| クレジットサラ金問題の現場から |
事例1の1.真面目に返済、実は払い過ぎ!
(債務不存在確認訴訟事件)
破産は絶対にしたくない!
どうみても支払不能の状態であるにも関わらず、破産の悪いイメージをとことん嫌い、「焼け石に水」であることを承知で調停手続を取る場合も無くはありません。
ただ、そのようなケース、もう少し事情をよく聞いてみると、まじめな性格である依頼者が多く、相談に来るまで、一回も返済を滞ったことがない人もいます。
さて、サラ金業者が、利息制限法を大きく超えた高金利(28%から40%)を取っていることは先にも記しましたが、その高金利を取るには厳格な要件を充たしている必要があります。
その厳格な要件を充たして、はじめて利息制限法を超えた高金利を合法的に徴収することができるのですが、多くの業者はその要件をしっかりと守ってはいません。
ということは、業者は今までの取引を、利息制限法所定の金利(18%)に引き直して計算する必要があり、引き直した結果、実は払いすぎている、ということも有り得るのです。
本件の依頼者は、まさに典型的なまじめな人であり、ある業者に対しては10年以上も続けて延々と支払いを続けていたことが判明しました。
ざっと計算しても、数十万の過払い金がありましたが、それを請求する(不当利得返還請求)のは忍びないということで、債務不存在確認の訴えを提起することで落ち着いたわけです。
ところが、よくあるケースでありますが、家族に内緒での借入であったため、関係書類はすべて処分してしまってあり、返済をした際の明細書が一切ありません。
これには悩みました。証拠書類が手元にないということだからです。
とりあえず、早急に資料を集めるべく、各業者に以下の書面を送付し、資料開示を請求しました。
債権者各位
文書送付のお願い
拝啓 私は、貴社から債務を負っている佐々木恵子(仮名)です。
貴社に対しましては、日頃から債務を弁済しなければならないと考えており、これまで、貯金をおろしたりして何とか返済を続けて参りましたが、とうとうその貯金も底をついてしまいました。
他にも多額の債務を負っていますので、各社に対するこれからの返済につき苦慮しております。
つきましては、今後の手続につきましては司法書士の小澤吉徳氏に相談しておりますので、左記書類を直接小澤吉徳氏に送付いただきますよう、宜しくお願い申しあげます。
1、金銭消費貸借契約書(証書書換前を含む)
2、貴社との貸金についての明細(貸付年月日、貸付元金、約定利息、支払期限)及び返済についての年月日、金額などを記載したもの(証書書換前を含む)
平成*年*月 日
静岡市
佐 々 木 恵 子(仮名)
当職は、静岡市****、佐々木恵子氏より相談を受け、同氏の借入金の法的整理手続につき検討しているところであります。
つきましては、右手続きのため借入金の全容を確認する必要があり、右佐々木恵子氏の依頼どおり、書類を当職まで送付いただきますようお願い申しあげます。
各債権者におかれましては、佐々木恵子氏の窮状をご賢察の上、今後の手続にご協力いただきますようお願い申しあげます。
平成*年*月 日
静岡市****
司法書士 小 澤 吉 徳
054−***−****
ところが、このお願いに対して、半分の業者は、全くの無視、応えてくれた半分の業者も、最終の借換え後の書面しか送ってくれませんでした。
ここでまた悩みました。
結局、いざとなったら銀行の元帳、業者の帳簿を提出してもらえば全ては判明するだろう、ということで、合計で6社ほどありましたが、4社に絞って訴えを提起しました。
以下に、訴状をあげますが、極めてシンプルなものになっています。
@被告は、大阪に本店を置く、大きなサラ金業者です。
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訴状 静岡市 原 告 佐 々 木 恵 子(仮名) 大阪市 被 告 ***株式会社 右代表者代表取締役 **** 債務不存在確認の訴 訴訟物の価格 金五十万円 貼用印紙額 金四千六百円 請求の趣旨 一、原告の被告に対する金銭消費貸借に基づく債務の一切存在しないことを確認する。 二、訴訟費用は被告の負担とする。 との判決を求める。 請求の原因 一、被告は原告に対し、静岡市****番地の二**ビル五階の被告営業所において平成*年不詳金五十万円を貸付け、現金を交付したと主張し、支払を請求している。 二、被告は、原告の文書開示請求に応じないため、金銭消費貸借契約の内容並びに、被告が原告に対して請求している金額についての詳細及び取引経過については、一切不明である。 三、しかし、原告は、昭和**年に被告と融資限度額金八万円の金銭消費貸借契約(ローン基本契約)を取り交わして以来、数回に渡る証書の書き換えを行い、平成*年には、融資限度額金五十万円とする金銭消費貸借契約(ローン基本契約)を取り交わし、合計*年間にも渡って、原告は、被告が一方的に提示した利息制限法所定金利違反の金員を被告に対して支払い続けており、これを所定金利に引き直して利息及び元本に充当すると、原告は被告に対する借入金全額を既に弁済している。 四、よって、原告の被告に対する被告主張の債務は存在していないのであるから、その旨の確認を求める。 証拠方法 必要に応じて提出する 添付書類 一、会社登記簿謄本 一通 平成*年**月**日 右原 告 佐 々 木 恵 子 大阪簡易裁判所 御中 |
良く見てもらえば分かるように、この訴えは、被告の本店所在地である大阪に提起しています。何故?と思われる方は多いと思いますが、静岡簡易裁判所の書記官に、「静岡に管轄があることを疎明する書面が無ければ、原則として受理できない。」と言われてしまったからです。
この取扱いは、おかしいと思いますが、受理されなければ、依頼人が困ってしまいますので、渋々、大阪へ郵送したわけです。
もちろん、静岡へ移送してもらうための申立書も、以下のとおり同封しました。
2,3日後、大阪の簡易裁判所から電話がありました。
「これは、静岡の事件ではないか、何故、大阪に出すのか?」という電話です。
これでは、私の依頼人はたらい回しです。
事情を説明したところ、「それは静岡での事件ですね。一応は受理しますが、静岡へ移送するような形になるかもしれませんよ。」とのこと。
また、訴状を一部訂正してほしいとのことでしたので、後日以下のように訂正申立をしました。
静岡の管轄であることをことさら強調するような訂正になっています。
訴状一部訂正の申立書
原 告 佐 々 木 恵 子
被 告 ***株式会社
右当事者間の御庁平成*年(ハ)****号債務不存在確認事件について、原告は次のとおり訂正いたします。
記
訴状中、請求の原因第一項を、
「被告は原告に対し、静岡市****番地の二***ビル五階の被告営業所において平成*年不詳金五十万円を貸付け、現金を交付したと主張し、右義務履行地である右営業所においてその支払を請求している。」
に訂正いたします。
平成*年*月**日
右原 告 佐 々 木 恵 子
大阪簡易裁判所 御中
次が、訴状提出と同時に申し立てた移送の申立書です。
業者によっては、営業所所在地ではなく、本店所在地である東京、大阪といった大都市で訴訟を提起するところがあります。
契約書に小さな文字で、管轄裁判所の合意の旨がうたわれていることを根拠にしていると思われますが、訴えられた方にしてみれば、50万円に満たない訴訟で東京や大阪に行くほど余裕はありません。
一方、業者の多くは、全国各地に営業所を擁し、多額の利益を出しているのですから、極めて不公平であるといわざるを得ません。
移送の申立
原 告 佐 々 木 恵 子
被 告 ***株式会社
右当事者間の平成*年( )第 号債務不存在確認事件について、左のとおり申立をします。
平成*年*月**日
原 告 佐 々 木 恵 子
大阪簡易裁判所 御中
記
申立の趣旨
本件を静岡簡易裁判所へ移送する。
との裁判を求める。
申立の理由
一、本件においてその不存在の確認を求めている原被告間の金銭消費貸借契約は、原告が、静岡市***番地の二**ビル五階の被告営業所から借り入れた金員について締結されたものであると考えられるが、現在も右営業所は営業を続けている。
一方、原告は、借入当時も現在も静岡市に居住している。
なお、原告は、本件訴訟においては、数回に渡る証書の書き換えを行っていることから、その金銭消費貸借契約の成立自体をも争う予定であり、今後、数回の口頭弁論期日を重ねることとなることが予想される。
二、ところで、右金銭消費貸借契約について、原被告で合意管轄の定めがなされていたか否かは、原告が契約証書を被告に差し入れてしまい、また、被告が原告の文書開示請求に応じないため不明である。
さて、原告は被告に対し、被告が指定した口座に振り込むという方法により、*年間以上にも渡って返済を続けてきたわけであるが、受取証書の交付を一切受けていないため、本件金銭消費貸借契約が前記営業所での取引であることを証明することが出来ず、やむをえず被告の本店所在地に訴えを提起したものである。
本件訴訟がこのまま御庁に係属するとなると、原告が御庁に出頭するためには往復一日間の出張が必要となり、多額の費用も必要となってくるため、原告の被る損害は甚大である。
三、一方、被告は、全国に営業所を擁する企業であり、全国各地で支払い遅滞者を有していることが予想され、各地の営業所でこれに対応しているものと思われる。そして、原告の住所地にも被告営業所が存在している。
また、本件においては、被告が本来遵守するべき、貸金業の規制等に関する法律に規定されている書面の交付を原告に対して行っていれば、前記営業所内の取引であることを証明することが出来、静岡簡易裁判所に提訴することが可能だったわけである。
しからば、本件訴訟については、静岡簡易裁判所において審理していただくのが、原被告の利益考量としては妥当であると思料するものである。
四、よって、原告の損害を避けるため本件を静岡簡易裁判所に移送せられたい。
数日後、大阪の簡易裁判所から、電話があり、予想通り移送の決定を出すとのこと。当然といえば当然ですが、ほっとしました。
また、移送決定についての請書及び抗告権の放棄を書面でほしいと言われましたので、以下の上申書及び請書を郵送しました。
即時抗告権放棄の上申書
原 告 佐 々 木 恵 子
被 告 ***株式会社
右当事者間の平成*年( )第 号移送の申立事件について、原告は、移送決定に対する即時抗告権を放棄いたしますので、ここにその旨上申いたします。
平成*年*月 日
原 告 佐 々 木 恵 子
大阪簡易裁判所 御中
請書
原 告 佐 々 木 恵 子
被 告 ***株式会社
右当事者間の平成*年( )第 号移送の申立事件について、原告は、移送決定の告知を受けましたので、本書をもってその旨上申いたします。
平成*年*月 日
原 告 佐 々 木 恵 子
大阪簡易裁判所 御中
さて、業者はどのような反応を示すだろうか、争ってくるだろうか、不安と期待が錯綜した複雑な気持ちでしたが、数日後、直接当事務所へ電話が入りました。
「債権を放棄するから、訴えを取下げてほしい。」
あまりにあっさりした答えに拍子抜けしましたが、それではと、下記確認書に印鑑をもらい、それを確認できたところで訴えと移送の申立(実際に決定がおりる前でしたので)の両方を取下げることにしました。
登録番号 近畿財務局長(5)第****号
確認書
(債権者)甲 ***株式会社
(債務者)乙 佐 々 木 恵 子
平成*年*月**日現在、甲が乙に対し有する債権額金491、739円について、次のとおり合意し、確認する。
1、甲は、本日をもって、乙に対する上記債権を全額放棄し、これによって、甲乙間には何らの債権債務も請求権も存しないこと。
2、乙は甲に対し、今後、不当利得返還請求権を行使しないこと。
3、本書を2通作成し、甲、乙記名押印の上各自その1通を保持すること。
平成*年*月**日
甲 印
乙 印
訴の取下書
原 告 佐 々 木 恵 子
被 告 ***株式会社
右当事者間の御庁平成*年(ハ)****号債務不存在確認事件は、被告がその債権を全額放棄しましたので、訴えを取り下げます。
平成*年**月 日
原 告 佐 々 木 恵 子
大阪簡易裁判所 御中
移送の申立の取下書
原 告 佐 々 木 恵 子
被 告 ***株式会社
右当事者間の御庁平成*年(サ)****号移送申立事件は、被告が、右当事者間の御庁平成*年(ハ)****号債務不存在確認事件につき、その債権を全額放棄したことにより、訴えを取り下げましたので、本件についても取り下げます。
平成*年**月 日
原 告 佐 々 木 恵 子
大阪簡易裁判所 御中
事例1の2へ続きます。