当事務所の事件簿から



その9. 「遺留分をよこせ・・・・!」




「一番下の妹に全財産を相続させるっていう遺言は、法律的に無効じゃないんですか!」

 人は誰でも自分の所有するものを自由に処分する権限を持っており、それは死後においても、遺言という形で保障されている。
 したがって、全財産をある一人の相続人に相続させるという遺言も、それだけでは無効ではない。

「確かに、妹は父親の面倒を最後まで看ていましたよ。でも、私だってまったく面倒を看なかったわけじゃあないんです。遺留分っていう権利があるんでしょ。私はそれを請求したいと思ってます。先生、お願いしますよ。」

 確かに、民法によれば、被相続人の配偶者、子らには最低限保障されるべき遺留分が認められており、これは遺言よりも優先することになっている。
 ただ、注意しなければならないのは、その請求には期限が定められていることだ。相続の開始、つまり被相続人の死亡と、減殺すべき贈与・遺贈があったことを知ってから1年間という短い期間であることを知っておきたい。
 
「で、どうやって請求すれば良いんですか?妹が応じなかったらどうすれば良いんですか?」

 請求の仕方は簡単である。遺留分の減殺請求の意思表示を相手方に伝えるだけで良い。ただ、後々のために、内容証明郵便によって請求しておくべきであろう。これによって、当然に減殺の効果が生じることになる。
 とはいえ、これだけでは解決にならない。なぜなら、遺産の名義変更手続をしなければならないからである。おそらく、このようなケースにおいて、相手方が名義変更手続に協力してくれることは少ないであろう。そうだとしたら、その次の段階の手続、遺産分割調停もしくは遺留分減殺請求調停をあらかじめ念頭に入れておく必要がある。

「その後の不動産名義変更手続についてはどうすれば良いんでしょうか?」

 上記の調停手続が成立すれば、それが調書となって残る。そして、その後の不動産などの名義変更手続は、その調書に基づいて行われることになる。調停が成立した以上、その後、相手方に判子をもらったり、印鑑証明書を取得してもらったりといったような煩わしい手続は必要ない。
 しかし、それにしても、遺言をするときには、遺留分への配慮をしておきたいものである。




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