ヤミ金融業者との闘い〜「街の法律家」司法書士による被害撲滅活動を!〜

  
「全国の自己破産件数が、相変わらず、ものすごいペースで増え続けている。平成13年度には16万件を超えたが、平成14年度(今年度)は、さらに3〜4割程度の増加率で推移しているのだ。一方、こうした多数の破産者及び破産予備軍をターゲットにした悪質業者が首都圏を中心に暗躍しており、その被害は極めて深刻である。街の法律家である司法書士が、どのように対峙していけば良いのだろうか・・・・」

1.はじめに

 昨年(平成13年)ころから、筆者の事務所においても、急激に、違法な超高金利をとる貸金業者の被害に直面している多重債務者からの相談が増えてきた。
 筆者の住む静岡県においては、東京都内の業者による被害がほとんどであるが、その督促の厳しさは、「腎臓売れ」で有名となった商工ローン業者をはるかに超えるものであり、被害者の逼迫度も通常の多重債務整理事案と比較しても圧倒的に大きい。
 本稿では、主として、筆者が多数扱っている東京都内の違法業者に対する対処法について述べることとするが、業者の激増に伴い、法律実務家の対応も変遷しており、また、違法業者も次々と新たな手法を考え実行していることから、今後も変化していくことが予想される。
 本稿は、あくまで脱稿時点においての、地方の司法書士の東京都内の違法業者に対する法的対処であることを確認しておく。

2.「ヤミ金」の定義及び特徴と「ヤミ金」急増の背景

 本稿で定義している「ヤミ金」とは、貸金業の登録・無登録の有無を問わず、出資法の上限金利年29.2%を超える利息で営業を行っている業者を言う(一般に「ヤミ金」と言えば、貸金業登録をせず、「闇」で営業をする業者をイメージされると思うが、現実には登録業者も極めて多い)。
 ヤミ金は、過去に債務整理をした者、つまり、既にブラックリストとなっている者をターゲットに、低利を謳ったダイレクトメールなどで融資を勧誘し、貸した途端に違法な超高金利を強要する。
 そして、その支払いを滞った者に対しての取立は、非常に厳しく、「返済しないと殺すぞ!」「司法書士や弁護士に頼んだって関係ない」などと脅すなど、完全な犯罪行為を繰り返す。
 一方、先に述べたとおり、筆者の住む静岡のような地方においては、ヤミ金業者のほとんどは東京都内の業者であり、貸金業登録をしている者が大多数であるのが現状である。
 以下、既に述べた点を含めて、ヤミ金業者の特徴を記しておく。

@異常な超高金利と短い返済サイクル
 「トイチ」とは10日で1割、「トサン」とは10日で3割という違法な高金利を指す俗語であるが、これらの金利をはるかに上回るものが圧倒的に多数である。明けの1割(明けとは「夜明け」を指すので、要するに1日1割。)といった業者や週に8割という業者も非常に多い。
 また、10日で何割、週に何割という表し方からも分かるように、利息の返済のサイクルは、1週間から10日と、極めて短期間である。この事から、被害者は、「ヤミ金」のことを「短期業者」と呼び、出資法の上限金利規制を知らないことから「ヤミ金」という認識はないようである。

A過去に債務整理をした人に対するDMなどによる勧誘
 既に述べたとおり、「ヤミ金」は、過去に何らかの法的債務整理を行った者をターゲットにしており、大量のDMの郵送により勧誘を行っているが、当然のことながら、そのようなDMには違法な金利は表示されていない。他方、「破産した人でもOK」「ブラックの方歓迎」「担保・保証人不要」といった文句に代表されるように、審査の気軽さのみが強調されており、屋号自体もソフトなイメージを狙ったものばかりである。
 過去に債務整理を行った者たちは、一度債務整理をしたからといって、けして生活が楽になるわけではない(仮に免責決定を得たとしても、それまでの借入金が棒引きになるのみに留まり、収入がアップするわけではない)一方において、一般の消費者金融業者からは借入ができないという事実を認識している。「ヤミ金」は、そうし間隙を狙い、甘い罠をしかけているのである。そして、貸す際には優しい態度で接するが、一日でも期日を守らなければ態度は180度以上豹変する。
 ところで、自己破産手続など官報にその旨が掲載される法手続であれば格別、それ以外の任意整理などの手続をとった者に関する情報は一般に公開される性質のものではない。しかしながら、これらの者に対しても大量のDMが送付されていることから、ホワイトあるいはブラック情報が何らかの方法によって漏れていると考えざるを得ない。この点については、現在議論されている「個人情報保護法案」による規制の強化に期待をしたいところである。
 また、最近では、「090金融」「携帯金融」などと呼ばれる新しいスタイルの「ヤミ金」が九州・関西を中心に激増している。これらの「ヤミ金」は、同業者から得た情報により、いきなり電話による融資の勧誘を行う。こうした「ヤミ金」については、相手方業者についての情報は携帯電話の電話番号しか残されていない。一方において、相手方業者は、同業者から、借り主の住所や勤務先、親族の連絡先を入手していることから、被害回復は一層困難になる。
 このような悪質な貸金業者が跋扈する原因の一つは、自己破産事件の急増に象徴される多重債務者及び破産予備軍の激増であろう。そうだとすれば、今後も増えることは考えられても減ることは考えられない。

B1業者あたりの貸付金額は少額
 「ヤミ金」が貸す元本金額は極めて少額である。具体的には、2万円から5万円程度となっている。貸倒のリスクを考えてのことであろうが、このような現状が、結果として多くのケースにおいて、泣き寝入りに至らしめているとも言える。現実問題として、勤務先や親族にまで脅迫まがいの電話を頻繁にされるよりは、何としてでも金策に走る気持ちは理解できないものではない。

C複数の業者によるたらい回し
 ヤミ金業者は、ネットワークで情報交換をしているものと思われる。なぜなら、一度1社から借りると、他社から、大量のDMが送付されてくるからである。
 また、そうした融資の勧誘は、@で述べたサイクルにおける返済日又は返済日前日に、積極的に行われる。そして、多くの被害者は、「ヤミ金」の超高金利を支払うために、他の「ヤミ金」から借りるという自転車操業に陥ることとなるが、これは勧誘を行う業者側が意図していることであることは、業者の勧誘のタイミングを見れば明らかであろう。
 こうして、多くの被害者は複数(平均して20社から30社、多い場合には100社以上)の業者に対して違法な金利を支払い続けていくことになる。

D暴力的な取立
 被害者が違法な金利を支払い続けさせられる理由は、「ヤミ金」の暴力的な取立行為に限りない恐怖心を覚えているという点に尽きる。
 1日でも金利の支払いが遅れると、「今から行くから待ってろ!」「録音してても構わねー」「絶対殺すぞ!」などといった暴力的な口調で自宅や勤務先へ電話を執拗に繰り返し、支払義務の無い親族の勤務先にも電話を繰り返す。より悪質な業者は、借り主の子どもの学校へまで電話をしたり、隣人に対しても請求を強要する。また、本人の顔写真に本人を中傷するコメントを加えたビラを、本人の居住地周辺の電信柱に貼るなど、完全な犯罪行為を執拗に繰り返す。
 このような状況下において、被害者は、正常な判断能力を奪われ、ただただ金策に走るのである。
 法律専門家である司法書士や弁護士が関与することになっても、少数ではあるが一定の業者は取立を止めず、激化させる。また、関与した司法書士や弁護士に直接上記のような嫌がらせ行為を行う者もあるので注意が必要である(実際に、筆者の事務所にも注文した覚えが無いのに、大量の特上寿司が届けられているし、自宅への嫌がらせ電話もあった)。
 このような「ヤミ金」の所為は、法治国家たる我が国において絶対に許されるべきものではない。

E証拠の存在
 先に述べたとおり、筆者の住む静岡県のような地方においては、こうした「ヤミ金」の多くは東京都内の業者である。
 そして、地方の場合、「ヤミ金」からの貸付金は被害者の銀行口座に振り込まれる一方、返済も銀行を利用するので、被害者の手許には明細書が残ることになる。また、業者の特定はDMや東京都産業労働局のHP(http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/index.html)などによって可能となる。
 つまり、取引の経過は、これらの資料を併せることによって、すべてが立証できることになる。

3.「ヤミ金」以外の多重債務者を食い物にする悪質業者の暗躍

 一方、破産予備軍と呼ばれる多重債務者が、全国で150万人とも200万人とも言われている中、困窮した多重債務者を食い物にする様々な悪質業者が東京を中心に全国で暗躍しており、本稿で取り扱うヤミ金以外にも注意しなくてはならないものが多い。
 甘い言葉で債務整理を勧誘する多くの広告の背後に存在するのは、多重債務者を食い物にする悪質業者である可能性が極めて高いことをまずは認識しておく必要がある。
 このような悪質業者の代表的なものとしては、「整理屋」「紹介屋」「買取屋」「システム金融」といったものがあげられよう。
「整理屋」は、債務一本化などのうたい文句で、スポーツ紙などに広告をうち、名前を借りている提携弁護士を紹介する。ところが、弁護士介入の通知で取立は止まるものの、その弁護士は実際何もせず、債務は整理をされていないというものである。
「紹介屋」とは、自分では貸さず、審査の甘い業者を紹介し、多額の紹介料を取るものである。近年、急増しており、筆者の事務所においても被害者からの相談が激増している。
「買取屋」とは、債務者に家電やパソコン、宝飾品などをクレジットカードで買わせ、それを半額以下で買い取るものである。
「システム金融」とは、ダイレクトメールやファックスで運転資金調達に苦しんでいる零細企業を狙い撃ちし手形・小切手を担保に、月5割程度の超高金利を取るものである。

4.「ヤミ金」に対する民事的対処を中心に・・・
 言うまでもなく、「ヤミ金」が受領している金利は、利息制限法の上限利率をはるかに上回っており、超過部分については無効であることは言うまでもない。
 さらに、そもそも、ヤミ金業者の金利は、完全な暴利行為であるので、公序良俗に反するものとして無効であり、「ヤミ金」が被害者に給付した金員は、不法原因給付に該当することは明らかであるので、業者は貸付金の返還を求めることすらできないとも言えよう。
 以下、司法書士が選択している民事上の法的対処について中心に説明する。

@書面による通知
 先に述べた証拠書類に基づいて、利息制限法に基づいた計算書を作成すれば、多額の過払い金が算出され、また、そもそも公序良俗に反する超高金利であることから、不法原因給付に該当することは明らかであるため、既に支払うべき金額が無いこと及び過払い金等を返還請求すること、取立行為をただちに止めることを盛り込んだ文書を業者に送付する。
 なお、先述したとおり、被害者は連日の取立行為により焦燥しきっていることから、依頼を受けた即日に処理をする必要性が高いのであるが、業者が数十社にも及ぶケースが多いため、受託司法書士側としては、極めて迅速且つ合理的に事務処理を進めなければならない。
 そこで、現在では、筆者も含め、FAXによる不当利得返還通知書の送信という手段を第一に選択している司法書士が多い。内容証明郵便では実費がかさみ(1業者につき3通を作成しなければならない点も労力が大きい)、速達郵便にしても翌日にならなければ送達されないからである。
 一方、業者のFAX番号は、東京都産業労働局のHPでは検索することができない。そこで、被害者に送付されてくるDMを収集し、FAX番号をデータベース化する必要性が生じる。
 筆者が所属している静岡県青年司法書士会においては、いち早くこの方法に着目し、全国のこの問題に取り組む司法書士・弁護士らの参考になればという思いでHP上にそのデータをアップロードし公開している(http://www2.justnet.ne.jp/~sjnet/)ので参考にされたい。
 この通知により、多くの業者は取立を止めるが、任意に過払い金を返還する業者は少数である。  従って、業者に不当な利得を残さないためにも、次なる手段として、Aの方法により過払い金の返還を請求することとなる。

A不当利得返還請求訴訟の提起〜不法原因給付を理由とした場合の問題点〜
 この訴えは、被害者の住所地を管轄する簡易裁判所で訴訟をすることができるので、被害者にとっての負担は少ないが、公序良俗違反・不法原因給付を理由として不当利得返還請求の訴えを提起する場合には若干の問題があるので指摘しておく。
 例えば、2万円を受領し、以後、業者から言われるがまま毎週1万5千円の金員を利息として4回、合計6万円を支払ったケースを想定する。
 この場合で、不法原因給付が成り立ち、公序良俗違反により金銭消費貸借契約自体が無効であるとすれば、6万円の返還請求が認容され、受領した2万円についての返還義務は負わないはずである(民708条)。
 このように判示した代表的な判決が、札幌簡裁平成12年9月13日判決(消費者法ニュース47号49頁)であるが、受領額が支払額を上回る場合に債務不存在を確認、支払額が受領額を上回る場合に、差額を不当利得と判示したものもあり(東京地裁平成13年9月26日判決(消費者問題ニュース86号8頁))、全国レベルにおいても必ずしも裁判所の態度は固まっていないようである。
 筆者の住む静岡県内の簡易裁判所においても、「原告と被告との本件金銭消費貸借契約は、その約定利率が出資取締法の上限利率を超えて刑事罰の対象となる。従って民法90条が適用され公序良俗違反として無効である」として、原告の支払った金額全額の返還請求を認めた事例(掛川簡判平成14年)もあるが、「金銭消費貸借契約自体は有効とし、かつ、民事法定利率5%もしくは利息制限法の上限20%をつけるよう、請求の減縮を示唆された」事例もあり、様々であるのが現状である。

(1)「不法」とは?
 そもそも、民法708条の「不法」とは何を意味するのかという点につき、@広く強行法規違反を含むとする説と、A民法90条の公序良俗違反に限るとする説があるとされている。
 近時の判例及び学説はAの立場に立っているようであるが、本条適用の有無につき、「民法708条にいう不法の原因のための給付とは、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるのみならず、更にそれが、その社会において要求せられる倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要とし、そして、その行為が不法原因給付に当たるかどうかは、その行為の実質に即し、当時の社会生活および社会感情に照らし、真に倫理、道徳に反する醜悪なものと認められるか否かによって決せられるべきものといわなければならない(最判昭和37年3月8日民集16巻3号500頁)」と判示するものもあり、また、公益保護の必要、当事者双方の不法性の強弱、当事者双方間における利益の均衡・信頼関係の維持などを考慮すべき(谷口知平・不法原因給付の研究212頁以下、下森定「不法原因給付」民法基本問題150講U417頁)との見解もあることから、公序良俗違反であれば即「不法」の要件を満たすという判断には繋がっていないようである。
 さらに、「不法原因給付物として(ヤミ金の)不当利得返還請求を否定することは、契約の効力を否定するだけでなく、正当な理由なく手元を離れた財産の回復請求を否定すること、すなわち、財産権に対する新たな制約を科すことになる。従って、財産権の回復まで否定することが、その法令の目的を実現するのに役立ち、また、必要不可欠かどうか、そしてそれだけの制約を正当化するに足りるほどその目的の実現の重要性が大きいかどうかが問われなければならないとされる(「公序良俗論の再構成」259頁、260頁)。」との見解もあるので、この点については一層の注意を要する。
 つまり、金銭消費貸借契約自体を公序良俗違反と裁判所が判断すれば、弁済金の全額について不当利得金としての返還が可能になると思われるが、一方において、「ヤミ金」が交付した金員についてストレートに不法原因給付を適用して返還義務は無い、と断じてもらうには、上記にあげたような観点にも配慮した主張を展開する必要があると考えられる。詳しくは、参考文献としてあげた「公序良俗論の再構成」等を参考にされたい。

(2)立証責任の分配
 一方、不当利得返還請求の要件事実を考えると、請求原因としては「支払の事実(業者の利得、借主の損失)」であり、抗弁として「消費貸借契約、利息契約の存在(法律上の原因)」が考えられ、再抗弁として「消費貸借契約、利息契約の無効原因(公序良俗違反)」となるものと思料されるが、裁判官によっては、本来再抗弁である「契約の有効・無効」(公序良俗違反)について先行的に立証を求めているようである。
 具体的には、「不当利得返還債務の弁済として給付をした者が民法703条に基づいて、その返還を請求する場合、「法律上の原因なくして」についての主張・立証責任については、不当利得返還債務の弁済として給付をした者が、同条所定の「法律上の原因なくして」についての主張・立証責任を負うとする」とする裁判例(最高裁第2小法廷判決、昭和59年12月21日、裁集民143号503頁)等を根拠に、訴状の補正命令(訴状に、欠席判決をすることができる程度の請求を基礎づける具体的事実についての記載をせよ、という趣旨の補正命令)がなされたり、口頭弁論期日において同様の訴訟指揮がなされたりするのである。
 この点については、このような訴訟指揮に備えて、訴状に最抗弁事由を先行的に主張し、それを裏付ける証拠として、取引経過を明らかにした書面(通帳及び振込利用明細書など)を添付しておけば良いであろう。

(3)無効になるのは消費貸借契約全体か、利息契約のみか?
 また、一方において、消費貸借契約全体が無効になるのか、利息契約のみが無効になるのか、という点についても裁判官の判断は定まっていない。利息契約のみが無効であるとしても、利息制限法超過部分についてのみ無効になるのか、そうでないのかという問題も残る。
   一般に、他人の無思慮・窮迫・無経験に乗じた暴利行為は社会的妥当性を欠き無効であるとされているが、消費貸借上の高利については、利息制限法の制限を超過する限度で無効とされている(利限1条1項)関係上、高利の消費貸借契約が全体として無効とされることは原則としてない、とする判例(最判昭和50年4月10日・判時782号40頁)もあり、注意を要する。
 また、我が国の判例の傾向について、「消費貸借自体が無効となるか、利息契約のみを無効とするか、利息契約の一部のみを無効とするかは、高利の約定が、相手方の窮迫、軽率、無経験に乗じてなされ、過大な利益を取得する反社会的な事由があるかによって決せられるべきであろうが、少なくとも上級審の判例において、消費貸借そのものが無効とされた例は乏しい」と分析するものもある(小野秀誠「利息制限法と公序良俗」289頁以下)。
 しかし、一方では、「利息制限法の制限を超過しただけでは公序良俗に違反するとまではされないとしても、出資法の制限をも超過する場合には、明らかに公序良俗違反として無効とされるべきであろう。それ以外の主観的事由が具備する場合には、より柔軟な判断が必要なことはいうまでもない。」とされており(同書294頁)、今後の判例の蓄積を見守る必要があろう。
 この点については、一般にその判断基準の根拠が不明瞭とされる「公序良俗違反」につき、憲法と私法との関係という視点から、この基準を再構成しようとする前掲参考文献「公序良俗論の再構成」もあるので是非参考にされたい。

B口座差押えによる回収の徹底
 我々法律家の役割を考えれば、被害者各人の被害を回復をすることはもちろんのこと、経済的に困窮する者から不当な利益を貪るヤミ金業者の根絶のためにも、業者に対する不当利得金の回収は徹底的に行う必要があろう(業者に割りに合わないものだということを認識させる必要がある)。
 そのような観点から、筆者らは、仮執行宣言付きの判決が言い渡されたら即座に執行文を付与の申請をし、引き続き、業者の口座を差し押さえる手続をとっている。
 既に述べたとおり、地方の被害者の場合、銀行口座を介しての取り引きとなっていることから、当該口座を特定して差押えの申立をすることとなるが、判決の送達等によって口座の引き上げ等が予想されうるところであるので、ここでも迅速な対応が求められる。

C組織的犯罪処罰法の活用
 一方、既に述べた「ヤミ金」の特徴を鑑みれば、平成12年2月に施行されている改正組織的犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)に規定されている「疑わしい取引」に該当することは明らかである(http://www.fsa.go.jp/fiu/fiuj/fte002.html参照)と言える。
 この法律は、いわゆるマネー・ロンダリング(資金洗浄)情報の届出を金融機関に義務づけているものであるが、その対象となる犯罪を従来の「薬物犯罪」から「一定の重大犯罪」に拡大し、出資法違反及び貸金業法違反が含まれることとなっている。
 従って、「ヤミ金」の口座が存在する金融機関に、上記届出を促す申告書を送付することにより、被害の撲滅を検討するという視点も重要であろう。

5.「ヤミ金」に対する刑事的対処

 一方、既に述べた民事上の法的解決だけでは、こうした「ヤミ金」業者を根絶することはできないことは明らかである。
 既に述べたとおり、「ヤミ金」業者は、出資法などの法律に完全に違反しているのであるから、積極的な刑事告発によって、警察の取締を強化していくべきであろうと考えられる。
 一人の被害者につき、被告発人・被告訴人たるヤミ金業者が多数にのぼることもあって、警察の対応は決して満足のいくものではないのが現状であるが、まずは被害事例の多い業者に絞ったり、証拠書類が完全に揃っているものに限定するなどの工夫を重ね、告発・告訴の正式受理に繋げていくべきであろうと思料する。
 
 私たち、司法書士は、これまで「街の法律家」であることを自認してきたわけであるから、こうしたヤミ金被害者に対する救済活動についても積極的に関与していくべき責務があることは言うまでもないが、問題の性質上、組織的に対応していくべきであろうと思われる。
 より多くの司法書士がこの問題に積極的に関与することを期待して本稿を終えることとしたい。

「参考文献」
1.コンメンタール民法総則  日本評論社
2.コンメンタールコンメンタール事務管理・不当利得・不法行為 日本評論社
3.民法総則 石田穣著 悠々社
4.利息制限法と公序良俗 小野秀誠著 信山社
5.公序良俗論の再構成 山本敬三著 有斐閣
6.組織的犯罪対策関連三法の解説 法曹会


(平成14年8月)





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