たとえば、「キャッチセールスでタレント養成所にスカウトされた子供の親が、登録料や写真代50万円相当を支払ったが、約束のレッスンがない。」だとか「友人に誘われて毛皮のコートを見に行ったところ、販売員に囲まれ4時間も説得されたため、買うつもりはなかったのにサインをしてしまった。」などという契約に関するトラブルが、全国で多発しています
。
国民生活センターや全国の消費生活センターに寄せられる消費者の苦情・相談は、年間約34万件にも昇り、そのうち、上記のような契約に関するトラブルが8割を占めているのが現状なのです。
私達消費者は、事業者との契約を通じ、いろいろな商品を購入したりサービスを受けたりしています。
しかしながら、我々消費者と事業者の間には、商品やサービスの内容や契約条件について、知識や情報、そして交渉力において大きな格差が存在しているのが現状です。
そのため、正確な情報を与えず、消費者の無知につけこんで契約をさせる悪質な事業者がいたり、契約の内容が消費者に一方的に不利益に定められたりして、消費者が被害を被るケースが多発しているのです。
現在において、上記のようなトラブルの解決を図ろうとしても、訪問販売方などの各種業法に違反していても直ちにその契約の効力が否定されるわけではありませんし、「錯誤による無効」「詐欺による取消し」「強迫による取消し」を主張したとしても、それを立証するのは非常に困難であると言わざるをえません。
つまり、消費者が自分で資料をよく読んで気をつけるべきだという側面ばかりが強調され、事業者が正確な情報を提供する責任があるということは軽視されがちなのです。
そこで、政府の国民生活審議会消費者法部会は、1998年1月、事業者と消費者とのあらゆる契約についての包括的な取引ルールを定める「消費者契約法(仮称)」を制定する必要があるという中間報告を発表し、制定のための作業をすすめてきたのです。 すでに、経済発展の進んだ諸外国においては、同様の消費者契約に関する民事取引ルールが立法化されており、消費者契約の適正化と被害救済に役立っています。
さて、この新しい法律が制定されることによって、具体的にどのようなことが可能になるのでしょうか。その主なものについてあげてみることにします。
@事業者が、消費者と契約を結ぶとき、商品や契約内容の基本的事項につき、正確な情報を提供・説明しなかったり(重要事項の不告知)、虚偽の説明をした(不実の告知)ときには、消費者はその契約を取り消すことができます。
A事業者が、消費者と契約を結ぶとき、長時間の強引な勧誘などで消費者を困惑させ、自由な意思決定を妨げたときは、消費者はその契約を取り消すことが出来ます。
B契約の勧誘の際には説明もなく、予想もできないような「不意打ち条項」を、事業者が契約書に記載しておき、後に契約内容の一部であると主張しても、その条項の効力を認めないこととします。
C消費者に不当に不利益な契約条項については、その効力を認めない(無効)こととし、その「不当に不利益な条項」の具体的なリストを列挙することとしています。
@当然に無効とされるブラックリストの例
*事業者に故意・重過失があるときでも、損害賠償責任を排除したり制限する条項
*事業者に契約内容の一方的な決定権限を与える条項などなど
A「著しく」「不相当に」「過度に」不当と評価されるときに無効とするグレイリストの例
*消費者にとって過大な違約金を定める条項
*消費者に不相当に過量な商品を購入させ、または不相当に長期の契約をさせる条項
*消費者からの解除の権利を著しく制限する条項などなど
産業界の強い反発があり、法制定への道はけして平坦なものではないでしょうが、この法律が制定されることによって、我々消費者の暮らしは今よりも守られることになります。
前述した「不当に不利益な条項」のリストにどのような事項をあげるのか、また、裁判沙汰になった場合の立証責任の問題など、検討されるべき点も多いのが現状ですが、規制緩和・自己責任がこれだけ大きく取り上げられている時代、消費者契約の公正な民事ルールを明確化することは、必須の前提条件であると思われます。早期の立法がのぞまれるところです。
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