当事務所の事件簿から



その12. 「商工ローン業者からの借入金の返済に困っているのですが・・・・」




「8年くらい前から、商工ローン業者との取引があるんだけれども、この不景気で売上げも減る一方だし、どうにもならないんだよ。このままだと破産するしかないんだけれども、良い方法はないかね。」

 一昨年、ある商工ローン業者の厳しい取り立てが報道されることになり、こうした業者から運転資金を借りざるを得ない中小零細事業主の悲惨な状況が明らかになった。
 こうした商工ローン業者は、いわゆるサラ金業者の3悪と呼ばれる「高金利」「厳しい取り立て」「過剰な貸し付け」という3つの問題の他に、さらに次の二つの大きな問題が加わる。
 手形を利用した金銭の貸し付けであることと連帯保証人が必ず存在するという点である。

「実は、次の手形の支払期日は2週間後になるんだけれども、これを決済する資金がどうにも集まらないんだよ。そうなると、その手形は不渡りになってしまう。これだけは絶対に回避しなくてはならないんだが・・・」

 「手形の不渡り」、これは事業主にとっては死を宣告されるのに等しい。なぜなら「倒産」を意味するからである。
 したがって、こうした事業主の債務整理は、まず、この手形の処分をストップさせることから手をつけていかなければならない。そして、手形の不渡りが回避された後に、じっくりと利息制限法の金利による引き直しを裁判上で主張していくのだ。
 8年もの取引があるのであれば、利息制限法による引き直し計算によれば、おそらく債務額はゼロになっているばかりか、払いすぎになっているであろう。
  
「しかし、商工ローン業者も黙ってはいないだろうね。どうだろう、こちらの主張は認められる可能性があるのかね。」

 商工ローン業者と言っても、それぞれ業者によって取引形態も裁判手続に対する対応も異なる。
 日栄に限って言えば、@手形を担保にしたお金の貸し借り(手形貸付契約)が、8年間継続して行われていたのか、それとも各々の独立したものなのかという問題と、A利息の他に保証料などの名目で天引きされている手数料は利息として考えて良いのかという問題について最高裁の決着がついておらず、足して2で割るような和解も少なくない。
 しかしながら、利息制限法による引き直し計算については認めているケースがほとんどであるため、裁判手続を利用するメリットは大きい。
 
「費用はどのくらいかかるのかね?」

 さて、気になる費用であるが、これは利用する手続によって違ってくる。
 簡単に言えば、調停手続を利用するか訴訟手続を利用するか、という点である。
 調停手続による場合には、手形の不渡りを回避する手段として「事前の措置命令」を簡易裁判所に発令してもらうことになるが、この命令には強制力がない反面保証金が不要である。
 一方、訴訟を利用する場合には、仮処分手続を利用することとなるが、この場合には手形額面の1割から2割程度の保証金を積まなければならない。(これとは別に専門家に対する手数料は必要になる。)
 もちろん、費用の問題以前に、調停は双方の歩み寄りを前提にした話し合いであるのに対し、訴訟は証拠に基づき白黒を判断する手続という手続上の性格は押さえておく必要がある。

「現状では、とても保証金を用意することはできないな。でも、措置命令では強制力が無いのか・・・それじゃあ、手形が回されたらアウトだし、不安でしようがないな。」

 今のところ、日栄は調停手続の場合の事前の措置命令が出た場合においても、簡易裁判所の命令に従っているので、手形が回されることはないと考えて良いであろう。
 したがって、この方法を使えば高額な保証金を積むことなく、手形の不渡りを回避したうえで、話し合いのテーブルにつけるわけだ。
  後は、日栄が利息制限法に引き直した計算書を提出してくることになるが、この計算書は、各々の手形貸付取引を独立したものと考えたものであり、保証料名目の金員を利息には入れていない。
 話し合いの中で、保証料部分の何割を利息として認めたもらうか、また、仮に債務が残るとしたら、将来の利息をカットしてもらい3年から5年程度の分割払いを認めてもらうか・・・そうした点が話し合いのポイントになるものと考えられる。もし、上記に述べた@取引の継続性・連続性やA保証料は実質的には利息である・・といったことを争いたいということであれば、訴訟手続を取る他ない。


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