1、はじめに
これから司法書士を目指す方々の中には簡裁代理関連の業務をやりたくて司法書士を目指すという方々も多くいらっしゃるでしょうから、まずは、それについて述べるとともに、実際に簡裁代理権を活用して成功した事案について紹介したいと思います。
2、簡裁代理権について
平成15年4月の改正司法書士法の施行によって簡裁代理権を取得した司法書士は、今まで弁護士でないと行うことができなかった簡易裁判所での様々な手続についての代理、裁判外での和解の代理や相談等の業務(簡裁訴訟代理等関係業務)を行うことができるようになりました。
この改正により司法書士が関わることができる事案がかなり拡大されたと思われます。代理人として直接相手方と和解交渉をしたり、法廷で弁論したりできるということは、これまでのように本人訴訟をバックアップするという方法よりも責任も重くなり、また同時にやりがいもあることだと思います。
価値観が多様な人々が営む社会生活においては、必ずといってよい程トラブルは発生します。
トラブルの中には金額が多額なものもあれば少額なものもあります。多額であるから対処しなければならない、少額であるから放っておいてもよいという問題でもありません。どんなに少額であって些細なトラブルであっても実際に被害を被っている人にとっては一大事なことかもしれないからです。
簡裁代理を取得した今こそ認定司法書士は、このような事案に関与していき、また、積極的に関与していってこそ認定司法書士の存在価値というものが認められるものだと思います。
3、簡裁代理権の活用
次に簡裁代理権を利用して実際に解決できた事案を紹介したいと思います。
相談があったのは20代の女性のお父さんからでした。依頼内容は「娘が友人からお金を騙し取られたので、取り返して欲しい。」とのことでした。
娘さん本人から事情を詳細に聞くと典型的なマルチ商法にひっかかったものでした。本人自身は、マルチ商法とは違うと言い張っていましたが(勧誘者から、マルチ商法との違いや、いかにこのビジネスが優れたものでいかに儲かるものなのかを説明されたようでした。)、一般的なマルチ商法についての説明をし、それとどこが違うのかを問いただしたところ明確に答えることはできず、最終的には、理解できたようです。
マルチ商法というものは、勧誘されお金を支払うことで被害者にもなるし、さらに友人等の第三者を勧誘することで加害者にもなり得るのです。全く見ず知らずの人に売るということは、通常困難であるので、身近な友人を勧誘することになるのですが、結局マルチ商法の構造上、上位の数パーセントのみが利益を得て、末端あるいは末端に近い者はほとんどが損失を被るという仕組みになっているのです。
そして、勧誘した者もされた者も損害を被り、経済的損失ばかりか人間関係にまでヒビが入ってしまうのです。
当該依頼者も、友人からの誘いがきっかけとなり、説明会を聞きに行ったところ、多人数から深夜に渡って長時間勧誘を受け、判断能力が衰え、早く帰りたいとの気持ちで契約をしてしまったのです。
さらに、この依頼者の場合、現金がなかったため、お金が払えないといったところ、消費者金融の店頭前まで車で連れて行かれ、お金を借りてくるように指示されていました。そして、実際にお金を借りて、渡していました。
マルチ商法は、法的に違法とはされていないものの、このケースのように非常に問題のある取引であることが多いです。
当該事案において、業者に一旦手渡してしまった金銭を取り戻すためには、契約を取消さなければなりません。その法的構成については、特定商取引法によるクーリングオフに基づく取消し、消費者契約法による退去妨害に基づく取消し、民法の規定による詐欺による取消し、錯誤無効等が考えられます。
そこで、業者に対し、これらを根拠に契約を取消すので、支払った金額を返金してくれという内容の文書を内容証明郵便で発送しました。
クーリングオフさえできれば他の主張は必要ありませんが、既に期間が過ぎており、争いのあるところであったので、他の争点も主張しておきました。(クーリングオフ期間が過ぎていても契約書に所定の記載事項がなかったり、クーリングオフ妨害があったりすれば、期間が進行されないとされています。)
業者からは一体どういうことだとすぐに反応がありました。そして、電話や書面で数回やりとりを行いました。
裁判をしないと厳しいのではないかと思い、いろいろ準備をしていたところ、業者から全額を返金するとの電話があり、実際に返金がありました。
通常、このようにうまくいくケースは少ないと思われます。マルチ商法を行っている会社は悪質なものが多く、そもそも任意での返金に応じることが少ないですし、実態が伴っていないため提訴そのものが困難であったり、支払能力がないため、勝訴しても無意味であったりすることも多いからです。
当該案件の被害額は50万円程度でした。消費者金融から借入れした本人にとっては大きな金額ですが、弁護士が実際に受任してくれるかというと金額的に難しいであろうと思います。
認定司法書士は前述したとおり、簡裁の訴訟代理のみならず、簡裁の訴額であれば訴外で和解交渉をし、和解契約を締結することもできます。
この事案のように実際に裁判にまで至らなくても解決できる案件も多くあるため、認定司法書士は、この分野においても活躍することができ、同時に被害者救済にもつながると思われます。
4、まとめ
司法書士は、登記に限らずクレサラ業務、裁判事務、成年後見等活躍できる場が多数あります。
私も研修で学んだことを生かしてどんな些細なトラブルにも対応でき、地域社会には欠かせないような存在感のある「街の法律家」になりたいと思います。
最後に、これから司法書士を目指している方々は、司法書士の将来性等いろいろな不安があるでしょうが、自分の理想とする司法書士像を追求し、一刻も早く合格して、実務の世界に飛び込んできて頂きたいと思います。
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