HOME
索引に戻る


ジャン・ヴォートラン


Vautrin, Jean (1933 - )



略歴 




 フランスの小説家。1933年5月17日、ロレーヌ地方、パニー=シュル=モーゼル生れ。本名ジャン・エルマン (Jean Herman) 。

 ブルゴーニュ地方のオセールで高等学校を卒業したのち、パリ映画高等学院に入学。 1955年に卒業したのち、ボンベイ大学でフランス文学の講義をしながら『カイエ・デュ・シネマ』などに寄稿した。

 1956年から、ロベルト・ロッセリーニ(「無防備都市」「戦火のかなた」「ドイツ零年」などの監督で知られるイタリア映画界の大家。イングリット・バーグマンと結婚した)、ヴィンセント・ミネリ(「バンド・ワゴン」「巴里のアメリカ人」「若草の頃」などの監督で知られるアメリカ映画界の巨匠)、ジャック・リヴェット(「修道女」「美しき諍い女」「ジャンヌ」などの監督で知られるフランス映画界の重鎮)らの助監督を務め、1960年に初監督作として短編映画『アクチュア・ティルト』を撮る。
 その後、監督としての代表作には、「さらば友よ」、「ジェフ」などがある。

 小説家としては、1973年、〈セリノワール〉叢書より、"A Bulletins Rouges" (赤い投票)でデビューする。以後、いわゆる「ネオ・ポラール」の旗手として活躍した。とくに〈セリノワール〉をはなれマザリヌ社から1979年4月に刊行した『鏡の中のブラッディ・マリー』でその才能を見事に開花した。

 その後、作家として活躍し、多くの小説賞を受賞する。『鏡の中のブラッディ・マリー』では1980年にミステリ批評家大賞、短篇集 "Patchwork" では83年にドゥー・マゴ賞、短篇 「ベビー・ブーム」で86年のゴングール短篇賞、やはり83年には "La Vie Ripolin"(エナメルの人生) で文藝家協会賞、そして"Un Grand Pas le Bon Dieu" で89年に(念願の)ゴングール賞を受賞する。



著作 


原題(出版社)発表年訳者/邦題/出版社/出版年備考
A Bulletins Rouges (Gallimard, SerieNoire #1611) 1973  
Billy-Ze-Kick (Gallimard, SN #1674) 1974高野優訳『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』(草思社 '95) 
Mister Love (Denoel) 1977  
Typhon Gazoline (FleuveNoir, Engrenage#7) 1979  
Bloody Mary (Mazarine)1979高野優訳『鏡の中のブラッディ・マリー』(草思社 '95) 
Groom (Gallimard, CarreNoir #400) 1980高野優訳『グルーム』 (文春文庫 2002) 
Canicule (Mazarine)1982  
Patchwork (Mazarine) 1983 *Recueils de Nouvelles (Collection of Short Stories)
Baby-Boom (Mazarine) 1985 *Recueils de Nouvelles (Collection of Short Stories)
La Vie Ripolin (Mazarine)1986  
La Dame de Berlin (Fayard)1988佐藤公彦・坂井潤訳 『ベルリン強行突破』 (新潮文庫)※ダン・フランクとの共著 *avec(*with) Dan Frank
Dix-huit Tentatives Pour Devenir un Saint (Payot) 1988 *Recueils de Nouvelles (Collection of Short Stories)
Un Grand Pas le Bon Dieu (Grasset) 1989 Le Livre de Poche('91)
La Temps des Cerises (Fayard)1990 *avec(*with) Dan Frank Pocket('93)
Courage, chacun (Grasset)1992  
Les Noces de Guernica (Fayard)1994 *avec(*with) Dan Frank Pocket('95)
Symphonie Grabuge (Grasset)1994  
Mademoiselle Chat (Fayard)1996 *avec(*with) Dan Frank
Les aventures de Boro (Fayard) 1996 *avec(*with) Dan Frank
Le roi des ordures (Fayard) 1997 Le Livre de Poche ('98) 
Un monsieur bien mis (Fayard) 1997  
Le cri du peuple (Grasset) 1999 Le Livre de Poche (2001)
Boro s'en va-t-en guerre (Fayard)2000 *avec(*with) Dan Frank
L'homme qui qssassinait sa vie (Fayard) 2001  
Le Journal de Louise B (Robert Laffont) 2002  
Adieu la vie, adieu l'amour (Robert Laffont) 2004  




エッセイ、評論、コミック、(不明本)ほか
Essay, Critique, Cartonne, ? and etc.


原題(出版社)発表年訳者/邦題/出版社/出版年備考
Bloody Mary (Glenat) 1983 *Cartonne de Jean Teule (Illustrations)
Robert Doisneau Doisneau - Vautrin : Les Années 50 (Cercle d'Art) 1996 Photographie texte de Jean Vautrin
Christian Delécluse Untel, père & fils (Cercle d'Art) 1998 Photographie texte de Jean Vautrin
J'ai fait un beau voyage - Photo-journal 1955-1958 (Cercle d'Art) 1999 *Photographie contemporaine ? 
Trains de vies (La Martinière ) 1999 *Photographie contemporaine ? 
Histoires deglinguees (Fayard) 1999 * ? 
Le Cri du peuple, tome 1 : Les Canons du 18 mars (Casterman) 2001 *Cartonne de Jacques Tardi (Illustrations),  
Le Cri du peuple, tome 2 : L'Espoir assassin (Casterman) 2002 *Cartonne de Jacques Tardi (Illustrations),  
Le Cri du peuple, tome 3 : Les Heures sanglantes (Casterman) 2003 *Cartonne de Jacques Tardi (Illustrations),  
Sabine Weiss (La Martinière) 2003 Sabine Weiss *Photographes  



邦訳短篇 
Short Fiction /Japanese Translation


原題(出版社)発表年訳者/邦題/出版社/出版年備考
Douze petits boigneurs et qui savaient parler  高野優訳「十二個のおしゃべりをする人形」(ミステリマガジン '86-04) 
Baby Boom  高野優訳「ベビー・ブーム」(ミステリマガジン '96-08) 
Zorro Parano  高野優訳「夢見がちのヒーロー」(ミステリマガジン '97-03) 



著者に関する主な評論そのほか 
Critical Study and Essay about Jean Vautrin



原題(出版社)発表年訳者/邦題/出版社/出版年備考
Entretien de Jean Vautrin
avec Claide Mesplède 
2002  〈Temp Noir〉no.6 ※メスプレードによるインタビュー



監督・脚本作品 
Direction & Screenplay


原題/邦題公開年原作(原作者)
 ジャン・エルマン名義監督作品については、現在調査中。



映像化作品 
Screens


原題/邦題公開年原作(原作者)
Canicule
『狼獣(けだもの)たちの熱い日』(仏・劇場未公開・ビデオ発売)
1984"Canicule"
 監督/イヴ・ボワッセ
 共同脚本/イヴ・ボワッセ、ミシェル・オーディアール、ジャン・エルマン(ジャン・ヴォートラン)、セルジュ・コルベル、ドミニク・ルーレ
 出演/リー・マーヴィン、ミウミウ
Billy Ze Kick
(仏・未公開)
1985"Billy Ze Kick"
 監督/ジェラール・モルディヤ
 共同脚本/ジェラール・ゲルラン、ジェラール、モルディヤ
 出演/フランス・ベラン、ザブー



日本語文献について 


 訳書巻末の解説、『ロマン・ノワール』などを参考のこと。
 



著者情報 



● 2002年1月に文春文庫からめでたく『グルーム』が刊行された。本ページの略歴そのほかは、訳者の高野優氏による解説、ならびに著者情報を参考にしたものである。深謝。

●『ユリイカ 詩と批評』特集 「セリーヌの世界」(94-10)に、芥川賞、三島賞受賞者であり、明治大学助教授でもある作家の堀江敏幸氏が、「セリーヌとロマン・ノワールのための序章」と題した一文のなかで、ジャン・ヴォートランにおけるセリーヌの影響を指摘している。処女作"A Bulletins Rouges"(赤い投票)の結末に近い章の冒頭には、セリーヌへのオマージュがあからさまに埋めこまれているというのだ。
 『現代思想』(95-02)でやはり堀江氏は、「コンクリートの氷野−−ロマン・ノワールと郊外」を執筆している。(その後、これらのエッセイは、堀江敏幸『子午線を求めて』(思潮社 2000)に収録された)

 ヴォートランにおける〈郊外〉とは、すなわちコンクリートの壁で囲まれた団地社会のこと。非人間的で画一化された檻としての〈団地=郊外〉なのである。
 これはジャン・ヴォートランのみならず、〈ノワール〉を語るうえで外せない用語だろう(と、個人的に考える)。
 堀江敏幸氏は、次のように指摘している。
〈郊外、移民、失業、若者の軽犯罪。HLM、あるいはその音声をそのまま表記して《acheleme》とつづられる低家賃高層住宅を舞台にこれらを取りまとめるのが、現在フランスのロマン・ノワール、ことにネオ・ポラールの名で一括される作品群
の骨格である。隠語や俗語をふんだんに採り入れた文体と、冗長な心理描写を抑えた独自のトーンで、これまでの古典的なミステリとは一線を画したロマン・ノワールの歴史のなかでも、とりわけ八〇年代に入って爆発的に人気を得たネオ・ポラールは、J・P・シュヴェイアウゼール(引用者註:『ロマン・ノワール』(白水社文庫クセジュ #721)の筆者。この本の序文を参照のこと)が指摘するように楽観主義を捨て去り、自嘲気味に現代社会の腐臭をかぎつけるというロマン・ノワールの特質を、さらに細かく、局所的に拡大したものである。そこには移民政策やパリ郊外の都市計画の破綻、底の見えない不景気などが基調となった、希望のない世界がひろがっている。……。〉
● 現在、アマゾン・コム フランス
Amazon.fr のミステリ・ページ、 "Policier et Suspense" に、ジャン・ヴォートランのインタビューが載っている。
 (追記)フランスの探偵小説誌〈Temp Noir〉第6号に掲載されてるヴォートランの記事は、このインタビューの再録である。(Feb.2004)

● また、ヴォートランの作品として、写真集に文章を書いているものの他にも小説以外の本が何冊かあるようだ。詳しい全貌は分からなかった。
 個人的には、評論集、"Romans noirs" をぜひとも読んでみたい。

 間違った情報を載せているかもしれないので注意。それからフランス語の綴りの間違いも。

● ジャン・エルマン(ヴォートラン)監督作品 ”Adiue L'ami”(「さらば友よ」)の原作、セバスチャン・ジャプリゾ『さらば友よ』榊原晃三訳(ハヤカワ・ミステリ#1074)は、もともとジャプリゾとジャン・エルマンに加えセルジュ・シルベルマンの三人が1967年にカンヌで出会い、3日間、話しあったことから生まれた作品らしい。ジャプリゾは、エルマンの脚本からト書き部分を削って、作品に仕立てたのだ。

● また(今回、まとめられなかったが)、ヴォートランが関わった映画脚本には、デイヴィッド・グーディス "Street of the Lost" の映画化 "Rue barbare "などがある。
 クロード・ミレール監督、ジョン・ウェインライト原作("Brainwash")で、ヴォートランも脚本に加わった映画作品"Garde a vue" は、『レイプ殺人事件』としてDVD化されていた。それにしてもひどい邦題。ちなみに、この作品のリメイク"Under Suspicion" (2000) がある。



蛇の足 

 関連事項、私的な興味、どうでもいいこぼれ話。
その1 
 
 
update
   一部改訂 02/29 2004
   一部改訂 02/13 2004
蛇足その1追加 02/10 2002
 一部改訂 01/10 2002
01/08 2002
1st. up 01/03 2002


TOP