当事務所の事件簿から



その2. 「借金を残して死亡した息子の相続放棄」




「息子が借金を残して亡くなってしまったのですが、一体どうしたらよいでしょうか?」

 負債の総額を聞いてみるとかなりの金額で、無職である依頼者(母親にあたる)にはとても支払のできる金額ではない。

「相続放棄という手続があるということを裁判所できいたのですが。それをお願いできないでしょうか?」

 相続というものは土地や建物、預貯金といったプラスの財産についてのみ発生するわけではなく、借金のようなマイナスの財産についても当然に発生する。ただし、それらの財産を相続するかしないかは相続人の自由であるので、このような場合相続を放棄すれば亡くなった息子の支払は免れることになる。

「実はその息子は独り者で子供もいないんです。そうすると兄弟にも相続権があると聞きましたが。」

 相続する権利にも順番があり、民法に定められている。それによると、配偶者は常に相続人となり、第一順位は子供、第二順位は両親、第三順位は兄弟姉妹となっている。この場合、父親は既に他界していたのでまず依頼者である母親が相続することになるが、その母親が相続を放棄すれば次は兄弟姉妹に相続権が移る。

「娘のうち一人はアメリカに嫁いで向こうでしんでしまったんですよ。その娘には一人子供がいるのですが日本語が全くわからないそうなんです。」

 この場合、母親が相続放棄をすれば、相続権はこの子供にも移ることになる。現実問題として、貸金業者がアメリカに在住しアメリカの国籍を持つ債務者の妹の娘まで返済を迫るとは考えにくかったのだが、、、。

「やっぱり気になって仕様がないから、是非その子の手続もお願いします。」

 裁判所に問い合わせたところ、手続はあくまで日本の法律に従うのこと。さっそく英語の得意な妻に翻訳を頼み、手紙を出し待つこと1ヶ月。
 どうやら妻の英語は正しかったようで、どうにか事情を理解していただき、無事に手続は完了した。

「ありがとうございました。ほんとうに費用はこれだけでよろしいのですか?」

 我々司法書士の報酬は国で定められた範囲内でしか請求できないことになっている。残念ながら、、、、、




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