| クレジット サラ金 問題の現場から |
事例3.時効になったはずの借金が、、、、
(時効援用事件)
ここ数年前から、いわゆる大手と言われるサラ金業者から、7、8年以上前(時には10年以上前)の貸金に関して突然請求書が送付されてくるというケースが多発しています。
また、債権買取を業としている名前も聞いたことがない会社から、ある日突然請求書が届き、びっくり、というケースも少なくありません。
業者の貸金請求権は、5年で時効により消滅します。
何故このような時効の制度があるのか、いろいろな説明がありますが、行使されずに何年もの長い時間が過ぎてしまった権利を蒸し返すことによる弊害を防ぐ、ということも理由の一つです。
たとえば、甲さんが乙さんに15年前に100万円借りていたとします。ところが、乙さんは何らかの理由で、甲さんに対する返還請求権をその間全く行使しなかったとしましょう。
その事情を知らずに、他の人が甲さんにお金を貸したとします。
ところが、その後、乙さんが突然甲さんに対して権利を行使したとしたら、どうでしょう。
長く続いた事実状態(上記の例では、乙さんが甲さんに対する権利を行使しない状態)を覆すことは、社会の一般取引の安全を脅かすことになってしまいます。
ですから、その永続した事実関係をそのまま保護しよう、というのが時効制度の一つの存在理由なのです。
もちろん、経済的にも法的にも圧倒的な強者である、そのような大手サラ金業者が有名な時効制度を知らないわけはありません。
既に時効により消滅しているということを知りつつも、かつての借り主が法に無知であることを期待して請求してくるのです。
そして、そのような場合、元金の数倍である高額な損害金が付されています。
ある大手の業者などは、膨大になった損害金の一部カットを条件に一括請求を迫り、執拗に請求書を送りつづけてきました。
そのような場合にも、ただ時効を援用しさえすれば良いのですが、具体的にどうすれば良いのか知っている人はけして多くないのが現実なのです。
既に時効ではないだろうか?そう思ってはいても、執拗に送られてくる請求書や減額するという業者の歩み寄りに根負けして、自らの権利を放棄してしまっているケースが多いのです。
さて、本件につきましては、依頼人は、数年前に事業が失敗し、その際負債の整理をしたにもかかわらず、わずかに残ってしまった少額の債務につき、忘れかけていた頃に突然請求書が届いたというわけです。
その請求書を見ますと、案の定、僅少な元金に対し数倍にもなる損害金が付されていました。
依頼人は、その貸金請求権が、既に時効にかかっていることは感づいていましたが、どうすればその請求が止むのか分からず、困憊していました。
私は、下記のとおりの時効を援用する回答書をつくり、内容証明郵便で送付することにしました。(この内容証明郵便には字数の制限がありますので、ご注意下さい。)
その際、相手方に配達されたことを証明する、配達証明も忘れずに取得する手続をとりました。(これが、後に争いになったときの有力な証拠になります。)
| 回答書 貴社の当方に対する貸金返還請求書、たしかに拝受いたしました。 さて、本件契約については、貴社の請求書にその明細が記載されていないため、契約日、返済期日などの詳細が不明であります。 しかしながら、当方が貴社との金銭消費貸借契約を締結したのは、昭和57年12月のことであり、最後に返済をしたのが、昭和59年のことであります。 したがいまして、当方が期限の利益を喪失してから、既に10年以上を経過しておりますので、貴社の当方に対する貸金返還請求権は商法所定の5年の消滅時効により消滅しております。 よって、当方は、貴社の請求に応じることはできません。 平成*年*月**日 静岡市 浜 本 与 太 郎(仮名) 大阪府 ***株式会社審査部大阪管理課 御中 |
この回答書は、数日後に相手方に送達されましたが、それ以降は請求書も届かなくなり、事態は収束いたしました。
さて、大手業者の中には、時効にかかっている貸金について、支払命令を申し立ててくるところもあります。
本件の依頼者にも、1件支払命令が送達されていました。
異議を提出し、本案訴訟に移行した後、下記の通りの答弁書において時効を援用したところ、業者は訴えを取下げてきました。
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答弁書 原 告 ****株式会社 被 告 浜 本 与 太 郎(仮名) 右当事者間の御庁平成*年(ハ)***号貸金請求事件について、被告は次のとおり答弁する。 平成*年*月*日 右被 告 浜 本 与 太 郎 静岡簡易裁判所御中 記 請求の趣旨に対する答弁 一、原告の請求を棄却する。 二、訴訟費用は原告の負担とする。 との判決を求める。 請求の原因に対する答弁 一、請求の原因第一(一)について、カードローン契約を締結したことは認める。 二、請求の原因第一(二)@及びAについては不知。 三、請求の原因第二のうち、支払命令正本添付の「別紙計算書」記載の金額中期間計算されているものの金額について、被告が原告に支払ったことは認めるが、その余は不知。 四、請求の原因第三については不知。 被告の主張 一、被告は、昭和五七年**月**日に原告と金銭消費貸借契約を締結した。 ところが、期限の利益を喪失したとされている昭和五九年一二月**日から、平成元年一二月**日の経過をもって、原告の被告に対する貸金返還請求権は商法所定の五年の消滅時効により消滅しているので、被告は本答弁書をもって右時効を援用する。 |
本件のような事例は、まだまだ多く、今後も減ることはないでしょう。
なぜなら、多くの借り主は法に関して、無知であり、自己の権利を主張していく術を知らないからです。
一方、業者は、あらゆる手段を講じて債権の回収を計ってきます。
本件のようなケースは、まさにその一つであると言えましょう。
そうした理由からか、大手の業者の貸し倒れ率は極めて低く、都市銀行などよりも低いところさえあるのです。
数字だけ見れば、確かに優良企業であると言えるのかもしれません。
ただ、その数字が、利用者の無知に乗じての取立行為に裏付けられているとすれば、いかがなものでしょうか?