平成14年(ハ)第****号立替金請求事件
原 告 株式会社****
被 告 *****
平成14年 月 日
名古屋簡易裁判所 御中
〒420−***
静岡市****
被 告 ****
答弁書
請求の趣旨に対する答弁
1、原告の請求を棄却する。
2、訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
請求の原因に対する認否
1. 請求の原因1については認める。
2. 請求の原因2については争う。
3. 請求の原因3については不知。
4. 請求の原因4については認める。
5. 請求の原因5については認める。
6. 請求の原因6については争う。
7. 請求の原因7については争う
本管轄は、選択的合意管轄の内の一つであるが、被告は高齢でもあり、身体障害者の認定も受けており(乙第1号証)又、他にも病を抱えているため、別紙移送申立書のとおり静岡簡易裁判所への移送を申し立てる。
被告の主張
1、契約に至る経緯
(1) 平成13年10月16日、訴外株式会社○○クリーン(以下訴外販売店という)の営業社員訴外○○○○(以下○○という)と他男性2名が、被告の住居を訪問した(乙第2号証)。
その際、○○らは、「向かいの家がカビていたけどお宅はどうですか」と言って入って来た。その後、被告の許可なく上がりこみ玄関横の和室の畳を持ち上げて「やっぱりカビが生えています。ねずみが、かじった跡があります。身体によくないから機械をつけた方がよい」と言って被告に対してセールスをしてきた。
被告は当初「でも、うちは借家だからいらない。」と言って断ったが、○○が、「向かいの家も借家だけどつけたよ。」「支払は月々1万円にすぎない。」「僕も○○学会員だから仏壇に手を合わせたい」等の話をしている間に、他の二人が外にネットを張り始め、取り付け工事を始めてしまった。
その後、被告が「夕飯の買い物に出かけたい」と言うと、○○は「ぼくがここで待っていてあげるから行ってきていいよ」とのことで、被告はやむなく○○等を残して外出した。
その間に○○は本件請負契約兼立替払契約書を作成し、被告が帰宅すると「ここに、名前を書いて」と指示して被告に書かせ、支払口座の欄は○○が通帳を見ながら記入した。
以上のような経緯により本件請負契約兼立替払契約書は作成された(乙第3号証)ものである。
(2)請負契約に含まれる商品の内訳は以下のとおりである。
UHCシステムファン 2ケ
UHCセンターファン 4ケ
オートタイマー 1ケ
コンセントブレーカー 1ケ
セーフティーネット 12ケ
2、クーリング・オフによる撤回
(1)本件請負契約兼立替払契約申込書は、後記のような理由により特定商取引に関する法律第4条の書面には該当せず、クーリングオフの期間は進行していない。 したがって、平成14年5月 日になした同法第9条による撤回通知により本件申込は撤回されている(乙第5号証及び6号証)。
(2)指定商品該当性
本件申込は、特定商取引に関する法律第2条4項所定の指定役務たる「家屋における有害動物または有害植物の防除」(同法施行令3条別表第3の15)と、指定商品たる「その他の家庭用電気機械器具」(同法施行令3条別表第1の21)及び指定役務たる「その他の家庭用電気機械器具」(同法施行令3条別表第3の8ニ)の混合契約の中間に位置する契約の申込みと考えられる。
ところで、政令の指定商品・権利・役務に含まれるかどうかの解釈に当たっては、本法が消費者保護を立法趣旨としており、一般消費者が訪問販売によって購入することが予想される商品には政令指定によって網羅的に法の規制を加えるものとした趣旨を踏まえて、できる限り広く解釈すべきであると考えられるから、通達が掲げる具体例はあくまでも例示であって、政令が定める商品の種類に含まれる商品は、できる限り指定商品に含まれるものと解釈すべきである。
割賦販売法の指定商品に関する裁判例ではあるが、「消費者保護を旨とした法の趣旨に照らせば、およそ一般消費者が割賦販売によって購入することの予想される商品には割賦販売法の規制を加える必要があり、消費者のニーズや価値観が多様化している今日の現実をも考え合わせると、割賦販売法の対象となる指定商品はできる限り広く解釈すべである。」(鳥取地方裁判所 平成7年9月5日)とするものがあり、参考となろう。
したがって、本件申込は特定商取引法の指定商品・指定役務にあたるものと思料するものである。
(3)申込書面の不備
一方、本件申込書の「商品名・形式」欄には「床下換気ユニット取付工事一式」と記載されているのみである。
ところで、法4条の申込書面には、「商品名および商品の商標または製造者名」「商品の形式・種類、権利・役務の種類」「商品の数量」を記載しなければならない。(省令3条4号5号6号)
しかしながら、本件申込書には上記のような記載しかなされておらず、法4条の申込書面に不備があることは明らかである。
ところで、東京地方裁判所における平成5年8月30日(判例タイムズ844号252頁)の裁判例においては、「契約の目的たる商品又は役務について購入者等が当該商品の製造者名やその販売価格又は当該役務の対価につき正確な認識を得られないような記載しかしていない書面を交付した場合には、右書面は、法6条1項1号(特定商取引に関する法律第9条1項1号)にいう『第5条の書面』に該当せず、同項にもとづく解除の期間は進行しないものと解するのが相当である。」と判示している。
したがって、本件の場合も、申込者がクーリングオフの権利に関する事項について法律所定の告知を受けていない場合であり、申込みの撤回等を行いえなくなる日の起算日がないこととなり、いつまでも申込みの撤回ができる事となるものである。
(4)ところで、本件申込は上記1の記載からも明らかなように、事業者が事業所等以外の場所で契約の申込を受けた場合であり、「訪問販売により」なされたものである。
(5)したがって、本件契約の申込は撤回されているから、原告の請求には理由がない。
3、消費者契約法による取り消しに基づく抗弁権の接続
(1)仮に上記2によるクーリング・オフが認められなかった場合でも、下記のとおり、消費者契約法4条3項1号により、本件立替払い契約の基となる請負契約は取り消されているから、賦販売法30条の4の規定に基づき、原告に対する支払を停止を主張するものである(乙第5号証及び6号証)。
(2)つまり、前記1記載のとおり、被告は個人(消費者)であり、訴外販売店は法人であることから、上記請負契約は消費者契約に該当する。
前記1記載のとおり、被告は当初「うちは借家だからいらない。」と断っているにも拘らず、訴外販売店の○○は、退去することなく勧誘行為を続け、被告との契約成立前に設置工事を始め、被告が断れない状況に追い込んでから契約書を作成し署名を促しており、被告が困惑した結果なされたものであることは明白である。
(3)一方、本件立替払契約は5年間にわたり、60回の分割払いでなすものであり、金額は728,220円であり(乙第2号証)、 被告にとって商行為となる行為ではない。
また、本件請負契約は家屋の有害動植物の駆除を目的とする役務である。
よって、被告は本答弁書をもって割賦販売法30条の4の規定に基づき、原告に対する支払を停止を主張するものである。
4、本件立替払契約の無効
@訴外販売店の営業社員訴外○○の欺罔行為及び信義則違反
(1)本件立替払い契約は、訴外販売店の営業社員訴外○○の執拗な勧誘によって成立したものである。
被告は○○の訪問当初、建物が借家である旨を告げ断ったにもかかわらず、執拗な営業トークを繰り返した後、被告との契約成立前に設置工事を始め、被告が断れない状況に追い込んでから契約書を作成し署名捺印させている。
すなわち被告は、原告の契約締結の履行補助者と言える○○の欺罔行為というべき勧誘によって、錯誤に陥り、本件請負契約及び立替払契約をしてしまったものである。よって、5に述べる「訴外販売店と原告との関係」を鑑みれば、本件請負契約及び立替払契約は錯誤により無効である。
(2)また、被告の住居(本件契約締結場所)は借家が建ち並ぶ一番奥にあるが(乙第4号証)、○○は、被告の住居を訪れるまでに、他の借家も廻っており又被告もその旨を告げている。
よって、○○は被告の住居、すなわち施工場所が借家であることを認識していたのは明らかである。
ところで、借家の床下の換気を促し建物の耐久年数を長びかせる工事は、本来、家主が行うべきものであり、借家人がなすものではない。したがって、被告が借家人であることを認識して、○○が契約を促し締結したことは、信義則に反し許されない。
また、立替払契約の前提となる訴外販売店の違法な営業行為を不問に付して、被告の立替払契約が有効であるとすることも信義則に反し許されない、よって本件請負契約及び立替払契約は無効である。
A契約担当者である訴外販売店の営業社員訴外○○の説明義務
本件契約は、契約締結時において、クーリング・オフをなすことによっても解除が可能であった。
しかし、被告はクーリング・オフ制度について理解しておらず、その期間を途過してしまった。
消費者契約法第3条第2項には、消費者の理解についての努力義務が定められているが、被告のような高齢者にとっては、本契約書に記載されたクーリング・オフの説明事項を読んで理解することは、内容の複雑さ、記載文字の細かさをとってみても、きわめて困難であると言わざるを得ない。
これに対し、消費者契約法第3条第1項には事業者の説明義務が定められているが、○○はクーリング・オフに関して被告に対して何らの説明をなしていない。
「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み」として立法された消費者契約法の趣旨に照らせば、被告のような高齢な消費者と契約交渉するに当たっては、クーリング・オフに関しても口頭での説明義務が課せられるべきであり、事業者の説明義務を欠いていることは明らかである。
したがって、この点からも本件請負契約及び立替払契約は信義則に反するものであり、無効とされてよい。
5、訴外販売店と原告との関係
(1)訴外販売店は原告の指定加盟店であり、訴外販売店が原告の信用を利用して顧客を獲得し、原告も利益を得るといった経済的に相互依存の関係にある。
また、立替払契約は請負契約の存在を前提とし、契約書が同一であるなど本件立替払契約と本件請負契約は一体となっており、一個のクレジット販売契約というべきものである。
実際の契約締結を担当した○○は、本件立替払契約において原告の履行補助者の立場にあったといえる。
よって、抗弁の接続を主張しなかった場合でも、上記4による無効、上記3による取り消しは原告との立替払契約にも及ぶものであり、被告が当該割賦払金の支払をなす義務はないものである。
(2)さらに、被告には訴外販売店の信用、営業状況等を調査する権限も能力もないが、原告には加盟店契約から生じる、加盟店の信用、営業状況を調査し、販売業者をもって消費者に適正な商品の供給を行わせしめる契約上の義務がある。
昭和58年3月11日付けの通産省通達には、商品の供給を適正かつ円滑に行うことのできない販売業者を加盟店にしないために、加盟店契約締結時に販売業者が取り扱う商品及び役務の内容並びに販売方法等を十分把握すること、加盟店契約締結後も加盟店に対する信用審査や指導監督する付随的義務を負う旨定められている。
この点に鑑みても、原告の加盟店の担当営業社員がなした瑕疵ある契約の効果を、原告は甘受すべきであると思料するものである。
証拠方法
1、乙第1号証(身体障害者手帳写し)
2、乙第2号証(名刺)
3、乙第3号証(請負契約及びクレジット契約写し)
4、乙第4号証(被告住居の住宅地図)
5、乙第5号証(内容証明郵便)
6、乙第6号証(配達証明書)
添付書類
1、答弁書副本 1通
2、乙号証写し 各1通
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