1.この世の春を謳歌する商工ローン業者
銀行の貸し渋りが続く状況下、異常とも言える急成長をしている商工ローン業者。
その代表格である「日栄」(一部上場)と「商工ファンド」(二部上場)の経常利益は、99年3月期の決算によれば、いずれも639億円と410億円という目を疑うような金額であり、その伸び率もそれぞれ21%と41%と、この不況下においては信じられないような数字を打ち出している。
ちなみに、大手サラ金業者の同時期の経常利益は、武富士が1800億円(伸び率22%)、アコムが1274億円(伸び率24%)、プロミスが882億円(伸び率17%)、アイフルが688億円(伸び率23%)となっており、相変わらずの異常な好景気振りであったが、これにも劣らないほど、商工ローン業界もこの世の春を謳歌しているのである。
なぜこんなにも儲かるのだろうか。銀行の貸し渋りによって資金繰りに喘ぐ全国の中小企業者の急増が大きな要因と言えるだろうが、最大の要因は、大手サラ金業者と同様、その利鞘の大きさによると思われる。
もちろん、経済的にも法的な情報量に関しても圧倒的な弱者である中小企業者に執拗な融資勧誘を行ない、大手サラ金以上の高金利をむさぼり、延滞となった際には容赦なき取立を、〜後に述べるように〜主債務者はもちろんのこと、連帯保証人にも行なう、といったこともけして忘れてはならない要因であろう。
しかしながら、最も注目すべきは商工ローン業者、サラ金業者らの資金調達の構造であると考えている。
つまり、日栄、商工ファンドは大手の銀行からその原資を調達しているが、調達金利は、わずか3%程度の低利である。これを中小企業者に20%から30%もの高利で貸しているのが商工ローン業者であるという構図をまず押さえていなければならない。
これは大手サラ金業者が儲かるしくみとまったく同じであり、銀行はそうした業者に資金を貸付けることで中小企業者や消費者に自ら融資することのリスクを回避しているとも言えるからである。
さて、こうした商工ローン問題が、これまでテレビや新聞で報じられることは少なかった。
カード破産が持てはやされたことによって、大手サラ金業者の実態がマスコミ関係者によって語られることは少なくなくなったが、一般の消費者ではなく、中小企業経営者をターゲットに金員を貸付け、サラ金業者顔負けの厳しい取立行為を行なっている商工ローン業者に焦点が当てられることは極めて少なかったように思う。
しかしながら、平成11年5月31日付けの東京新聞からシリーズで連載されている「不況に踊る商工ローン」をはじめ、中日新聞の夕刊による「特報」における連載、また、私の地元、静岡新聞の若手記者も商工ローン業者に焦点をあてた特集記事を準備するなど、いよいよマスコミのメスが本格的に入ろうとしている。(なお、余談ではあるが、私も微力ながら相当数の取材に協力させていただいている。)
その中で、平成11年6月28日の東京新聞の朝刊に大きく取り上げられていたのが、商工ローン業者などの貸金業者を指導・監督する金融監督庁が異例の対策会議実施に踏み切ったというものである。
つまり、行き過ぎた取立行為や契約上のトラブルが相次いで発生している現状に対応すべく、業者の指導・監督業務を担う全国の大蔵省財務局幹部(監督課長クラス)を召集し、商工ローン問題の所在と苦情が寄せられた場合の対処法に関し、周知徹底を図るとともに、管轄する財務局と実際に苦情を受け付けた財務局との連携体制を固めるとしているのである。
2.商工ローン業者の問題点
先に簡単に述べたが、商工ローン業者の問題点には、サラ金業者と同様の問題である「高金利」「過剰融資」「過酷な取立」の他に、「保証人被害」という大きなものがプラスされる。
融資金額がサラ金業者とは違って場合によっては1000万円以上という大きな金額になることから、商工ローン業者は主債務者が会社である場合、社長はもちろんのこと、社長の妻や取締役や従業員など、必ず複数の連帯保証人を付けさせるからである。
当然のことながら、これらの保証人は、保証会社のように保証料などとはまったく無縁であり、無償でリスクのみを負う者たちである。
そして、商工ローン業者は、主債務者である会社の資産状況はもちろんのこと、複数とった連帯保証人の全員の資産状況を徹底的に調べ上げている。
実際に、当事務所に訪れた商工ファンドの貸付金に対して連帯保証人になった相談者は、契約時に生命保険証券のコピーまで取られており、これによって、生命保険契約の解約返戻金まで仮差押えの手続を取られている。
この相談者は、主債務者である有限会社***工務店の社長の弟であったため、まったく資産もなかったにも関らず、兄のすがるような頼みを断れきれずに渋々連帯保証人に応じているのである。そして、その後間も無く***工務店は倒産。
商工ファンドの請求は、当然のことながら私の相談者にまで及んだ。
ご承知のとおり、商工ローン業者は、限度額を定めて根保証契約を締結させるが、追加融資の度に新たな連帯保証人をつけさせるのを常態としている。そして、その際には、根保証契約の意味について十分な説明を加えていないことが多い。
つまり、私の相談者は、200万円の追加融資の際に連帯保証人になっているのであるが、すでにその時には限度額は1200万円となっていたのである。もちろん、相談者は200万円のみの保証だと考え契約書に署名・捺印をしている。
しかしながら、控えとして受領している限度額根保証契約書には、しっかりと限度額1200万円と記されていることから、これを裁判によって覆すのは困難だと言わざるを得ない(なお、この点につき、大阪地裁昭和63年3月2日・判例タイムズ693によれば、要素の錯誤による無効を認めている。なお、松山地裁平成10年7月3日判決、東京地裁平成4年3月6日・判例タイムズ799も参照のこと。)のが現状であろうと思われる。
定収入もなかった相談者であったため、私はやむなく自己破産手続をとった。もちろん同時廃止事件として。
そして、破産の申立をした数週間後、私の相談者に、右の仮差押命令が送達されたのである。
私は驚愕した。
確かに生命保険の解約返戻金は、差押の対象になりうる財産には違いない。
一般の消費者破産事件においても、右解約返戻金は債務者の財産として扱われることは当然であり、場合によっては裁判所から配当を命じられることもある。
しかし、大手のサラ金業者はもちろんのこと、中小規模の業者でさえ、ここまで徹底的に回収を図る業者はなく、本当に初めての体験であった。
商工ローン業者は、債権額や相手の資産状況によっては公正証書を作成しておくのが常套手段であることから、本来であれば、仮差押命令でなく差押命令が送達され、免責が確定するまでの間に解約権を行使して平然と回収をしてしまうであろう。(生命保険契約の解約返戻金支払請求権につき、差押えた債権者による生命保険契約解約を認めた大阪地裁判決、昭和59年5月18日・昭58(レ)105号取立金請求控訴事件を参照のこと)
このことが容易に想像できたからこそ驚愕したのである。
なお、この相談者はすでに免責決定が出ており、現在は商工ファンドからの執拗な請求からも解放されているが、いまだに生命保険の解約返戻金に対する仮差押命令は取下げられていないことから、免責の確定を待って右仮差押命令の取消しを求める予定である。(平成11年7月)
(商工ファンドに対する債務額確定訴訟へ続く・・・・・次々号にご期待を!)