'08/7/23
液状化対策  目次
吉見 吉昭

 一般に,耐震設計では,不確定な地震を相手にするため,構造的冗長性(リダンダンシー)と材料靭性(ダクティリティー)を兼ね備えた“ねばり強い”構造物が必要です。加速度200ガルまでなら耐えられても,220ガルで崩壊するようでは困るからです。このような考え方は,もう一つの不確定要素と言える地盤をも対象とする液状化対策では,なおさら重要です。地盤改良,基礎構造,または両者を組合せて,ねばり強いシステムを構築するように努めるべきです。それでも,絶対確実・万能・経済的な液状化対策は存在しないので,リスクとコストを天秤にかけて決める保険のようなものと考えてください1)

 対策としては,地盤の液状化抵抗を増大させる対策と,地盤はそのままで基礎構造物を強化する対策に大別できます。多種多様な工法がありますが,ここでは,主なものだけを紹介します。

動的締固め工法

 ゆるい砂の改良には,振動または衝撃による動的締固め工法が有効ですが,その理由は,粒子同士を押し付ける力(有効応力)をいったん解除して摩擦を切り,粒子が容易に動けるようにして,密に詰めることができるからです。しかし市街地では騒音・振動が,既設構造物近傍では土圧が問題となります。


低振動・低騒音地盤改良

 一方,市街地で振動・騒音が問題となったり,既設構造物近傍で土圧が問題となったりする場合は,混合処理,薬液注入,不飽和化,ドレーンなどの工法が使われます。神戸港の突堤上にある某ホテルでは,杭を取り囲むように井桁形に設けた混合処理土の壁が,兵庫県南部地震の際,液状化による被害の防止に有効であったと言われています。

液状化による被害形態の例とべた基礎べた基礎

 べた基礎は,『上部構造の広範囲な面積の荷重を単一の基礎スラブまたは格子梁3)と基礎スラブで地盤に伝える基礎』と定義されていますが4),小規模建物で格子梁に相当するように見える布(ぬの)基礎には,出入り口の切り欠きや換気口がありますので,一体構造物としての信頼性に問題があります。したがってここでは,『単一の鉄筋コンクリートのスラブ(板)』だけを対象とすることにします。建物の重量は,主として柱に集中しますが,地盤からの反力は,地盤の堅さに応じた形で分布しますので,べた基礎は,十分な曲げ抵抗を持つ必要があります。特に,地盤が液状化した場合は,右図のように,砂が局部的に陥没したり,流出したりする恐れがありますので,さらに大きい曲げ抵抗が必要です。また,建物が全体として傾斜した場合は,ジャッキアップして建て起こすことができるようにしておけば好都合です。試算しますと,べた基礎の厚さを
220 mm とし,直径13 mm の鉄筋(D13φ)を縦横200 mm 間隔のダブル配筋としておけば,片側が全長にわたって幅1.9 m 流出しても,また,直径数bの陥没が起っても,べた基礎が被害を受ける恐れはなく,かつ,建物はそのままにしておいて,ジャッキアップによって容易に建て起こすことが可能です5),6)

杭基礎

 建物が液状化しない地層まで届く杭によって支持されていても,液状化によって杭が壊れ,それに伴って建物が傾斜などの被害を受けることがあります7),8)

 杭基礎による液状化対策には,地盤改良を併用する場合と,併用しない場合とがあります。前者は,重要性の高い構造物,または液状化層が流動する恐れがある場合が対象となるでしょう。いずれの場合も,地盤・杭・構造物からなる系の地震時の挙動を予測するには,非常に高度な解析を行う必要があります。したがって,鋼材などの靭性の高い材料の杭を使って,ねばり強いシステムを構築することが望ましいと言えます。しかし経済的な制約もありますので,これについても,設計者と施主がリスクとコストの兼ね合いについて共通の理解を持つことが必要でしょう。

液状化層を利用した免震設計(別ページ)


  1. 吉見吉昭:砂地盤の液状化(第二版),技報堂出版,1991吉見吉昭・福武毅芳:地盤液状化の物理と評価・対策技術,技報堂出版,2005
  2. 吉見吉昭:「ねばり強さ」に関する液状化対策の評価基準,土と基礎1990.6
  3. 格子状に縦横に連結した梁で,大型建物では,柱の足元をつなぐ鉄筋コンクリート梁として構築されます。
  4. 日本建築学会:建築基礎構造設計指針2001
  5. べた基礎でない場合は,ジャッキアップの前に建物を補強する必要がありますので,手間と費用がかかります。
  6. 吉見吉昭・桑原文夫:小規模基礎のためのべた基礎―主として液状化対策として,土と基礎1986.6
  7. 時松孝次:地盤および基礎構造から見た建物被害,土と基礎1996.2
  8. 杭が壊れる位置は,上部と,液状化層の底部のように地層の硬さが急に変る場所であることが多いようです。

地盤と建築基礎
 液状化発生のメカニズム 液状化と砂の密度 液状化発生の予測法