地方におけるヤミ金被害の実態とその対処法〜少額訴訟の活用など〜

  
1、悪質業者の暗躍
 繰り返し指摘されているところですが、消費者金融大手が、毎年、最高益を更新し続け、今や我が国を代表する上場企業に成長している一方において、破産件数も毎年過去最高記録を更新しています。
 また、破産予備軍と呼ばれる多重債務者が、全国で150万人とも200万人とも言われている中、困窮した多重債務者を食い物にする様々な悪質業者が全国で暗躍しています。
 現在、静岡県青年司法書士協議会で常設している「クレジット・サラ金問題相談センター」(平成9年から県内6カ所に置かれた無料相談電話窓口・事務局長小澤吉徳)にも、こうした悪質業者による被害にあった人からの相談が激増しています。
 代表的なものとしては、「整理屋」「紹介屋」「買取屋」「システム金融」そして本稿で取り上げる「ヤミ金」といったものがあげられます。
 本稿では詳しく取り上げませんが、「紹介屋」の被害も深刻です。
「紹介屋」とは、自分では貸さず、審査の甘い業者を紹介し、多額の紹介料を取るものですが、その際の紹介料の支払いにつき、不要な本に挟んで宅配便で送るよう指示するなど、その手口はより狡猾になっており、その被害回復は困難を極めます。

2,「ヤミ金」の暗躍
 ここで「ヤミ金」と総称しているのは、貸金業の登録・無登録の有無を問わず、出資法の上限金利年29.2%を超える利息で営業を行っている業者です。
 近年、過去に自己破産や法的債務整理を行った者、つまり、既にブラックリストとなっている者をターゲットにする「ヤミ金」が異常なほど激増しております。
 低利を謳ったダイレクトメールで融資を勧誘し、貸した途端に違法な高金利を強要するのです。その取立は、非常に厳しく、一昨年問題となった商工ローン業者以上とも言えます。
 ところで、私の住む静岡では、こうした業者の多くが東京(新宿・渋谷・池袋・上野)であり、貸金業登録をしているところも少なくありません。
 おそらく他の地方においても同様の傾向にあるものと考えられますので、本稿におきましては、「地方におけるヤミ金被害の実態とその対処法」と題して、東京のヤミ金業者に対する対処法に限定して述べたいと思います。
 なお、後に述べるように、こうした業者は、約定支払期間が極めて短期(10日に一度程度)であるため、被害者らは「短期業者」と呼んでいるようです。

3,地方における「ヤミ金」被害の実態
 その実態の特徴を下記にあげます。

@異常な超高金利
 10日で3割という利息は当たり前で、週に8割という業者もあります。当然のことですが、出資法の上限金利を遙かに上回ります。

A過去に債務整理をした人に対するDMによる勧誘
 既に述べましたとおり、いずれも過去に何らかの法的債務整理を行った方ばかりです。そうした情報がどこから漏れているのか不明ですが、そうした人たちは、一度債務整理をしたからといって、けして生活が楽になるわけではない一方において、一般の消費者金融業者からは借入ができないという事実を認識しています。「ヤミ金」は、そうした現状を熟知しており、甘い罠をしかけているのです。
 極めて悪質と言えます。

B1業者あたりの貸付金額は少額
 「ヤミ金」が貸す元本金額は極めて少額です。具体的には、2万円から5万円程度となっています。このような現状が、結果として多くのケースにおいて、泣き寝入りに至らしめているわけです。

C複数の業者によるたらい回し
 「ヤミ金」業者は、ネットワークで情報交換をしているものと思われます。なぜなら、一度1社から借りると、ものすごい数の他社のDMが送付されてくるからです。
 そして、多くの被害者は、「ヤミ金」の超高金利を支払うために、他の「ヤミ金」から借りざるを得ないという自転車操業に陥ります。
 こうして、多くの被害者は複数(平均して10社から15社、多い場合には25社程度)の業者に対して違法な金利を支払い続けていくことになります。

D暴力的な取立
 1日でも金利の支払いが遅れますと、暴力的な口調で勤務先へ電話を執拗に繰り返したり、支払義務の無い親族の勤務先にも電話を繰り返します。当然のことながら、こうした所為は違法のものです。
 また、業者によっては、実際に被害者の自宅等に訪れるところもあるようです。ただし、実際に訪れた者が、当該業者の社員であるのか、当該業者に委託された地元業者であるのかは不明です。

E証拠の存在
 先に述べましたとおり、こうした「ヤミ金」のほとんどは東京都内の業者です。静岡県内の被害者のように、地方の場合、「ヤミ金」からの貸付金は被害者の銀行口座に振り込まれます。
 一方、返済も銀行を利用しますから、明細書が残ります。業者の特定はDMによって可能です。
 つまり、取引の経過は、これらの資料を併せることによって、すべてが立証できることになります。
 ただし、被害者がこれらの書類を既に処分(家族に内緒などの理由による)してしまっているケースも少なくなく、このような場合、解決は困難となります。

4,民事上の法的対処
 ところで、「ヤミ金」が受領している金利は、利息制限法の上限利率を遙かに上回っていますから、超過部分については無効であり、計算をし直しますと、相当額の過払い金が発生しているケースがほとんどです。
 この過払い金については、不当利得ということになりますので、返還請求が可能になります。
 もちろん、理論的には、「公序良俗違反」や「不法原因給付」にも該当するものと考えられますから、それらを主張して行くことも可能でしょう。

 以下、私が選択している民事上の法的対処について説明します。

@内容証明郵便による通知
 先に述べた証拠書類に基づいて、利息制限法に基づいた計算書を作成しますと、過払い金が算出されます。
 そこで、すでに支払うべき金額が無いこと及び過払い金を返還すること、取立行為をただちに止めることを盛り込んだ文書を速達の配達証明書付き内容証明郵便で送ります。
 これにより、取立を止める業者もありますが、さらに取立を継続する業者も少なくありません。この場合は再び警告書を送付しています。
 また、任意に過払い金を返還する業者は圧倒的少数です。
 そこで、Aの方法により過払い金の返還を請求するケースもあります。

 なお、注意したい点としては、ヤミ金業者の被害者は、既に述べたとおり複数(10社から20社程度)の業者をたらい回しされているケースがほとんどであり、最後の方に借り入れた業者については、元金も残存していたり、一度も返済をしていなかったりしています。つまり、利息制限法に引き直して計算をしても元金が残り、過払い金が発生していない業者が必ず複数存在していることです。
 このような業者に対しては、@利息制限法に引き直した元利金は支払って解決するか、A「公序良俗違反」や「不法原因給付」を根拠に元金も返済を拒絶するか、のいずれかによることになると思われます。
 @による場合は、何ら問題はないのでしょうが、Aによる場合においても、多くの業者が請求を止めているようですから、有効な対処法に成りうるようです。

 以下、内容証明の書式例をあげておきます。過払い金の請求をするものです。

              通知書

 当方は、平成13年5月28日、貴社より金25,000円を借り入れ、以降、後記のとおり返済をしてきました。
 しかしながら、当方は、他社からも同様の借入をしており、返済に窮していたところ、利息制限法を知り、貴社の金利は利息制限法を超え、貸金業の規制等に関する法律43条の適用もないことから、利息制限法を超過する部分については無効であることも知りました。
 また、貴社の利息は、出資法の上限金利である年29.2%を大きく超えており、刑事罰の対象にもなりうることも知りました。
 したがいまして、当方は貴社に対し、後記のとおり、過払い金が金134,880円あることになりますので、速やかに右過払い金の全額を返還してください。
 貴社が、これ以上、当方に対する請求を続けるということであれば、民刑双方の法的手段をとらざるを得ませんので、この点ご了承ください。

           記

取引日 借入額 返済額   残元金
H13.5.28 25,000       25,000
H13.6.4       20,000   5,095
H13.6.13   20,000  -14,880
H13.6.21   20,000  -34,880
H13.7.2   20,000  -54,880
H13.7.11   20,000  -74,880
H13.7.19   20,000  -94,880
H13.7.31   20,000  -114,880
H13.8.8   20,000  -134,880

平成13年8月**日

静岡市****
(差出人) 大 川 好 子(仮名)

東京都新宿区西新宿*****
(受取人)
  ドリームランド(仮名)こと****殿

    A少額訴訟の活用
 平成10年の民事訴訟法改正により新設された少額訴訟制度を利用すれば、1回の審理で判決を得ることができ、何度も裁判所に出頭する必要もありません。
 また、住所地の簡易裁判所で訴訟をすることができますので、地方の被害者にとっての負担も少なくて済みます。
 ただし、1回の審理で結論を出す裁判手続きですので、既に述べた証拠書類が完備しているものにしか利用できませんので注意が必要です。
 なお、1年に10回(同一簡易裁判所について)という提訴の制限がなされていますから、複数の業者に対して同時に提訴する場合には注意が必要です。
 以下、書式例をあげておきます。

 訴  状(少額訴訟)

                     平成13年**月**日
静岡簡易裁判所 御中

             原  告   ****
    〒420ー**** 静岡市****
             原  告   ****

    〒171−**** 東京都豊島区西池袋****
              ****ビル**階
             被  告 ドリームランド(仮名)こと
                  *****
             電話番号  03−****−****
             ファックス 03−****−****

 本年御庁に少額訴訟による審理及び裁判を求める回数   1回

不当利得返還等請求事件

 訴訟物の価格   金134,880円
 貼用印紙額      金1,500円

     請求の原因

1、被告は、原告に対し、金13万4,880円及びこれに対する平成13年**月**日から支払い済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2、訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

     請求の趣旨

1、原告は、平成13年*月**日、被告より金25,000円を借り入れ、以降、毎週金20,000円を返済をしてきた。
 その詳細は計算書記載のとおりである。

2、ところで、もともと被告の原告に対する請求金額は、利息制限法を超過する無効な利息をもとに計算されたものである。
 したがって、利息制限法超過利息の弁済については、元本に充当されるべきものである。

3、そこで、原告と被告との今日に至るまでの取引経過を利息制限法所定の金利に引き直して利息及び元本に充当した結果、別紙「計算書」のとおり、原告は、被告に対し金13万4,880円の過払いとなっており、原告は、被告に対し金13万4,880円の不当利得返還請求権を有することが判明した。

4、原告は、平成13年*月**日、被告に対し、配達証明書付内容証明郵便において、上記過払い金の返還を請求し、同書面は、同年同月24日に被告に配達されたのであるが、被告はその返還をしない。

5、よって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求金として金13万4,880円及びこれに対する平成13年*月**日から支払済み至るまで年5パーセントの割合による金員を求めるため、この訴えを提起する。

     証拠方法

1、甲第1号証      預金通帳
2、甲第2号証      利用明細書
3、甲第3号証      計算書
4、甲第4号証      内容証明郵便
5、甲第5号証      配達証明書

    添付書類

1、訴状副本      1通
2、甲号証写し    各1通

    訴状が、業者に送達されますと、ほとんどの業者は和解を提案してきます。
 「10万を支払うから取り下げてくれ」「3回の分割払いにしてくれ」といったものが、業者の提示する和解条件ですが、条件によって和解に応じています。

  5,一斉告発及び110番の実施について
 当然のことですが、4で示した民事上の法的解決だけでは、こうした「ヤミ金」業者を根絶することはできません。
 しかしながら、既に述べましたとおり、「ヤミ金」業者は出資法を完全に違反しているわけですから、積極的な刑事告発によって、警察の取締を強化していくべきであろうと考えます。
 そして、この告発をより効果的に行うために、110番活動や一斉告発などの工夫が必要になってくるものと思われます。(平成13年12月)

*なお本稿は、平成13年12月に書かれたものであります。それ以後、ヤミ金業者への法的対応については、いろいろなノウハウが蓄積されています。実際に被害に遭われている方は、あらかじめ専門家に相談をすることをお勧めします。





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