| クレジット サラ金 問題の現場から |
事例2.破産しても容赦なく取りたてるサラ金!
(破産手続中の取立訴訟)
多重債務者が破産手続に入ったら、原則としてサラ金業者は、個別の取立行為が禁止されます。
これは、破産法の趣旨「債権者間の公平」と「債務者の経済的更生」に基づくものです。
破産手続に入った者に対して、一斉に債権者が取立をおこしてきたらどうでしょう?
まさに弱肉強食、早い者勝ちの無秩序な状態になり、何のための清算手続かわからなくなってしまいます。
また、憲法で保障されている債務者の最低限の生活さえ危ぶまれることになってしまいます。
ところが、現実には、破産申立を知っているにも関わらず、執拗な取立行為を繰り返し続けてくる業者もあります。
そのような業者に対しては、業者を監督する官庁(業者は登録制になっています。)に注意をしてもらうなどの手段で対抗することになりますが、支払命令や訴訟提起などの法的手段をとる業者に対しては、応訴をするなど、法的手段で対抗することになります。
平成2年に出された、最高裁判所の裁判例「免責確定前になされた強制執行による破産債権への弁済は不当利得とならない。」(つまり、破産しても免責決定がおりるまでは、強制執行が可能であり、それによって回収した金銭は不当な利得とはならない。)によって、業者のそうした取立訴訟が全国各地で乱発し、債務者の更生を妨げているのです。
本件は、まさにそうした業者の抜駆け的な取立訴訟に対する、応訴であります。
依頼人である破産者は、不況による勤務先からの給料の減少により、やむなく生活費をサラ金業者から借り入れていました。
数年間は何とか返済を続けていたものの、一向に給料はあがらず、高利による負債は減るどころか、どんどん増えていってしまいます。
最終的には、サラ金業者から借り入れた金銭を、他のサラ金業者への返済に回すという、お決まりの「自転車操業」状態に陥ってしまいました。
それでも一生懸命返済しようと働き、親戚からの援助を受けたりしましたが、とうとう万策尽きて、私の事務所に訪れたわけです。
いつものように、数時間にわたる事情聴取を終え、破産の申立をしたところ、ある業者から依頼人に対して、支払命令が送達されてきました。
支払命令というのは、相手の言い分を聞かずに発せられるものですが、そのまま放置しておくと申立人である業者の言い分がすべて認められる形で確定し、判決と同様の効果を生じさせてしまいます。
つまり、給与などの財産を差し押さえられてしまう可能性が出てくるわけです。
しかし、異議を申し立てることによって、その支払命令は当然に通常の訴訟に移行して審理されることになります。
そこで、その支払命令を確定させないように、まず支払命令に対する異議を申し立て、その申立書には破産手続中である旨を併記しておきました。
さて、その支払命令の内容ですが、業者は約定利率である、40%に近い高金利を主張していました。
既に何回か出てきましたが、このような高利を取得するためには、業者は厳格な要件を満たしている必要があり、その立証責任はすべて業者側にあります。
本件におきましても、事情を聴取した結果、その要件はほとんど満たされていない状態でしたので、それを争っていくことにしました。
支払命令に対する異議を提出した後、簡易裁判所から期日の呼び出し状と、答弁書提出の事務連絡が依頼人の住所に送達されました。
業者の主張は既に送達されている支払命令に記されていますので、それに対する答弁をする必要があるわけです。
さらに詳しく事情を聞き、よく支払命令に記された業者の主張を読み返してみましたところ、おかしな個所が出てきました。
といいますのも、依頼人は、この業者とは長い付き合い(?)であり、平成6年から取引があったにもかかわらず、計算書には平成8年からの経過しか出てきていませんでした。
これは、多くの業者がやる「証書の書換え」と言われるのもです。
すなわち、たとえば、当初20万円を貸し付けたとします。その後、ある程度の返済が終わり、借り主に対する信用が出来たところで、残元金に新たな貸付分を加えて30万円の契約書に書き換える、というのもです。
上記の例で言えば、当然のことながら、書換え時に30万円の金銭の授受は行われていません。それにもかかわらず、ほとんどの業者はその煩わしさからか、訴訟などを提起する場合、最終の証書(上記の例で言えば30万円に書き換えた証書)に基づいて請求をしていきます。
本件につきましては、その計算書の最初の未収利息の欄に、金額が記載されていたため(最初に金銭を貸し付けた日に、既に未収利息があるわけがありません。)、その矛盾点を盛り込んだ答弁書を以下の通り作成してみたわけです。
答弁書 |
第一回目の口頭弁論期日において、原告である業者は主張を変更すると言ってきましたので、その主張の変更を待っていたのですが、なかなか書面が届きませんでした。
そこで、あらかじめ用意していた下記の準備書面を提出することにしました。
前述しましたように、原告が主張している利息制限法の18%を超えた高金利の主張を否認するものです。
「支払いの任意性」と「受取り証書の交付」の2点に絞って、その要件を満たしていないことを主張したわけです。
| 準備書面 原 告 *****株式会社 被 告 田 原 義 彦 右当事者間の御庁平成*年(ハ)***号貸金請求事件について、被告は次のとおり口頭弁論を準備する。 平成*年*月**日 右被 告 田 原 義 彦 **簡易裁判所御中 記 原告の主張に対する認否 一、請求の原因第三のうち、Cについては否認する。 二、請求の原因第三のうち、Dについては否認する。 被告の主張 一、支払の任意性について 貸金業規制法第四三条を適用する場合の要件としては、被告が自己のする利息の支払が、利息制限法所定の制限を超過したものであることを認識し、その事態を容認しながら任意に払った場合でなければならない(大阪地裁昭和六二年二月二七日判決)ところ、本件においては、原告の提示した契約書に、被告が約定した利息が利息制限法の制限を越えた部分を含むことをたやすく明確に理解しうる記載はなく、また原告ないしその従業員から被告の支払うべき利息が右制限を超過したものである旨の説明を受けたこともなく、被告は、自己が約定し現実に支払った利息が右制限を越えたものであることを約定時にも支払時にも認識せず、ただ漠然と高利であると感じた程度で、月々一定の金額を支払い続けたものである。 さらに被告は、毎月ある程度の額の支払をしなければ厳しい取立をされるように感じ、現実に被告の自宅にも原告から何度となく督促の電話が入り、被告はそのことをおそれて支払を続けてきたこともあり、支払金額の内いくらが利息であるのか、いくらが損害金であるのか、いくらが元本であるのかなどという認識は全くなかったものである。 したがって、被告のした支払は被告が利息制限法所定の制限を超過していることを認識したうえで支払ったものではなく、貸金業規制法第四三条が適用される余地はなく、原告の主張は容認することができない。 二、受取証書について 原告は、被告が支払の都度、被告に対し受取証書を交付したと主張するが、原告において当該受取証書を被告に交付したことを立証されたい。 貸金業規制法は、一方において同法第一八条に定めるような厳格な要件を満たした受取証書の交付を義務づけ、これらを履践している優良な業者に対しては、本来あくまでも原則である利息制限法上は無効な弁済を、特別に、例外的に同法第四三条第一項で有効な弁済として取り扱うという特典を与えたものと考えられる。 さて、被告は原告に対し、預金口座振り込みの方法により弁済を続けており、その際に原告より受取証書の交付を受けていない。 被告は、弁済直後に受取証書が交付されてはじめて、これを手がかりに法律上負うべき債務の内容を計算でき、他面において原告に対し、請求額の内法律上支払わなくてもよい債務を認識し、原告に対する権利主張が可能になるのであるから、どのような支払についても被告に受取証書が交付され、被告に権利主張の機会が与えられ、なおかつ被告においてこれを行使しなかったことが同法第四三条の利息制限法に対する例外扱いを認めることの前提となると解するべきである。 これらの解釈の正当性は、「貸金業者が貸金業規制法第四三条一項のいわゆる『みなし弁済規定』の適用を受けるためには、その要件として、債務者が預金口座払込の方法による弁済においても、貸金業者が右法律一八条一項所定の受取証書を交付したとの事実の主張を要するものと解されるが、原告は本訴請求においてその主張をしない。すると、原告は『みなし弁済規定』の利益を受けることは出来ない。」とする京都簡裁昭和五九年八月八日判決(判例時報一一五二号一五八頁)によっても明白である。 よって原告は、被告が口座払込により支払った場合には受取証書を交付していないのであるから、貸金業規制法第四三条の適用される余地はない。 |
この主張に対し、原告がどのような態度を示したか、そのあたりは記憶が定かではありませんが、多分その主張を変えなかったのだと思います。
そこで、切り札ともいうべき契約書を証拠として提出し、平成6年から継続して取引は行われていたのだということを主張、そしてすべての取引き経過を明らかにした上で、利息制限法所定の18%に金利を引き下げて計算をし直すように以下の準備書面を提出しました。
ここで一つ注意しておきたいことは、このような五月雨方式の防御は、来年から施行される新民事訴訟法下においては出来ないだろうということです。その点はご了知おき下さるようお願いします。
| 準備書面 原 告 *****株式会社 被 告 田 原 義 彦 右当事者間の御庁平成*年(ハ)***号貸金請求事件について、被告は次のとおり口頭弁論を準備する。 平成*年*月**日 右被 告 田 原 義 彦 **簡易裁判所御中 記 原告の主張に対する認否 一、請求の原因第二のうち、貸付金合計額金四〇万円につき受領したことについて否認する。 被告の主張 一、原告は、平成*年*月**日、被告に対して金四〇万円の金銭を貸し付けたと主張しているが、今般提出した乙第一号証「領収書兼取引明細書」によれば、平成*年*月**日に被告が原告から受け取った金銭は金一五四、三〇四円にすぎないことは明らかであり、同日には金四〇万円の金銭の授受は行われておらず、金四〇万円についての金銭消費貸契約の要物性を満たしているものではない。 したがって、甲第一号証によれば、従前の契約内容の記入欄に「無」に丸が付けられており、当該契約が新規の契約であるように見受けられるが、従前の契約を書き換えたものに過ぎないことは明らかである。 二、大蔵省銀行局通達第二の四(2)ニによれば、貸金業者は書換時、従前の貸付の契約に基づく債務の残高を貸付の金額とする契約を締結したときに交付する書面に、その債務の残高の内訳(元本、利息、賠償金の別)および従前の貸付の契約を特定するに足る事項を併記しなければならないことになっているが、原告はその義務を履行していないことになる。 三、被告が、原告との間で、限度額金一〇万円の限度額借入基本契約を初めて交わしたのが平成*年*月**日であり、それ以後証書の書換を行ったのは平成*年**月**日、平成*年*月**日、そして平成*年*月**日の合計三回であるが、前二回については書き換え後の証書に従前の契約内容が特定されているにもかかわらず、最後の書換時についてのみその記載が無い。(乙第二、三、四号証) 四、さて、一方、貸金業規制法施行規則一六条によると、原告のような貸金業者に於いては、過去三年間の弁済についての明細を明らかにした帳簿を備え付けなければならない、とされている。 さらに言えば、この規定は立法の際、消費者の利益を保護する目的でわざわざ設けられた規定であり、元来、商行為をなすことを目的として設立された証人である会社については、商法三六条の規定により、その商業帳簿や営業に関する重要書類を一〇年間保存する義務が課せられている。そして、原告のような貸金業者にとっては、借り主との取引経過を記録したものは、重要書類に含まれると考えられる。 五、したがって、被告は原告に対し、被告と平成*年*月**日に限度額借入基本契約を締結してから現在に至るまでの被告との取引経過を明らかにし、利息制限法所定の金利に引き直して計算することを主張する。 証拠方法 一、乙第一号証(平成*年*月**日付借入限度基本契約書兼借入申込書及び領収書兼取引明細書) 一、乙第二号証(平成*年*月**日付限度額借入基本契約書) 一、乙第三号証(平成*年**月**日付限度額借入基本契約書及び領収書並びに利用確認書) 一、乙第四号証(平成*年*月**日付限度額借入基本契約書及び領収書兼取引明細書) 添付書類 一、乙第一乃至四号証写し 各一通 以上。 |
この準備書面を提出して、数日後、この訴えは取下げられることになりました。
裁判所の判断を見てみたかったというのが本音ですが、破産法の趣旨に反する取立訴訟に対する応訴としては、一つの成功例であったと思っています。
まだまだこうした事例は多く、当事務所においては常に数件の取立訴訟に対する応訴が係属しております。
同職の皆様におかれましては、これを一つの参考例に、毅然とした姿勢で破産申立後の取立訴訟に対応していただきたいと考えています。