私は,小澤事務所に1年とちょっとの間,研修生として在籍していましたが,この間,司法書士の本業である不動産・商業登記事件だけではなく,いわゆるクレサラ事件,ヤミ金事件,一般民事事件,家事事件と,ありとあらゆる事件や依頼を経験することができました。これら事件を通じての経験は自分の財産となるとともに,自分自身のこれからの司法書士としての執務姿勢の基礎を築くことができたと思っています。
私が扱った事件の中で一つ例あげて経験談を・・・といきたいところですが,それは,他の研修生に譲るとして,この研修生奮闘記の趣旨とは全くかけはなれますが,私がこれまでの経験から考え,そして思ったことを書きたいと思います。
さて,昨今,いわゆる悪徳商法(カラ請求,ヤミ金,オレオレ詐欺,点検商法,消化器販売商法,内職商法などなど)の被害が多発しています。実際の当事務所においても,何件もこのような相談や解決の依頼がありました。現に,2003年度の全国の消費生活相談センターに寄せられた消費者相談は,ついに100万件を超え,約113万件であったという統計が発表されています。これは今後も増加の傾向にあると予測されます。
悪徳商法により多額のクレジットを組まされ,そしてその返済のためにサラ金から借入をし,あげく多重債務に陥ってしまったという事件がありました。なぜ,もっと早く相談してくれなかったのか,と心を痛めます。と同時に,このような事件を少しでも減らし,そして未然に防ぐことができれば・・・という思いもこみ上げてきました。
このような悪徳商法にだまされる人が悪いのか,だます人が悪いのか,という議論もありそうですが,やはりどう考えてもだます方が悪いというのはお分かりかと思います。一般の人であれば,「だまされたのか,かわいそうに。」とか,「だまされるなんてバカだな。」というふうに思って,悪徳業者の責任を追及せずに終わるかもしれませんが,法律家はそうはいきません。
法律家は,相談者や依頼人にとって最善の解決策を模索し,実行し,結果を導き出し,そして責任を追及していかなければならないのです。法的紛争に巻き込まれ,解決の糸口さえ見いだせずにいる人に対し,一般人と同じ考えで対処していては,その資質を問われるでしょうし,法律家としてだけではなく司法書士としても失格です。
司法書士に簡裁代理権が付与されたのは,大都市に偏在する弁護士とは違い,日本全国津々浦々に事務所を構え,市民のための法律家と自称してきた司法書士に,上記のような市民が関与するような事件を解決する法律家としての役割を果たしてくれることを,国民が希望し,そして国が求めた結果である,と私は思っています。ですから,これからの司法書士,特に簡裁代理権を取得した司法書士は,これら国民の要望に答えていかなければならないのです。
また話は変わりますが,私自身,常々疑問に抱いてきたのは,小学校,中学校,高校と,どの教育課程をとらえても,「法律」と「法律による社会」というものを教えていないということです。 自分の過去を思い出してください。自分が受けてきた学校教育の中で,法律の意味や仕組みを勉強したでしょうか。勉強したとしても,おそらく憲法だけで,しかも内容としてはどのような基本的人権があるか,また国会での議決の要件などではないでしょうか。どれも期末試験にでるから,高校入試にでるからといった理由でしか勉強していないと思います。気のきいた教師であればある程度の法律の仕組みは教えたのかもしれません。しかし,日本全国すべてにおいてと言っていいほど,憲法が日本のルールブックの表紙と目次であり,各種の法律がルールブックの各ページをなしている,つまり,日本という国は法律というルールによって規律づけられた社会であるということまでは教えてはいないはずです。
もちろん,子供の教育の一端を担うべきその親が,社会規範や法律について教育をすればよいとの意見もあります。しかし,これまで法教育を受けてこなかった人が,自分の子供に,法教育を施すことができるかといわれれば,答えは「ノー」なはずです。自分が知らないことを他人に教えることができないことと同じことなのです。
社会は,多くの人々が集まって形成しています。日本という国家社会も1億2700万人あまりの人々が集まって形作っているのです。これら多数の人間で構成されている日本という社会において,みんなでルールを作成し,みんながルールを守るということは,お互いの利益を遵守するという観点からも必要であり,逆にそうしなければお互いが自己の利益だけを追及し,他人の権利をないがしろにする無秩序が支配する社会となってしまいます。
ですから,これから社会を形成し,そして支えていく子供たちに,ルールを作って,それを守っていくという最低限の法教育を行う必要があると思います。
全国の司法書士の総本山である日本司法書士会連合会では,これまで司法書士が高校生を対象にして消費者教育や法律講座を行ってきた経験から,今後,小学校と中学校のいわゆる初等中等教育課程においても法教育の必要性を指摘し,積極的に未成年者の法教育活動を推進していくという意見を表明しています。
未成年者に対する法教育や消費者教育が,打開策となるかどうかはやってみなければ分からないと思います。しかし,やらないよりやった方がいいと思いますし,やれば何らかの結果が出るとも思います。
私は,合格してまだまだ日が浅く,社会経験,実務経験ともに多くはありませんがこのような活動に積極的に参加していきたいと思っています。(参加させてくれるのかどうかはわかりません・・・)
本当に趣旨とはかけ離れた内容でしたが,私の拙い文章を読んで一人でも多くの人が,司法書士を目指していただければ幸いです。
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