結合する分子だ.これとぐろビンからヘモグロビンができる.胎児ヘモグロビンは通常のヘモグロビンよりも酸素との親和性が強いので酸素の運搬には適しているとも言えるのだ. |
![]() 有機酸の働き (9)エネルギー |
乳酸やコハク酸が腸内ではたくさんできるのだが,どうもその役割はあまりよくわからない.もちろん,酸であるから,腸内を賛成に保つのに役立つ.腸内を酸性に保つことでその他の有機酸の働きを補助することはある.たとえば,短鎖脂肪酸(揮発性脂肪酸ともいう)は酸性で病原性細菌(赤痢菌,サルモネラ,病原大腸菌など)の感染防御に役立つが,乳酸やコハク酸は普通の酸性(pH6.0程度)ではからっきしだめなのだ.その点,短鎖脂肪酸の酢酸,プロピオン酸,酪酸にはかなわない.しかし,ニワトリやネズミ,ブタも,胃の内部にたくさん乳酸菌がいて乳酸を作っている.この場合にはpHが非常に下がって病原菌の感染に役立つ.またヒトでも腸内が酸性になれば腸内発癌酵素の働きを抑えるのには役立つので捨てたものではないのは当然である. 体内では乳酸は筋肉疲労の元であるが,腸内ではその他の細菌のエネルギーの源になる.腸内には糖質を利用できないが有機酸を利用する細菌がたくさんいるのだ.コハク酸も同様に考えられる.だから無駄ということはないのだ. |
![]() 有機酸の働き (10)アミノ酸合成 |
腸内では細菌が有機酸つくるが,同時にアンモニアやアミンのような窒素化合物もつくる.これらの物質はからだに有害になることが多い.ところが,腸内細菌はこれの窒素物質と有機酸からアミノ酸を合成して,さらにはビタミンを合成して利用する.ヒトにとっても役立つ. 腸内細菌は分解すると同時に,合成も行っているのだ.まさにこれは細菌による腸内バイオリサイクルである.分解と合成が両立してバランスがとれていれば,健康にとってもいうことなしである.しかし,偏食や暴飲暴食ではそのバランスはくずれることになる. |
![]() 有機酸の働き (11)過敏症の抑 制 |
有機酸がからだの免疫学的な機能については,研究は黎明期の段階で,有望な分野である.エイズのウイルス抗原に対する認識を高める働きが,酪酸にはあることは前に発表されている. 今年,さらに炎症反応にかかわる免疫に不反応性(anergyアネルギー,アレルギーの反意語)をもたらすという研究が発表された.酪酸の誘導体,たとえば酪酸のエステルとかアミド化合物を用いて実験をしている.酪酸そのものでも,免疫反応の連絡因子であるサイトカインの生合成に影響するのだという研究も最近出てきた. 体の過剰な反応を抑えると潰瘍性大腸やクローン病を抑えることも可能になる.この分野から新展開が花開き,アレルギーの予防や過敏症性の炎症の予防と治療が可能になるかも知れないのだ. |
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