担当者必見!こんな登記内容には要注意

  
1、被相続人の死亡から最終登記までの時間が長く、遺産分割で相続

 このケースでは、大石晴夫さんの死亡により相続が発生しており、大石晴夫さんの相続人は大石花子さん、大石一郎さん、大石次郎さん、立川純子さんの4人であったと推定することができます。そして、大石花子さんは大石晴夫さんの妻、大石一郎さん、大石次郎さん、立川純子さんは大石晴夫さんと大石花子さんの子供であると思われます。
 ところで、相続の登記をする場合、どのような経過を辿って登記まで行うのか、その様態は様々です。いろいろなパターンが考えられますが、主な様態を次に掲げてみます。

@相続人全員で遺産分割の話し合いをして、その結果を登記する。この場合、死亡者の生前に十分な贈与を受けている相続人や、相続放棄手続(裁判所への届出)をした相続人は話し合いから除くこともできる。
A遺産分割の話し合いがつかない場合には、裁判所において調停や審判手続などを行ってその結果を登記する。
B遺言書がある場合には、話し合いをしなくても相続登記をすることができる。
C話し合いがつかない場合には、法律上の相続分で相続人全員の名義に登記することができる。この場合、後日、相続する方法が決まった場合は遺産分割を原因として最終の取得者に登記することができる。

 @からBの場合には、死亡者から最終の取得者に直接登記することができ、この場合、登記簿に記載される【原因】はいずれの場合も「平成○年○月○日相続」(日付は死亡者の死亡の日)となります。
 大石家の場合、順位番号2番で相続人全員に登記がされていますが、これはCの方法で相続人全員に登記がされたものだと思われます。しかし、Cの方法では最終の取得者のためにもう一度登記しなければなりませんのでコストもかかってしまいます。ですから、相続人の話し合いなどがスムーズに行われる場合にはCの方法がとられることはほとんどありません。

 では、なぜわざわざ、Cの方法がとられたかを考えてみますと、Cの登記申請は、相続人全員が協力しなくても誰か一人から申請することができるため、自分に権利があることを登記簿の上でも主張するために、一部の相続人がコストを度外視して申請した可能性が高いと思われます。
 最終的に、この不動産は大石花子さんが取得することになったため、順位3番で残りの6分の3を花子さんへ移転する登記がされていますが、それが普通の話し合いで決まったものなのか、裁判所の調停等の手続きによって決着したものなのかはわかりません。しかし、少なくとも、晴夫さんが死亡してから6年半もの歳月を経てから決着したことだけは確かです。

2、代位弁済による抵当権の移転が行われている。

 有限会社佐藤工業の社長の自宅の登記簿を調査したところ、つい最近、住宅金融公庫の抵当権が住宅金融公庫の保証協会に移転していました。原因は「平成13年9月24日代位弁済」となっています。
 ご存じのとおり、住宅金融公庫は国民が住宅を取得することを促進するために制度的に設立された公的金融機関です。公的金融機関とはいえ、貸出債権保全のために、住宅に抵当権を設定したり、住宅の火災保険の給付金に質権を設定したり、連帯保証人をつけたりしていますが、連帯保証人をつけることができない人のために保証協会を設立して保証業務を行わせています。
 もちろん、当初の返済計画に従って返済を続けていけば保証協会のお世話になったり、挙げ句の果てには競売されることはないわけですが、返済を怠った場合には、保証協会が保証をしているケースでは第一段階として保証協会が住宅金融公庫に対して全額を支払い(代位弁済)、以後、保証協会が債務者に対する請求や競売手続きをすることになります。
 債務者に延滞があった場合、住宅金融公庫は民間金融機関とは異なり、代位弁済等の対処についてはほとんど例外を認めず、マニュアルどおりに処理をしていきます。一般的には、延滞が6カ月継続した場合には保証協会が代位弁済をしているようです。
 したがって、佐藤社長の自宅の抵当権が「平成13年9月24日代位弁済」によって保証協会に移転したということは、住宅ローンの支払いを6カ月もの間怠っていたことを意味します。
 おそらく佐藤社長は、住宅ローンを差し置いても事業継続のために必至になって資金繰りをして信用悪化の素振りを見せなかったのだと思われます。

3、利息制限法いっぱいの上限金利で借り入れをしている

 古くからの取引先である太田産業が所有する土地の登記簿には、乙区2番で銀行ではない債権者の抵当権が設定されていました。原因と債権額を見ると、平成11月に500万円を借り入れたようですが、利息は年15パーセント、損害金は年30パーセントと若干高いようです。
 金銭の貸借については利息制限法という法律で利息の最高限が決められています。この法律によれば、元金が10万円未満の場合には年20パーセント、10万円以上100万円未満の場合には年18パーセント、100万円以上の場合には年15パーセントが利息の上限です。
 また、遅延損害金についてはそれぞれ利息の1.46倍の利率が上限となっており、これらを越える利息や遅延損害金の契約は無効とされています(なお、平成12年6月1日以前は、2倍までの損害金が許容されていました)。
 したがって、抵当権の登記をする際にも、利息制限法の定める上限金利を超えるような利率の利息や遅延損害金の登記はできないこととなっています。
 中山商事の抵当権の債権額は500万円ですから、利息15パーセント、損害金30パーセントという定めは利息制限法の上限いっぱいに設定されたものと見ることもできます。
 しかし、中山商事の利息は年利15パーセントをはるかに越える高金利である可能性があります。
 現在のところ、貸金業登録をしている金融業者は、融資する際に諸条件などを明示した書類を交付するなどの厳しい要件を満たした場合に限って、利息制限法の上限金利を超えて年約29.2パーセントまでは有効に利息を受け取ることができるとされています(なお、平成12年6月1日以前は、年40.004%までの金利が許容されていました)。
 ところが、仮に利息年40パーセント、損害金年40パーセントと書かれた抵当権設定契約書を法務局に持ち込んで抵当権設定登記をしようとすると、登記は利息制限法の上限金利の範囲内でなければ受け付けられないため、登記簿には利息年15パーセント、損害金年30パーセントと記載されることになります。
 したがって、この登記簿のように利息と損害金の定めが利息制限法の上限金利と一致している場合には、実際の利息や損害金はもっと高い可能性があるのです。
 
4、債権の範囲が広く、極度額の変更が何回も行われている

 大塚観光の代表者である大塚研二さんの所有する不動産の登記簿を調べていたところ、乙区3番に西野三郎という名で根抵当権が設定され、しかも、根抵当権の極度額が400万円から600万円に変更されていることが判明しました。
 登記されているのは抵当権ではなく根抵当権であること、債権の範囲として実に様々な取引内容が記載されていること、極度額が増額されていることなどから、西野三郎は金融業者であると推定することができます。

 また、債権の範囲を見てみますと、実に様々な取引が記載されています。債権の範囲とは、根抵当権で担保する取引内容を明確にするために登記されますが、乙区1番では「信用金庫取引 手形債権 小切手債権」、乙区2番では「商品売買取引」と、いたってシンプルな記載にとどまっているのに対し、乙区3番は「消費貸借取引 証書貸付取引 手形貸付取引 手形割引取引 保証取引 立替払委託取引 手形債権 小切手債権」と書かれています。
 これは、この根抵当権で西野三郎と大塚社長との間のあらゆる金銭取引を担保しようと考えているからに他なりません。
 ちなみに、乙区2番の有限会社伊豆商店の根抵当権は、大塚社長が観光事業を営んでいること、債権の範囲が商品売買取引となっていることから、食料品等の継続的な仕入れ代金を担保するものだと推定することができます。

 また、乙区3番の西野三郎の根抵当権の極度額は、平成11年5月18日付で600万円に変更されていますが、これは、大塚社長が追加借入をしたため、極度額の増加登記をしたものと思われます。
 一般的に、金融業者が根抵当権を設定する場合には、極度額は実際の融資額の2倍程度を登記しているようです。これは、極度額の範囲内であれば、融資金額の元本はもちろん、利息、損害金の全てに根抵当権の効力が及ぶからです。
 もしも大塚社長が返済を怠った場合には、元本対し少なくとも年30パーセントの損害金が発生すると思われますので、西野三郎としては仮に3年間全く回収ができなくても、その間に発生する損害金がすべてこの根抵当権で担保されることになるわけです。

5、根抵当権、所有権、賃借権の仮登記がある

 このような根抵当権仮登(通称「ネカリ」とも言われます)、所有権仮登記(通称「ショカリ」とも言われます)、賃借権仮登記(通称「チンガリ」とも言われます)は古くから「三点セット」とか「三種の神器」と呼ばれ、小規模な金融業者が好んで利用していました。
 不動産に根抵当権等の担保を登記するのは、最終的には不動産が競売となった時に競売の売却代金から債権を回収するためですが、債権を回収する順番は担保の登記の順位によって優先順が決められます。
 しかし、根抵当権等の担保の優先順位を得るためだけならとりあえず仮登記をしておく方が費用的に安上がりですので、根抵当権を仮登記し、また、キチンと返済しなければ所有権がなくなるかもしれないと思わせ、精神的な圧力をかけるために所有権の仮登記もしていていたのです。
 賃借権については、法律上は債権回収という効果は生じませんが、競売がされた場合でも短期間(山林は10年、その他の土地は5年、建物は3年)は賃借権が保護される場合があるのです(短期賃貸借。「タンチン」とも言う)。ですから、競売で落札しても短期賃貸借があるときにはその賃借人の占有を甘んじなければならないため、入札する人が現れず、それだけ不動産の価格も下がってしまうことになります。
 このような仕組みを利用して、悪質な金融業者は賃借権を濫用し、値段が下がったところで安く落札し高く転売して利益を得たり、他の落札人から法外な立退料を得ようと企んでいるのです。
 こうした短期賃貸借が他の抵当権者等を害することがあるため、法律では抵当権者等の請求により短期賃貸借契約の解除を命じることができるようになっていますし、競売の手続でも、濫用的な短期賃貸借はその権利を認めないという方向で法律改正が行われています。
 しかし、どのような場合に「濫用的な短期賃貸借」となるのかは必ずしも明確ではありません。判例では、賃借権者が根抵当権者と同一名義人である場合には「濫用的な短期賃貸借」と認めています。
 このような判例が出されたため、平成金融は早川一雄名義で賃借権仮登記をしたのだと考えられます。
 しかし、これらの登記の受付番号を見ますと、根抵当権仮登記、所有権仮登記、賃借権仮登記が連続して登記されていますので、実態としてはこれらの登記が平成金融の債権担保のためのものであることが推測できるのです。
 したがって、平成金融、平成信用、早川一雄は、実質的には同一人と考えられます。平成信用は平成金融のグループ会社、早川一雄は平成金融グループの経営者か従業員であると考えられます。

6、予告登記がされている

 高瀬建設は多数の不動産を所有しており、登記事項証明書を調査したところ、借入金も多くなさそうです。ところが、そのうち一部の不動産に「1番所有権抹消予告登記」が登記されていました。
 経営的に危険な兆候ということはないと考えられますが、予告登記がされている不動産については、高瀬建設の所有権が抹消される可能性がありますので、この物件を購入したり、担保として取得するのは見合わせた方が無難と思われます。

 予告登記は、無効な登記や取り消されるべき登記などについて「抹消登記手続きをしてくれ」という裁判が起こされた場合に、「裁判の結果、抹消されることもあるから気をつけてください」と警告するための登記で、裁判が起こされた裁判所の権限で登記がなされます。
 この登記簿の記載内容だけではどのような裁判が起こされているのかわかりませんが、たとえば、高瀬建設の前の所有者が、「高瀬建設に対する所有権移転登記は私の全く知らない間に手続されたものだから無効である」という主張をしているのかもしれません。
 高瀬建設はこの物件については法律紛争に巻き込まれているわけで、将来的にはこの所有権が抹消されることもあるでしょうし、高瀬建設の勝訴となれば抹消されることもないわけです。このように法的に不安定な所有権であることは間違いありませんが、予告登記があるからと言って信用状態が悪化しているということにはなりません。
 予告登記がされている以上、この物件について高瀬建設から所有権を譲り受けたり、担保を設定したりしても、万が一高瀬建設の所有権が抹消されてしまった場合には法的に保護されないことになります。なぜなら、裁判所がご丁寧に予告登記をしてくれてあったにもかかわらず、それを知りながらあえて登記をしたことになるからです。 (平成14年2月)





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