当事務所の事件簿から



その14. 「相続人の一人が行方不明の場合の遺産分割協議は・・・・」




「去年、父親が他界してね、母親と兄弟で話をしてきたんだが、兄弟の一人が外国に行ったきり、何年も音沙汰がないんだ。」

 既に書籍などでも案内させていただいているとおり、司法書士の事務所には、相続に関する様々なトラブルが寄せられる。
 不動産の相続登記が、司法書士の大きな仕事の一つであることが起因していると思われるが、相続登記しか受任できないということであれば、依頼人の需要に応えることは到底できない。
 本件のような事例がまさに典型的なケースであろう。

「遺言も残されていないようだから、相続人の全員で協議することになるんだったよねえ・・・・」

 遺言が残されていれば、その遺言書に基づき、遺言執行人と受遺者だけで名義変更が可能となり、他の相続人の同意や署名押印も不要である。
 しかしながら、遺言がない場合、相続権のある相続人全員で遺産分割協議を経なければ、各種財産の名義変更は不可能となる。
 そこで、相続人の一人でも連絡が取れない状態であると、遺産分割協議書への署名押印ができず、結果として、遺産分割が不能となる。実際に、このようなケースは珍しくない。
  
「どうすればいいのかね?何か良い方法はないのかね・・・」

 このような場合、まず第一に、家庭裁判所に対し、音沙汰のない相続人を不在者として、不在者の財産管理人の選任手続きをとることができる。
 候補者は、相続人でも良いが、本件のように、遺産分割協議が目的であれば、利害が衝突しない第三者になってもらう方がベターと言える。司法書士のような専門家でも良い。
 不在者の生死が7年以上にわたって不明という事案では、同人に対する失踪宣告を申立て、死亡とみなしてもらう手続きの選択も可能となるが、この手続きについては、別項に譲る。
 
「なるほど、その不在者財産管理人とやらに、代わって遺産分割協議に参加してもらうわけだ。」

 ただし、この不在者財産管理人の職務権限は、基本的には、財産の管理である。本件においては、被相続人である亡き父親から承継する遺産の相続分である。
 従って、それを処分することになる遺産分割協議に加わるということは、本来の業務の権限外ということになる。
 そこで、家庭裁判所に対し、遺産分割協議案を添付したうえで、権限外の行為をすることについての許可を求め、許可をしてもらう必要が出てくるのである。
 この許可がおりて初めて、不在者を含めた遺産分割協議が可能となる。
 
「そうか・・・要は二段階の手続きが必要だということだね。全部でどのくらいの日数がかかるんだろう?」

 まず、不在者財産管理人の選任決定であるが、申立から、2,3ヶ月を要するのが実務の運用であろう。もちろん、家庭裁判所によっても異なると考えられるので、注意が必要である。
 上記選任決定が出たら、即座に権限外行為の許可申請をすることとなるが、これについても、申立から、2,3ヶ月を要するのが実務の運用であろうと考えられる。詳しくは、最寄りの司法書士などの専門家にお聞きいただきたい。


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