ヤミ金の現状と課題〜システム金融〜
  

1.システム金融の実態

 「システム金融」とは、中小零細企業者に対し、FAXやダイレクトメールで融資の勧誘を行い、違法な金利を請求する貸金業者であるが、次にあげる特徴を持つ。なお、無登録業者が多いようであるが、登録業者であることもある。

@過去に商工ローン業者などから借り入れをおこした業者に対するFAX・DMなどによる勧誘  冒頭で述べたとおり、「システム金融」は、大量のDMの郵送やFAXにより勧誘を行っているが、闇雲に送付するわけではなく、過去に商工ローン業者などの高利金融を利用した自営業者をターゲットにしている。もちろん、そのようなFAX・DMには違法な金利は表示されていない。他方において「担保・保証人不要」といった文句に代表されるように、審査の気軽さのみが強調されている。
 ところで、自己破産手続など官報にその旨が掲載される法手続であれば格別、そもそも商工ローン業者に代表される高利金融業者との取引の事実は本来漏洩してはならない情報であると考えられるが、「システム金融」の被害者からの事情聴取を重ねれば重ねるほど、そうした情報が何らかの方法によって漏れていると考えざるを得ない。この点については、現在議論されている「個人情報保護法案」による規制の強化に期待をしたいところでもある。

A異常な超高金利
 「トイチ」とは10日で1割、「トサン」とは10日で3割という違法な高金利を指す俗語であるが、これらの金利をはるかに上回るものが圧倒的に多数である。

B複数の業者によるたらい回し
 「システム金融」業者は、ネットワークで情報交換をしているものと思われる。なぜなら、一度1社から借りると、他社から、大量のFAX・DMが送付されてくるからである。
 また、そうした融資の勧誘は、返済日又は返済日前日に、積極的に行われる。そして、多くの被害者は、「システム金融」の超高金利を支払うために、他の「システム金融」から借りるという自転車操業に陥ることとなるが、これは勧誘を行う業者側が意図していることであることは、業者の勧誘のタイミングを見れば明らかであろう。
 こうして、多くの被害者は複数(平均して5社から10社、多い場合にはそれ以上)の業者に対して違法な金利を支払い続けていくことになる。

C手形小切手を担保に取られる。
 「システム金融」の最も特徴的なものがこの点である。この点によって、被害者は「手形小切手の不渡り、銀行取引停止処分」を恐れ、返済を継続せざるをえないのである。
 なお、手形小切手の受領は、局留めにしてある郵便局において行われ、貸付金の交付・決済は、銀行の当座預金を利用して行われている。こうした事情から、業者の正確な住所氏名が不明瞭であることが多く、また、電話番号や住所を数ヶ月単位で変更しているケースも少なくないため、特定が困難な事案が多い。

D債権譲渡通知書・白紙委任状などの書類を取られる。
 Cと同時に、業者は、契約締結時に被害者から様々な重要書類を取る。実際に、筆者が扱った事例でも、債権譲渡通知書・白紙委任状といった重要書類に実印を押印されている。従って、事情聴取の際には、手形小切手のみならず、業者にどのような債権書類を渡しているか丁寧に聞き出す必要がある。

E執拗な取立
 被害者が違法な金利を支払い続けさせられる理由は、「システム金融」に手形小切手などの担保を取られているという事実に加え、執拗な取立行為に恐怖心を覚えているという点がある。  時には脅迫まがいの督促を繰り返す業者の行為は決して許されるべきものではない。

 このように見ていくと、現在大きな社会問題となっている「ヤミ金」と極めて類似点が多いことに気づく。端的に言ってしまえば、事業者向けの「ヤミ金」が本稿で取りあげた「システム金融」と言えよう。

2.システム金融に対する対応

(1)担保に取られている手形小切手をどうするか。
 1に述べた「システム金融」の特徴を鑑みれば、まず考えなくてはならないのが担保に取られている手形小切手をどうするか、という問題である。
 業者の所在が判明していれば、手形小切手処分禁止の仮処分や特定調停前の事前措置申立という法的手段も考えられよう。しかし、この手段を取ったとしても、業者が手形小切手を取立に回さないという保障は無い。
 日栄などの大手商工ローン業者であれば格別、システム金融などのアウトロー業者に、上記法的手段は特効薬とはなり得ないのが現状ではないだろうか。
 そうであれば、額面と同額の異議申立預託金の準備も検討せざるを得ない。
 この点については、非常に悩ましい問題であり、決定的な方法は無いと思われるが、全国ヤミ金融対策会議が出している「改訂版 ヤミ金融対策マニュアル」に掲載されている和田聖仁弁護士による「システム金融、小切手による取立への対抗手段」に詳しいので、参照されたい。

(2)他に債権譲渡通知書などを取られていないか。
 筆者が扱った事例は、受託した段階において既に小切手の決済が終了していたにも関わらず、さらなる利息を要求しており、支払いを拒絶したところ、予め取得していた債権譲渡通知書を、依頼人の取引先に送付したというものであった。
 つまり、依頼人が取引先に対して持つ売掛金債権を、システム金融業者に譲渡するという虚偽の内容を、予め取得しておいた白紙の債権譲渡通知書に書き込んだものを、依頼人の取引先に対して、内容証明郵便で送付するという悪質な手段に出たのである。
 依頼人は、取引先数社に債権譲渡通知書を送付されることとなり、取引先は困惑を極めた。
 そこで、筆者は、法定金利を超える支払いについての不当利得返還請求及び借入金債務不存在の確認を求める訴え、並びに、本件債権譲渡通知書によって特定された債権者債務者間の債権譲渡契約の存在しないことの確認及び債権証書一式についての返還を求める訴えを提起することを助言し、その前提として、さらなる債権譲渡を禁止すべく仮処分の申立を敢行した。以下が、その申立書式である。

      債権の処分禁止支払禁止仮処分命令申立書

                    平成  年  月  日

静岡地方裁判所 民事部 御中

       債権者   ****株式会社
             上記代表者代表取締役  ****

当事者の表示   別紙当事者目録記載のとおり
債権目録     別紙債権目録記載のとおり


       申立の趣旨

1、債務者は、第三債務者から別紙債権目録記載の債権を取り立て、又はこれについて譲渡、質権の設定その他の一切の処分をしてはならない。
2、第三債務者は、債務者に上記債務を支払ってはならない。
との裁判を求める。

       申立の理由

第1、被保全権利

1、当事者

(1)債権者は、**業を営む会社であり、債務者は、近時社会現象ともなった手形・小切手を担保に違法な超高金利(本件においては週3割の高利)を取る東京の「システム金融」業者である。  第三債務者は、債権者が債務者より詐取された債権譲渡通知書により、債権譲渡通知を受けた被通知人であり、債権者の取引先である。

2、債務者の詐欺的暴利行為

(1)以前、申立外商工ファンド株式会社より融資を受けていた債権者に対し、平成  年4月ころ、突然債務者からのファックスが届く。融資の勧誘である。
(2)平成  年5月中旬頃、資金繰りに窮した債権者は、藁をもすがるような思いで、電話で債務者に融資の申し込みをしたところ、「300万円までなら出せる。東京の事務所に来てくれ」とのことだったため、債務者に指示された「手形帳」「小切手帳」「印鑑証明書(会社及び個人)」「実印(会社及び個人)」などといった重要書類を持参し、平成  年5月25日に債務者の事務所を訪れている。(甲第1号証・甲第2号証)
(3)当日債権者に対して債務者が提示した融資条件は、@融資金額及びA小切手を担保に取るなどといった点において明らかに事前に電話で確認したものと異なっていたため、一旦は申し込みを撤回した債権者であったが、債務者の執拗な勧誘に負け、金210万円の金銭消費貸借契約を締結している。(甲第3号証)
 なお、当該金銭消費貸借契約の内容は次のとおりである。
@融資額 金210万円(ただし、5万円を事務手数料として天引)
A利息 年利10%
B返済方法 合計36回の分割
 ただし、債務者は債権者の署名した金銭消費貸借契約証書などの債権書類の控えを一切債権者に交付していない。
(4)一方、債務者は、上記契約の担保として、手形の振り出しを要求しており(当初は小切手の振り出しを要求したが、債権者がこれを拒絶した)、平成  年5月28日、債権者はこれに従い、日付及び支払人を空欄にした額面金120万円と金160万円の手形を2通振り出している。(甲第5号証)
(5)ところが、1週間後、債務者は、債権者に対し、手数料として金70万円の支払を請求している。その理由は、債権者所有の不動産に対し、訴外商工ファンド株式会社の根抵当権設定仮登記が残ったままになっているからという理由であったが、これを払えば、上記額面額金120万円の手形は返却するということであったため、債権者は債務者の指示通り、平成  年6月4日金70万円を支払った。(甲第4号証)
(残りの140万円につき、担保として額面金160万円の手形を預かる、140万円に関しての36回払いの償還表を送付する、との約束だった。)
 しかしながら、債務者は、約束を守らず、上記手形の返却及び残金の償還表の送付もしなかった。
(6)それに加え、さらに1週間後には、債務者は再び手数料と称して金70万円の請求をしてきたのである。これでは当初の契約内容とまったく違うことから、債権者は債務者に対して残元金を確認したところ、「残元金は金280万円であり、ジャンプするのであれば、今後も1週間ごとに70万円の手数料を払ってもらうこととなる。債権証書の写しの交付については忙しいので応じられない。」という回答を得ている。
(7)債権者は、弁護士にも相談し、(6)記載の手数料の支払を拒絶したが、その結果として、債務者に振り出した手形が交換所に回されることとなり、平成  年6月18日、合計金280万円が決済されることとなったものである。(甲第3号証・甲第5号証)
(8)こうした経緯にも関わらず、債務者は債権者に対し、(6)記載の手数料金70万円を執拗に請求し、債権者がその支払を拒絶したところ、予め債権者から取得していた債権譲渡通知書を債権者の取引先3社に対して送付し、今度は債権者の取引先からの回収を図ろうとしている。
(9)ところで、上記の金銭消費貸借については、債務者が手数料名目で受領している金員については、利息制限法3条の「みなし利息」に当たることは明らかであるため、元金210万円に対して、週3割の超高金利を要求するものであり、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」の上限金利を遙かに超える暴利行為であるので、明らかに公序良俗に反する行為であり、無効である。資金繰りに窮迫した債権者の無経験に乗じて、不当な利益を得る極めて悪質な暴利行為と言える。(甲第6号証)
(10)仮に無効でないとしても、債務者の一連の行為は、明らかに債権者を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤によって意思表示をさせる行為であり、民法96条の詐欺による意思表示にあたるから、取り消しうべき行為である。
(11)仮に上記金銭消費貸借契約の無効又は取消が認められないとしても、利息制限法所定の金利による引き直し計算をしてみれば、債権者は債務者に対して全額を返済しているばかりか、金1,437,101円の不当利得返還請求権を持つ。(甲第6号証)

3、債権譲渡契約の不存在

(1)債権者は、平成  年5月25日、債務者の事務所において上記金銭消費貸借契約を締結しているが、この際、金銭消費貸借契約証書の他、いくつかの書面に署名押印をしている。
 その中の一つが、債権譲渡通知書であり、既に、債務者の手によって、本件第三債務者である債権者の取引先3社へ送付されている。(甲第9号証)
(2)しかしながら、次にあげる理由から、債権者債務者間には債権譲渡契約なるものは存在しない。
(3)そもそも、債権者に債務者に対する債権譲渡の意思表示が存在しない。
 「この書類は何ですか。なぜこのような書類が必要なのですか。」と債務者にその意味を問うた債権者に対し、債務者は「返済が終われば関係ない」と繰り返すだけで、まったく債権譲渡契約の内容について説明をしておらず、半ば強引に署名押印をさせたにすぎないからである。日付も被通知人の記載も空欄で債務者に渡しており、従って、本件債権譲渡通知書における被通知人の記載は債務者が勝手に書き入れたものであり(筆跡からも明らかである)、債権者に被通知人への債権譲渡の意思はない。
(4)さらに、当該債権譲渡契約は、上記金銭消費貸借契約によって生ずべき債権を担保するためになされるべきものであることは明らかであることから、当該金銭消費貸借契約自体が公序良俗に反する法律行為である以上、当該金銭消費貸借契約と同様、無効なものと言える。
(5)仮に無効でないとしても、債務者の一連の行為は、明らかに債権者を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤によって意思表示をさせる行為であり、民法96条の詐欺による意思表示にあたるから、取り消しうべき行為である。
(6)仮に取り消しうる行為でないとしても、上記金銭消費貸借契約によって生ずべき債権を担保するためになされたものであることは明らかであることから、既に上記金銭消費貸借契約に係る債務の全額の元利金の返済が終了しているのが明らかである以上、当該債権譲渡はその時点において担保としての目的を達して失効していると言える。
 ところが、本件債権譲渡は、債権譲渡通知書記載の局印のとおり、失効後である平成  年6月20日に差し出されたものであるから、明らかに権利の濫用と言え、かつ、信義則の原則からも許される行為ではない。(甲第9号証)

4、被保全権利のまとめ

 よって、債権者は債務者に対し、不当利得返還請求権及び借入金債務不存在の確認を求める請求権を持つと同時に、本件債権譲渡通知書によって特定された債権者債務者間の債権譲渡契約の存在しないことの確認及び債権証書一式についての返還を求める請求権がある。

第2、保全の必要性

1、債権者は、上記第1の4記載の各権利を実現するため、不当利得返還請求等訴訟を御庁に提起すべく準備中である。
2、しかしながら、既に債務者は、本件第三債務者である債権者の取引先3社に無効な債権譲渡通知書を送付しており、第三債務者に対しても債務者からの請求は既に及んでいる。
 このままでは、第三債務者が債務者に、本来債権者に支払うべき金員を支払ってしまう可能性が高いばかりか、さらに他へ譲渡し、権利関係を複雑化される恐れもある。
 そうなると、債権者自身の資金繰りにも多大な影響を与えることとなり、場合によっては倒産という可能性も否定できず、そもそも上記訴訟において勝訴判決を得ても実効を収めがたい。
3、なお、本件は、上記のとおり債務者の違法性が極めて高く、債権者の過払いも著しい事例である。しかも提出した疎明資料を逐一検討頂ければ、債権者・債務者間の取引明細は明白である。
よって債務者が多額の不当利得を得ていることは至極明らかな事実であり、本仮処分決定が出されたとしても、何ら債務者にとって損害が発生しないこともまた明らかである。
 御庁におかれては、保証金の額を低廉に押さえていただきたく、申し添える。
4、よって、申立の趣旨記載の裁判ありたく本申立をする。

疎明書類

1、甲第1号証       債務者が送信した必要書類内容の案内
2、甲第2号証       債務者担当者の名刺
3、甲第3号証       入出金のご案内
4、甲第4号証       利用明細書
5、甲第5号証       手形写し
6、甲第6号証       利息制限法による計算書
7、甲第7号証       内容証明郵便
8、甲第8号証       配達証明書
9、甲第9号証       債権譲渡通知書
10、甲第10号証拠    報告書

添付書類

1、甲号証写し 各1通
2、資格証明書  4通
              

   


 この申立は、10万円の保証金によって命令が発令されることとなったが、ある取引先は、債権者不確知を理由として供託をすることとなったので、これに対しては、国を第三債務者として同様の仮処分を申し立てている。
 そして、仮処分命令を得た直後、本案訴訟提訴に至り、被告不出頭のまま勝訴判決を得たが、口座差押えは功を奏することなく、不当利得金の回収は棚上げ状態となってしまっている。

3.最後に。

 これまで述べてきたとおり、システム金融業者に対して被害回復を図る道は決して平坦ではなく、困難を極めるケースが多いのが現状であろう。
 保証金の用意が出来るのであれば、業者の口座を仮差押えをした後、本案提訴し、回収を図る道も考えられるのであるが、現実には、そのようなまとまった金員を準備できる依頼人は希であろう。
 こうした違法業者への対処は、今後の実績の積み重ねとなって、司法書士全体の血肉となっていくものと考えられる。簡裁代理権の取得を大きな契機としてより積極的に取り組んでいきたいと思う。

(平成14年8月)





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