私は,平成11年春から司法書士試験合格に向け勉強を開始し,6年後の平成17年度にようやく合格することができました。司法書士試験を目指したことは,中卒で弁護士を目指すためのステップアップの一段階としか考えておりませんでした。そのような事情から司法書士の専門分野とされていた登記業務には全く興味がありませんでした。暴力ではない法の力を使い,弱気を助け強気を挫くトラブル解決の代理人という仕事をしたかったのです。 しかし,私は自分の予定していた5倍の時間を司法書士試験に費やすことになってしまいました。他方で,受験期間中に司法制度改革という今まで類のない大改革が到来しました。制限的とはいえ司法書士に民事に関する代理権が与えられるとともに,貸金業規制法のガイドラインに司法書士の名前が刻まれることになったのです。 いわゆる受任通知。経済的事情から司法試験が手の届かないものと諦めてかけていたこの頃,これには衝撃を受けました。ここで気持ちを司法書士になることに明確に切り替え,さらに勉強を継続し冒頭のようにやっと合格に至ったのです。
合格が分かるとすぐに,司法書士として俺の目的を達する一番の近道は?と考え調べました。すると司法書士の裁判実務の最先端の地がどうやら静岡県にあるらしいことを知りました。さらに調べると,司法書士によって書かれたヤミ金サラ金事件の本は,ほとんど静岡発になっていました。「よし決めた,静岡行こう」。そして静岡でも一番多種多様な事件を取り扱っている事務所が「小澤吉徳事務所」という噂を聞きつけ,当時全青司の会長をして超多忙な中にあった小澤吉徳先生宛てに,自分の考えと勉強させて欲しい旨の文章をメールで送り付け,面接してくれるように頼み込みこんだのです。
そして平成18年3月下旬より2年間の予定で小澤事務所での研修が始まりました。諸般の事情から予定より早い1年6ヶ月で独立することになりましたが,心に残る事件はたくさんあります。言葉にできない多くを学ぶことができました。小澤事務所には,他の弁護士や司法書士が断った事件が沢山流れてきました。研修生には依頼を断るという概念は基本的にありませんが,その中でも,私は外の人がやりたくないだろうと思われる事件を積極的に受けてきました。研修期間中は,法理論はさておき体で覚えることが重要と考えていたのです。1ヶ月が一週間に感じるほどの時の流れでした。事件の細かい話を上げるのはきりがないので割愛しますが,小澤事務所で研修することができた自分はとにかく幸せもんやと思います。 現在では,裁判事務を熱心にやられている司法書士は静岡ならずとも多数おりますが,小澤事務所のように多種多様な事件を扱い,かつ小澤事務所のような形で研修をさせてくれる事務所は全国どこを探してもないのではと思います。
今,司法書士の存在意義が問われている大変重要な時期であります。債務整理をする司法書士もここ2年ほどで激増したように思います。仕事がないからと,信念もなしに安易に債務整理を手がける司法書士に憂いを感じる一方,参入理由はどうであれ,裁判事務をする司法書士が増えることは,国民に対し,司法書士とはそういうもんなんだと印象付けるためには喜ばしいことかもしれません。司法書士とは登記をすることが仕事なんだと国民に定着してしまったことにも歴史があるように,新たな歴史を作ることができるのも,同じく我々司法書士なのですから。そして,司法書士により一人でも多くの困っている消費者が救われることを心より願います。
最後にこの場をお借りし,このような研修機会の場を与えてくれた小澤裕・吉徳両先生に感謝の意を表したいと思います。1年6ヶ月の間,本当にありがとうございました。
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